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709 アラタと風の精霊
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「そうか・・・新緑の欠片が力を貸してくれたのか」
テーブルに置かれた樹の欠片を手に取り、バリオスは少しだけ微笑んで、そしてどこか寂しそうな目で呟いた。
新緑の欠片から伝わって来る懐かしい風・・・・・それはバリオスに、懐かしい記憶を思い出させているのかもしれない。
「はい。帝国の大臣、ダリル・パープルズとの戦いで、俺は光の力を使い切って動けなくなってしまったんです。その時、突然その欠片が光り出して、体中に力が沸き起こってきたんです。光の力も回復して勝つ事ができました。それに、反動も無かったです。いつもなら少しでも光の力を使うと、すごい脱力感に襲われるんです。でも今回は何もありませんでした・・・」
アラタの話しを、バリオスは黙って聞いていた。
ロンズデールから写しの鏡で連絡を受けており、ある程度の事情を知っている事もあったが、アラタの話しはバリオスが想定していた内容でもあったからだ。
「店長、詳しい事は聞きません。ただ、本当にありがとうございました」
深く腰を曲げて頭を下げるアラタを見て、バリオスは新緑の欠片をアラタの前に置いた。
「・・・風の精霊は、キミの事も気に入ったようだ。新緑の欠片は肌身離さずもっていろ。ただし、乱用してはいけないよ。今回精霊が力を貸したのは、ヤヨイさんがキミを想っていたからだ。ヤヨイさんの心が新緑に残っていたから、精霊はそれをくみ取った。本来は時間をかけて精霊と心を通わせなければならないんだ。毎日精霊に話しかけて信頼を深めるんだ」
そう言われて、アラタはジャレットから聞いた過去の話しを思い出した。
ジョルジュ・ワーリントンは、10年もの間精霊の森で祈りを捧げ、精霊との繋がりを持った。
ヤヨイは最初から精霊に気に入られていたが、それでもいつも精霊への感謝を忘れた事はなかった。
「はい。分かりました。弥生さんが繋いでくれた精霊との絆です。大事にします」
弥生が大切にしていた想いならば、自分もその気持ちを大事にするだけだ。
それがアラタの素直な気持ちである。
アラタがそう言葉にすると、突然アラタの体が緑色の炎に包まれた。
「うわっ!な、なんだこれ!?」
「なっ!?アラタ!」
突然自分の体が燃え出した事に驚いたアラタがソファから飛び上がる。
状況が掴めずレイチェルも立ち上がると、バリオスが少し大きな声を上げた。
「大丈夫だ!二人共落ち着け!アラタ、熱くないだろう?」
それでもなんとか体についた火を消そうと腕を振り回すアラタを、バリオスが肩を掴んで止めた。
「落ち着け!その炎は精霊だ!お前は今、風の精霊の加護を受けているんだ。いいか、精霊は味方だ。その炎はお前を焼く事はしない。気持ちを落ち着けろ」
バリオスと目を合わせた事で、アラタはようやく我に返った。
まだ心臓は高鳴っているし、呼吸も乱れ、緊張からくる発汗で背中も濡らしたが、この炎が熱くないという事は理解できた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・ほ、本当・・・ですね・・・熱くない」
「そうだ。突然体が炎に包まれたのだから、驚くのは無理もないが・・・ケイトはもう少し落ち着いていたぞ」
バリオスはセインソルボ山に登った時、ケイトが風の精霊の加護を受けた時の反応と比べて、アラタの慌てぶりがケイトよりもずっと大きかった事を話した。
「はは・・・いや、だって、人体発火なんて普通取り乱しますよ」
「ふっ、まぁそれが普通だな。さて、炎も消えたな。これでお前は風の精霊の加護を受けた。闇との戦いにおいて、光の力だけでなく、もう一つ大きな力を手にした事になる」
額の汗をぬぐい、呼吸を落ち着かせる。アラタはやっと落ち着いて話せるようになった。
