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【748 時の牢獄 ⑬ 一騎打ち】
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体を半身にし得物は地面と平行に、左手は石突の方から15cm辺りを上から持ち、右手は腰の辺りで下から持ち構えた。
それは母ヤヨイが得意とした脇構えである。
一つ大きく息を吐いて気を整えると、テリーは己の力を開放した。
「ハァァァァァァァァー----ッツ!」
自身を中心に、天高く巻き上がる風はまるで竜巻だった。
足場には亀裂が入り、荒れ狂う風は数メートル先の皇帝にもぶつけられる。
「これは・・・貴様、まさか・・・今日まで力を隠していたのか?」
皇帝の側近として仕えている間、テリーは全力を見せる事は一度としてなかった。
そして虎視眈々と牙を磨き続けたテリーの力量は、少なからず皇帝を揺さぶる事に成功した。
その一瞬の動揺、間隙を、テリーが見逃さす事はなかった。
「ハッ!」
右足で大地を踏み抜く。
爆風が出る程に強く飛び出すと、テリーは瞬き程の一瞬で皇帝の懐に入り込んだ。
初撃は突き。
最短の距離を行き、最小の動きで出せる技で刺す。
「・・・・・少し、ヒヤリとさせられたぞ」
「チッ、これで仕留められたら楽だったんだがな」
突き出した刃先が、皇帝の喉を切り裂く寸前で止められている。
力を込めて押し貫こうとするが、見えない何かに止められて、あと一歩を進める事ができない。
結界では無い。皇帝は黒魔法使いである。ならば、どうやって自分の突きを防ぐ?
魔道具という可能性も考えたが、実態の無い厚い何かを押している手応え、そして微かに耳に届く音で、テリーは皇帝の防御方法を看破した。
「・・・風だな」
「ほう、初見で見抜くとは大した洞察力だ」
そう、皇帝の防御手段は風魔法。
高密度に圧縮した風を、盾としてぶつけ攻撃を止めていた。
ニヤリと笑った皇帝の右手が、テリーの顔に向けられる。
別次元の魔力を持つ皇帝の魔法は、初級魔法であったとしても一発で致命傷になりかねない。
テリーは手を向けられると同時に、次の行動を起こしていた。
「セァッ!」
腰を右に捻る。
薙刀の刃先を引くと同時に、左手の石突きを皇帝の顔面目がけて、横殴りするように打ち付ける!
「無駄だ」
しかし電光石火で放ったテリーの石突きは、再び皇帝に届く寸前で止められてしまう。
「さっさと引けばいい・・・!?」
勝つための条件、それは決して後手に回らない事。そして自分の距離で戦う事。
皇帝の魔法に対して、後ろに飛ぶ事は悪手中の悪手。
それでは結局皇帝の魔法の餌食になってしまう。
勝つためには、皇帝に魔法を撃たせない距離で戦う必要があった。
「ハァッツ!」
腰を左に回し、右の中段蹴りを放つ!
反撃に出ようと左手に魔力を込めた皇帝だったが、寸前で風魔法を使いテリーの蹴りを受け止める。
だが風で衝撃を吸収しても、ずしりと体の芯に響くテリーの蹴りに、皇帝も体勢を崩され後ろに転がされそうになる。
「ぐぅッツ!き、きさ・・・!?」
「ウラァァァァァーーーーーーッツ!」
石突きの連撃!
顔面を粉々に破壊する勢いで撃った上段!
胴体を貫く程の鋭さで放った中段!
喰らえば肉片となって飛ばされそうな下段!
高速で矢継ぎ早に繰り出されるのテリーの攻撃を、初撃のようにピンポイントで防ぐことは不可能だった。
その初撃も、魔法使いの皇帝が防げた理由は経験である。
皇帝も数多の戦場に立ち戦ってきた。
体力型との戦いも数えきれない程である。その経験が、目で追いきれぬ程に速く鋭いテリーの攻撃を、僅かに視界に入る情報から予測し、反射で対応させていた。
しかし単発ならばともかく、連打は追いつけない。
皇帝はピンポイントでの防御は早々と見切りをつけ、全身に風の鎧を纏わせる防御に切り替えていた。
「がはッ!ぐ、ぬぅぅぅッ!」
だが、当然魔力を一点に集中させる防御方法に比べ、広範囲に魔力を行き渡らせれば強度は落ちる。
致命的なダメージは受けていなかったが、一撃一撃が必殺のテリーの攻撃は、皇帝の体に鈍い痛みを残し積み重ねていった。
「オラァァァァァーーーーーッ!」
首を撥ね飛ばす気合で振るった一太刀だったが、皇帝の風の防御を切り裂くには至らなかった。
だが、それでも皇帝を弾き飛ばし、その背に土を付ける事には成功した。
「ぐぅッ!・・・ちょ、調子に・・・」
「ウラァァァーーーッツ!」
地に肘をつきながら上半身を起こそうとする皇帝だが、テリーはこの好機を逃さずに攻めいった。
そして得物を頭上高く掲げ、皇帝の首を両断するように振り下ろす!
「調子に・・・乗るなァァァァァァーーーーー!」
獣のような咆哮だった。
予想外の猛攻を受け、その背中に土まで付けられた事で、皇帝の自尊心は大きく傷つけられた。
そして今まさに、我が首を狙い振り下ろされた刃に、皇帝の怒りが爆発した。
「なにっ!?」
それは魔力の波動だった。
莫大な魔力を全身から発し、そのまま標的にぶつける。
火、氷、風、爆、どれにも属さないこの攻撃手段は、純粋に術者の魔力の高さによって威力が決まる。
そして皇帝の魔力の高さは言うまでもなく、まともに受ければ誰であろうとただでは済まない。
今の皇帝の心中をそのまま現したような、禍々しくも黒く巨大な波動は、テリーを飲み込むとそのまま天高く吹き飛ばし、そして大爆発を起こした。
目も開けていられないそれは、まだ薄暗い空を眩く照らす程のものだった。
「ふははははは!木っ端みじんになってしまったな!これが余の魔力開放だ!一瞬とはいえ余をヒヤリとさせたのは見事だが、所詮この程度よなぁー--ッ!」
濛々(もうもう)と爆炎が広がる空に向かって、皇帝が歓喜の声を上げる。
魔力に絶対の自信を持つ皇帝の、魔力開放を浴びて生きれいられるはずがない。
「さて、次は貴様だアンナ・ファーマー、兄の後を追って散るがいい」
兄と皇帝の一騎打ちを見ていたアンナに、皇帝が体を向ける。
爆発の魔力を込めた右手の平を差し向け、アンナに撃ち放とうとしたその時、アンナは皇帝を一笑に付した。
「本当にこれで終わったと思うの?私達があんたの魔法対策もしないでここに立ったと思う?」
「なんだと・・・・・はっ!?」
兄が殺されたと言うのに、眉一つ動かさないアンナの態度に、皇帝が空を見上げたその時!
「オォォォォォー---ーッ!」
爆炎を吹き飛ばし、テリーが姿を現した。
「なッ、馬鹿な!無傷だと!?」
「もらったー--ッ!」
テリーは掛け声と共に、空中から地上の皇帝に向かて得物を一線した。
全長200cmを超える薙刀の切っ先から、鋭く巨大な風の刃が皇帝へ目掛けて飛ばされた。
「お、おぉぉぉぉぉー--ー--ッツ!」
それは皇帝を呑み込むとそのまま大地を割った。
砕かれ引き裂かれた大地から巻き上がる巨大な土煙は、濛々と空高く巻き上がった。
「狙い通りだね、兄さん」
空中で一回転し、右足で軽やかに着地したテリーに、アンナが駆け寄り声をかける。
「ああ、ここまではな。これで終わってくれると嬉しいんだが・・・・・」
テリーは正面を向いたまま武器を構え、警戒態勢を解いていなかった。
当然殺すつもりで全力で放った一撃である。それで仕留められればそれが一番だ。
だが、あの皇帝がこれで終わるだろうか?死体を見るまでは油断できない。
そしてその判断は正しかった。
「・・・ッ!?」
集中を切らさずにいたおかげで反応できた。
突如撃たれたソレは、両手で握る薙刀が弾き飛ばされそうになる程の一撃だったが、かろうじて防ぐ事はできた。
しかし、上半身が後ろにもっていかれ、危うく腰を落としそうになる程重い一撃だった。
「・・・・・どうやら、余に驕りがあったようだな」
土煙を切り裂いてその姿を現したのは皇帝。
額から流れる血が顔の半分を赤く染めている。
兄妹を睨みつける鋭い眼光からは、一切の油断も隙も感じられない。
そしてテリーに向けたその指先には、高密度に圧縮された魔力が込められていた。
「チッ、やっぱそう簡単には終わらねぇよな・・・」
舌を打つテリーに、アンナが小さく声をかける。
「兄さん、本気なったみたいだ。ここからは私もやるよ」
「ああ、二人でヤツを討つ!・・・いくぞ!」
ここで全てに決着をつける
短く視線を交わした兄妹は大地を蹴った。
それは母ヤヨイが得意とした脇構えである。
一つ大きく息を吐いて気を整えると、テリーは己の力を開放した。
「ハァァァァァァァァー----ッツ!」
自身を中心に、天高く巻き上がる風はまるで竜巻だった。
足場には亀裂が入り、荒れ狂う風は数メートル先の皇帝にもぶつけられる。
「これは・・・貴様、まさか・・・今日まで力を隠していたのか?」
皇帝の側近として仕えている間、テリーは全力を見せる事は一度としてなかった。
そして虎視眈々と牙を磨き続けたテリーの力量は、少なからず皇帝を揺さぶる事に成功した。
その一瞬の動揺、間隙を、テリーが見逃さす事はなかった。
「ハッ!」
右足で大地を踏み抜く。
爆風が出る程に強く飛び出すと、テリーは瞬き程の一瞬で皇帝の懐に入り込んだ。
初撃は突き。
最短の距離を行き、最小の動きで出せる技で刺す。
「・・・・・少し、ヒヤリとさせられたぞ」
「チッ、これで仕留められたら楽だったんだがな」
突き出した刃先が、皇帝の喉を切り裂く寸前で止められている。
力を込めて押し貫こうとするが、見えない何かに止められて、あと一歩を進める事ができない。
結界では無い。皇帝は黒魔法使いである。ならば、どうやって自分の突きを防ぐ?
魔道具という可能性も考えたが、実態の無い厚い何かを押している手応え、そして微かに耳に届く音で、テリーは皇帝の防御方法を看破した。
「・・・風だな」
「ほう、初見で見抜くとは大した洞察力だ」
そう、皇帝の防御手段は風魔法。
高密度に圧縮した風を、盾としてぶつけ攻撃を止めていた。
ニヤリと笑った皇帝の右手が、テリーの顔に向けられる。
別次元の魔力を持つ皇帝の魔法は、初級魔法であったとしても一発で致命傷になりかねない。
テリーは手を向けられると同時に、次の行動を起こしていた。
「セァッ!」
腰を右に捻る。
薙刀の刃先を引くと同時に、左手の石突きを皇帝の顔面目がけて、横殴りするように打ち付ける!
「無駄だ」
しかし電光石火で放ったテリーの石突きは、再び皇帝に届く寸前で止められてしまう。
「さっさと引けばいい・・・!?」
勝つための条件、それは決して後手に回らない事。そして自分の距離で戦う事。
皇帝の魔法に対して、後ろに飛ぶ事は悪手中の悪手。
それでは結局皇帝の魔法の餌食になってしまう。
勝つためには、皇帝に魔法を撃たせない距離で戦う必要があった。
「ハァッツ!」
腰を左に回し、右の中段蹴りを放つ!
反撃に出ようと左手に魔力を込めた皇帝だったが、寸前で風魔法を使いテリーの蹴りを受け止める。
だが風で衝撃を吸収しても、ずしりと体の芯に響くテリーの蹴りに、皇帝も体勢を崩され後ろに転がされそうになる。
「ぐぅッツ!き、きさ・・・!?」
「ウラァァァァァーーーーーーッツ!」
石突きの連撃!
顔面を粉々に破壊する勢いで撃った上段!
胴体を貫く程の鋭さで放った中段!
喰らえば肉片となって飛ばされそうな下段!
高速で矢継ぎ早に繰り出されるのテリーの攻撃を、初撃のようにピンポイントで防ぐことは不可能だった。
その初撃も、魔法使いの皇帝が防げた理由は経験である。
皇帝も数多の戦場に立ち戦ってきた。
体力型との戦いも数えきれない程である。その経験が、目で追いきれぬ程に速く鋭いテリーの攻撃を、僅かに視界に入る情報から予測し、反射で対応させていた。
しかし単発ならばともかく、連打は追いつけない。
皇帝はピンポイントでの防御は早々と見切りをつけ、全身に風の鎧を纏わせる防御に切り替えていた。
「がはッ!ぐ、ぬぅぅぅッ!」
だが、当然魔力を一点に集中させる防御方法に比べ、広範囲に魔力を行き渡らせれば強度は落ちる。
致命的なダメージは受けていなかったが、一撃一撃が必殺のテリーの攻撃は、皇帝の体に鈍い痛みを残し積み重ねていった。
「オラァァァァァーーーーーッ!」
首を撥ね飛ばす気合で振るった一太刀だったが、皇帝の風の防御を切り裂くには至らなかった。
だが、それでも皇帝を弾き飛ばし、その背に土を付ける事には成功した。
「ぐぅッ!・・・ちょ、調子に・・・」
「ウラァァァーーーッツ!」
地に肘をつきながら上半身を起こそうとする皇帝だが、テリーはこの好機を逃さずに攻めいった。
そして得物を頭上高く掲げ、皇帝の首を両断するように振り下ろす!
「調子に・・・乗るなァァァァァァーーーーー!」
獣のような咆哮だった。
予想外の猛攻を受け、その背中に土まで付けられた事で、皇帝の自尊心は大きく傷つけられた。
そして今まさに、我が首を狙い振り下ろされた刃に、皇帝の怒りが爆発した。
「なにっ!?」
それは魔力の波動だった。
莫大な魔力を全身から発し、そのまま標的にぶつける。
火、氷、風、爆、どれにも属さないこの攻撃手段は、純粋に術者の魔力の高さによって威力が決まる。
そして皇帝の魔力の高さは言うまでもなく、まともに受ければ誰であろうとただでは済まない。
今の皇帝の心中をそのまま現したような、禍々しくも黒く巨大な波動は、テリーを飲み込むとそのまま天高く吹き飛ばし、そして大爆発を起こした。
目も開けていられないそれは、まだ薄暗い空を眩く照らす程のものだった。
「ふははははは!木っ端みじんになってしまったな!これが余の魔力開放だ!一瞬とはいえ余をヒヤリとさせたのは見事だが、所詮この程度よなぁー--ッ!」
濛々(もうもう)と爆炎が広がる空に向かって、皇帝が歓喜の声を上げる。
魔力に絶対の自信を持つ皇帝の、魔力開放を浴びて生きれいられるはずがない。
「さて、次は貴様だアンナ・ファーマー、兄の後を追って散るがいい」
兄と皇帝の一騎打ちを見ていたアンナに、皇帝が体を向ける。
爆発の魔力を込めた右手の平を差し向け、アンナに撃ち放とうとしたその時、アンナは皇帝を一笑に付した。
「本当にこれで終わったと思うの?私達があんたの魔法対策もしないでここに立ったと思う?」
「なんだと・・・・・はっ!?」
兄が殺されたと言うのに、眉一つ動かさないアンナの態度に、皇帝が空を見上げたその時!
「オォォォォォー---ーッ!」
爆炎を吹き飛ばし、テリーが姿を現した。
「なッ、馬鹿な!無傷だと!?」
「もらったー--ッ!」
テリーは掛け声と共に、空中から地上の皇帝に向かて得物を一線した。
全長200cmを超える薙刀の切っ先から、鋭く巨大な風の刃が皇帝へ目掛けて飛ばされた。
「お、おぉぉぉぉぉー--ー--ッツ!」
それは皇帝を呑み込むとそのまま大地を割った。
砕かれ引き裂かれた大地から巻き上がる巨大な土煙は、濛々と空高く巻き上がった。
「狙い通りだね、兄さん」
空中で一回転し、右足で軽やかに着地したテリーに、アンナが駆け寄り声をかける。
「ああ、ここまではな。これで終わってくれると嬉しいんだが・・・・・」
テリーは正面を向いたまま武器を構え、警戒態勢を解いていなかった。
当然殺すつもりで全力で放った一撃である。それで仕留められればそれが一番だ。
だが、あの皇帝がこれで終わるだろうか?死体を見るまでは油断できない。
そしてその判断は正しかった。
「・・・ッ!?」
集中を切らさずにいたおかげで反応できた。
突如撃たれたソレは、両手で握る薙刀が弾き飛ばされそうになる程の一撃だったが、かろうじて防ぐ事はできた。
しかし、上半身が後ろにもっていかれ、危うく腰を落としそうになる程重い一撃だった。
「・・・・・どうやら、余に驕りがあったようだな」
土煙を切り裂いてその姿を現したのは皇帝。
額から流れる血が顔の半分を赤く染めている。
兄妹を睨みつける鋭い眼光からは、一切の油断も隙も感じられない。
そしてテリーに向けたその指先には、高密度に圧縮された魔力が込められていた。
「チッ、やっぱそう簡単には終わらねぇよな・・・」
舌を打つテリーに、アンナが小さく声をかける。
「兄さん、本気なったみたいだ。ここからは私もやるよ」
「ああ、二人でヤツを討つ!・・・いくぞ!」
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