異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
566 / 1,560

565 顔合わせ

しおりを挟む
翌日、ロンズデールへの出発の日。

今日から12月に入った。
外に出ると朝からしとしとと降っていた雪が、肩にかかり白く色を付ける。
空はあいにく曇っていて薄暗い。
こういう出発の日は晴れてほしいものだが、天気ばかりはどうしようもない。

今朝、カチュアと二人で、雪割りの桜の枝に雪をくっつけた。
花屋のパメラさんの話しでは、こうしておけば春には綺麗な桜が花を咲かすらしい。
俺がいない間も、カチュアは毎日ちゃんと見ておくから安心してと言ってくれた。
花が咲く時には、二人で一緒に見ようと約束をしたは絶対に守りたい。

店まではほんの1~2分の距離だ。
雪が少し積もっていて、ブーツの底が沈む感覚が足に伝わって来る。
どうやら水気のある重い雪のようだ。

昨日は寝る寸前までカチュアと沢山の事を話したけれど、今は俺もカチュアもただ降りしきる雪だけを目に映して、何も話さずに歩いている。

「・・・着いちゃったな」

「着いちゃったね・・・」


当然だが、ゆっくり歩いても、黙って歩いても目的地には着く。
店の前で二人で立ち止まる。いつもならすぐに入るのだが、今日はどうにも足が進まない。

「・・・じゃあ、入ろっか」

いつまでも立ち止まっている訳には行かないと思った時、カチュアがドアノブに手をかけて引き開けた。
もしかして元気がないのかなと思ったけど、いつもと変わらない笑顔を見て安心した。
やっぱり、悲しそうな顔、寂しそうな顔より、笑っていて欲しい。




事務所に入ると、最初に目についたのがメイドだった。

黒いワンピースに白いエプロン、アップにまとめた金色の髪には白いキャップが付いている。
シャープな顎のラインとキリっとした目、少しそばかすがあり、やや吊り上がった眉は少しキツい印象もあるけど、しっかりとした意思の強さも見て取れるかのようだった。

女性は俺達の姿を目にすると、腰を折りうやうやしく頭を下げた。

「初めまして。シャクール・バルデス様の侍女、サリー・ディルトンと申します。ロンズデールに同行させていただきますので、よろしくお願いいたします」

話しには聞いていたが、本当にメイドそのまんまだ。
突然のメイド姿の女性の挨拶に、どうしていいか分からず一瞬固まってしまったが、すぐに我に戻ると、俺も頭を下げて挨拶を返した。

「あ、えぇと、坂木新です。こちらこそよろしくお願いします」

「サリーさん、おはようございます。お久しぶりですね」

「カチュアさん、おはようございます」

俺が挨拶を済ませると、となりからカチュアが顔をのぞかせて、親し気に話しかける。
サリーさんもカチュアを知っているようで、笑顔で挨拶を返した。
そう言えば、偽国王との戦いの後、城に一泊したと聞いたな。その時に知り合ったのだろう。


「・・・貴様がサカキ・アラタか?」

カチュアとサリーさんが挨拶交わすと、その後ろから銀色の髪の男が出て来た。

「あ、はい。そうです。えっと、あなたがシャクール・バルデスさん?」

「そうだ。私がシャクール・バルデスだ。聞くところによると、貴様と私は年がそう変わらんようだな?長い旅になるかもしれん。気軽にシャクールと呼べ」

黒魔法使いと聞いていたが、クインズベリー国の黒魔法使いのローブは着ておらず、金の刺繍をあしらった白いシャツの上に、暖かなそうなダークグリーン色のロングコートを着て、黒いロングパンツを穿いている。

肩にかかりそうな、やや長めの銀色の髪は後ろに流して、額は出している。
少し線は細いが背も高く、男らしい端正な顔立ちをしている。
そしてその青い瞳は、一見冷たそうにも映るが、今は好意的に俺に向けられている。

「あ、じゃあ・・・シャクール、でいいのかな?」

「うむ。それでいい。私もアラタと呼ばせてもらう。この国最強と言われたマルコスを倒し、そしてこの国を陥れようとした偽国王をも倒した男。大男を想像していたが・・・存外普通なものだな」

