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【893 カエストゥス 対 帝国 ㉗ ウィッカーの約束】
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「・・・ウィッカー様、我々もお供します」
七人の黒魔法使いの一人、赤い髪をしたアニーが代表するように口を開いた。
これから皇帝の待つ、城内に向かおうとするところだった。
「いや、アニー達は俺に魔力を送って、もう歩く事がやっとだろ?そんな状態ではダメだ。ここを離れて休んでいてくれ」
戦いたい気持ちは理解できる。
だが枯渇寸前の魔力では、皇帝の魔力を浴びただけで命を失ってしまうかもしれない。
王位継承の儀で見た皇帝、そして垣間見えた絶大な魔力はそれだけ危険なのだ。
「ウィッカー様、せめてこれを着て行ってください。僕ので申し訳ないんですが」
茶髪のトムが自分の着ていた黒いローブを脱いで、俺に手渡してきた。
「トム・・・ああ、ありがとう」
この黒いローブは、カエストゥスの風の加護を受けたローブだ。
着ていると僅かだが魔力を上げる効果がある。
まだ戦いは続いている。消耗しているトムにもこれが必要なはずだ。
だから断ろうかと思ったが、俺に向けるみんなの目を見て受け取る事にした。
フローラにヒールをかけてもらい、黒魔法使いのみんなから魔力を分けてもらった。
けれど体は重く、足腰に力が入らない。体の芯に残っているダメージは、本来ゆっくり休養をとって抜いていくべきなんだ。
ヒールで傷は癒せても、失った血が戻らないように、抜け切らない疲れやダメージはある。
俺はこれから皇帝に挑む・・・
それを考えれば、この風の加護を受けたローブは受け取るべきだ。
俺はトムからローブを受け取って袖を通した。体系が近いから窮屈でもなく、ダボっとする事もなく着る事ができた。わずかだが体内に魔力が満ちる感覚に、拳を握り締めた。やはりこのローブは必要だ。
着替えを終えると、俺は後ろに立つフローラに向き直った。
「・・・フローラ、みんなを頼むぞ」
この中で満足に動けるのはフローラだけだ。そしてフローラは部隊長に選ばれるだけあって、見た目からは想像できないくらい強い。エロールからもらったという水色のマフラーは、エロールと同じ魔道具反作用の糸だ。魔力を他系統に変換して、青魔法の結界も使えるという。
それならば、みんなを護れるだろう。
「はい・・・ウィッカー様、お気をつけて」
首に巻いたマフラーを握りながら、フローラは頷いた。
少しは落ち着いたように見えるけど、両の眼には涙の跡が目立つ。
俺に見せる悲し気な微笑みには、様々な想いが感じられる。
背を向けて先へ進もうとして、思い直してもう一度フローラに向き直った。
俺はフローラに何もしてやれない。
何を言ってもフローラの悲しみを癒す事はできない。
だけど、エロールが繋いだ命を大切にしてほしいと・・・
怒りや憎しみの言葉を飲み込んで、命の尊さを口にしたフローラ・・・キミのために、これだけは約束しよう。
「フローラ、俺がこの戦争を終わらせる」
真っすぐにフローラの瞳を見つめてそう告げる。
これ以上悲しみを生んじゃ駄目だ。ここで皇帝を止めて戦争を終わらせる。
フローラの瞳が揺れると、また涙が浮かんできた。
そして小さく何度か頷くと、声を震わせて一言だけ口にした。
「お、お願い、します・・・・・」
「ああ・・・まかせろ」
フローラ、お前は決して口にしないだろうな。
エロールとの思い出を、エロールへの気持ちを黒い感情で汚したくないから。
だから俺に任せろ。
こんな戦争を起こして、お前からエロールを奪った帝国を、俺が叩き潰してやる!
