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第七章
2.今は……まだ……【5】
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「すまない、メル」
「び、ビックリしました……。大丈夫です……って、ここは何処ですか?」
次にヴォルから声が掛けられた時、私は息を止めていたので少しむせてしまいました。
でもそれ以上に驚いたのは、自分の視界に入った景色です。──えぇ、私とヴォルはベッドに腰掛けてはいましたけれども。
「結界内部の部屋ごと転移した」
目を見開いて硬直する私に気付いたのか、ヴォルが事も無げに口を開きました。相変わらず凄い事を簡単に言ってくれます。
私達がいるのは外でした。えぇ──見れば分かりますよ、上には青空が広がっています。しかも思い切り町の目の前でした。見覚えのある崩れた外壁と町並みが広がっていますね。
足下近くを見れば、何故か床板付きの家具付き。ないのは壁と天井です。あの屋敷内に張っていた結界は部屋の外側だったので、ヴォルが言うように結界内部へ更に結界を張った上での転移なのだと推測されました。
「……あの、大丈夫なのですか?」
とにかく、と一息吐きます。気を取り直して、まず始めに確認するのはヴォルの事です。
確か、転移には多くの魔力を使うと言われていたような気がしました。見る限りでは先程町長さんの屋敷に張っていた結界から、部屋の内側丸ごと転移させたらしいです。
「問題ない。マークの居場所も把握している」
ですが私の問い掛けに返ってきた答えは、少し違いました。
ベンダーツさんの場所を分かっている事は良いのですが、魔力回復の為にお留守番していたのではなかったのですか。
「そうではなくて、ヴォルですよ。大きな魔法はたくさん魔力を必要とするのですよね?まだ回復したばかりなのに、無理はダメです」
「……無理ではない。ここはメルがサガルットに到着した時にいた場所だ。結界痕がある。距離にしても大した事はない。あの場所で外部から結界に物理攻撃を受け続ける方が問題があった。……が、言葉が足りずすまない」
転移の魔法を使った理由を説明してくれながらも、ヴォルが謝罪の言葉を紡ぎました。更には興奮する私を宥めるように、彼は頭を撫でてくれています。
落ち着きましょう、私。ヴォルに謝らせてどうするのですか。経緯を聞く事なく怒ってしまった自分を反省しました。
「わ、私こそ話を聞かずに声を荒げてすみませんでした。……でも、結界に攻撃を受け続けるとどうなるのですか?」
「弾ける」
謝罪ついでに不明点を問い掛けた私でしたが、返ってきたヴォルの言葉は簡潔明瞭です。素敵にシンプルなお答えでした。
そもそも結界は見た目がシャボン玉のようなので、弾けるというイメージはとても分かりやすくはあったのですが。
「力の対比で内側か外側のどちらかにな。先程の場合は外側に力が弾けるところだった。周囲全てを鎌鼬で傷付ける訳にもいかないからな」
小首を傾げた私に、ヴォルが続けて説明をしてくれました。
──か、鎌鼬ですか?
私の頭の中に、草刈り鎌を持った細長い胴体の獣が思い浮かびます。鼬とはこのような姿であったと思いました。
「鎌鼬とは、突然皮膚に鎌で切ったような鋭い傷ができる現象だ。この結界は風の力を借りている。弾ければ旋風が起こる。それが不可視の刃を形作り、周囲を切り刻む」
「な、なるほどです。魔法にも副作用のようなものがあるのですね」
「そうだ。未熟な術者は魔法の反動を受ける。魔法が返されれば同じく。勿論俺も例外ではない」
鎌鼬という現象を聞いて青褪める私です。ヴォルにとっては当たり前の事柄のようでした。
便利だとばかり思っていた魔法ですが、それだけではないようです。使う側の危険もあると知りました。
「……って、大変ですっ。町長さんのお屋敷を壊してしまいました。どうしましょう……」
「メルは優しいな。連日の暴動でそれどころの損壊ではなかった」
「えぇっ?!だ、だって……」
「問題ない。先に手を下してきたのはサガルット側だからな。それに、柱は転移させていない。すぐに建物自体が崩壊する事はないだろ」
小心者の私は大いに気になります。でもヴォルは全く意に介さない様子でした。
