異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1544 勝利の天秤が傾いたのは

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「な、なんだよアレ!?」

リカルド・ガルシアは、今自分が目にしている光景が信じられなかった。
火の玉と言うには大き過ぎるソレは、赤々と燃える太陽の如きエネルギーの塊だった。
あんなものが打ち付けられれば、辺り一帯は火の海と化すだろう。逃げられるとも思えない。この場の全員が焼け死ぬだろう。そう思わせる程に圧倒的な熱を発していた。

「う、熱い・・・なにコレ!?」

あまりの熱さにユーリは眉間に強くシワを寄せた。すでに額には大粒の汗が浮かんでいる。
突然現れた巨大な火の玉とは、少なくとも数百メートルは距離があった。
だがそれでも吹き付けてくる風の熱さに、肌に焼かれそうな痛みを感じる程だった。

この巨大な火の玉が発する熱波を浴びせられて、クインズベリー軍も帝国軍も剣を下ろしていた。
すでに帝国軍第一師団は壊滅寸前であり、クインズベリー軍の勝利が決したといってもいい状況ではあったが、力こそが全ての帝国兵達は降伏などしない。最後の一人まで戦う気概を見せていた。
だが、その帝国兵達が剣を下ろしてしまうほど、あの火の玉は尋常ではないエネルギーを放ち、辺り一帯を焼き焦がしていた。



「ユーリ、やべぇから下がってろ!」

リカルドはユーリの肩を掴んで後ろに押すと、自分の体を盾にするようにユーリの前に立った。

「リカルド、アレなに!?」
「知らねぇよ!俺が聞きてぇわ!」
「なんで分からないのよ!」
「はぁぁぁぁぁ!?」


「二人とも、ちょっと落ち着きなよ」

言い争う二人の前に青く輝く結界が出現した。呆れたように息をついて、近づいてきたのはケイトだった。二人の肩に手を乗せると、はいはい離れて離れて、と言って引き離す。

「おまっ、ケイト、んだよ!?」

「リカルド、結界を張ったからだいぶ楽でしょ?」

突然横から入られて文句を言おうとするリカルドだったが、ケイトに言われて気が付いた。
あの焼けるような熱さがかなり和らいでいるのだ。

「本当だ。ケイトすごい。ありがとう、助かった」

ユーリも表情が和らいだ。額には汗で濡れた髪の毛が貼り付いていて、肌も赤くなっていた。
あのまま熱波を浴び続けていたら倒れていただろう。
ケイトの張った結界は、魔法や物理攻撃を防ぐ結界とは異なり、熱や寒気を防ぐ結界である。これはかついてウィッカーと二人で、セインソルボ山に登った時にも使った結界だった。


「ケイト、お前店長の護衛はいいのかよ?」

「ああ、それは大丈夫。店長を狙ってた帝国兵は全部倒したから。それに軍の人らにも護衛を引き継いでおいたからさ。それに私は店長に言われてこっちに来たんだ、前線で戦ってるみんなを結界で護ってくれって。アレさ、かなりヤバイよね?」

スっと目を細めて指を差す。そうあの巨大な火の玉だ。この距離であれだけの熱波を浴びせられるのだから、相当な熱量だ。あんなものがぶつけられれば、いったいどれほどの・・・・・

「・・・リカルド、あっちにはレイチェルが行ったから、多分レイチェルが戦ってるんだよ。あんた加勢してきなよ」

火の玉を指さしながらそう告げると、リカルドは一瞬ぽかーんとした顔を見せた。
そしてすぐに激怒した。

「はぁぁぁぁぁぁ!?おまっ、なに言ってんだよ!?あそこに行けって!?俺に?ふざけんなよ!こんだけ離れててもヤベェ熱さなのに、あそこに行ったら死ぬだろ!?焼け死ぬだろ!」

「はぁ~・・・いいから行きなって。あんた店長との修行で、土の精霊の力をけっこう使えるようになったんでしょ?精霊の力があれば何とかなるんじゃない?」

「はぁぁぁぁぁぁ!?おまっ、簡単に言ってんじゃねぇよ?なんとかってなんだよ!?何ともならなかったらどうしてくれんだよ!?お前が行けよ!」

「あーもう、本当にうるさい。大丈夫だって、あんたやればできる子でしょ?アタシはここでできるだけ多く人を護るから、あんたが行くしかないんだよ。それにあんたけっこう速いじゃん?マジで危ないかもしれないからさ、早く行ってレイチェルを助けてあげて」

ふいに真顔で話されると、リカルドもぐっと言葉に詰まった。
そしてもう一度あの巨大な火の玉に目を向ける。

「・・・チッ、頼れる男はつらいぜ」

ケイトとユーリに背を向けて、短く言葉を言い捨てると、リカルドは地面を蹴って結界から飛び出した。
砂場とは思えない程に速く、二人の目に映るリカルドは、あっという間に豆粒のように小さくなってしまった。


「・・・リカルド、頑張って」

聞こえるはずはない。それは分かっているが、ユーリは見えなくなったリカルドの背中に祈った。





「貴様の骨一本もこの世には残さん!焼け死ぬがいいーーーーーーーーッツ!」

叫び声と共にジャック・フレイジャーが両手を振り下ろすと、頭上で轟々と燃え上がっていた太陽の如き火の玉が、レイチェルに向かって撃ち放たれた!

