異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
655 / 1,560

654 目覚めた男

しおりを挟む
とても冷たい海の底にいるような感覚だった。
少しづつ体から力が抜けていって、自分の中の大切なにかがどんどん失われていく。

心と体がどこかに連れて行かれそうな、そんな得体の知れない恐怖にもがいていると、一筋の光が差し込み、温かいものが全身に広がっていった。



目を覚ましてから状況を理解するまでに少しだけかかった。

確かあの老人、アロル・ヘイモンを倒した後、俺も意識が遠くなって・・・・・そこから先は何も覚えていない。だがこうして助かったという事は、仲間の誰かが俺を見つけてくれたんだろう。

そしてどうやら、俺はまだ船の中にいるようだ。

薄暗さを感じ天井を見上げるが、照明らしい物は何一つ見当たらない。
かわりに足元には砕けたガラス欠や、発光石が散らばっていて、船が転覆していた事を思い出す。

何階かは分からないが、ここは船内のホールのようだ。
壁を背にしている俺のすぐ後ろには、どこかへつながる通路がある。目を向けるがそこから誰かが来るような気配はない。

そして争うような音や声に、あらためて視線を正面に戻す。


最初に目についたのは、見慣れた赤い髪のナイフ使い、レイチェルだ。
そのレイチェルが戦っている相手は、紫色の長い髪、少女と言っていい程の小柄で華奢な体、不可視の武器を振るうそいつは・・・・・

「・・・あれは、リコ・ヴァリン・・・」

リコ・ヴァリンと戦った時の記憶が思い起こされる。
目で追うのがやっとの凄まじいスピードだった。動きの癖を読んでなんとか掴む事はできたが、結局はそれすらリコ・ヴァリンの計算の内だった。

しかし、レイチェルなら・・・
レイチェルのスピードなら、リコ・ヴァリンにも決して引けを取らないはずだ。
俺の見たところでは互角、うかつに加勢に入るより、ここはレイチェルを信じて任せるべきだ。


「うあぁぁーーー!」

突然聞こえた悲鳴に顔を向けると、レイチェルとは反対方向で戦っていたリンジーさんが、大剣を持った男、ラミール・カーンに倒されていた。

「リンジーさ・・・!?」

腰を上げて加勢しようとしたその時、倒れているリンジーさんと目が合って足を止めた。


・・・・・来るなと、言っているのか?


目が合ったのは一瞬だったが、それだけで俺に望む事が分かった。
・・・手出し無用。

膝を着き立ち上がったリンジーさんは、左手を胸の高さに、右手を腰の前に、右足を半歩引いて、俺が矯正した構えをとりカーンを睨む。

隙の無い良い構えだ。

元々リンジーさんの戦闘センスは高かった。
けれど我流に近い動きだったから、なかなか伸び悩んでいたらしい。
そこにボクシングで活かせる動きを加えただけで、すっかり見違えた。

カーンとの因縁は聞いている。
だから一人で決着をつけるつもりなんだ・・・
それなら俺がここで手を出すわけにはいかない。

・・・大丈夫だ。
リンジーさんは負けない・・・きっと勝つ!



そして、睨み合っているサリーさんと、初老の男・・・乗船前に一度見たな。
確かこの船のオーナー、ギルバート・メンドーサだ。

戦っているというより、お互いに牽制し合っているようにも見える。
その理由は・・・・・あれか・・・・・?

サリーさんとギルバートが意識しているのは、少し距離を開けて戦っている、スーツ姿で巨躯の男、ダリル・パープルズだろう。
そしてダリルの足元では、ガラハドさんとビリージョーさんが倒れている。
特にビリージョーさんは血まみれで、生きているのか死んでいるのかさえ分からない程だ。

ダリルは右手には握ったナイフ振り上げる。狙いはビリージョーさん。
ここで止めを刺す気だ。




「ウオォォォォーーーッ!」

俺は迷うことなく走り出した。ダリル・パープルズ!

ガラハドさんを!ビリージョーさんを!よくもここまでやってくれたな!

「ふん、リコに斬られた男だな?回復できたのか、まぁお前には興味があったから丁度いい。デューク・サリバンと同じ戦い方をするのだろう?この私にも見せてみろ」

「オラァッ!」

拳の射程距離まで踏み込み、放った初撃は右ストレート!
的の大きい胸を狙い繰り出す。

「むっ!?」

想定より速い拳撃だったが、ダリルは左手を出してアラタの右ストレート掴もうと手を伸ばす。

だが・・・

「そうくるだろうと思ってたぜェーーーッ!」
「なにッツ!?」

ダリルの左手は空を掴む。なぜならば直前でアラタが右を引いたからだ!
そのまま腰を右に捻り、角度を付けて左拳を上方に向けて撃ち放つ!

ダリル・パープルズの顎がね上げられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

処理中です...