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【749 時の牢獄 ⑭ 底の知れない力】
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皇帝との戦いは、序盤は兄妹が攻勢をかけていた。
皇帝に魔法を使わせない。
体力型が魔法使いを相手にする場合、魔法を使わせずに叩く事は、一番理想的な戦い方であると言えるだろう。
だが、どんな戦い方であっても当然両者の力量が関わってくる。
いかに衰えを見せていると言っても、皇帝の魔力は絶大。
初級魔法でさえ類を見ない威力で撃ってくる。
そして体から放出する恐ろしいまでの魔力は、抵抗力が弱い者ならばわずかに触れただけで気を失いかねない程のものだった。
その皇帝を相手に、テリーは超接近戦を挑んだ。
懐に入り込めば体力で勝るテリーが優位だ。それは間違いない。
だが皇帝を相手にする場合、接近戦は諸刃の剣とも言えた。
溜めのいらない初級魔法でさえ桁違いの威力なのである。
さらに手を使わずとも発する事のできる、魔力開放まである。
テリーの射程距離は、皇帝にとっても射程距離だった。
そしてアンナは遠距離からの風による攻撃、そしてテリーが致命的な攻撃を受けないように、結界でフォローをする事が役目だった。
速射砲のように放たれる皇帝の爆裂弾を結界で防ぎ、テリーの反撃につながるように風の刃を飛ばす。
テリーとアンナの息のあった連携は、確実に皇帝を削っていった。
しかし、徐々に自力の差が表れ始める。
「ぐわぁッ!」
爆発の中級魔法、爆裂空破弾がアンナの結界を破壊してテリーを吹き飛ばした。
黒煙と共に宙を舞い、受け身すら取れずに背中から地面に落とされる。
「兄さん!」
アンナがテリーに駆け寄るが、皇帝は追撃はせずに、何かを観察するように目を細めた。
「・・・なかなか強さだったが、どうやらここまでのようだな。余に中級魔法を使わせただけでも貴様らは称賛に値する」
テリーの攻撃を風魔法でほぼ防いではいるが、皇帝とて無傷ではない。
帝国の象徴とも言うべき、火の精霊の加護を受けた深紅のマントはボロボロに切り裂かれ、装飾の付いた煌びやかな衣装も今は見る影も無いほどにズタズタになっている。
ところどころ赤黒く染まっているのは、皇帝の流した血によるものだった。
威厳を見せていた白と金が混じったオールバックの髪も、血と汗で乱れている。
確かにダメージは与えている。
だが、皇帝の顔には疲れも焦りも浮かんでいない。まるで底が見えなかった。
テリーの風の刃をくらい血を流してからの皇帝は、一寸の甘さも無くなり別人のような闘争を見せた。
いや、この姿こそが本来の皇帝なのだろう。その強さゆえに、どうしても相手を下に見てしまうのは悪癖だが、テリーの予想以上の強さ、思いもよらぬダメージを受けた事で、皇帝を本気にさせてしまったのだ。
「ぐっ、ゲホッ・・・はぁ、はぁ・・・」
咳を切りながらテリーは体を起こした。
鉄の胸当ては粉々に砕かれ、上半身は焼け焦げた服の切れ端が、かろうじてひっかかっているだけだった。
「兄さん、大丈夫?」
「はぁ、はぁ・・・ああ・・・アンナの結界で威力が半減してなかったら危なかった。とっさに風も纏ったが突き破ってきた。中級魔法の威力じゃねぇぞ・・・」
兄の背を支えるように手を回すアンナに、テリーが苦笑いをして見せる。
最初こそ皇帝の隙をついて攻め立てる事ができた。
だが、皇帝が力を発揮してからは形勢は逆転し、中級魔法はアンナの結界でも防ぎ切る事はできなかった。
だが、兄妹の目には諦めも絶望も無かった。
「アンナ、やっぱり俺達の死に場所はここだな」
「うん、そうだね。大丈夫、覚悟はできてるから」
お互いの意思を確認するように、兄妹は目と目を合わせた。
恐怖はない
あの日の絶望より怖いものはないから
アンナに支えられながらテリーは立ち上がると、薙刀を中段に構え切っ先を皇帝に向けた。
そのテリーの隣では、アンナも皇帝に両手の平を向け構える。
「ふん、その目・・・気に入らんな。まだ余に勝てるつもりでいるとはな・・・では、特別に見せてやろう。どうやっても埋まらない力の差というものを!」
皇帝は両手を胸の高さに上げると、その手に魔力を集中させていく。
その両手は、まるで小さな太陽を思わせる程に強く輝き出し、圧倒的魔力は周囲の空気をビリビリと震わせ、テリーとアンナに強烈なプレッシャーを与えていた。
「くっ!こ、これは・・・まさか!?」
「アンナ、くるぞ!」
テリーとアンナの頬を汗が伝い落ちる。
皇帝の両手に集まる破壊の魔力。
それはかつてカエストゥスに撃ち、街を焼いたあの爆発の上級魔法。
