983 / 1,560
【982 緑の炎】
しおりを挟む
目が覚めた時、自分がどこにいるのか分からなかった。
見上げた空は真っ暗で、今が夜だという事は理解できた。
生い茂る草に顔が包まれていて、頭や背中に感じる冷たい感触に、自分が今、地面に倒れている事に気が付いて上半身を起こした。
なぜ自分がこんなところで寝ていたのか?
意識を失う直前まで、自分が何をしていたのか?覚醒したばかりの頭は膜を張ったようにぼんやりとしていたが、腹部や胸に走った痛みで思い出した。
「ッ!・・・そ、そうだ!王子!」
あの時俺は、王子の魔力を正面からまともに浴びて、吹き飛ばされたんだ!
そしてここは?
体の痛みなど気にしていられない。立ち上がって辺りを見回して見ると、ここが一面草花だけの広くひらけた場所だという事は分かった。
見覚えはあった。確か首都バンテージから、かなり離れた場所だ。
俺はこんなに遠くまで飛ばされたのか・・・
夜の冷たい風が頬を撫でると、だんだん頭がハッキリしてきた。
「・・・王子、なぜ・・・なぜ・・・・・」
あの時、なぜ一緒に逃げなかったんだ・・・・・
マルコ様を失った悲しみは、王子から生きる気力を奪う程深かったという事なのか・・・・・
「くそッ!」
両の拳を握り締めて俺は叫んだ。
悔しかった。何もかもが悔しかった。なぜ俺はこんなにも無力なんだ。
俺が強ければ・・・俺がもっと強ければ・・・俺が・・・・・・・
「・・・・・行かなきゃ・・・」
しばらく立ち尽くしていたが、やがて俺は首都に向かって歩き出した。
どのくらい気を失っていたか分からない。もう全てが終わっているかもしれない。
だけど俺は行かなければならない。
この戦争の結末を見届けるために・・・・・
「・・・・・おかしい」
感覚的なものだが、数時間は歩いたと思う。
平野を抜けて森に入り、一人歩き続けた。夜の森だ、静かなのは当然だと思う。
だが静か過ぎた。
枯れ枝を踏む音がやけに大きく響く。
静寂が耳に痛いくらいだ。
これが平時ならば気に留めなかったかもしれないが、今はそうではない。
立ち止まって周囲を見回して確信した。
この森からは、虫も動物も、何一つ気配が感じられない。
「・・・どういう事だ?」
気のせいではない。ジョルジュとは比べられるはずもないが、俺もカエストゥスの人間として、風の精霊の加護は受けている。集中して感覚を研ぎ澄ませば、虫や動物の動きくらいは感じ取れる。
だが何も感じられなかった。
今この森で動いているのは俺だけだ。
そしてその答えはすぐに分かった。
「ッ!?」
それは突然だった。
自分の背後で突然何かが動く気配を感じ、振り返った俺の目に飛び込んできたのは、ぐにゃりと歪んだ闇だった。
「なっ、あ・・・・・」
大きさで言えば、俺の背丈より少し大きいくらいだろうか。
どこまでも無限に広がる闇の中で、俺の目に映るその空間だけが歪んでいるのだ。
まるで嗤っているかのように。
これは・・・黒渦、なのか?
なぜここに黒渦が?どうして突然現れた?これはいったい・・・・・
様々な考えが頭を駆け巡り、俺の思考は一瞬だが停止して、目の前の黒渦に対して無防備に立ち尽くしてしまった。
それが命取りだった。
呆然とする俺に、渦は大きく口を開けて広がり、頭から丸呑みにしようと襲い掛かってきた。
「ッ!し、しまっ・・・!」
我に返ったがもう遅い。避けるタイミングが完全に一歩遅れてしまった。
闇に呑み込まれる・・・・・はずだった。
だがその時、突如俺の体が緑色の炎に包まれて燃え上がった。
「なにっ!?こ、これは・・・まさか!?」
風の精霊だ!
この緑色の炎は風の精霊だ!まさか、俺を護ってくれるのか?
