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第八章
2.魔力の流れ【3】
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ヴォルと私の片付けが終わる頃にはベンダーツさんが戻ってきて、その後はあっという間に旅立つ事になりました。午前中の内に出発しないと、次の町への到着に不都合が生じる為だとか。
そしてそれまでサガルットの町はヴォルの結界によって守られていましたが、すぐに町の魔法石に結界を維持させるようにしたそうです。ベンダーツさんが戻ってきてから少しの間だけ町へ行ったヴォルは、魔法石は捜索と結界との結び付けをしてきたとの事でした。
あの時ゼブルさんが私を使って壊そうとした魔法石を守る結界は、ヴォルにとっては何の障害にもならなかったようです。
それにしても、つくづくゼブルさんに魔法石を奪われなくて良かったと思いました。もしも結界の継続をしてくれる魔法石がなければ、もっと長く拘束されるところでしたから。
そうして結局町長さんのお屋敷の一部であったあの部屋はそのままに、私達はユーニキュアさんの用意してくれた馬車に乗り込んで次の町へ足を向けました。
サガルットの町の前に転移させたあの部屋は、ヴォルの結界がなくなった状態で放置です。ユーニキュアさん達が片付けてくれるとの事だったで、思い切りそれに甘えてしまいました。
「何だか、色々とお世話になってしまいました」
私が呟くと、御者台にいるベンダーツさんが振り向きます。
ウマウマさん二頭引きの立派な箱形の馬車は乗り心地が良く、振動でお尻が痛くなる事もなさそうでした。
「大丈夫だって。あっちは町の問題と恋愛事情を解決出来て大喜びなんだから。この高級な馬車だって、二つ返事でくれたんだぜ?」
「はぁ……」
御者台と馬車内部を仕切る窓が開いているので、笑顔で振り向いたベンダーツさんが親指を立てたのが見えます。
何だか納得しづらいですけど、最後に見送りに出てきてくれたユーニキュアさんはそれまでで一番の笑顔でした。その隣にはちゃんとドガさんが寄り添うようにいましたし、町の人も皆が笑顔だったのを思い出します。
元町長さんとユーニキュアさんのお父様はいらっしゃらなかったですけど、妙に盛大に送り出されたのでした。
「そうですよね。たくさんのマトトや食料ももらって、広い馬車なのに半分が荷物で埋まってしまうくらいですからね。こんなにお礼をくれたのですから、喜んでいない訳がないですよねヴォル」
「そうだな」
笑顔で後ろを振り向くと、ヴォルが瞳を和らげて私を見ています。
しかしながら今更ですけど、馬車の中でも当たり前のようにくっついている私達でした。まだ十分に二人で座れる広さはあるのに、人形のようにヴォルの膝の上で抱き締められている私です。
「あの、下ろしてもらっても……」
「嫌だ」
自分の状態に納得が出来ないので、何度目かの訴えをヴォルにしました。──同じように即却下されましたが。
嫌って一言だけでまるで子供です。これは甘えているだけではなくて、もしかして具合が悪いのかもと思い至りました。ヴォルが甘えんぼになる時って、身体に不調を抱えている事が多いのです。
「どうした、メル」
不安になってジッと顔を見ていると、逆にヴォルから不思議そうに問い掛けられてしまいました。
私の変化に気付くのなら、御自分の事も大切にしてほしいです。
「あの、体調が悪いのかと思ってですね?」
「………………問題ない」
ヴォルの膝上で腰部分を抱き留められている私は、身体を捻って振り返りながら問い掛けていました。この状態だとヴォルより少しだけ目の位置が高くなるので新鮮な感じです。
──というより今、変な間がありました。
ヴォルは嘘をつかないのですけど、本心を隠す時に言い淀む傾向があるのです。
「体調が悪いのですね?」
今度は確信をもって問いました。
すると視線があからさまに逸らされます。
「……メルには負ける。だが強いて告げる程の事ではない。ただ……魔力が流れているだけだ」
軽く溜め息をつくように紡がれた言葉に、私は即座に反応が出来ませんでした。
軽く言われた事もありますが、私に魔力というもの自体の感覚がない為です。そもそも、魔力が流れているとはどの様な状態なのか分かりませんでした。
