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【392 樹々に囲まれた小屋の中で ②】
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「うむ、確かにワシが目を覚ます前に首都に入らんかったのは良い判断じゃ」
「はい。私の白い髪は目立つようですから、私を帝国の人間と覚えている人もいると思います。
ですからおじいさんが起きるまでは、ここで過ごそうと思ったんです」
ほぼ半壊している小屋の中で、ブレンダンは自分が寝ていた間の事をクラレッサから聞いていた。
「確かに、クラレッサは目立つかもしれんのう・・・王位継承の儀で、その髪が特徴として覚えられておったかもしれんし、一人で行けば攻撃を受けていたかもしれんな」
「はい。攻撃を受ければ、私は悪霊を使っていたかもしれません。そうなっていたら・・・・・考えたくもありません」
クラレッサは自分の右目を押さえるように手の平をあてた。
悪霊を宿す魔道具 御霊の目。これがクラレッサを苦しめている原因である。
「・・・大丈夫じゃ。クラレッサはちゃんと抑えられておる。自分を信じるんじゃ」
「・・・はい・・・・・・おじいさん、お食事にしましょう。もうお昼は過ぎてます」
陽が高くなっている。
目を覚ましてから大分時間が経っていた。川の水で喉を潤す事はできたが、腹の減りは水ではごまかせない。
「うむ、そうしたいのは山々じゃが、何か食べれる物があるのか?」
当然の事ながらここにはパンもスープも無い。
だが、ブレンダンの言いたい事察したクラレッサは、心配いらないと言うように笑顔で答えた。
「大丈夫です。お魚を獲りました」
そう言って小屋の隅に顔を向ける。追うようにブレンダンも顔を向けると、緑の葉が敷かれた上に、数匹の魚が置いてあった。
しかし、不思議な事に何故か頭が無くなっていたり、胴体がえぐれている。
「・・・クラレッサ、もしやアレも霊力をぶつけて獲ったのか?」
先程の落ち葉と枝に火を付けた方法を思い出した。
「はい。お魚を獲るくらいはできるかと思ったのですが、やはり加減が難しいです。不格好になってしまいました。でも、食べれますよ」
問題ないと伝えるように、ブレンダンの顔をじっと見つめるクラレッサに、ブレンダンは思わず笑ってしまった。
「はっはっは!クラレッサは面白いのう!」
「・・・どうして笑ってるのですか?私は面白い事は言ってませんよ」
「あぁ、いやいやすまんすまん。バカにしとるわけではないじゃ。では、魚が傷まないうちに食べようではないか。すまんが火を頼めるか?ワシは霊力で火を付けるなんてできん」
「・・・おかしなおじいさんですね。分かりました。では火を付けます」
クラレッサは多めに落ち葉と枝を集めていたようで、部屋の隅に魚と一緒に置いてあった。
それを中央に持って来て火を付ける。
味付けなど何もなく焼いただけの魚だが、一日ぶりの食事はとても美味しかった。
「おじいさん、これからどうしますか?」
食事を終えクラレッサと今後に付いて話し合う。
「うむ、クラレッサのおかげで体力も回復したし、腹も膨れた。一日寝ていたから魔力も回復しておる。首都に戻ろう」
「私が行っても大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃ。もうクラレッサはワシの娘だ。何も心配せんでいい」
はっきりと言い切るブレンダンを見て、どこか不安気だったクラレッサの顔がほころんだ。
「はい。私はもうおじいさんの娘です。では、行きましょうか」
クラレッサが立ち上がると、ブレンダンも続いて腰を上げた。
小屋を出て空の流れに沿って二人は歩き出した。
静かだった。
ゆるやかな川のせせらぎ、時折聞こえる鳥のさえずりは、心地よい音色を耳に届けてくれた。
クラレッサは機嫌が良いように見える。
表情は柔らかく、足取りも軽い。
「・・・クラレッサ、聞きたい事があるんじゃが」
「はい。なんですか?おじいさん」
「・・・皇帝はクラレッサに何を求めたんじゃ?何か、特別な繋がりがあったのじゃろ?」
その質問にクラレッサは足を止めた。
並んで歩いていたブレンダンも、数歩先で歩みを止めてクラレッサに体を向けた。
「・・・言いにくい事情もあるかと思う。じゃが、話してはもらえんだろうか」
しばらくクラレッサは黙っていた。
心の中で葛藤があるのだろう。
浮浪孤児として帝国に流れ着いたクラレッサとテレンス、この二人に手を差し伸べ、ここまで育てたのは紛れもなく皇帝なのだ。
クラレッサにとって命の恩人なのだ。
セシリアの話しでは、クラレッサとの心変わりを察していた皇帝が、本当に裏切ったのであれば殺せと命じていたらしが、それでもそう簡単に割り切れないものだろう。
ブレンダンは待った。
決して言葉を重ねてかける事はせず、返答がどうであれクラレッサから話すまで待った。
「・・・分かりました。私はおじいさんの娘です。お話しします」
