異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1558 動き出した男

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「な!?う、腕がぁぁぁッ!」

帝国兵の顔が驚きと恐怖で歪んだ。白い刃で斬られた右腕が、パキパキと音を立てながら氷で固められていくからだ。
そして次の瞬間には、己の首がへし折れる音が脳に響き、自分が何をされたのか分からないまま砂の上に崩れ落ちた。

「フン」

ラクエル・エンリケスは左脚を蹴り抜くと、つま先を地面に刺すようにして、ザックザックと鳴らした。
前線に追いついてから、圧倒的なスピードで帝国軍をかく乱し、卓越したナイフ術と鋭い技で帝国兵を沈めていった彼女は、仲間であるクインズベリー兵と治安部隊ですら息を飲むほどだった。


「・・・レイチェル並とは聞いていたが、なるほど、確かに」

治安部隊隊長補佐のモルグ・フェンテスは、感嘆の声を漏らした。
たった一蹴りで帝国兵の首をへし折った、鋭く重い蹴りにも目を奪われるが、身のこなしにナイフ捌きもずば抜けていた。

「俺も負けていられないな」

ラクエルの動きに感心はしたが、フェンテスはすぐに切り替えて正面に向き直った。
正面から剣を掲げて向かって来る帝国兵に対して、フェンテスはぐっと姿勢を低くして入り込んだ。
それは対峙する敵が、一瞬フェンテスを見失う程の低さだった。膝よりも低い位置に頭を置き、両手を砂の上に着くと独楽のように体を回した。

「なッ!?」

遠心力を乗せた両足が、帝国兵の足を刈り取るように払い飛ばす!

「ハァッ!」

地面に倒れた帝国兵の背中に、深くナイフを突き立てる!
流れるような動きで一人仕留めると、フェンテスはそのまま二人目、三人目と、帝国兵達を斬り捨てて行った。

「へっ、フェンテスのヤツ、気合い入ってんじゃねぇか!」

治安部隊隊長ヴァン・エストラーダも、フェンテスの戦いぶりを見て闘争心に火が付いた。

「死ねぇぇぇーーーッ!」

ヴァンの背後から帝国兵が、振り被った剣をその頭目掛けて振り下ろす!

 「へっ!あまいな!」

振り向く事もなく身を捻ると、ヴァンは背後からの剣を紙一重で躱した。まるで背中に目が付いているかのように、剣の軌道を完全に見切っていた。

「なにっ!?」
「足音に鎧のスレる音、殺気もだだ漏れだ、お前全然ダメだな」

帝国兵の剣が地面に刺さると同時に、ヴァンは帝国兵の首を斬り裂いていた。

「が、ゴフッ・・・」

血を吐き出して倒れる帝国兵を一瞥すると、ヴァンは右手に持ったナイフをクルリと回し、刃に付いた血を地面に向けて払った。


「さてと、帝国兵どもにクインズベリーの強さを見せてやるか?なぁ、エルウィン」

ヴァンが顔を向けた先には、治安部隊隊員エルウィン・レブロンの姿があった。

「はい!ヴァン隊長!」

声を大にして返事をすると、エルウィンは腰には差していた大振りのナイフを取り出した。
少し短めの無造作にフワっとした金色の髪、まだあどけなさの残る顔は優し気で、戦いとは無縁にすら感じられる。だがその目には戦場に立つ覚悟を固めた者だけが持つ、断固たる強さがあった。

いい返事だ。

ヴァンはエルウィンの成長に頼もしさを感じていた。
自分が治安部隊隊長に就任してから二年余り、できる限りの事は教えて来たつもりだ。
そしてエルウィンは乾いた砂が水を吸収するように、知識も技もみるみる飲み込んで自分のものとしていった。
二年前は150cm足らずだった身長も10cm以上伸び、逞しさを感じるくらいに筋肉も付いた。

こいつは将来の隊長の座を狙える器だ。そしてこの戦いで更なる成長を遂げるだろう。
そう強く思えるくらい、ヴァンはエルウィンに可能性を感じていた。
だからこそ数多い治安部隊隊員の中から、エルウィンを隣に置いたのだ。


「よし」

エルウィン、俺について来れるか見てやる。


ヴァンはナイフを掲げると、帝国軍に向かって突き付けた。

「治安部隊!突撃だーーーーーッツ!」

ヴァンの号令で、治安部隊全隊員が走り出した!




ここまではクインズベリー軍が優勢に戦いを進めていた。

クインズベリー軍と帝国兵軍の戦力は互角だったが、大陸一の軍事国家であるブロートン帝国の兵士を相手に、クインズベリー軍の兵士も騎士団も治安部隊も、一歩も引かず勇敢に戦っていた。

では、互角であるならばどこで天秤が傾いたのか?それは主力の差だった。
ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアン。魔導剣士ラクエル・エンリケス。治安部隊隊長のヴァン・エストラーダ。隊長補佐のモルグ・フェンテス。彼らは帝国軍第七師団の部隊長クラスをも、苦とせずに倒してのけた。このまま一気にいけると思えるくらい、クインズベリー軍には勢いがあった。

だが一人の男によって、戦況はあっという間にひっくり返される事になる。


「へぇ、思ったよりやるじゃないか。けどさ、あんま調子に乗るなよ?」

第七師団副団長であるアンジェロ・アンドゥハスが、深紅のマントをはためかせながら前に出た。

「ア、アンジェロ副団長?出られるのですか?」

「情けないなぁ、たかがクインズベリー相手にここまでやられちゃって。帝国の名折れだよ。お前達は邪魔だから下がってろよ」

突然前に現れたアンジェロに気が付き、兵達にざわめが起こる。だがアンジェロは彼らの反応など気にも留めず、面倒そうに眉を寄せ、追い払うように手を振った。

「まったく、凡人共は地面に這いつくばっていればいいのにな」

吐き捨てるように言い放つと、アンジェロは前方で戦っているクインズベリー軍に目を向けた。


「しかたねぇから、ちょっと遊んでやるか」


歪んだ笑みを浮かべ、アンジェロ・アンドゥハスが動きだした。

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