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【391 樹々に囲まれた小屋の中で ①】
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時は少しさかのぼる。
ブレンダンとクラレッサが、セシリアから逃れるために川に飛び込んだ後・・・・・
「・・・う・・・・・」
「・・・あ、おじいさん、気が付きましたか?」
暗く閉ざされていた部屋の中に、光が差し込んでくるように意識の扉が開かれる。
どうやら眠っていたようだと、朧気ながら思考が戻ってくる・・・・・
重い瞼を開けると、自分の顔をじっと覗き見る黒い瞳と目が合った。
垂れさがる長く白い髪が顔にあたり、くすぐられるような刺激に意識がハッキリしてくる。
「・・・クラレッサ・・・ワシは、いったい・・・」
「おじいさんは私と一緒に川へ飛び込みました。そしてそのまま流されました。ここは首都バンテージ近くの森の小屋です」
ブレンダンの意識が戻った事を見ると、クラレッサは上半身を引いて覗き込んでいた顔を戻す。
ニコリと優しい笑みを浮かべると、簡単に現在の状況を口にしながら、誘導するように周りに顔を向ける。
ブレンダンも上半身を起こし、クラレッサの顔の動きに合わせるように首を回して、辺りに目を向けてみた。
確かに自分は今小屋にいるようだ。しかし、小屋とは言ってもほとんどその形を残していなかった。
広さは大人5~6人くらいは入れる程度だが、板張りの床は腐っているのか、ところどころ抜け落ちている。
その原因はおそらく天井だ。なにがあったのか分からないが、半分程崩れて見晴らしの良い大きな穴が空いている。雨が降る度水浸しになっていたのだろう。
壁も板張りだがかなり痛んでおり、色の変色具合から相当脆くなっていると見て取れる。
強く押せばブレンダンの腕力でも壊せるかもしれないと思える程だった。
「背中は痛くないですか?」
クラレッサに聞かれ下に目を向けると、自分が寝ていたのはベッドでもなんでもなく、床の上だったと気が付く。
「ん、そうじゃな・・・ちょっとばかり腰が痛い気がするが大丈夫じゃよ。それに、クラレッサが膝枕してくれてたんじゃろ?おかげで目覚めは良いぞ」
自分の起きた場所と、足をたたんでいるクラレッサを見て、ブレンダンは笑って見せた。
「それは良かったです。ところでお腹は空いてませんか?寒くはありませんか?」
「そう言えば、確かに腹は減ったのう、寒くはないが・・・ん、クラレッサ、ワシらは川に飛び込んだんじゃろ?なぜ服が乾いておるのじゃ?」
着ているローブが全く濡れて無い事に気が付き、ブレンダンは眉を寄せ怪訝な顔を見せた。
「おじいさんは丸一日寝ていました。濡れたままでは体を壊してしまいます。だから私が脱がせて、霊力で火を付けて乾かしました」
気を失っていたとはいえ、若い女性に服を脱がされたと聞き、ブレンダンは少し決まりが悪そうに頭を掻いた。
「う、うぅむ、まぁ、止むを得んか・・・面倒をかけてすまんかったな。ところで、霊力で火を付けられるのか?」
「はい。もちろん黒魔法みたく、火の玉を飛ばす事なんかはできません。私は落ち葉と燃えやすそうな枝を集めて、そこにほんの少しだけ霊力をぶつけてみたのです。私も初めての経験だったので確信はありませんでしたが、霊力をぶつけると落ち葉が弾けたり、破裂したりするのです。それで可能性を感じて、力加減を調整しながら何度か繰り返したら火が付いたのです」
クラレッサが顔を向けた先、小屋の中央付近には、焚火を行ったと思われる形跡があった。
「・・・なるほど、ワシには思いもよらん事じゃ。クラレッサは賢いのう」
ブレンダンがクラレッサの頭を撫でると、クラレッサは一瞬きょとんとしたように目を丸くしたが、撫でられるうちに頬を赤く染めて下を向いてしまった。
「・・・おじいさん」
「ん、なんじゃ?」
「頭を撫でてもらうって、少し恥ずかしいけど、胸が温かくなるんですね。なんだか懐かしい感じがしました。覚えてはいませんが、小さい頃・・・私は父様と母様にも、頭を撫でてもらった事があったのかもしれません」
クラレッサの言葉に、ブレンダンは目を細め、もう一度優しく頭を撫でる。
孤児院は捨て子が多い。どうしても育てられないからと、親が直接子供を頼みに来る場合も無いわけではないが、乳児の場合はほとんどは玄関先に置かれている事が多いし、3歳くらいの子であれば、玄関の前で泣きながら立ち尽くしている事もある。
親の愛を知らない子が非常に多いのだ。
だからブレンダンは、褒める時には頭を撫でる。
分かりやすく愛情を直接感じられる表現を心掛けていた。
「クラレッサのお父さんもお母さんも、きっと頭を撫でてくれたはずじゃよ。だって、クラレッサはこんなに優しくて良い子なんじゃから」
「・・・嬉しいです」
少しだけ寂しさは見える。両親から受けた虐待の影響はやはり根深いのだろう。
