392 / 1,558
【391 樹々に囲まれた小屋の中で ①】
しおりを挟む
時は少しさかのぼる。
ブレンダンとクラレッサが、セシリアから逃れるために川に飛び込んだ後・・・・・
「・・・う・・・・・」
「・・・あ、おじいさん、気が付きましたか?」
暗く閉ざされていた部屋の中に、光が差し込んでくるように意識の扉が開かれる。
どうやら眠っていたようだと、朧気ながら思考が戻ってくる・・・・・
重い瞼を開けると、自分の顔をじっと覗き見る黒い瞳と目が合った。
垂れさがる長く白い髪が顔にあたり、くすぐられるような刺激に意識がハッキリしてくる。
「・・・クラレッサ・・・ワシは、いったい・・・」
「おじいさんは私と一緒に川へ飛び込みました。そしてそのまま流されました。ここは首都バンテージ近くの森の小屋です」
ブレンダンの意識が戻った事を見ると、クラレッサは上半身を引いて覗き込んでいた顔を戻す。
ニコリと優しい笑みを浮かべると、簡単に現在の状況を口にしながら、誘導するように周りに顔を向ける。
ブレンダンも上半身を起こし、クラレッサの顔の動きに合わせるように首を回して、辺りに目を向けてみた。
確かに自分は今小屋にいるようだ。しかし、小屋とは言ってもほとんどその形を残していなかった。
広さは大人5~6人くらいは入れる程度だが、板張りの床は腐っているのか、ところどころ抜け落ちている。
その原因はおそらく天井だ。なにがあったのか分からないが、半分程崩れて見晴らしの良い大きな穴が空いている。雨が降る度水浸しになっていたのだろう。
壁も板張りだがかなり痛んでおり、色の変色具合から相当脆くなっていると見て取れる。
強く押せばブレンダンの腕力でも壊せるかもしれないと思える程だった。
「背中は痛くないですか?」
クラレッサに聞かれ下に目を向けると、自分が寝ていたのはベッドでもなんでもなく、床の上だったと気が付く。
「ん、そうじゃな・・・ちょっとばかり腰が痛い気がするが大丈夫じゃよ。それに、クラレッサが膝枕してくれてたんじゃろ?おかげで目覚めは良いぞ」
自分の起きた場所と、足をたたんでいるクラレッサを見て、ブレンダンは笑って見せた。
「それは良かったです。ところでお腹は空いてませんか?寒くはありませんか?」
「そう言えば、確かに腹は減ったのう、寒くはないが・・・ん、クラレッサ、ワシらは川に飛び込んだんじゃろ?なぜ服が乾いておるのじゃ?」
着ているローブが全く濡れて無い事に気が付き、ブレンダンは眉を寄せ怪訝な顔を見せた。
「おじいさんは丸一日寝ていました。濡れたままでは体を壊してしまいます。だから私が脱がせて、霊力で火を付けて乾かしました」
気を失っていたとはいえ、若い女性に服を脱がされたと聞き、ブレンダンは少し決まりが悪そうに頭を掻いた。
「う、うぅむ、まぁ、止むを得んか・・・面倒をかけてすまんかったな。ところで、霊力で火を付けられるのか?」
「はい。もちろん黒魔法みたく、火の玉を飛ばす事なんかはできません。私は落ち葉と燃えやすそうな枝を集めて、そこにほんの少しだけ霊力をぶつけてみたのです。私も初めての経験だったので確信はありませんでしたが、霊力をぶつけると落ち葉が弾けたり、破裂したりするのです。それで可能性を感じて、力加減を調整しながら何度か繰り返したら火が付いたのです」
クラレッサが顔を向けた先、小屋の中央付近には、焚火を行ったと思われる形跡があった。
「・・・なるほど、ワシには思いもよらん事じゃ。クラレッサは賢いのう」
ブレンダンがクラレッサの頭を撫でると、クラレッサは一瞬きょとんとしたように目を丸くしたが、撫でられるうちに頬を赤く染めて下を向いてしまった。
「・・・おじいさん」
「ん、なんじゃ?」
「頭を撫でてもらうって、少し恥ずかしいけど、胸が温かくなるんですね。なんだか懐かしい感じがしました。覚えてはいませんが、小さい頃・・・私は父様と母様にも、頭を撫でてもらった事があったのかもしれません」
クラレッサの言葉に、ブレンダンは目を細め、もう一度優しく頭を撫でる。
孤児院は捨て子が多い。どうしても育てられないからと、親が直接子供を頼みに来る場合も無いわけではないが、乳児の場合はほとんどは玄関先に置かれている事が多いし、3歳くらいの子であれば、玄関の前で泣きながら立ち尽くしている事もある。
親の愛を知らない子が非常に多いのだ。
だからブレンダンは、褒める時には頭を撫でる。
分かりやすく愛情を直接感じられる表現を心掛けていた。
「クラレッサのお父さんもお母さんも、きっと頭を撫でてくれたはずじゃよ。だって、クラレッサはこんなに優しくて良い子なんじゃから」
「・・・嬉しいです」
少しだけ寂しさは見える。両親から受けた虐待の影響はやはり根深いのだろう。
だけど顔を上げて微笑むクラレッサは、年頃の少女のようにとても可愛らしかった。
クラレッサは自分の気持ちを、感情を出して前を向こうとしている。
ブレンダンはそれがとても嬉しかった。
ブレンダンとクラレッサが、セシリアから逃れるために川に飛び込んだ後・・・・・
「・・・う・・・・・」
「・・・あ、おじいさん、気が付きましたか?」
暗く閉ざされていた部屋の中に、光が差し込んでくるように意識の扉が開かれる。
どうやら眠っていたようだと、朧気ながら思考が戻ってくる・・・・・
重い瞼を開けると、自分の顔をじっと覗き見る黒い瞳と目が合った。
垂れさがる長く白い髪が顔にあたり、くすぐられるような刺激に意識がハッキリしてくる。
「・・・クラレッサ・・・ワシは、いったい・・・」
「おじいさんは私と一緒に川へ飛び込みました。そしてそのまま流されました。ここは首都バンテージ近くの森の小屋です」
ブレンダンの意識が戻った事を見ると、クラレッサは上半身を引いて覗き込んでいた顔を戻す。