俺を喰らおうとした闇の渦は、精霊の炎を浴びると、空中に霧散させられるように消えて行った。
「・・・・・風の精霊・・・・・俺を、助けてくれるのか」
体を包み込む緑色の炎が、夜の闇で揺らめいた。
見上げた空は真っ暗で、今が夜だという事は理解できた。
生い茂る草に顔が包まれていて、頭や背中に感じる冷たい感触に、自分が今、地面に倒れている事に気が付いて上半身を起こした。
なぜ自分がこんなところで寝ていたのか?
意識を失う直前まで、自分が何をしていたのか?覚醒したばかりの頭は膜を張ったようにぼんやりとしていたが、腹部や胸に走った痛みで思い出した。
「ッ!・・・そ、そうだ!王子!」
あの時俺は、王子の魔力を正面からまともに浴びて、吹き飛ばされたんだ!
そしてここは?
体の痛みなど気にしていられない。立ち上がって辺りを見回して見ると、ここが一面草花だけの広くひらけた場所だという事は分かった。
見覚えはあった。確か首都バンテージから、かなり離れた場所だ。
俺はこんなに遠くまで飛ばされたのか・・・
夜の冷たい風が頬を撫でると、だんだん頭がハッキリしてきた。
「・・・王子、なぜ・・・なぜ・・・・・」
あの時、なぜ一緒に逃げなかったんだ・・・・・
マルコ様を失った悲しみは、王子から生きる気力を奪う程深かったという事なのか・・・・・
「くそッ!」
両の拳を握り締めて俺は叫んだ。
悔しかった。何もかもが悔しかった。なぜ俺はこんなにも無力なんだ。
俺が強ければ・・・俺がもっと強ければ・・・俺が・・・・・・・
「・・・・・行かなきゃ・・・」
しばらく立ち尽くしていたが、やがて俺は首都に向かって歩き出した。
どのくらい気を失っていたか分からない。もう全てが終わっているかもしれない。
だけど俺は行かなければならない。
この戦争の結末を見届けるために・・・・・
「・・・・・おかしい」
感覚的なものだが、数時間は歩いたと思う。
平野を抜けて森に入り、一人歩き続けた。夜の森だ、静かなのは当然だと思う。
だが静か過ぎた。
枯れ枝を踏む音がやけに大きく響く。
静寂が耳に痛いくらいだ。
これが平時ならば気に留めなかったかもしれないが、今はそうではない。
立ち止まって周囲を見回して確信した。
この森からは、虫も動物も、何一つ気配が感じられない。
「・・・どういう事だ?」
気のせいではない。ジョルジュとは比べられるはずもないが、俺もカエストゥスの人間として、風の精霊の加護は受けている。集中して感覚を研ぎ澄ませば、虫や動物の動きくらいは感じ取れる。
だが何も感じられなかった。
今この森で動いているのは俺だけだ。
そしてその答えはすぐに分かった。
「ッ!?」
それは突然だった。
自分の背後で突然何かが動く気配を感じ、振り返った俺の目に飛び込んできたのは、ぐにゃりと歪んだ闇だった。
「なっ、あ・・・・・」
大きさで言えば、俺の背丈より少し大きいくらいだろうか。
どこまでも無限に広がる闇の中で、俺の目に映るその空間だけが歪んでいるのだ。
まるで嗤っているかのように。
これは・・・黒渦、なのか?
なぜここに黒渦が?どうして突然現れた?これはいったい・・・・・
様々な考えが頭を駆け巡り、俺の思考は一瞬だが停止して、目の前の黒渦に対して無防備に立ち尽くしてしまった。
それが命取りだった。
呆然とする俺に、渦は大きく口を開けて広がり、頭から丸呑みにしようと襲い掛かってきた。
「ッ!し、しまっ・・・!」
我に返ったがもう遅い。避けるタイミングが完全に一歩遅れてしまった。
闇に呑み込まれる・・・・・はずだった。
だがその時、突如俺の体が緑色の炎に包まれて燃え上がった。
「なにっ!?こ、これは・・・まさか!?」
風の精霊だ!
この緑色の炎は風の精霊だ!まさか、俺を護ってくれるのか?
俺を喰らおうとした闇の渦は、精霊の炎を浴びると、空中に霧散させられるように消えて行った。
「・・・・・風の精霊・・・・・俺を、助けてくれるのか」
体を包み込む緑色の炎が、夜の闇で揺らめいた。
0
あなたにおすすめの小説
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる