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第九章
≪Ⅵ≫魔法とは想像【1】
しおりを挟む「さて、良い時間潰しが出来ましたね。日が天上に来てちょうど食事時ですから、宿へ戻って食事に致しませんか?」
ベンダーツさんは、それまでのやり取りを全く気にしていないような口調でした。
先程まで賊さん方にダメ出しをしていたからか、何だか話方まで少し緩くなっている気がします。
でもそれよりも、言われてみて初めて私は空腹に気付きました。
「分かった」
お腹に手を当てた私に気付いたのか、ヴォルもベンダーツさんに賛同します。
勿論私にも異論はありませんでした。
「そう言えば、魔力で網のような物も作れるのですね」
宿へ三人で向かう途中、私は先程のヴォルの魔法で気になっていた事を問い掛けます。
風という不可視な物質の筈ですが、私には細かに渦を巻いた網目状の物理的な力に見えました。
「魔法とは想像だ。思考の中で形や威力を作り、魔法言語で現実の影響を与えるものとする」
ヴォルはいつもながら、事も無げに答えてくれます。
ですが魔法を使えない私にとって、創造が力だなんて凄すぎて理解不能でした。以前にヴォルが否定していましたが、本当に何でも出来るのではないかと思ってしまいます。
「それでも、それらの力は契約する精霊によるのですよね。ヴォルティ様は別格でしょうが、他の魔力所持者の場合は都合良くあれもこれもと実際に効果を持つ魔法に出来る訳ではないと思われます」
私の考えを訂正するかのように、ベンダーツさんは静かに告げました。
忘れがちですが、通常は魔力所持者さん一人に精霊さん一人なのです。
「では火の魔力を持っていても、火を使った魔法が何でも出来る訳ではないのですか?」
「あぁ。あくまでも攻撃特化なだけであって、力の強いと言われる魔力所持者でも使える種類は片手で数える程度だ。多数の魔法を使う必要性がないのか、そもそもの魔力が足りないのか」
「大半が後者でしょうね。ヴォルティ様の底が見えない魔力値と比べては幾分可愛そうですが、魔物討伐においても魔法のみで戦闘が行える訳ではないのです。通常は弓矢の如く、魔力は消耗品であると思っていただいた方が分かりやすいかもしれません」
ヴォルは自身ではない他の魔力所持者の方へ想像を膨らませているようでした。逆にベンダーツさんは淡々と、本来ならばあるべき能力の限界を告げます。
消耗品の魔力──使えばなくなるとなると、確かにそればかりに重点を置けないのは理解出来ました。魔力所持者の魔物討伐とはいえ、魔法だけではなくて武器を使った戦闘を行わざるを得ないようです。
「それでしたら、あの魔法無力化の魔法石は結構な品だったのですね」
対魔力所持者とするならば、根本的に圧倒的力となる魔法攻撃を無くしてしまえる魔法石は危険な物かもしれないと思いました。
ヴォルにあっという間に破壊されてしまいましたが、他の魔力所持者さんではそうもいかないかもしれません。
「そうだな。俺としてはもう少し強化してほしいところだ。道具として使われる魔法石は、根本的に特定魔力を吸収させた物。推測するならば、使用者によってあれ以上の効果を発揮出来るのかもしれない」
「ちょっと待って下さいっ。魔法無力化の魔法石があったのですか?」
ヴォルと私の話を聞き、驚きのベンダーツさんでした。
その反応に逆に驚いてしまいましたが、賊さん達が魔法石を使っていたのは初めの内です。騎士団を呼びに行ったベンダーツさんは、あの時その場にいませんでした。
「三度で壊れたな」
「壊れたって……。いえいえ、そもそもヴォルティ様の魔法を普通に受け止めるだけで凄い代物ですよ。簡単に破壊しないでください、勿体無い。だいたい無力化魔法を持った魔力所持者自体が珍しいのですから、魔法石を調べれば何か分かったかもしれないではないですか」
つまらなさそうに答えたヴォルでしたが、ベンダーツさんはとても残念そうです。
無力化魔法が特殊である事を知りませんでした。でもそうだとしたら、あの賊さんはどうやって手に入れたのでしょうか。
──やっぱり元々は誰かの物だった、とかであると想像は出来ますが。
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