だけど顔を上げて微笑むクラレッサは、年頃の少女のようにとても可愛らしかった。
クラレッサは自分の気持ちを、感情を出して前を向こうとしている。
ブレンダンはそれがとても嬉しかった。
ブレンダンとクラレッサが、セシリアから逃れるために川に飛び込んだ後・・・・・
「・・・う・・・・・」
「・・・あ、おじいさん、気が付きましたか?」
暗く閉ざされていた部屋の中に、光が差し込んでくるように意識の扉が開かれる。
どうやら眠っていたようだと、朧気ながら思考が戻ってくる・・・・・
重い瞼を開けると、自分の顔をじっと覗き見る黒い瞳と目が合った。
垂れさがる長く白い髪が顔にあたり、くすぐられるような刺激に意識がハッキリしてくる。
「・・・クラレッサ・・・ワシは、いったい・・・」
「おじいさんは私と一緒に川へ飛び込みました。そしてそのまま流されました。ここは首都バンテージ近くの森の小屋です」
ブレンダンの意識が戻った事を見ると、クラレッサは上半身を引いて覗き込んでいた顔を戻す。
ニコリと優しい笑みを浮かべると、簡単に現在の状況を口にしながら、誘導するように周りに顔を向ける。
ブレンダンも上半身を起こし、クラレッサの顔の動きに合わせるように首を回して、辺りに目を向けてみた。
確かに自分は今小屋にいるようだ。しかし、小屋とは言ってもほとんどその形を残していなかった。
広さは大人5~6人くらいは入れる程度だが、板張りの床は腐っているのか、ところどころ抜け落ちている。
その原因はおそらく天井だ。なにがあったのか分からないが、半分程崩れて見晴らしの良い大きな穴が空いている。雨が降る度水浸しになっていたのだろう。
壁も板張りだがかなり痛んでおり、色の変色具合から相当脆くなっていると見て取れる。
強く押せばブレンダンの腕力でも壊せるかもしれないと思える程だった。
「背中は痛くないですか?」
クラレッサに聞かれ下に目を向けると、自分が寝ていたのはベッドでもなんでもなく、床の上だったと気が付く。
「ん、そうじゃな・・・ちょっとばかり腰が痛い気がするが大丈夫じゃよ。それに、クラレッサが膝枕してくれてたんじゃろ?おかげで目覚めは良いぞ」
自分の起きた場所と、足をたたんでいるクラレッサを見て、ブレンダンは笑って見せた。
「それは良かったです。ところでお腹は空いてませんか?寒くはありませんか?」
「そう言えば、確かに腹は減ったのう、寒くはないが・・・ん、クラレッサ、ワシらは川に飛び込んだんじゃろ?なぜ服が乾いておるのじゃ?」
着ているローブが全く濡れて無い事に気が付き、ブレンダンは眉を寄せ怪訝な顔を見せた。
「おじいさんは丸一日寝ていました。濡れたままでは体を壊してしまいます。だから私が脱がせて、霊力で火を付けて乾かしました」
気を失っていたとはいえ、若い女性に服を脱がされたと聞き、ブレンダンは少し決まりが悪そうに頭を掻いた。
「う、うぅむ、まぁ、止むを得んか・・・面倒をかけてすまんかったな。ところで、霊力で火を付けられるのか?」
「はい。もちろん黒魔法みたく、火の玉を飛ばす事なんかはできません。私は落ち葉と燃えやすそうな枝を集めて、そこにほんの少しだけ霊力をぶつけてみたのです。私も初めての経験だったので確信はありませんでしたが、霊力をぶつけると落ち葉が弾けたり、破裂したりするのです。それで可能性を感じて、力加減を調整しながら何度か繰り返したら火が付いたのです」
クラレッサが顔を向けた先、小屋の中央付近には、焚火を行ったと思われる形跡があった。
「・・・なるほど、ワシには思いもよらん事じゃ。クラレッサは賢いのう」
ブレンダンがクラレッサの頭を撫でると、クラレッサは一瞬きょとんとしたように目を丸くしたが、撫でられるうちに頬を赤く染めて下を向いてしまった。
「・・・おじいさん」
「ん、なんじゃ?」
「頭を撫でてもらうって、少し恥ずかしいけど、胸が温かくなるんですね。なんだか懐かしい感じがしました。覚えてはいませんが、小さい頃・・・私は父様と母様にも、頭を撫でてもらった事があったのかもしれません」
クラレッサの言葉に、ブレンダンは目を細め、もう一度優しく頭を撫でる。
孤児院は捨て子が多い。どうしても育てられないからと、親が直接子供を頼みに来る場合も無いわけではないが、乳児の場合はほとんどは玄関先に置かれている事が多いし、3歳くらいの子であれば、玄関の前で泣きながら立ち尽くしている事もある。
親の愛を知らない子が非常に多いのだ。
だからブレンダンは、褒める時には頭を撫でる。
分かりやすく愛情を直接感じられる表現を心掛けていた。
「クラレッサのお父さんもお母さんも、きっと頭を撫でてくれたはずじゃよ。だって、クラレッサはこんなに優しくて良い子なんじゃから」
「・・・嬉しいです」
少しだけ寂しさは見える。両親から受けた虐待の影響はやはり根深いのだろう。
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