「これから先、間違いなく帝国とは戦争になる。そして帝国と戦争になった時、クインズベリーが勝利するためには一つの絶対条件がある・・・」
バリオスはアラタの肩から手を離すと、アラタとレイチェルの顔を交互に見て、真剣みを帯びた声で言葉を続けた。
「黒渦を消す事だ。王子の魂を解放して黒渦を消す事ができなければ、例え皇帝を討ったとしてもクインズベリーの負けなんだ」
「黒渦・・・タジーム・ハメイドの闇魔法ですね?」
「そうだ。だが、もはや黒渦は魔法という範疇には収まっていない。あれは数多の血肉を喰らい、意思を持った闇そのものだ。俺はカエストゥスで闇の化身と戦い確信した」
バリオスはそこで言葉を区切ると、右手の平を見せるように、アラタとレイチェルの前に出した。
「黒渦に対抗できる手段はただ一つ・・・光だ」
バリオスの手が眩いばかりに輝き始めた。
目も開けていられない程の光に、二人は手で目を覆い隠す。
「て、店長、その光は!?」
「これは光魔法だ。俺にしか使えないが、この光で俺はカエストゥスの闇の化身を倒した」
バリオスは光を消すと、自分の手の平を見つめて力の正体を明かした。
「光魔法・・・そんな魔法は初めて聞いた・・・まさか、店長が作ったんですか?」
レイチェルが驚きに目を丸くすると、バリオスは少しの間をおいて答えた。
「・・・完成させたのは俺だ」
自分一人で作れたわけではない。
ブレンダンとジャニスの力があったからだ。
そして完成までには気の遠くなるような、長い年月が必要だった。
ウソはついていないが、全てを話すつもりはない。
そういう時には歯切れが悪くなる事を知っているレイチェルは、それ以上の追求は止めて、話しの矛先を変えた。
「そうですか・・・それで、黒渦に対抗する力が光って事は、アラタの光の力もですよね?」
「その通りだ。俺の光魔法、そしてアラタの光の力で黒渦を消す。だが、偽国王との戦いを見た限り、アラタはまだ光の力を使いこなせていない・・・」
バリオスはそこで言葉を止めると、もう一度アラタに向き直った。
「だから、俺がお前を鍛えてやる。力の使い方を覚えれば、お前はもっと強くなれる。お前の成長が勝利に繋がるんだと覚えておけ」
テーブルに置かれた樹の欠片を手に取り、バリオスは少しだけ微笑んで、そしてどこか寂しそうな目で呟いた。
新緑の欠片から伝わって来る懐かしい風・・・・・それはバリオスに、懐かしい記憶を思い出させているのかもしれない。
「はい。帝国の大臣、ダリル・パープルズとの戦いで、俺は光の力を使い切って動けなくなってしまったんです。その時、突然その欠片が光り出して、体中に力が沸き起こってきたんです。光の力も回復して勝つ事ができました。それに、反動も無かったです。いつもなら少しでも光の力を使うと、すごい脱力感に襲われるんです。でも今回は何もありませんでした・・・」
アラタの話しを、バリオスは黙って聞いていた。
ロンズデールから写しの鏡で連絡を受けており、ある程度の事情を知っている事もあったが、アラタの話しはバリオスが想定していた内容でもあったからだ。
「店長、詳しい事は聞きません。ただ、本当にありがとうございました」
深く腰を曲げて頭を下げるアラタを見て、バリオスは新緑の欠片をアラタの前に置いた。
「・・・風の精霊は、キミの事も気に入ったようだ。新緑の欠片は肌身離さずもっていろ。ただし、乱用してはいけないよ。今回精霊が力を貸したのは、ヤヨイさんがキミを想っていたからだ。ヤヨイさんの心が新緑に残っていたから、精霊はそれをくみ取った。本来は時間をかけて精霊と心を通わせなければならないんだ。毎日精霊に話しかけて信頼を深めるんだ」
そう言われて、アラタはジャレットから聞いた過去の話しを思い出した。
ジョルジュ・ワーリントンは、10年もの間精霊の森で祈りを捧げ、精霊との繋がりを持った。
ヤヨイは最初から精霊に気に入られていたが、それでもいつも精霊への感謝を忘れた事はなかった。