体は重く、足にも力が入らない。魔力も全快には遠い。
だが今の俺は、かつてない程に気が高ぶっている。
「俺に任せろ」
それだけ言い残して俺は走った。
今度こそ振り返らずに、皇帝の座する城へと走った。
七人の黒魔法使いの一人、赤い髪をしたアニーが代表するように口を開いた。
これから皇帝の待つ、城内に向かおうとするところだった。
「いや、アニー達は俺に魔力を送って、もう歩く事がやっとだろ?そんな状態ではダメだ。ここを離れて休んでいてくれ」
戦いたい気持ちは理解できる。
だが枯渇寸前の魔力では、皇帝の魔力を浴びただけで命を失ってしまうかもしれない。
王位継承の儀で見た皇帝、そして垣間見えた絶大な魔力はそれだけ危険なのだ。
「ウィッカー様、せめてこれを着て行ってください。僕ので申し訳ないんですが」
茶髪のトムが自分の着ていた黒いローブを脱いで、俺に手渡してきた。
「トム・・・ああ、ありがとう」
この黒いローブは、カエストゥスの風の加護を受けたローブだ。
着ていると僅かだが魔力を上げる効果がある。
まだ戦いは続いている。消耗しているトムにもこれが必要なはずだ。
だから断ろうかと思ったが、俺に向けるみんなの目を見て受け取る事にした。
フローラにヒールをかけてもらい、黒魔法使いのみんなから魔力を分けてもらった。
けれど体は重く、足腰に力が入らない。体の芯に残っているダメージは、本来ゆっくり休養をとって抜いていくべきなんだ。
ヒールで傷は癒せても、失った血が戻らないように、抜け切らない疲れやダメージはある。
俺はこれから皇帝に挑む・・・
それを考えれば、この風の加護を受けたローブは受け取るべきだ。
俺はトムからローブを受け取って袖を通した。体系が近いから窮屈でもなく、ダボっとする事もなく着る事ができた。わずかだが体内に魔力が満ちる感覚に、拳を握り締めた。やはりこのローブは必要だ。
着替えを終えると、俺は後ろに立つフローラに向き直った。
「・・・フローラ、みんなを頼むぞ」
この中で満足に動けるのはフローラだけだ。そしてフローラは部隊長に選ばれるだけあって、見た目からは想像できないくらい強い。エロールからもらったという水色のマフラーは、エロールと同じ魔道具反作用の糸だ。魔力を他系統に変換して、青魔法の結界も使えるという。
それならば、みんなを護れるだろう。
「はい・・・ウィッカー様、お気をつけて」
首に巻いたマフラーを握りながら、フローラは頷いた。
少しは落ち着いたように見えるけど、両の眼には涙の跡が目立つ。
俺に見せる悲し気な微笑みには、様々な想いが感じられる。
背を向けて先へ進もうとして、思い直してもう一度フローラに向き直った。
俺はフローラに何もしてやれない。
何を言ってもフローラの悲しみを癒す事はできない。
だけど、エロールが繋いだ命を大切にしてほしいと・・・
怒りや憎しみの言葉を飲み込んで、命の尊さを口にしたフローラ・・・キミのために、これだけは約束しよう。
「フローラ、俺がこの戦争を終わらせる」
真っすぐにフローラの瞳を見つめてそう告げる。
これ以上悲しみを生んじゃ駄目だ。ここで皇帝を止めて戦争を終わらせる。
フローラの瞳が揺れると、また涙が浮かんできた。
そして小さく何度か頷くと、声を震わせて一言だけ口にした。
「お、お願い、します・・・・・」
「ああ・・・まかせろ」
フローラ、お前は決して口にしないだろうな。
エロールとの思い出を、エロールへの気持ちを黒い感情で汚したくないから。
だから俺に任せろ。
こんな戦争を起こして、お前からエロールを奪った帝国を、俺が叩き潰してやる!
体は重く、足にも力が入らない。魔力も全快には遠い。
だが今の俺は、かつてない程に気が高ぶっている。
「俺に任せろ」
それだけ言い残して俺は走った。
今度こそ振り返らずに、皇帝の座する城へと走った。
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