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654 目覚めた男
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とても冷たい海の底にいるような感覚だった。
少しづつ体から力が抜けていって、自分の中の大切なにかがどんどん失われていく。
心と体がどこかに連れて行かれそうな、そんな得体の知れない恐怖にもがいていると、一筋の光が差し込み、温かいものが全身に広がっていった。
目を覚ましてから状況を理解するまでに少しだけかかった。
確かあの老人、アロル・ヘイモンを倒した後、俺も意識が遠くなって・・・・・そこから先は何も覚えていない。だがこうして助かったという事は、仲間の誰かが俺を見つけてくれたんだろう。
そしてどうやら、俺はまだ船の中にいるようだ。
薄暗さを感じ天井を見上げるが、照明らしい物は何一つ見当たらない。
かわりに足元には砕けたガラス欠や、発光石が散らばっていて、船が転覆していた事を思い出す。
何階かは分からないが、ここは船内のホールのようだ。
壁を背にしている俺のすぐ後ろには、どこかへつながる通路がある。目を向けるがそこから誰かが来るような気配はない。
そして争うような音や声に、あらためて視線を正面に戻す。
最初に目についたのは、見慣れた赤い髪のナイフ使い、レイチェルだ。
そのレイチェルが戦っている相手は、紫色の長い髪、少女と言っていい程の小柄で華奢な体、不可視の武器を振るうそいつは・・・・・
「・・・あれは、リコ・ヴァリン・・・」
リコ・ヴァリンと戦った時の記憶が思い起こされる。
目で追うのがやっとの凄まじいスピードだった。動きの癖を読んでなんとか掴む事はできたが、結局はそれすらリコ・ヴァリンの計算の内だった。
しかし、レイチェルなら・・・
レイチェルのスピードなら、リコ・ヴァリンにも決して引けを取らないはずだ。
俺の見たところでは互角、うかつに加勢に入るより、ここはレイチェルを信じて任せるべきだ。
「うあぁぁーーー!」
突然聞こえた悲鳴に顔を向けると、レイチェルとは反対方向で戦っていたリンジーさんが、大剣を持った男、ラミール・カーンに倒されていた。
「リンジーさ・・・!?」
腰を上げて加勢しようとしたその時、倒れているリンジーさんと目が合って足を止めた。
・・・・・来るなと、言っているのか?
目が合ったのは一瞬だったが、それだけで俺に望む事が分かった。
・・・手出し無用。
膝を着き立ち上がったリンジーさんは、左手を胸の高さに、右手を腰の前に、右足を半歩引いて、俺が矯正した構えをとりカーンを睨む。
隙の無い良い構えだ。
元々リンジーさんの戦闘センスは高かった。
けれど我流に近い動きだったから、なかなか伸び悩んでいたらしい。
そこにボクシングで活かせる動きを加えただけで、すっかり見違えた。
カーンとの因縁は聞いている。
だから一人で決着をつけるつもりなんだ・・・
それなら俺がここで手を出すわけにはいかない。
・・・大丈夫だ。
リンジーさんは負けない・・・きっと勝つ!
そして、睨み合っているサリーさんと、初老の男・・・乗船前に一度見たな。
確かこの船のオーナー、ギルバート・メンドーサだ。
戦っているというより、お互いに牽制し合っているようにも見える。
その理由は・・・・・あれか・・・・・?
サリーさんとギルバートが意識しているのは、少し距離を開けて戦っている、スーツ姿で巨躯の男、ダリル・パープルズだろう。
そしてダリルの足元では、ガラハドさんとビリージョーさんが倒れている。
特にビリージョーさんは血まみれで、生きているのか死んでいるのかさえ分からない程だ。
ダリルは右手には握ったナイフ振り上げる。狙いはビリージョーさん。
ここで止めを刺す気だ。
「ウオォォォォーーーッ!」
俺は迷うことなく走り出した。ダリル・パープルズ!
ガラハドさんを!ビリージョーさんを!よくもここまでやってくれたな!
「ふん、リコに斬られた男だな?回復できたのか、まぁお前には興味があったから丁度いい。デューク・サリバンと同じ戦い方をするのだろう?この私にも見せてみろ」
「オラァッ!」
拳の射程距離まで踏み込み、放った初撃は右ストレート!
的の大きい胸を狙い繰り出す。
「むっ!?」
想定より速い拳撃だったが、ダリルは左手を出してアラタの右ストレート掴もうと手を伸ばす。
だが・・・
「そうくるだろうと思ってたぜェーーーッ!」
「なにッツ!?」
ダリルの左手は空を掴む。なぜならば直前でアラタが右を引いたからだ!
そのまま腰を右に捻り、角度を付けて左拳を上方に向けて撃ち放つ!