めずらしいものでも見るように、上から下まで視線を送られるが、嫌な感じではない。
色眼鏡ではなく、純粋な感想からくるものだからだろう。


「アラタ君、昨日はよく眠れたか?」

「あ、ビリージョーさん、おはようございます」

シャクールがジロジロと俺を見ていると、今度はビリージョーさんが、後ろから俺の肩に手を乗せてきた。

「色々考えちゃって、熟睡とはいかなかったんですが・・・まぁ寝れました」

「そうか。まぁ、今度は長くなりそうだしな。緊張でもしたのかな。ところでカチュアとはちゃんと話したか?」

「はい。昨日二人で、留守中の事とか色々話しました。寂し想いをさせるかと思いましたけど、今朝の様子を見ると大丈夫そうですね」

ビリージョーさんがカチュアを気に掛けるのは、やはりカチュアの父親の事があってだろう。
俺の言葉を聞いてカチュアに目を向ける。少し見つめた後、また俺に顔を戻し、真剣な面持ちで口を開いた。

「アラタ君、確かにそう見えるけど、あれで内心は心配してるもんだぞ。出発の前に安心できる言葉の一つはかけてやりな」

ビリージョーさんに言われて、あらためてカチュアに顔を向ける。
今はサリーさんや、レイチェル達とリラックスした様子で会話をしている。

いつもと変わらなく見える。だけど、ビリージョーさんの言う通りかもしれない。
俺に心配をかけないように、わざと明るく振舞っているの事もあるのかもしれない。
そう思った時、自分の考えの足らなさに自己嫌悪を感じた。
なにを自分に都合良く考えていたんだろう。ちゃんとカチュアの気持ちを考えないと駄目じゃないか。

深く頷いて、分かりました。そう返事をすると、ビリージョーさんは少し笑って頷いた。



「あ、ところでもう一人、ディリアン様はいないの?」

みんなに挨拶をすませると、ふと今日一緒に行くはずの人数が足りない事に気が付く。
時計を見ると8時20分を回るところだった。
だんだん開店にもなるから、そろそろ俺達ロンズデール組は行かなければならない。

「あぁ、そう言えばまだだな。店長から話しはいってるはずなのだが・・・」

俺の疑問にレイチェルも同調の言葉を述べた時、背中超しにドアノブが回る音が聞こえ、外の冷たい風と共に、足音が室内に入って来た。



「あ~、小せぇ店だなぁ、こんなんでよく商売ができんな?レイジェスってのはここでいいのか?」

男にしては高い声に振り返る。

肩より少し長いくらいの、軽く柔らかそうな白い髪。
中性的で綺麗な顔立ちだが、周り全てを威嚇するような目付きと、機嫌の悪さを見せるように。強く寄せた眉間のシワのせいで台無しである。

背丈は165cm程度だろう。15歳という年齢を考えれば、あと10cm以上は伸びるかもしれない。
公爵家という身分だが、着ている物はとても貴族のそれには見えない。

銀色の毛のファーが付いた、黒いジップアップ式のショート丈ブルゾン。
濃いめのインディゴのデニムパンツに、底が厚く重そうなブーツを履いている。

「・・・お前がディリアンか?」

「あ?んだよてめぇ?」

時間ギリギリでやってきたディリアンに、レイチェルが前に出て何者かを問いかける。

「お前がディリアン・ベナビデスかと聞いている」

「はぁ?だったらなんだってんだよ?呼ばれたからわざわざこんなボロ屋に来てやったんだ。礼の一つでも言ったらどうなんだ?」

レイチェルの身長は160~165cmないくらいだ。ディリアンの方が少しだけ高い。
レイチェルに詰め寄ると、日本で言うヤンキーばりに顔を近づけて凄んで見せる。


「あ~・・・あの馬鹿、レイチェルの逆鱗に触れてやがる。死んだな」

ジャレットさんの呟きが俺の耳に触れ、え?と顔を向けると同時に、ディリアンの苦痛による叫び声が事務所内に響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...