「それ、結構大問題じゃない?」
御者台からベンダーツさんの声が掛けられます。
馬車を操りながらも、真面目な顔でこちらを振り向いていました。
そしてそれまでサガルットの町はヴォルの結界によって守られていましたが、すぐに町の魔法石に結界を維持させるようにしたそうです。ベンダーツさんが戻ってきてから少しの間だけ町へ行ったヴォルは、魔法石は捜索と結界との結び付けをしてきたとの事でした。
あの時ゼブルさんが私を使って壊そうとした魔法石を守る結界は、ヴォルにとっては何の障害にもならなかったようです。
それにしても、つくづくゼブルさんに魔法石を奪われなくて良かったと思いました。もしも結界の継続をしてくれる魔法石がなければ、もっと長く拘束されるところでしたから。
そうして結局町長さんのお屋敷の一部であったあの部屋はそのままに、私達はユーニキュアさんの用意してくれた馬車に乗り込んで次の町へ足を向けました。
サガルットの町の前に転移させたあの部屋は、ヴォルの結界がなくなった状態で放置です。ユーニキュアさん達が片付けてくれるとの事だったで、思い切りそれに甘えてしまいました。
「何だか、色々とお世話になってしまいました」
私が呟くと、御者台にいるベンダーツさんが振り向きます。
ウマウマさん二頭引きの立派な箱形の馬車は乗り心地が良く、振動でお尻が痛くなる事もなさそうでした。
「大丈夫だって。あっちは町の問題と恋愛事情を解決出来て大喜びなんだから。この高級な馬車だって、二つ返事でくれたんだぜ?」
「はぁ……」
御者台と馬車内部を仕切る窓が開いているので、笑顔で振り向いたベンダーツさんが親指を立てたのが見えます。
何だか納得しづらいですけど、最後に見送りに出てきてくれたユーニキュアさんはそれまでで一番の笑顔でした。その隣にはちゃんとドガさんが寄り添うようにいましたし、町の人も皆が笑顔だったのを思い出します。
元町長さんとユーニキュアさんのお父様はいらっしゃらなかったですけど、妙に盛大に送り出されたのでした。
「そうですよね。たくさんのマトトや食料ももらって、広い馬車なのに半分が荷物で埋まってしまうくらいですからね。こんなにお礼をくれたのですから、喜んでいない訳がないですよねヴォル」
「そうだな」
笑顔で後ろを振り向くと、ヴォルが瞳を和らげて私を見ています。
しかしながら今更ですけど、馬車の中でも当たり前のようにくっついている私達でした。まだ十分に二人で座れる広さはあるのに、人形のようにヴォルの膝の上で抱き締められている私です。
「あの、下ろしてもらっても……」
「嫌だ」
自分の状態に納得が出来ないので、何度目かの訴えをヴォルにしました。──同じように即却下されましたが。
嫌って一言だけでまるで子供です。これは甘えているだけではなくて、もしかして具合が悪いのかもと思い至りました。ヴォルが甘えんぼになる時って、身体に不調を抱えている事が多いのです。
「どうした、メル」
不安になってジッと顔を見ていると、逆にヴォルから不思議そうに問い掛けられてしまいました。
私の変化に気付くのなら、御自分の事も大切にしてほしいです。
「あの、体調が悪いのかと思ってですね?」
「………………問題ない」
ヴォルの膝上で腰部分を抱き留められている私は、身体を捻って振り返りながら問い掛けていました。この状態だとヴォルより少しだけ目の位置が高くなるので新鮮な感じです。
──というより今、変な間がありました。
ヴォルは嘘をつかないのですけど、本心を隠す時に言い淀む傾向があるのです。
「体調が悪いのですね?」
今度は確信をもって問いました。
すると視線があからさまに逸らされます。
「……メルには負ける。だが強いて告げる程の事ではない。ただ……魔力が流れているだけだ」
軽く溜め息をつくように紡がれた言葉に、私は即座に反応が出来ませんでした。
軽く言われた事もありますが、私に魔力というもの自体の感覚がない為です。そもそも、魔力が流れているとはどの様な状態なのか分かりませんでした。
「それ、結構大問題じゃない?」
御者台からベンダーツさんの声が掛けられます。
馬車を操りながらも、真面目な顔でこちらを振り向いていました。
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