445 / 515
第九章
8.こんな物……【5】
しおりを挟む
「材料はこれくらいだね。後は煮込むだけっと。簡単だろう?」
ベンダーツさんから薬草粥の作り方を教わっていた私ですが、聞いた事もないような材料が幾つか交ざっていました。
私は書き控えた魔物の皮をまじまじと見つめます。──でもこれは、ベンダーツさんの様々な試みによる成果なのでした。懸命に幼いヴォルに食べてもらおうと、試行錯誤をした結果なのだと分かります。
「ありがとうございます、マークさん」
私はレシピを胸に抱くようにして、ベンダーツさんに改めて御礼を告げました。
小さいヴォル分の御礼なんて烏滸がましい事は言えませんが、色々と含めて心から感謝を伝えます。
「何だか照れるなぁ……。大丈夫だって、俺は自分のやれる事をしているだけだからさ」
「はい、私も出来る事を頑張ります」
「うん、メルにしか出来ない事もたくさんあるからさ。ってか、船酔いが吹き飛んだみたいだね」
単に私が元気になったような言い方ですが、先程の薬草粥の材料に酔い止めの薬草が入っていたのを私は気付いていました。
これでも私は、ベンダーツさんから直々に薬草の知識を教えてもらったのです。味からだけでも、何の薬草を使ったか知っている範囲でなら判別出来るのでした。
然り気無いベンダーツさんの心遣いに感謝なのです。
「ヴォルはどうですか?」
「俺の場合は魔力を抑えれば問題ない。倦怠感はあるが、船内で行動する分には支障がない程度には回復した」
ベッドで半身起こしたままのヴォルでしたが、先程のような顔色の悪さはないです。
やはり食事を何も取っていない事で、魔力消費が著しかったのだと思われました。
「良かったです。私は大丈夫ですから、ヴォルはご自分の回復を優先にさせてくださいね?」
立ち上がっている私を見れば、さすがにもう結界を張ろうとは思わないでしょう。
これからも船酔いをしない訳ではないでしょうが、今の私はこの程度の揺れに違和感を感じていませんでした。
「分かった。次に魔力を使う時は、先に魔封石を破壊する事にする」
「ちょっ、やめてくれよっ!?修理費用の請求が来るだろう?魔封石は高価なんだから、簡単に傷物にしないでくれよぉ」
慌てたベンダーツさんが止めます。
ですがいくらヴォルでも、さすがに船の床に敷き詰められた魔封石を全て撤去する事など出来ないと思いました。
実際、船にはたくさんの人が乗っていますから。それらの犠牲を考える事なく、ヴォルが無茶をする筈もありません。
「この船は魔物に襲われた時はどうするつもりだ」
「あ、魔法が使えないから?大丈夫だよ、元々関係者に魔力所持者は入ってないし。この船の防御は、攻撃しない事なんだ」
不思議そうなヴォルの問い掛けに、ベンダーツさんは笑顔で返しました。
しかしながら、私は戦わない事が守る事である理由が分かりません。ベンダーツさんは当たり前のように告げましたが、攻撃こそが最大の防御ではないかと思うのでした。
「魔封石が魔物を寄せないと言う事か」
「そう言う事さ。魔力を感じるから、魔物がそれを狙って集まってくる。それならば、魔力自体を消してしまえば良いだろうって考えで作られたんだ」
「……迷惑だ」
「アハハ、ヴォルはそうかもね。でも、魔力を持たない人間の方が多いからさ。必然的にそういった結果になっただけだよ」
ベンダーツさんの言葉の真意にヴォルが答えると、私にも分かるように説明してくれます。
嫌そうな顔をしたヴォルに対し、ベンダーツさんは楽しそうに笑っているだけでした。ヴォルには申し訳ないですが、魔力を持つ人の方が全体数は少ないのが事実です。
魔力に魔物が寄せられるのは自らの力──餌とする為で、それを感じさせなければ出会わないとの事でした。少々強引な考えにも思えますが、実際にこの船が運航を開始してからは魔物に襲われていないそうです。
ベンダーツさんから薬草粥の作り方を教わっていた私ですが、聞いた事もないような材料が幾つか交ざっていました。
私は書き控えた魔物の皮をまじまじと見つめます。──でもこれは、ベンダーツさんの様々な試みによる成果なのでした。懸命に幼いヴォルに食べてもらおうと、試行錯誤をした結果なのだと分かります。
「ありがとうございます、マークさん」
私はレシピを胸に抱くようにして、ベンダーツさんに改めて御礼を告げました。
小さいヴォル分の御礼なんて烏滸がましい事は言えませんが、色々と含めて心から感謝を伝えます。
「何だか照れるなぁ……。大丈夫だって、俺は自分のやれる事をしているだけだからさ」
「はい、私も出来る事を頑張ります」