「塵と化せッ!」
両手を重ねて、極限まで溜めた爆発の魔力・・・光源爆裂弾が撃ち放たれた。
皇帝に魔法を使わせない。
体力型が魔法使いを相手にする場合、魔法を使わせずに叩く事は、一番理想的な戦い方であると言えるだろう。
だが、どんな戦い方であっても当然両者の力量が関わってくる。
いかに衰えを見せていると言っても、皇帝の魔力は絶大。
初級魔法でさえ類を見ない威力で撃ってくる。
そして体から放出する恐ろしいまでの魔力は、抵抗力が弱い者ならばわずかに触れただけで気を失いかねない程のものだった。
その皇帝を相手に、テリーは超接近戦を挑んだ。
懐に入り込めば体力で勝るテリーが優位だ。それは間違いない。
だが皇帝を相手にする場合、接近戦は諸刃の剣とも言えた。
溜めのいらない初級魔法でさえ桁違いの威力なのである。
さらに手を使わずとも発する事のできる、魔力開放まである。
テリーの射程距離は、皇帝にとっても射程距離だった。
そしてアンナは遠距離からの風による攻撃、そしてテリーが致命的な攻撃を受けないように、結界でフォローをする事が役目だった。
速射砲のように放たれる皇帝の爆裂弾を結界で防ぎ、テリーの反撃につながるように風の刃を飛ばす。
テリーとアンナの息のあった連携は、確実に皇帝を削っていった。
しかし、徐々に自力の差が表れ始める。
「ぐわぁッ!」
爆発の中級魔法、爆裂空破弾がアンナの結界を破壊してテリーを吹き飛ばした。
黒煙と共に宙を舞い、受け身すら取れずに背中から地面に落とされる。
「兄さん!」
アンナがテリーに駆け寄るが、皇帝は追撃はせずに、何かを観察するように目を細めた。
「・・・なかなか強さだったが、どうやらここまでのようだな。余に中級魔法を使わせただけでも貴様らは称賛に値する」
テリーの攻撃を風魔法でほぼ防いではいるが、皇帝とて無傷ではない。
帝国の象徴とも言うべき、火の精霊の加護を受けた深紅のマントはボロボロに切り裂かれ、装飾の付いた煌びやかな衣装も今は見る影も無いほどにズタズタになっている。
ところどころ赤黒く染まっているのは、皇帝の流した血によるものだった。
威厳を見せていた白と金が混じったオールバックの髪も、血と汗で乱れている。
確かにダメージは与えている。
だが、皇帝の顔には疲れも焦りも浮かんでいない。まるで底が見えなかった。
テリーの風の刃をくらい血を流してからの皇帝は、一寸の甘さも無くなり別人のような闘争を見せた。
いや、この姿こそが本来の皇帝なのだろう。その強さゆえに、どうしても相手を下に見てしまうのは悪癖だが、テリーの予想以上の強さ、思いもよらぬダメージを受けた事で、皇帝を本気にさせてしまったのだ。
「ぐっ、ゲホッ・・・はぁ、はぁ・・・」
咳を切りながらテリーは体を起こした。
鉄の胸当ては粉々に砕かれ、上半身は焼け焦げた服の切れ端が、かろうじてひっかかっているだけだった。
「兄さん、大丈夫?」
「はぁ、はぁ・・・ああ・・・アンナの結界で威力が半減してなかったら危なかった。とっさに風も纏ったが突き破ってきた。中級魔法の威力じゃねぇぞ・・・」
兄の背を支えるように手を回すアンナに、テリーが苦笑いをして見せる。
最初こそ皇帝の隙をついて攻め立てる事ができた。
だが、皇帝が力を発揮してからは形勢は逆転し、中級魔法はアンナの結界でも防ぎ切る事はできなかった。
だが、兄妹の目には諦めも絶望も無かった。
「アンナ、やっぱり俺達の死に場所はここだな」
「うん、そうだね。大丈夫、覚悟はできてるから」
お互いの意思を確認するように、兄妹は目と目を合わせた。
恐怖はない
あの日の絶望より怖いものはないから
アンナに支えられながらテリーは立ち上がると、薙刀を中段に構え切っ先を皇帝に向けた。
そのテリーの隣では、アンナも皇帝に両手の平を向け構える。
「ふん、その目・・・気に入らんな。まだ余に勝てるつもりでいるとはな・・・では、特別に見せてやろう。どうやっても埋まらない力の差というものを!」
皇帝は両手を胸の高さに上げると、その手に魔力を集中させていく。
その両手は、まるで小さな太陽を思わせる程に強く輝き出し、圧倒的魔力は周囲の空気をビリビリと震わせ、テリーとアンナに強烈なプレッシャーを与えていた。
「くっ!こ、これは・・・まさか!?」
「アンナ、くるぞ!」
テリーとアンナの頬を汗が伝い落ちる。
皇帝の両手に集まる破壊の魔力。
それはかつてカエストゥスに撃ち、街を焼いたあの爆発の上級魔法。
「塵と化せッ!」
両手を重ねて、極限まで溜めた爆発の魔力・・・光源爆裂弾が撃ち放たれた。
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