火の精霊の力の結晶であるソレは、食らえばジャックの言葉通り、骨の一本も残らずに焼き尽くされるだろう。躱そうにも、これが地上にぶつかれば結局辺り一帯は火の海と化すのだ。逃げ場など最初からない。しかしレイチェルは諦めなかった。覚悟を決め真向から迎え撃つ!


「ジャックフレイジャーーーーーーーーーーッツ!」

私は負けない!私は勝つ!

レイチェルの黒い瞳には断固たる決意が満ちていた。断固たる覚悟は闘気を燃え上がらせ、限界を超えた力を引き出す。
全身から発せられる光り輝く闘気、その全ての力を右手に集約させ、ガラスのナイフを振り抜いた!


精霊の炎だろうと切り裂いてみせる!受けてみろ!これが私の全身全霊だ!


それは黄金の光を放つ波動だった。



「なにッ!?」

あれは、光か!?真空波とは目には見えない衝撃波だったはず、なぜ光輝いている!?
しかも肌で感じるこの威力は、最初の一撃よりもはるかに強い!この女、これほどの力を隠し持っていたのか!?


「オォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーッツ!」

そうだ、これはただの真空波ではない。右手に集約させた闘気を、真空波に乗せたんだよ!
火の精霊だろうがなんだろうが、全部まとめて吹っ飛ばしてやる!

火の精霊の力が宿った巨大な火の玉と、レイチェルの闘気を乗せた黄金の真空波が衝突した!
その瞬間押し潰されそうな衝撃と、耳をつんざく爆発音が鳴り響き大気を震わせた。
無理矢理頭を押さえ付けられるような強烈な圧力に、二人の戦いを見つめていた両軍の兵達は次々と倒れていった。


「ぐ!ぬおぉぉぉぉぉぉおおおおおーーーーーーッツ!」

こ、このパワーは、ま、まさか、こんな!?ご、互角だと!?信じられん、精霊の炎と互角にぶつかり合っている!

ビシビシと肉体を打つ鋭くも強い衝撃が、ジャックの肉体を打っては切っていく。
裂けた皮膚から流れる血が、ジャックの色黒の肌を赤く染める。


「貫けぇーーーーーーーーッツ!」

いける!私の闘気と真空波は精霊にも負けていない!このままぶち抜いてやる!
大きさでは比較にもならない、だが私の真空破は真向からこの巨大な精霊の炎と競り合っている。
だったらいける!このまま突破してやる!

ぶつかり合うエネルギーの衝撃は、当然レイチェルの体も打ち付けていた。
だが頬が裂けようが、腹を打たれようが、レイチェルは腕を下ろさなかった。そう、残った力の全てをぶつけるんだ、気力を振り絞れ!最後の一滴まで絞り出せ!そして勝つ!


歯を喰いしばり、黄金の真空波へと闘気を送り込む!
拮抗していた力のぶつかり合い、勝利の天秤は、徐々にレイチェルに傾き出した。

どちらも勝ちたいと思う気持ちは同じである。
だが己の力を信じたレイチェルと、精霊の力に懸けたジャック、最後の最後により強い気持ちを引き出せるのは自分自身である。決着を精霊に委ねたジャックには、限界を超える事はできなかった。


「ぐ、がぁぁぁぁぁぁーーーーーーッツ!火の精霊よ!もっとだ!もっと力を出せ!このままでは・・・!」

押し返される!

そう感じ取った時には、再び押し戻す事はできなかった。
火の精霊が作り出した火の玉は、このまま地上にぶつければ首都ベアナクールでさえ、焼き滅ぼす事ができるくらい強大だった。それ程のパワーを持った熱エネルギーの塊が、押し負けているのだ。

「こ、こんな、バ、バカなぁぁぁぁぁーーーーーッ!」

ひ、火の精霊が、混乱している!だめだ!これでは炎を維持する事が・・・ッ!

「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・ッツ!」

闘気を乗せた黄金の真空波が、精霊の火の玉に深く食い込んだ。精霊の力をもってしても、レイチェルの闘気を潰す事はできなったのだ。
火の玉の中心部が抉られ破壊されると、もはやその形状を保つ事はできなかった。集約された力が崩壊し消し飛ばされると、黄金の真空波はそのままジャック・フレイジャーをも飲み込み、空へと消えていった。


「・・・私の、勝ちだな」


空から降り注ぐ残り火が砂地を焦がす。

全てを出し尽くしたレイチェルは、崩れるように膝を付いた。
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