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第八章
7.仲間を救ってほしいと【5】
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──これ、息を吸っても大丈夫なのでしょうか。
私達は今、周囲が黒い靄に覆われたケストニアの町の外に到着していました。けれども近付くにつれ濃くなった靄は既に視界を埋め尽くしていて、本能的に進める足も遅くなってしまうのです。
新鮮な空気がたくさん欲しくなりますが、見える環境から自然と呼吸が細くなっていました。
「何か、呼吸を止めてしまいたくなるよねぇ」
私と同じ様な事を考えていたらしいベンダーツさんです。
これ程はっきりと視認出来ているのが原因でした。──あ、臭いとかは感じないのですけど。
「瘴気と呼ばれるものだ。毒気とも言うか。短時間なら問題ないだろうが、吸い続けると身体の内から魔に侵される」
淡々とした説明をしてくれるヴォルです。
──えっ!?
それを聞いたベンダーツさんと私が固まりました。その割りには平然とここまで歩いて来れたからというのもあります。
「問題ない。一人一人に強力な結界を張ってある。大型魔物の攻撃を直接受けたとしても、一度は耐えられる強固な物だ」
事も無げに告げるヴォルですが、ベンダーツさんと私の頬は明らかに引きつっていました。
いつの間に結界を──とか大型魔物の攻撃を想定しているのかとか、普通には考えられません。
「何か俺、自分の中の常識が覆りそう」
遠い目をしたベンダーツさんでした。
でも言いたい事は分かる気がします。ヴォルって、彼専用の常識の中で生きてますから。勿論誰しもが少なからずそうなのでしょうけど、力を持つが故に基準が半端ないのでした。
それを分かっている私達も既に基準がずれているのですが。
「どうした、メル」
不思議そうにヴォルに問い掛けられました。
彼に悪気は一切なく、結界を張ってくれているのも私達を守る為です。今の魔力を多く消費してしまう環境の中にあっても、自分より優先して考えてくれる優しい人なのでした。
「いえ、特に何でもないです。人それぞれなんだと、改めて思ったくらいですから」
私は笑顔をヴォルに返します。
そして、私の頬が多少ひきつっていても気にしないでください。常識という壁は思っているより厚いのでした。
「そうか」
腑に落ちなさそうなヴォルですが、大丈夫だと告げる私を見て頷きます。
感覚の違いですから仕方がありません。
そんなこんなのやり取りをしている間にも、町の奥へと歩いて来ました。私達はヴォルの結界のおかげで何事もないのですが、町が本当に大変な事になっています。靄のせいで視界は悪いのですが、結界の周囲はちゃんと確認出来ていました。
ケストニアは見るからに大きな町ですから、道中に行き交っていた人影が当たり前の様にあります。でも、誰一人として動いてはいませんでした。
「凄いねぇ……、本当にこれ程とは思いもしなかったよ」
ベンダーツさんの呆れた様な声が響きます。
私としても、悲しみより唖然とした驚きのほうが強くありました。
「魔法石、ですよね?」
ポツリと私は呟きます。
町の人々は全て──いえ、この町の生物が全てと言った方が良いのでしょうか。犬や猫などの小動物すら、残らず青い石像となっているのでした。
「そうだな」
淡々とした返答が返ってきます。
ヴォルの瞳には一体何がどう映っているのでしょうか。いつもの感情が見えない声に不安になりました。
でも隣で見上げた私には、酷く苦しんでいるように映ります。
「おい、ヴォル。もう少し言い方ってものがあるだろうが」
突然食って掛かるベンダーツさんでしたが、私はそれに答える事が出来ませんでした。
「何が言いたい。俺は初めから生命の反応を否定している」
ヴォルは視線だけベンダーツさんに向けて返します。
分かっています、最初から言われていました。私が勝手に期待して、絶望しているだけなのですから。
私達は今、周囲が黒い靄に覆われたケストニアの町の外に到着していました。けれども近付くにつれ濃くなった靄は既に視界を埋め尽くしていて、本能的に進める足も遅くなってしまうのです。
新鮮な空気がたくさん欲しくなりますが、見える環境から自然と呼吸が細くなっていました。
「何か、呼吸を止めてしまいたくなるよねぇ」
私と同じ様な事を考えていたらしいベンダーツさんです。
これ程はっきりと視認出来ているのが原因でした。──あ、臭いとかは感じないのですけど。
「瘴気と呼ばれるものだ。毒気とも言うか。短時間なら問題ないだろうが、吸い続けると身体の内から魔に侵される」
淡々とした説明をしてくれるヴォルです。
──えっ!?
それを聞いたベンダーツさんと私が固まりました。その割りには平然とここまで歩いて来れたからというのもあります。
「問題ない。一人一人に強力な結界を張ってある。大型魔物の攻撃を直接受けたとしても、一度は耐えられる強固な物だ」
事も無げに告げるヴォルですが、ベンダーツさんと私の頬は明らかに引きつっていました。
いつの間に結界を──とか大型魔物の攻撃を想定しているのかとか、普通には考えられません。
「何か俺、自分の中の常識が覆りそう」
遠い目をしたベンダーツさんでした。
でも言いたい事は分かる気がします。ヴォルって、彼専用の常識の中で生きてますから。勿論誰しもが少なからずそうなのでしょうけど、力を持つが故に基準が半端ないのでした。
それを分かっている私達も既に基準がずれているのですが。
「どうした、メル」
不思議そうにヴォルに問い掛けられました。
彼に悪気は一切なく、結界を張ってくれているのも私達を守る為です。今の魔力を多く消費してしまう環境の中にあっても、自分より優先して考えてくれる優しい人なのでした。
「いえ、特に何でもないです。人それぞれなんだと、改めて思ったくらいですから」
私は笑顔をヴォルに返します。
そして、私の頬が多少ひきつっていても気にしないでください。常識という壁は思っているより厚いのでした。
「そうか」
腑に落ちなさそうなヴォルですが、大丈夫だと告げる私を見て頷きます。
感覚の違いですから仕方がありません。
そんなこんなのやり取りをしている間にも、町の奥へと歩いて来ました。私達はヴォルの結界のおかげで何事もないのですが、町が本当に大変な事になっています。靄のせいで視界は悪いのですが、結界の周囲はちゃんと確認出来ていました。
ケストニアは見るからに大きな町ですから、道中に行き交っていた人影が当たり前の様にあります。でも、誰一人として動いてはいませんでした。
「凄いねぇ……、本当にこれ程とは思いもしなかったよ」
ベンダーツさんの呆れた様な声が響きます。
私としても、悲しみより唖然とした驚きのほうが強くありました。
「魔法石、ですよね?」
ポツリと私は呟きます。
町の人々は全て──いえ、この町の生物が全てと言った方が良いのでしょうか。犬や猫などの小動物すら、残らず青い石像となっているのでした。
「そうだな」
淡々とした返答が返ってきます。
ヴォルの瞳には一体何がどう映っているのでしょうか。いつもの感情が見えない声に不安になりました。
でも隣で見上げた私には、酷く苦しんでいるように映ります。
「おい、ヴォル。もう少し言い方ってものがあるだろうが」
突然食って掛かるベンダーツさんでしたが、私はそれに答える事が出来ませんでした。
「何が言いたい。俺は初めから生命の反応を否定している」
ヴォルは視線だけベンダーツさんに向けて返します。
分かっています、最初から言われていました。私が勝手に期待して、絶望しているだけなのですから。
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