やがてクラレッサは心が決まったように顔を上げ、ブレンダンの目を見て口を開いた。
「おじいさんの言う通り、私と皇帝は取引をしました。それは、私と兄様が帝国のために働く代わりに、帝国の民の生活を豊かにするというものです」
「はい。私の白い髪は目立つようですから、私を帝国の人間と覚えている人もいると思います。
ですからおじいさんが起きるまでは、ここで過ごそうと思ったんです」
ほぼ半壊している小屋の中で、ブレンダンは自分が寝ていた間の事をクラレッサから聞いていた。
「確かに、クラレッサは目立つかもしれんのう・・・王位継承の儀で、その髪が特徴として覚えられておったかもしれんし、一人で行けば攻撃を受けていたかもしれんな」
「はい。攻撃を受ければ、私は悪霊を使っていたかもしれません。そうなっていたら・・・・・考えたくもありません」
クラレッサは自分の右目を押さえるように手の平をあてた。
悪霊を宿す魔道具 御霊の目。これがクラレッサを苦しめている原因である。
「・・・大丈夫じゃ。クラレッサはちゃんと抑えられておる。自分を信じるんじゃ」
「・・・はい・・・・・・おじいさん、お食事にしましょう。もうお昼は過ぎてます」
陽が高くなっている。
目を覚ましてから大分時間が経っていた。川の水で喉を潤す事はできたが、腹の減りは水ではごまかせない。
「うむ、そうしたいのは山々じゃが、何か食べれる物があるのか?」
当然の事ながらここにはパンもスープも無い。
だが、ブレンダンの言いたい事察したクラレッサは、心配いらないと言うように笑顔で答えた。
「大丈夫です。お魚を獲りました」
そう言って小屋の隅に顔を向ける。追うようにブレンダンも顔を向けると、緑の葉が敷かれた上に、数匹の魚が置いてあった。
しかし、不思議な事に何故か頭が無くなっていたり、胴体がえぐれている。
「・・・クラレッサ、もしやアレも霊力をぶつけて獲ったのか?」
先程の落ち葉と枝に火を付けた方法を思い出した。
「はい。お魚を獲るくらいはできるかと思ったのですが、やはり加減が難しいです。不格好になってしまいました。でも、食べれますよ」
問題ないと伝えるように、ブレンダンの顔をじっと見つめるクラレッサに、ブレンダンは思わず笑ってしまった。
「はっはっは!クラレッサは面白いのう!」
「・・・どうして笑ってるのですか?私は面白い事は言ってませんよ」
「あぁ、いやいやすまんすまん。バカにしとるわけではないじゃ。では、魚が傷まないうちに食べようではないか。すまんが火を頼めるか?ワシは霊力で火を付けるなんてできん」
「・・・おかしなおじいさんですね。分かりました。では火を付けます」
クラレッサは多めに落ち葉と枝を集めていたようで、部屋の隅に魚と一緒に置いてあった。
それを中央に持って来て火を付ける。
味付けなど何もなく焼いただけの魚だが、一日ぶりの食事はとても美味しかった。
「おじいさん、これからどうしますか?」
食事を終えクラレッサと今後に付いて話し合う。
「うむ、クラレッサのおかげで体力も回復したし、腹も膨れた。一日寝ていたから魔力も回復しておる。首都に戻ろう」
「私が行っても大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃ。もうクラレッサはワシの娘だ。何も心配せんでいい」
はっきりと言い切るブレンダンを見て、どこか不安気だったクラレッサの顔がほころんだ。
「はい。私はもうおじいさんの娘です。では、行きましょうか」
クラレッサが立ち上がると、ブレンダンも続いて腰を上げた。
小屋を出て空の流れに沿って二人は歩き出した。
静かだった。
ゆるやかな川のせせらぎ、時折聞こえる鳥のさえずりは、心地よい音色を耳に届けてくれた。
クラレッサは機嫌が良いように見える。
表情は柔らかく、足取りも軽い。
「・・・クラレッサ、聞きたい事があるんじゃが」
「はい。なんですか?おじいさん」
「・・・皇帝はクラレッサに何を求めたんじゃ?何か、特別な繋がりがあったのじゃろ?」
その質問にクラレッサは足を止めた。
並んで歩いていたブレンダンも、数歩先で歩みを止めてクラレッサに体を向けた。
「・・・言いにくい事情もあるかと思う。じゃが、話してはもらえんだろうか」
しばらくクラレッサは黙っていた。
心の中で葛藤があるのだろう。
浮浪孤児として帝国に流れ着いたクラレッサとテレンス、この二人に手を差し伸べ、ここまで育てたのは紛れもなく皇帝なのだ。
クラレッサにとって命の恩人なのだ。
セシリアの話しでは、クラレッサとの心変わりを察していた皇帝が、本当に裏切ったのであれば殺せと命じていたらしが、それでもそう簡単に割り切れないものだろう。
ブレンダンは待った。
決して言葉を重ねてかける事はせず、返答がどうであれクラレッサから話すまで待った。
「・・・分かりました。私はおじいさんの娘です。お話しします」
やがてクラレッサは心が決まったように顔を上げ、ブレンダンの目を見て口を開いた。
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