ダリル・パープルズの顎が撥ね上げられた。
少しづつ体から力が抜けていって、自分の中の大切なにかがどんどん失われていく。
心と体がどこかに連れて行かれそうな、そんな得体の知れない恐怖にもがいていると、一筋の光が差し込み、温かいものが全身に広がっていった。
目を覚ましてから状況を理解するまでに少しだけかかった。
確かあの老人、アロル・ヘイモンを倒した後、俺も意識が遠くなって・・・・・そこから先は何も覚えていない。だがこうして助かったという事は、仲間の誰かが俺を見つけてくれたんだろう。
そしてどうやら、俺はまだ船の中にいるようだ。
薄暗さを感じ天井を見上げるが、照明らしい物は何一つ見当たらない。
かわりに足元には砕けたガラス欠や、発光石が散らばっていて、船が転覆していた事を思い出す。
何階かは分からないが、ここは船内のホールのようだ。
壁を背にしている俺のすぐ後ろには、どこかへつながる通路がある。目を向けるがそこから誰かが来るような気配はない。
そして争うような音や声に、あらためて視線を正面に戻す。
最初に目についたのは、見慣れた赤い髪のナイフ使い、レイチェルだ。
そのレイチェルが戦っている相手は、紫色の長い髪、少女と言っていい程の小柄で華奢な体、不可視の武器を振るうそいつは・・・・・
「・・・あれは、リコ・ヴァリン・・・」
リコ・ヴァリンと戦った時の記憶が思い起こされる。
目で追うのがやっとの凄まじいスピードだった。動きの癖を読んでなんとか掴む事はできたが、結局はそれすらリコ・ヴァリンの計算の内だった。
しかし、レイチェルなら・・・
レイチェルのスピードなら、リコ・ヴァリンにも決して引けを取らないはずだ。
俺の見たところでは互角、うかつに加勢に入るより、ここはレイチェルを信じて任せるべきだ。
「うあぁぁーーー!」
突然聞こえた悲鳴に顔を向けると、レイチェルとは反対方向で戦っていたリンジーさんが、大剣を持った男、ラミール・カーンに倒されていた。
「リンジーさ・・・!?」
腰を上げて加勢しようとしたその時、倒れているリンジーさんと目が合って足を止めた。
・・・・・来るなと、言っているのか?
目が合ったのは一瞬だったが、それだけで俺に望む事が分かった。
・・・手出し無用。
膝を着き立ち上がったリンジーさんは、左手を胸の高さに、右手を腰の前に、右足を半歩引いて、俺が矯正した構えをとりカーンを睨む。
隙の無い良い構えだ。
元々リンジーさんの戦闘センスは高かった。
けれど我流に近い動きだったから、なかなか伸び悩んでいたらしい。
そこにボクシングで活かせる動きを加えただけで、すっかり見違えた。
カーンとの因縁は聞いている。
だから一人で決着をつけるつもりなんだ・・・
それなら俺がここで手を出すわけにはいかない。
・・・大丈夫だ。
リンジーさんは負けない・・・きっと勝つ!
そして、睨み合っているサリーさんと、初老の男・・・乗船前に一度見たな。
確かこの船のオーナー、ギルバート・メンドーサだ。
戦っているというより、お互いに牽制し合っているようにも見える。
その理由は・・・・・あれか・・・・・?
サリーさんとギルバートが意識しているのは、少し距離を開けて戦っている、スーツ姿で巨躯の男、ダリル・パープルズだろう。
そしてダリルの足元では、ガラハドさんとビリージョーさんが倒れている。
特にビリージョーさんは血まみれで、生きているのか死んでいるのかさえ分からない程だ。
ダリルは右手には握ったナイフ振り上げる。狙いはビリージョーさん。
ここで止めを刺す気だ。
「ウオォォォォーーーッ!」
俺は迷うことなく走り出した。ダリル・パープルズ!
ガラハドさんを!ビリージョーさんを!よくもここまでやってくれたな!
「ふん、リコに斬られた男だな?回復できたのか、まぁお前には興味があったから丁度いい。デューク・サリバンと同じ戦い方をするのだろう?この私にも見せてみろ」
「オラァッ!」
拳の射程距離まで踏み込み、放った初撃は右ストレート!
的の大きい胸を狙い繰り出す。
「むっ!?」
想定より速い拳撃だったが、ダリルは左手を出してアラタの右ストレート掴もうと手を伸ばす。
だが・・・
「そうくるだろうと思ってたぜェーーーッ!」
「なにッツ!?」
ダリルの左手は空を掴む。なぜならば直前でアラタが右を引いたからだ!
そのまま腰を右に捻り、角度を付けて左拳を上方に向けて撃ち放つ!
ダリル・パープルズの顎が撥ね上げられた。
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