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第十章
1.思うようにいかない【5】
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「もう身体は平気なのか。横にならなくて良いか」
ヴォルに肩を抱かれ、引き寄せられます。
不安げな声音が色っぽいのですが、ここで悶えては変態っぽいので我慢でした。
なるべく平生を装いつつ、ヴォルを見上げて答えます。
「あ、はい」
何とか笑みを返せました。
と言うか体調不良ではなく、先程はヴォルの笑顔に当てられただけなので──などとは言えません。
「無理しないでよね、メル。君が倒れたりしたら、また俺がヴォルを宥めなきゃいけないのが大変なんだからさ」
「煩い」
ムッとするヴォルと、からかいを含んだベンダーツさんでした。
想像するに、いつもの過保護な彼が取り乱してしまうと事なのでしょう。でも私はそういうヴォルも普段見せてくれない分、新鮮な感じで好きでした。
──とても口には出して言えませんが。
「とにかく、部屋の外に出るのはヴォルか俺と一緒の時にしてね?狂暴な奴じゃなくても、男は全員危ないからさ」
「お前も男だろ」
「当たり前じゃん。でも俺はまだ死にたくはないからね。ヴォルのメルには手を出さないよ?」
笑顔で言って退けるベンダーツさんは、ヴォルの煽りどころを熟知しています。
本気で怒る手前の、それでもムッとする以上の感情を刺激する事が得意のようでした。
「お前……」
「あ、ほら。そんな怖い顔をしてると、メルに避けられちゃうぞ?」
ほら、また笑顔でヴォルをからかいます。
でもこれ、ヴォルの感情を揺さぶる方法の一つなのではないかと最近思い始めました。結果的に、ヴォルの感情表現が豊かになってきているのは事実なのですから。
「……メル、コイツを追い出すか?」
「あ……はは……」
ヴォルが私に確認をしてきますが、本気度合いが強い気がするのです。
けれども実際、完全に突き放す事はしないヴォルでした。何だかんだ言いつつも、仲の良い二人です。
「ほら……マークさんがいないと、安心して食べられる美味しい食事に困るではないですか」
今度は私がヴォルを宥める事にしました。
本人を前に、こんな事を言うのも失礼かもしれません。でもベンダーツさんの作るお城の料理的な美味しいご馳走を食べ続けていたら、誰だって同じように思うと予想されました。
この魔封石を使っている船内で、根本的にヴォルは魔法を使えません。そうなると、必然的に食堂へ行かざるを得ないのです。
しかしながら食堂は色々な人がくるので、この目立つ二人にどういう対応がされるのかかなり不安でした。
「食事……。そうだな」
「えぇっ!?俺って、食事係?……そりゃないよぉ、酷いよぉメルぅ」
ブツブツと呟きながらふて腐れてしまったベンダーツさんです。そんな様子を見て、私は自然とヴォルと顔を見合わせて笑いました。
本当に、自分だけの考えや気持ちだけではどうにもならない事はたくさんあります。それでもこの旅で、周りの人からあたえられる感情や思いというものはかけがえのないものだと知りました。
一人では予測のつかない事が本当に多いのです。笑い、涙──怒りでさえ、とても愛おしい感情でした。
私はこの様な自分を知り、これからも大切にしたいと思ったのです。
ヴォルに肩を抱かれ、引き寄せられます。
不安げな声音が色っぽいのですが、ここで悶えては変態っぽいので我慢でした。
なるべく平生を装いつつ、ヴォルを見上げて答えます。
「あ、はい」
何とか笑みを返せました。
と言うか体調不良ではなく、先程はヴォルの笑顔に当てられただけなので──などとは言えません。
「無理しないでよね、メル。君が倒れたりしたら、また俺がヴォルを宥めなきゃいけないのが大変なんだからさ」
「煩い」
ムッとするヴォルと、からかいを含んだベンダーツさんでした。
想像するに、いつもの過保護な彼が取り乱してしまうと事なのでしょう。でも私はそういうヴォルも普段見せてくれない分、新鮮な感じで好きでした。
──とても口には出して言えませんが。
「とにかく、部屋の外に出るのはヴォルか俺と一緒の時にしてね?狂暴な奴じゃなくても、男は全員危ないからさ」
「お前も男だろ」
「当たり前じゃん。でも俺はまだ死にたくはないからね。ヴォルのメルには手を出さないよ?」
笑顔で言って退けるベンダーツさんは、ヴォルの煽りどころを熟知しています。
本気で怒る手前の、それでもムッとする以上の感情を刺激する事が得意のようでした。
「お前……」
「あ、ほら。そんな怖い顔をしてると、メルに避けられちゃうぞ?」
ほら、また笑顔でヴォルをからかいます。
でもこれ、ヴォルの感情を揺さぶる方法の一つなのではないかと最近思い始めました。結果的に、ヴォルの感情表現が豊かになってきているのは事実なのですから。
「……メル、コイツを追い出すか?」
「あ……はは……」
ヴォルが私に確認をしてきますが、本気度合いが強い気がするのです。
けれども実際、完全に突き放す事はしないヴォルでした。何だかんだ言いつつも、仲の良い二人です。
「ほら……マークさんがいないと、安心して食べられる美味しい食事に困るではないですか」
今度は私がヴォルを宥める事にしました。
本人を前に、こんな事を言うのも失礼かもしれません。でもベンダーツさんの作るお城の料理的な美味しいご馳走を食べ続けていたら、誰だって同じように思うと予想されました。
この魔封石を使っている船内で、根本的にヴォルは魔法を使えません。そうなると、必然的に食堂へ行かざるを得ないのです。
しかしながら食堂は色々な人がくるので、この目立つ二人にどういう対応がされるのかかなり不安でした。
「食事……。そうだな」
「えぇっ!?俺って、食事係?……そりゃないよぉ、酷いよぉメルぅ」
ブツブツと呟きながらふて腐れてしまったベンダーツさんです。そんな様子を見て、私は自然とヴォルと顔を見合わせて笑いました。
本当に、自分だけの考えや気持ちだけではどうにもならない事はたくさんあります。それでもこの旅で、周りの人からあたえられる感情や思いというものはかけがえのないものだと知りました。
一人では予測のつかない事が本当に多いのです。笑い、涙──怒りでさえ、とても愛おしい感情でした。
私はこの様な自分を知り、これからも大切にしたいと思ったのです。
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