「うん、メルにしか出来ない事もたくさんあるからさ。ってか、船酔いが吹き飛んだみたいだね」
単に私が元気になったような言い方ですが、先程の薬草粥の材料に酔い止めの薬草が入っていたのを私は気付いていました。
これでも私は、ベンダーツさんから直々に薬草の知識を教えてもらったのです。味からだけでも、何の薬草を使ったか知っている範囲でなら判別出来るのでした。
然り気無いベンダーツさんの心遣いに感謝なのです。
「ヴォルはどうですか?」
「俺の場合は魔力を抑えれば問題ない。倦怠感はあるが、船内で行動する分には支障がない程度には回復した」
ベッドで半身起こしたままのヴォルでしたが、先程のような顔色の悪さはないです。
やはり食事を何も取っていない事で、魔力消費が著しかったのだと思われました。
「良かったです。私は大丈夫ですから、ヴォルはご自分の回復を優先にさせてくださいね?」
立ち上がっている私を見れば、さすがにもう結界を張ろうとは思わないでしょう。
これからも船酔いをしない訳ではないでしょうが、今の私はこの程度の揺れに違和感を感じていませんでした。
「分かった。次に魔力を使う時は、先に魔封石を破壊する事にする」
「ちょっ、やめてくれよっ!?修理費用の請求が来るだろう?魔封石は高価なんだから、簡単に傷物にしないでくれよぉ」
慌てたベンダーツさんが止めます。
ですがいくらヴォルでも、さすがに船の床に敷き詰められた魔封石を全て撤去する事など出来ないと思いました。
実際、船にはたくさんの人が乗っていますから。それらの犠牲を考える事なく、ヴォルが無茶をする筈もありません。
「この船は魔物に襲われた時はどうするつもりだ」
「あ、魔法が使えないから?大丈夫だよ、元々関係者に魔力所持者は入ってないし。この船の防御は、攻撃しない事なんだ」
不思議そうなヴォルの問い掛けに、ベンダーツさんは笑顔で返しました。
しかしながら、私は戦わない事が守る事である理由が分かりません。ベンダーツさんは当たり前のように告げましたが、攻撃こそが最大の防御ではないかと思うのでした。
「魔封石が魔物を寄せないと言う事か」
「そう言う事さ。魔力を感じるから、魔物がそれを狙って集まってくる。それならば、魔力自体を消してしまえば良いだろうって考えで作られたんだ」
「……迷惑だ」
「アハハ、ヴォルはそうかもね。でも、魔力を持たない人間の方が多いからさ。必然的にそういった結果になっただけだよ」
ベンダーツさんの言葉の真意にヴォルが答えると、私にも分かるように説明してくれます。
嫌そうな顔をしたヴォルに対し、ベンダーツさんは楽しそうに笑っているだけでした。ヴォルには申し訳ないですが、魔力を持つ人の方が全体数は少ないのが事実です。
魔力に魔物が寄せられるのは自らの力──餌とする為で、それを感じさせなければ出会わないとの事でした。少々強引な考えにも思えますが、実際にこの船が運航を開始してからは魔物に襲われていないそうです。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
さよなら、私の初恋の人
キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。
破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。
出会いは10歳。
世話係に任命されたのも10歳。
それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。
そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。
だけどいつまでも子供のままではいられない。
ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。
いつもながらの完全ご都合主義。
作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。
直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。
※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』
誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。
小説家になろうさんでも時差投稿します。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる