「結婚しよう」

まひる

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第九章

7.共にありたい【4】

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「メルが何かする必要はない。共にいてくれさえすれば良い」

 私の気分が降下した事に気付いたのか、ヴォルから優しい言葉と視線が向けられました。
 ヴォルはいつもこうやって私をかばってくれます。でもそれではダメなのではないかと、私は思い始めていました。
 お城で教わっていた薬草の知識も、基本的にベンダーツさんがいるので役立ってもいません。そもそも彼等が怪我をする前提での知識で、この場合役に立たないのは喜ぶべき事でした。

「あの、私も何か皆さんの役に立ちたいです。一緒に旅をしているのですから、仲間として力となる行動がしたいです」

 私は拳を握る勢いで告げます。
 セントラルを出発してから、どれくらいの時が過ぎたのかは分かりませんでした。
 でもこれだけは言えます。私は今の『役立たず』のままでは嫌でした。

「……何が出来ますか?」

 ベンダーツさんの視線が静かに向けられます。
 私に何が出来るか──正直に言って分かりませんでした。それでも──。

「掃除でも洗濯でもしますっ。お料理はベンダーツさんに負けてしまいますが……、切ったり炒めたり出来ます。お茶碗だって洗いますっ。何でも……っ」

 ここで突然口を塞がれました。──驚きのあり一瞬パニックになりましたが、この手はヴォルのものです。
 私は混乱してパチパチとまばたきを繰り返しました。何故口を塞がれたのか、分からなかったからです。

「はい、ここはヴォルティ様が正解ですね」

 わずかに呆れたようなベンダーツさんでした。小さく溜め息と共に告げられます。
 そして彼はヴォルの行動の意味を分かった上のようでした。更にはそれが正しいのだそうです。
 私の頭の中に疑問符がたくさん浮かびましたが、続けてベンダーツさんがその答えを教えてくれました。

「女性が『何でもします』と軽々しく口にすべきではありません。しかも相手は異性ですよ」

 静かにさとすようにベンダーツさんから告げられます。
 違う驚きが私を襲いました。──その混乱は一瞬で、すぐにベンダーツさんの言いたい事が理解出来ました。
 勿論私はベンダーツさんが男性である事は知っていますが、そう言う意味で言ったのではないのです。

「えぇ、私も男です。お忘れでしたか?」

 優しげなベンダーツさんの問い掛けに、私はヴォルに口元を押さえられた状態で可能な限り首を横に振りました。

「それならば結構です。メルシャ様はご自分の見目や周囲からの目を気にされていないようなのでお伝えしておきますが、貴女様はヴォルティ様と婚儀を挙げてから大変お綺麗になりました。あ、お世辞や冗談ではありませんよ?女性は恋をすると綺麗になると言いますからね」

 緩やかな弧を描くベンダーツさんの口元を、私は呆然とした状態で見つめます。
 私が──綺麗?でも恋をすると綺麗になるというのを、村では何度も聞いた事がありました。

初見しょけん素朴そぼくな女性だと思いました。接するうちに、れた所のない裏表がない女性なのだと気付きました」

「メルは俺のだ」

「分かっていますよ、そんなに睨まないで下さい。。えぇ……そういうメルシャ様だからこそ、ヴォルティ様に寄り添えるのだと思います」

 何だか珍しく誉められている気がします。ヴォルは不機嫌そうですが、ベンダーツさんは柔らかな眼差しでした。
 しかしながら普段から誉められ慣れていないので、あまり手放しで誉められるとどう対応をして良いのか分からなくなります。
 真面目な顔のベンダーツさんを前に、私はどうしても苦笑いになってしまうのでした。
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