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第八章
2.魔力の流れ【4】
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「別に。普段より流出が激しいというだけの事だ。大袈裟にするな」
ヴォルは呆れた様子でベンダーツさんに払うような仕草で手を振ります。
けれど私の中で、それはとても重い言葉として残りました。
「ヴォル。魔力が流れるというのは、抜け出てしまうという事なのですか?」
不安なままでいても何も変わらないので、私は言葉にして問い掛けます。
ヴォルが何もしていない自然体の状態でも、魔力を放出している事は知っていました。そしてそれを精霊さんが得ている事もです。
でもそれ以上の放出は、魔法を使っている状態と変わらないのではと思いました。
私の分かる感覚で、魔力を体力に置き換えてみます。座っていても寝ていても、常に歩いている──もしくは走っている様な状態だとしたらどうかなんて深く考えなくても分かりました。
当たり前ながら、私の体力なんて知れています。すぐに力尽きて、最終的には倒れてしまうかもしれませんでした。
魔力だって、半永久的に沸いて出る訳ではない筈です。
「……世界の魔力は常に流れている。それを一時的に身体に貯めておく事が出来る素質を持った者が魔力所持者だ。魔物は身体の核に魔力を貯めている。多いか少ないかは本人の素質による」
「それ、通常ならって事でしょ。今はそうじゃないんだよな?」
大した事でないと、ヴォルが説明していました。
それでも納得が出来ないようで、少しキツ目にベンダーツさんが問います。
「……あぁ。世界の魔力の流れが乱れている事が原因だろうが、何かが無理矢理流れを生み出そうとしているように感じる。魔力を持つ全てのものを対象として、持てる力を絞り出そうとしているようだ」
漸く現状を話し出したヴォルでした。
でもその内容は思っていた以上に深刻で──何かとても大変な事態が起きているようです。
「いくらヴォルの魔力値が尋常じゃないとは言え、底無しじゃないんだぞ?何でそんな大切な事をもっと早く言わないんだっ。それ、いつからっ?」
噛みつくように告げるベンダーツさんは、いつの間にか馬車を停めていました。
ウマウマさんを走らせている余裕がなくなったようです。でもこれ程焦るのって、ベンダーツさんがヴォルの事を大切に思っているという証拠でした。
「……サガルットに来る前。クスカムの集落を出て少ししてから、かな」
他人事のように告げるヴォルです。
兄同然のベンダーツさんが本気で怒っている事に、多少なりとも罪悪感を感じている様にも見えました。
「それ、大分前だよね」
「…………そうとも言うか」
「段々酷くなってるの?」
「………………まぁ、な」
御者台の窓から顔を突き出すようにして、ベンダーツさんが馬車内部のヴォルに視線を向けています。
追求の問い掛けに対し、ヴォルが応じる間が長くなっていきました。どうやら今回の怒る役目は、このままベンダーツさんに譲った方が良さそうです。
はい──私、空気を読みますよ?
勿論私だって怒っていました。本当にヴォルって、自分の悪い状況を人に話さないのですから。
アレですか?野性動物的な、弱味を仲間にも見せないとか?もしもそんな事を思っているのだとしたら、私も怒鳴って良いですよね。
ヴォルは呆れた様子でベンダーツさんに払うような仕草で手を振ります。
けれど私の中で、それはとても重い言葉として残りました。
「ヴォル。魔力が流れるというのは、抜け出てしまうという事なのですか?」
不安なままでいても何も変わらないので、私は言葉にして問い掛けます。
ヴォルが何もしていない自然体の状態でも、魔力を放出している事は知っていました。そしてそれを精霊さんが得ている事もです。
でもそれ以上の放出は、魔法を使っている状態と変わらないのではと思いました。
私の分かる感覚で、魔力を体力に置き換えてみます。座っていても寝ていても、常に歩いている──もしくは走っている様な状態だとしたらどうかなんて深く考えなくても分かりました。
当たり前ながら、私の体力なんて知れています。すぐに力尽きて、最終的には倒れてしまうかもしれませんでした。
魔力だって、半永久的に沸いて出る訳ではない筈です。
「……世界の魔力は常に流れている。それを一時的に身体に貯めておく事が出来る素質を持った者が魔力所持者だ。魔物は身体の核に魔力を貯めている。多いか少ないかは本人の素質による」
「それ、通常ならって事でしょ。今はそうじゃないんだよな?」
大した事でないと、ヴォルが説明していました。
それでも納得が出来ないようで、少しキツ目にベンダーツさんが問います。
「……あぁ。世界の魔力の流れが乱れている事が原因だろうが、何かが無理矢理流れを生み出そうとしているように感じる。魔力を持つ全てのものを対象として、持てる力を絞り出そうとしているようだ」
漸く現状を話し出したヴォルでした。
でもその内容は思っていた以上に深刻で──何かとても大変な事態が起きているようです。
「いくらヴォルの魔力値が尋常じゃないとは言え、底無しじゃないんだぞ?何でそんな大切な事をもっと早く言わないんだっ。それ、いつからっ?」
噛みつくように告げるベンダーツさんは、いつの間にか馬車を停めていました。
ウマウマさんを走らせている余裕がなくなったようです。でもこれ程焦るのって、ベンダーツさんがヴォルの事を大切に思っているという証拠でした。
「……サガルットに来る前。クスカムの集落を出て少ししてから、かな」
他人事のように告げるヴォルです。
兄同然のベンダーツさんが本気で怒っている事に、多少なりとも罪悪感を感じている様にも見えました。
「それ、大分前だよね」
「…………そうとも言うか」
「段々酷くなってるの?」
「………………まぁ、な」
御者台の窓から顔を突き出すようにして、ベンダーツさんが馬車内部のヴォルに視線を向けています。
追求の問い掛けに対し、ヴォルが応じる間が長くなっていきました。どうやら今回の怒る役目は、このままベンダーツさんに譲った方が良さそうです。
はい──私、空気を読みますよ?
勿論私だって怒っていました。本当にヴォルって、自分の悪い状況を人に話さないのですから。
アレですか?野性動物的な、弱味を仲間にも見せないとか?もしもそんな事を思っているのだとしたら、私も怒鳴って良いですよね。
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