異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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417 クリスの宿屋で ②

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「へぇ、ここが噂のクリスさんの宿屋か」

木造三階建ての大きな宿屋だった。レイジェスより大きい。
居酒屋も兼営しているからか、日が暮れかかったこの時間でも次々に人が入って行く。

「アラタは初めてだったよな?今日は難しい事忘れて、楽しく飲もうぜ」

宿を見上げていると、ミゼルさんが俺の肩に手を置いて中に入ろうぜと促してきた。

「大きいですね。ここがミゼルさんの恋人が働いている宿なんですね?」

俺としては特に他意の無い言葉だったのだが、ミゼルさんにとっては違ったらしい。
なんだか決まりが悪そうに、視線を逸らして意味も無く頬を搔きだした。

「あ~、まぁ、そんな感じかなぁ~、ほら、早く入ろうぜ」

「え?あ、はい・・・」

歯切れが悪く、これ以上その話題はしたくないというオーラを出しているので、俺は空気を読んでそこで話しを終わらせたが、女性陣にそれは通用しなかった。

「いらっしゃいませー、ご予約ですか?」

「あぁ、予約しているレイジェスだ。クリスさんはいるかな?挨拶がしたくてね」

玄関に入ると店員の女性が出迎えてくれたのだが、開口一番レイチェルはクリスさんを指名した。

「お、おいおい、レイチェル、後で合流するんだろ?何も今呼ばなくても・・・」

ミゼルが非難じみた言葉をむけると、レイチェルはジロリとミゼルを睨みつけた。

「何を言ってるんだ?今日の昼に急な予約をお願いしたにもかかわらず、快く対応してくれたんだぞ?まずは挨拶をすべきだろう?」

「うっ・・・」

ミゼルさんが言い返せずに言葉を詰まらせると、シルヴィアさんも口を挟んできた。

「そうそう、それにミゼルの恋人じゃない?恋人に会いたくないのかしら?」

「い、いや・・・そういうわけじゃ・・・」

歯切れの悪いミゼルさんを、ユーリが下から見上げる感じで睨みつけた。

「まさか・・・またクリスさんに迷惑かけた?お酒?それともギャンブル?」

「い、いやいやいやいやいやいや!そ、そんなこたぁしてねぇですよ!」

女性三人に囲まれてタジタジになっているミゼルさんを、一歩後ろでカチュアとケイトが呆れた様子で眺めている。


「あらら、全くミゼルはこれだから・・・ありゃ、また酒かギャンブルでクリスさんに迷惑かけたな」

「う~ん、ミゼルさん良い人なんだけどね。お酒とギャンブルがねぇ・・・」

いつまでも玄関で立っているのも邪魔になるだろうと、俺達はとりあえず玄関から上がる。
奥の方からワインレッドのバンダナを巻いて、白いシャツに黒い前掛けを付けた女性が小走りに駆けてきた。


「あ!レイチェルさん、みなさんこんばんはー!」

「やぁ、クリスさん、今日はお世話になります」

レイチェルが軽い会釈をすると、みんなも挨拶しながら会釈をするので、俺もそれに倣った。

バンダナの下からは、フワっとした金色の髪が肩まで伸びている。
思っていた以上に背は高かった。なんとなく小柄なイメージを持っていたが、175cmの俺とあまり変わらない。2~3cm俺の方が高いだろうけど、意外と長身だった。

180cmのミゼルさんとは背丈のバランスは良いと思う。
ニコニコしていてとても愛想が良く、初対面でも話し安そうな雰囲気があった。なんとなく猫っぽい感じだ。


「クリスさん、紹介しよう。うちの新入りでサカキ・アラタだ。防具を担当している。昼にも少し話したが、今日は彼の祝勝会や歓迎会、婚約おめでとうパーティとか色々なんだ」

レイチェルが俺の背中を軽く押して前に出させる。
クリスさんは俺に目を止めると、両手をパン!と打ち合わせて、少し高い声を出した。

「あなたがあのサカキ・アラタ君ね!すごいなー、マルゴンをやっつけたんでしょ?うちの店でもいまだに話題なのよ!私も仕事が終わったら合流するから、その時色々教えてね!」


好奇心ありありの眼差しを俺に向ける。やはり、まだまだこの話題は引っ張られるようだ。

それからクリスさんはミゼルさんに顔を向けると、やや大股で近づいた。


「ミゼル君!約束守ってる?」

「あ、あぁ・・・もちろんだよ。飲んでない飲んでない!」

「・・・・・嘘。ミゼル君は嘘つくと目が泳ぐから分かる」

「ぐっ・・・いや、ほんのワンカップだぜ!ワンカップ!」

「・・・・・嘘。ミゼル君はバレても少なめに言うの知ってるから」

「ぐぬっ・・・いや、だってよ、付き合いってもんが・・・」

「もぉー!今日みたいな日はいいけど、毎日毎日飲んでたら体壊しちゃうよ!心配だから言ってるの!反省して!」

「・・・・・ごめんさい」

ミゼルさんは頭の後ろを掻きながら、首だけ曲げる形で頭を下げた。

「ごめん・・・さい?」

ふざけた態度に、クリスさんが少しだけピリっとした声を出す。

「すみませんでした!」

腰を90度曲げた見事な謝罪に、クリスさんは腕を組んで溜め息をついた。

「・・・本当にミゼル君は心配でしかたないなぁ。あ、みんなごめんね!つい話しこんじゃった!お部屋に案内するから着いてきて。あ、それとラムナリンさんってご家族が先に入って待ってるよ」

都合の良い時にレイジェスに手伝いに来てくれている女の子、エル・ラムナリン。
以前、ディーロ兄弟がレイジェスを襲って来た時に、ユーリが助けた事をきっかけにした縁だ。
エルちゃんも立派なレイジェスのメンバーなので、レイチェルが誘ったのだ。


クリスさんの後に続いて俺達は部屋に案内された。

クリスさんを先頭に女性陣が前を歩く。
俺は最近ちょっと感じていた事を、隣のジャレットさんに聞いてみた。

「・・・ジャレットさん、この世界って女の人が強いんですかね?」

「・・・アラやんも気が付いたか。ニホンはどうだか知らないが、うちの店の女見てれば分かるだろ?あぁ、でもカッちゃんは別だな。カッちゃんは控えめだし尽くすタイプだから貴重だぞ。アラやん大事にするんだぞ?って言われるまでもねぇか?」

ジャレットさんは小声で俺に耳打ちしてきた。
さっきのクリスさんを見ても、ミゼルさんが尻に敷かれているのは明白だ。
ユーリは俺達男性陣に遠慮なくパンチしてくるし、ジャレットさんもシルヴィアさんには手玉に取られていた。
ケイトとジーンも主導権はケイトにあるようだし、店のリーダーはレイチェルだ。


最近ちょっとイジられるけど、カチュアは基本的に俺を立ててくれてる気がするし、食事の時も俺には座って待っててと言ってくれる。マルゴンの戦いの後はずっと看病して、朝昼晩と食事を作りに通ってくれた。

「・・・ジャレットさん、俺カチュアの事本当に大事にします」

「お、おぉ、いい心がけだ」

あらためてカチュアがどれだけ俺の事を想ってくれてるのか感じて、俺はジャレットさんの目を見て力強く答えた。そんな本気の言葉が返ってくると思わなかったのか、ジャレットさんは一瞬たじろいだ。
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