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第五章
6.回避手段【2】
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結論から言えば、私の期待は見事に砕かれました。
「……分かったな、ヴォルティ」
威圧的なまでの重い声が謁見の間に響きます。
ヴォルは皇帝様の前で片膝をついたまま、真っ直ぐ己の足元を見ていました。私はただその隣で立っているだけ。
「今回の騒ぎを鎮めなくてはならない」
騒ぎとは城内の全ての人が強制的に眠りに落とされたあれです。
明らかな魔法効果であり、大きな魔力がなくてはなし得ない事でした。──しかも国の結界の中で、です。
以前にこの国を守る結界は、魔物からは勿論ですが人からも守る為だと聞きました。悪意あるものから守り、人々を慈しむ形がこの結界なのです。
その中で大規模な睡眠魔法など、他の誰が出来るものかと──つまりはヴォルが犯人ではないかと言われているのでした。もしくは、何故守らなかったのかと。
一方的に押し付けられた『罪』です。
「魔法石も一つ残らず消滅してしまった。その場にヴォルティもいたのだと言う。偽りはないか」
「はい、ありません」
「この国には魔法石が必要なのも分かっているな」
「……はい、承知しております」
淡々と繰り広げられる会話に、私はプルプルと握り締めた拳を震わせていました。怒りの為か悲しみの為か分かりません。
でもでも、これっておかしくないですか?これは会話ではなく、尋問ですよね?
「…………ダメ……ですよ」
小さく呟かれた私の思いでした。
「ヴォルティは魔法石に……」
「ダメですっ」
「メル……」
「嫌です、ダメですっ。石になんかなってはダメです!」
私はなりふり構わず叫びます。
皇帝様とヴォルが驚いた顔をしていますが、私はそれどころではありませんでした。
「しかしメルシャ。魔力所持者が魔法石になる事は、生まれながらに決まっている定めなのだ。ヴォルティも精霊に好かれた者として、その責務を負っている」
「そんな事、ヴォルが背負う必要はありませんっ。だっておかしいではないですか。生まれとか定めとか、何故全ての人の代わりにヴォルが犠牲にならないといけないのですか?」
「……メル、もう良い」
泣き叫ぶ私を包み込むようにヴォルが抱き締めます。いつの間に立ち上がったのでしょうか。
いえ、そんな事ではなく。何が『もう良い』のですか。
「良くなんてないですっ。……良くなんて……ないですよ……っ」
その胸に顔を埋めるようにしながらも、私は必死に訴え続けました。
「良い娘を見付けて来たな、ヴォルティ」
「…………」
慈愛のこもった皇帝様の言葉に、ヴォルは無言で頷きます。
見なくてもそれくらいの動きは私にだって──いえ、ぴったりとくっついているからこそ分かりました。
この場の私は、離れたらヴォルが魔法石になってしまうのではないかと、そんな強迫観念からくっついているのです。本来ならば恥ずかしくてやらない事でした。
謁見の間には多くの人の目があり、皇帝様以外の大臣クラスの方々が固唾を呑んで事のなり行きを見守っているのです。
「一つ……。回避手段がある」
グズグズと泣き崩れる私の耳に、ヴォルの呟きが聞こえました。回避──手段?
「……っ、何……ですか?」
涙で濡れた汚い顔ですが、思わずヴォルを見上げます。
藁をも掴む心地とはこう言うものなのですね。何でも良いですよ、あるなら教えて下さい。
「……分かったな、ヴォルティ」
威圧的なまでの重い声が謁見の間に響きます。
ヴォルは皇帝様の前で片膝をついたまま、真っ直ぐ己の足元を見ていました。私はただその隣で立っているだけ。
「今回の騒ぎを鎮めなくてはならない」
騒ぎとは城内の全ての人が強制的に眠りに落とされたあれです。
明らかな魔法効果であり、大きな魔力がなくてはなし得ない事でした。──しかも国の結界の中で、です。
以前にこの国を守る結界は、魔物からは勿論ですが人からも守る為だと聞きました。悪意あるものから守り、人々を慈しむ形がこの結界なのです。
その中で大規模な睡眠魔法など、他の誰が出来るものかと──つまりはヴォルが犯人ではないかと言われているのでした。もしくは、何故守らなかったのかと。
一方的に押し付けられた『罪』です。
「魔法石も一つ残らず消滅してしまった。その場にヴォルティもいたのだと言う。偽りはないか」
「はい、ありません」
「この国には魔法石が必要なのも分かっているな」
「……はい、承知しております」
淡々と繰り広げられる会話に、私はプルプルと握り締めた拳を震わせていました。怒りの為か悲しみの為か分かりません。
でもでも、これっておかしくないですか?これは会話ではなく、尋問ですよね?
「…………ダメ……ですよ」
小さく呟かれた私の思いでした。
「ヴォルティは魔法石に……」
「ダメですっ」
「メル……」
「嫌です、ダメですっ。石になんかなってはダメです!」
私はなりふり構わず叫びます。
皇帝様とヴォルが驚いた顔をしていますが、私はそれどころではありませんでした。
「しかしメルシャ。魔力所持者が魔法石になる事は、生まれながらに決まっている定めなのだ。ヴォルティも精霊に好かれた者として、その責務を負っている」
「そんな事、ヴォルが背負う必要はありませんっ。だっておかしいではないですか。生まれとか定めとか、何故全ての人の代わりにヴォルが犠牲にならないといけないのですか?」
「……メル、もう良い」
泣き叫ぶ私を包み込むようにヴォルが抱き締めます。いつの間に立ち上がったのでしょうか。
いえ、そんな事ではなく。何が『もう良い』のですか。
「良くなんてないですっ。……良くなんて……ないですよ……っ」
その胸に顔を埋めるようにしながらも、私は必死に訴え続けました。
「良い娘を見付けて来たな、ヴォルティ」
「…………」
慈愛のこもった皇帝様の言葉に、ヴォルは無言で頷きます。
見なくてもそれくらいの動きは私にだって──いえ、ぴったりとくっついているからこそ分かりました。
この場の私は、離れたらヴォルが魔法石になってしまうのではないかと、そんな強迫観念からくっついているのです。本来ならば恥ずかしくてやらない事でした。
謁見の間には多くの人の目があり、皇帝様以外の大臣クラスの方々が固唾を呑んで事のなり行きを見守っているのです。
「一つ……。回避手段がある」
グズグズと泣き崩れる私の耳に、ヴォルの呟きが聞こえました。回避──手段?
「……っ、何……ですか?」
涙で濡れた汚い顔ですが、思わずヴォルを見上げます。
藁をも掴む心地とはこう言うものなのですね。何でも良いですよ、あるなら教えて下さい。
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