「はい。分かりました。弥生さんが繋いでくれた精霊との絆です。大事にします」
弥生が大切にしていた想いならば、自分もその気持ちを大事にするだけだ。
それがアラタの素直な気持ちである。
アラタがそう言葉にすると、突然アラタの体が緑色の炎に包まれた。
「うわっ!な、なんだこれ!?」
「なっ!?アラタ!」
突然自分の体が燃え出した事に驚いたアラタがソファから飛び上がる。
状況が掴めずレイチェルも立ち上がると、バリオスが少し大きな声を上げた。
「大丈夫だ!二人共落ち着け!アラタ、熱くないだろう?」
それでもなんとか体についた火を消そうと腕を振り回すアラタを、バリオスが肩を掴んで止めた。
「落ち着け!その炎は精霊だ!お前は今、風の精霊の加護を受けているんだ。いいか、精霊は味方だ。その炎はお前を焼く事はしない。気持ちを落ち着けろ」
バリオスと目を合わせた事で、アラタはようやく我に返った。
まだ心臓は高鳴っているし、呼吸も乱れ、緊張からくる発汗で背中も濡らしたが、この炎が熱くないという事は理解できた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・ほ、本当・・・ですね・・・熱くない」
「そうだ。突然体が炎に包まれたのだから、驚くのは無理もないが・・・ケイトはもう少し落ち着いていたぞ」
バリオスはセインソルボ山に登った時、ケイトが風の精霊の加護を受けた時の反応と比べて、アラタの慌てぶりがケイトよりもずっと大きかった事を話した。
「はは・・・いや、だって、人体発火なんて普通取り乱しますよ」
「ふっ、まぁそれが普通だな。さて、炎も消えたな。これでお前は風の精霊の加護を受けた。闇との戦いにおいて、光の力だけでなく、もう一つ大きな力を手にした事になる」
額の汗をぬぐい、呼吸を落ち着かせる。アラタはやっと落ち着いて話せるようになった。
「これから先、間違いなく帝国とは戦争になる。そして帝国と戦争になった時、クインズベリーが勝利するためには一つの絶対条件がある・・・」
バリオスはアラタの肩から手を離すと、アラタとレイチェルの顔を交互に見て、真剣みを帯びた声で言葉を続けた。
「黒渦を消す事だ。王子の魂を解放して黒渦を消す事ができなければ、例え皇帝を討ったとしてもクインズベリーの負けなんだ」
「黒渦・・・タジーム・ハメイドの闇魔法ですね?」
「そうだ。だが、もはや黒渦は魔法という範疇には収まっていない。あれは数多の血肉を喰らい、意思を持った闇そのものだ。俺はカエストゥスで闇の化身と戦い確信した」
バリオスはそこで言葉を区切ると、右手の平を見せるように、アラタとレイチェルの前に出した。
「黒渦に対抗できる手段はただ一つ・・・光だ」
バリオスの手が眩いばかりに輝き始めた。
目も開けていられない程の光に、二人は手で目を覆い隠す。
「て、店長、その光は!?」
「これは光魔法だ。俺にしか使えないが、この光で俺はカエストゥスの闇の化身を倒した」
バリオスは光を消すと、自分の手の平を見つめて力の正体を明かした。
「光魔法・・・そんな魔法は初めて聞いた・・・まさか、店長が作ったんですか?」
レイチェルが驚きに目を丸くすると、バリオスは少しの間をおいて答えた。
「・・・完成させたのは俺だ」
自分一人で作れたわけではない。
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「そうですか・・・それで、黒渦に対抗する力が光って事は、アラタの光の力もですよね?」
「その通りだ。俺の光魔法、そしてアラタの光の力で黒渦を消す。だが、偽国王との戦いを見た限り、アラタはまだ光の力を使いこなせていない・・・」
バリオスはそこで言葉を止めると、もう一度アラタに向き直った。
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