でもあの場所にずっといる事が危険だと分かった以上、ヴォルのこの転移は正しい選択なのだと思います。だって真空の刃なんて、皆さんが怪我するだけではすまないですから。
「び、ビックリしました……。大丈夫です……って、ここは何処ですか?」
次にヴォルから声が掛けられた時、私は息を止めていたので少しむせてしまいました。
でもそれ以上に驚いたのは、自分の視界に入った景色です。──えぇ、私とヴォルはベッドに腰掛けてはいましたけれども。
「結界内部の部屋ごと転移した」
目を見開いて硬直する私に気付いたのか、ヴォルが事も無げに口を開きました。相変わらず凄い事を簡単に言ってくれます。
私達がいるのは外でした。えぇ──見れば分かりますよ、上には青空が広がっています。しかも思い切り町の目の前でした。見覚えのある崩れた外壁と町並みが広がっていますね。
足下近くを見れば、何故か床板付きの家具付き。ないのは壁と天井です。あの屋敷内に張っていた結界は部屋の外側だったので、ヴォルが言うように結界内部へ更に結界を張った上での転移なのだと推測されました。
「……あの、大丈夫なのですか?」
とにかく、と一息吐きます。気を取り直して、まず始めに確認するのはヴォルの事です。
確か、転移には多くの魔力を使うと言われていたような気がしました。見る限りでは先程町長さんの屋敷に張っていた結界から、部屋の内側丸ごと転移させたらしいです。
「問題ない。マークの居場所も把握している」
ですが私の問い掛けに返ってきた答えは、少し違いました。
ベンダーツさんの場所を分かっている事は良いのですが、魔力回復の為にお留守番していたのではなかったのですか。
「そうではなくて、ヴォルですよ。大きな魔法はたくさん魔力を必要とするのですよね?まだ回復したばかりなのに、無理はダメです」
「……無理ではない。ここはメルがサガルットに到着した時にいた場所だ。結界痕がある。距離にしても大した事はない。あの場所で外部から結界に物理攻撃を受け続ける方が問題があった。……が、言葉が足りずすまない」
転移の魔法を使った理由を説明してくれながらも、ヴォルが謝罪の言葉を紡ぎました。更には興奮する私を宥めるように、彼は頭を撫でてくれています。
落ち着きましょう、私。ヴォルに謝らせてどうするのですか。経緯を聞く事なく怒ってしまった自分を反省しました。
「わ、私こそ話を聞かずに声を荒げてすみませんでした。……でも、結界に攻撃を受け続けるとどうなるのですか?」
「弾ける」
謝罪ついでに不明点を問い掛けた私でしたが、返ってきたヴォルの言葉は簡潔明瞭です。素敵にシンプルなお答えでした。
そもそも結界は見た目がシャボン玉のようなので、弾けるというイメージはとても分かりやすくはあったのですが。
「力の対比で内側か外側のどちらかにな。先程の場合は外側に力が弾けるところだった。周囲全てを鎌鼬で傷付ける訳にもいかないからな」
小首を傾げた私に、ヴォルが続けて説明をしてくれました。
──か、鎌鼬ですか?
私の頭の中に、草刈り鎌を持った細長い胴体の獣が思い浮かびます。鼬とはこのような姿であったと思いました。
「鎌鼬とは、突然皮膚に鎌で切ったような鋭い傷ができる現象だ。この結界は風の力を借りている。弾ければ旋風が起こる。それが不可視の刃を形作り、周囲を切り刻む」
「な、なるほどです。魔法にも副作用のようなものがあるのですね」
「そうだ。未熟な術者は魔法の反動を受ける。魔法が返されれば同じく。勿論俺も例外ではない」
鎌鼬という現象を聞いて青褪める私です。ヴォルにとっては当たり前の事柄のようでした。
便利だとばかり思っていた魔法ですが、それだけではないようです。使う側の危険もあると知りました。
「……って、大変ですっ。町長さんのお屋敷を壊してしまいました。どうしましょう……」
「メルは優しいな。連日の暴動でそれどころの損壊ではなかった」
「えぇっ?!だ、だって……」
「問題ない。先に手を下してきたのはサガルット側だからな。それに、柱は転移させていない。すぐに建物自体が崩壊する事はないだろ」
小心者の私は大いに気になります。でもヴォルは全く意に介さない様子でした。
でもあの場所にずっといる事が危険だと分かった以上、ヴォルのこの転移は正しい選択なのだと思います。だって真空の刃なんて、皆さんが怪我するだけではすまないですから。
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