ニコリと優しい笑みを浮かべると、簡単に現在の状況を口にしながら、誘導するように周りに顔を向ける。
ブレンダンも上半身を起こし、クラレッサの顔の動きに合わせるように首を回して、辺りに目を向けてみた。
確かに自分は今小屋にいるようだ。しかし、小屋とは言ってもほとんどその形を残していなかった。
広さは大人5~6人くらいは入れる程度だが、板張りの床は腐っているのか、ところどころ抜け落ちている。
その原因はおそらく天井だ。なにがあったのか分からないが、半分程崩れて見晴らしの良い大きな穴が空いている。雨が降る度水浸しになっていたのだろう。
壁も板張りだがかなり痛んでおり、色の変色具合から相当脆くなっていると見て取れる。
強く押せばブレンダンの腕力でも壊せるかもしれないと思える程だった。
「背中は痛くないですか?」
クラレッサに聞かれ下に目を向けると、自分が寝ていたのはベッドでもなんでもなく、床の上だったと気が付く。
「ん、そうじゃな・・・ちょっとばかり腰が痛い気がするが大丈夫じゃよ。それに、クラレッサが膝枕してくれてたんじゃろ?おかげで目覚めは良いぞ」
自分の起きた場所と、足をたたんでいるクラレッサを見て、ブレンダンは笑って見せた。
「それは良かったです。ところでお腹は空いてませんか?寒くはありませんか?」
「そう言えば、確かに腹は減ったのう、寒くはないが・・・ん、クラレッサ、ワシらは川に飛び込んだんじゃろ?なぜ服が乾いておるのじゃ?」
着ているローブが全く濡れて無い事に気が付き、ブレンダンは眉を寄せ怪訝な顔を見せた。
「おじいさんは丸一日寝ていました。濡れたままでは体を壊してしまいます。だから私が脱がせて、霊力で火を付けて乾かしました」
気を失っていたとはいえ、若い女性に服を脱がされたと聞き、ブレンダンは少し決まりが悪そうに頭を掻いた。
「う、うぅむ、まぁ、止むを得んか・・・面倒をかけてすまんかったな。ところで、霊力で火を付けられるのか?」
「はい。もちろん黒魔法みたく、火の玉を飛ばす事なんかはできません。私は落ち葉と燃えやすそうな枝を集めて、そこにほんの少しだけ霊力をぶつけてみたのです。私も初めての経験だったので確信はありませんでしたが、霊力をぶつけると落ち葉が弾けたり、破裂したりするのです。それで可能性を感じて、力加減を調整しながら何度か繰り返したら火が付いたのです」
クラレッサが顔を向けた先、小屋の中央付近には、焚火を行ったと思われる形跡があった。
「・・・なるほど、ワシには思いもよらん事じゃ。クラレッサは賢いのう」
ブレンダンがクラレッサの頭を撫でると、クラレッサは一瞬きょとんとしたように目を丸くしたが、撫でられるうちに頬を赤く染めて下を向いてしまった。
「・・・おじいさん」
「ん、なんじゃ?」
「頭を撫でてもらうって、少し恥ずかしいけど、胸が温かくなるんですね。なんだか懐かしい感じがしました。覚えてはいませんが、小さい頃・・・私は父様と母様にも、頭を撫でてもらった事があったのかもしれません」
クラレッサの言葉に、ブレンダンは目を細め、もう一度優しく頭を撫でる。
孤児院は捨て子が多い。どうしても育てられないからと、親が直接子供を頼みに来る場合も無いわけではないが、乳児の場合はほとんどは玄関先に置かれている事が多いし、3歳くらいの子であれば、玄関の前で泣きながら立ち尽くしている事もある。
親の愛を知らない子が非常に多いのだ。
だからブレンダンは、褒める時には頭を撫でる。
分かりやすく愛情を直接感じられる表現を心掛けていた。
「クラレッサのお父さんもお母さんも、きっと頭を撫でてくれたはずじゃよ。だって、クラレッサはこんなに優しくて良い子なんじゃから」
「・・・嬉しいです」
少しだけ寂しさは見える。両親から受けた虐待の影響はやはり根深いのだろう。
だけど顔を上げて微笑むクラレッサは、年頃の少女のようにとても可愛らしかった。
クラレッサは自分の気持ちを、感情を出して前を向こうとしている。
ブレンダンはそれがとても嬉しかった。
0
あなたにおすすめの小説
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
召喚失敗から始まる異世界生活
思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。
「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。
ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート
みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。
唯一の武器は、腰につけた工具袋——
…って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!?
戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。
土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!?
「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」
今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY!
建築×育児×チート×ギャル
“腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる!
腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる