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1090 シャノンの役目と決意
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「・・・それは本当に大変だったね」
アラルコン商会の会議室では、レイチェル達から報告を受けたシャノンが、腕を組んで何度も首を縦に振った。
パウンド・フォーに騎士達を救出に向かい、山中では大蛇と戦う事になるだろう、という話しは事前に聞いていた。
だが突如現れた帝国軍第七師団長デューク・サリバン。
この男はアラタのニホンでの恩人だったが、今では帝国に魂を売り渡し、敵として戦う事となった。
そしてその戦闘力は想像を絶しており、100を超えるレイチェルの打撃を浴びても、ほとんどダメージが無かったという異常なタフネス。さらにアラタと似て非なる力、邪悪な黒い光というものを使ったと言うのだ。
そして闇に包まれた山中を降りるという、決死の脱出。
エミリーの魔道具が気配を隠す消身の壺があった事。
アラタに光の力が回復した事。
レイチェルがウィッカーから光の力を宿した玉を受け取っていた事。
何か一つでも足りなければ、全滅していただろう。
レイチェル達の行った救出劇は、シャノンが考えていた以上に厳しく険しい任務だった。
「とにかく、無事に帰って来てくれて何よりだよ。本当に心配してたんだからね」
目にかかりそうな前髪を耳にかけて、シャノンは笑顔を見せた。
話しを聞いてるだけで、息が詰まりそうな緊迫感だったのだから、実際に戦ったレイチェル達の疲労や緊張感は、とてつもなかっただろう。
「ああ・・・ありがとう。確かに大変だったが、全員が生還できた事が一番だ」
自分達の身を案じてくれていた事への感謝を伝える。
目を見詰め合わせ、レイチェルとシャノンは微笑み合った。
「さて、それじゃあ次はアタシからね」
レイチェル達の報告が終わると、シャノンはテーブルの上に数枚の書類を並べて見せた。
「これは・・・シャノン、ここまで調べてたのか!?」
並べられた書類を手にして目を通すと、レイチェルが目を開いて驚きをあらわにした。
「すごい、シャノン・・・いつの間に?」
「・・・うむ、アラルコン商会の力は知っていたつもりだが、よくここまで」
「・・・王宮の諜報員でも、ここまでは難しいかと・・・」
リンジー達も書類に目を通しては、感嘆の声を並べた。
「フフン!どんなもんだいってね!あはは、いやぁ、調子に乗りたいとこなんだけど、実はアタシは指示を出しただけで、実際に動いたのはアタシの優秀な部下達だよ。マレスって覚えてる?ほら、ロンズデールの店にいた従業員。あいつね、こういうのやらせたら多分国で一番だと思うんだよね、アタシもこの報告書見た時は、コイツすごいって素直に思ったからね」
アブエル・マレスは、シャノンがクインズベリー支店に移動した時、ロンズデールの本店を任せた男である。平民だが高い教養を身に着け、貴族とも交渉ができる。シャノンが右腕として信頼を置いている男であった。
そしてそのマレスがまとめ上げた報告書には、現時点での帝国の戦力、決戦の際に予想される配置などが、事細かに書き立てられていいたのだ。
「いやいやシャノン、これは冗談抜きで凄い。マレスって言ったっけ?彼、本当に驚くくらい優秀だよ。本職は諜報員なんじゃないのか?よく下につけてるね?」
一枚一枚に目を通しながら、レイチェルは繰り返し賞賛の言葉を述べる。
それだけの情報量が、この白い紙にびっしりと書き留められていたのだ。
そしてシャノンもレイチェル達の持ったイメージに、同意するのである。
「ん、やっぱりそう思う?あたしもそう思うから、独立は考えないの?って聞いた事あるんだよ。でも、マスレは今のままでいいんだってさ、アタシの下でアラルコン商会を盛り上げるんだって言ったの。確かに頼りになるから、いてくれると助かるんだけどね・・・律儀な男だよ」
「ん、律儀?」
最後の小さな呟きを聞き逃さなかったレイチェルが、シャノンの口にした言葉をそのまま問い返す。
「うん、彼ね、元々孤児で、子供の頃にうちの親に拾われたんだけど、その頃はすっごい荒れてたんだって。町で有名な悪ガキって感じかな。手癖が悪くて、しょっちゅう盗みをしてたんだけど、全然捕まえられなかったみたい。大人が何人も集まって包囲網を作ってるのに、マレスは必ず穴を見つけちゃうんだってさ。そこに目を付けたのがアラルコン商会の会長、うちの親父だったんだよ」
レイチェルは、ロンズデールのアラルコン商会で会った、従業員としてのマレスを思い出していた。
挨拶程度の会話しかしなかったが、落ち着きがあり、分別をわきまえているという印象だった。
だがそれと同時に警戒心の強さも感じられた。あれは子供の頃の、荒んだ生活からくるものだったのかと、納得がいった。
「きっと天性の才能なんだろうね、密偵に向いてるんだよ。親父は、この才能をコソ泥で終わらすにはもったいないって言って、マレスと交渉して雇ったんだよ。でも盗人だったマレスは捕まったら終わりでしょ?当然最初は罠だと思って、まったく話しを聞いてくれなかったってさ。信じてもらうのにすごい時間かかったらしいよ。何度も呼びかけて、ちょっとづつ話しを聞いてもらって信用を積み重ねて、それでアタシのとこに連れて来るのに、一年かかったって言ってたね」
「一年!?すごいな・・・シャノン、キミのお父さんはずいぶん粘り強い方なんだな?」
「あはは、まぁね・・・商人なら簡単に諦めるなってのが口癖なのさ。マレスの事も脈ありとは感じてたんだろうね、だから一年かかっても説得したんだろうし、過去の盗みも親父が清算したんだよ。それくらいマレスを買ってたんだね。実際マレスはすごいよ。アタシの代わりも十分できてるし、帝国の内情をここまで暴いて来るなんてね・・・」
そこで言葉を区切ると、シャノンはレイチェルが手にしている書類を指した。
「レイチェル、それ持って行っていいよ。アンリエール様にお渡しして、対策を立てなよ」
「え、いいのか?こんな大事な物」
「いいのいいの、こっちの分もちゃんとあるから。今回の戦争、立場上アタシは戦闘には加われないんだよ・・・アラルコン商会は、物資の補給とか後方支援に回るからさ。だからこういう情報集めは、きちんとやらせてもらうよ」
シャノンには黒魔法使いとして、帝国と戦える力は十分にあった。
だが両国を繋ぐパイプ役を担っているアラルコン商会、その後継ぎでもあるシャノンは、ロンズデールで話し合った結果、戦闘には加われない事となった。
もしシャノンが捉えられるなど、その身になにかあれば、両国の支援に甚大な影響を及ぼすかもしれないからだ。
ごめんね、と言ってすまなそうに眉を下げるシャノンに、レイチェルは首を横に振って言葉を返した。
「シャノン、何を謝る事がある?アラルコン商会が後方支援を引き受けてくれるのなら、こんなに心強い事はないぞ。頼りにしてるからな」
レイチェルが笑顔を向けると、リンジー達もそれに続いて笑いかけた。
「そうよ、物資が無かったら何もできないんだからね。アラルコン商会が味方で本当に良かったと思ってるわよ」
「その通りだ。シャノン、お前さんはお前さんの役目を全うしてくれりゃいい」
「シャノンさん、絶対に勝ちましょう!」
仲間達が向けてくれる温かい笑みに、シャノンの心も軽くなり、自然と笑みが浮かんだ。
「うん!ありがと!みんなの背中はアタシが護ってみせるよ!」
アラルコン商会の会議室では、レイチェル達から報告を受けたシャノンが、腕を組んで何度も首を縦に振った。
パウンド・フォーに騎士達を救出に向かい、山中では大蛇と戦う事になるだろう、という話しは事前に聞いていた。
だが突如現れた帝国軍第七師団長デューク・サリバン。
この男はアラタのニホンでの恩人だったが、今では帝国に魂を売り渡し、敵として戦う事となった。
そしてその戦闘力は想像を絶しており、100を超えるレイチェルの打撃を浴びても、ほとんどダメージが無かったという異常なタフネス。さらにアラタと似て非なる力、邪悪な黒い光というものを使ったと言うのだ。
そして闇に包まれた山中を降りるという、決死の脱出。
エミリーの魔道具が気配を隠す消身の壺があった事。
アラタに光の力が回復した事。
レイチェルがウィッカーから光の力を宿した玉を受け取っていた事。
何か一つでも足りなければ、全滅していただろう。
レイチェル達の行った救出劇は、シャノンが考えていた以上に厳しく険しい任務だった。
「とにかく、無事に帰って来てくれて何よりだよ。本当に心配してたんだからね」
目にかかりそうな前髪を耳にかけて、シャノンは笑顔を見せた。
話しを聞いてるだけで、息が詰まりそうな緊迫感だったのだから、実際に戦ったレイチェル達の疲労や緊張感は、とてつもなかっただろう。
「ああ・・・ありがとう。確かに大変だったが、全員が生還できた事が一番だ」
自分達の身を案じてくれていた事への感謝を伝える。
目を見詰め合わせ、レイチェルとシャノンは微笑み合った。
「さて、それじゃあ次はアタシからね」
レイチェル達の報告が終わると、シャノンはテーブルの上に数枚の書類を並べて見せた。
「これは・・・シャノン、ここまで調べてたのか!?」
並べられた書類を手にして目を通すと、レイチェルが目を開いて驚きをあらわにした。
「すごい、シャノン・・・いつの間に?」
「・・・うむ、アラルコン商会の力は知っていたつもりだが、よくここまで」
「・・・王宮の諜報員でも、ここまでは難しいかと・・・」
リンジー達も書類に目を通しては、感嘆の声を並べた。
「フフン!どんなもんだいってね!あはは、いやぁ、調子に乗りたいとこなんだけど、実はアタシは指示を出しただけで、実際に動いたのはアタシの優秀な部下達だよ。マレスって覚えてる?ほら、ロンズデールの店にいた従業員。あいつね、こういうのやらせたら多分国で一番だと思うんだよね、アタシもこの報告書見た時は、コイツすごいって素直に思ったからね」
アブエル・マレスは、シャノンがクインズベリー支店に移動した時、ロンズデールの本店を任せた男である。平民だが高い教養を身に着け、貴族とも交渉ができる。シャノンが右腕として信頼を置いている男であった。
そしてそのマレスがまとめ上げた報告書には、現時点での帝国の戦力、決戦の際に予想される配置などが、事細かに書き立てられていいたのだ。
「いやいやシャノン、これは冗談抜きで凄い。マレスって言ったっけ?彼、本当に驚くくらい優秀だよ。本職は諜報員なんじゃないのか?よく下につけてるね?」
一枚一枚に目を通しながら、レイチェルは繰り返し賞賛の言葉を述べる。
それだけの情報量が、この白い紙にびっしりと書き留められていたのだ。
そしてシャノンもレイチェル達の持ったイメージに、同意するのである。
「ん、やっぱりそう思う?あたしもそう思うから、独立は考えないの?って聞いた事あるんだよ。でも、マスレは今のままでいいんだってさ、アタシの下でアラルコン商会を盛り上げるんだって言ったの。確かに頼りになるから、いてくれると助かるんだけどね・・・律儀な男だよ」
「ん、律儀?」
最後の小さな呟きを聞き逃さなかったレイチェルが、シャノンの口にした言葉をそのまま問い返す。
「うん、彼ね、元々孤児で、子供の頃にうちの親に拾われたんだけど、その頃はすっごい荒れてたんだって。町で有名な悪ガキって感じかな。手癖が悪くて、しょっちゅう盗みをしてたんだけど、全然捕まえられなかったみたい。大人が何人も集まって包囲網を作ってるのに、マレスは必ず穴を見つけちゃうんだってさ。そこに目を付けたのがアラルコン商会の会長、うちの親父だったんだよ」
レイチェルは、ロンズデールのアラルコン商会で会った、従業員としてのマレスを思い出していた。
挨拶程度の会話しかしなかったが、落ち着きがあり、分別をわきまえているという印象だった。
だがそれと同時に警戒心の強さも感じられた。あれは子供の頃の、荒んだ生活からくるものだったのかと、納得がいった。
「きっと天性の才能なんだろうね、密偵に向いてるんだよ。親父は、この才能をコソ泥で終わらすにはもったいないって言って、マレスと交渉して雇ったんだよ。でも盗人だったマレスは捕まったら終わりでしょ?当然最初は罠だと思って、まったく話しを聞いてくれなかったってさ。信じてもらうのにすごい時間かかったらしいよ。何度も呼びかけて、ちょっとづつ話しを聞いてもらって信用を積み重ねて、それでアタシのとこに連れて来るのに、一年かかったって言ってたね」
「一年!?すごいな・・・シャノン、キミのお父さんはずいぶん粘り強い方なんだな?」
「あはは、まぁね・・・商人なら簡単に諦めるなってのが口癖なのさ。マレスの事も脈ありとは感じてたんだろうね、だから一年かかっても説得したんだろうし、過去の盗みも親父が清算したんだよ。それくらいマレスを買ってたんだね。実際マレスはすごいよ。アタシの代わりも十分できてるし、帝国の内情をここまで暴いて来るなんてね・・・」
そこで言葉を区切ると、シャノンはレイチェルが手にしている書類を指した。
「レイチェル、それ持って行っていいよ。アンリエール様にお渡しして、対策を立てなよ」
「え、いいのか?こんな大事な物」
「いいのいいの、こっちの分もちゃんとあるから。今回の戦争、立場上アタシは戦闘には加われないんだよ・・・アラルコン商会は、物資の補給とか後方支援に回るからさ。だからこういう情報集めは、きちんとやらせてもらうよ」
シャノンには黒魔法使いとして、帝国と戦える力は十分にあった。
だが両国を繋ぐパイプ役を担っているアラルコン商会、その後継ぎでもあるシャノンは、ロンズデールで話し合った結果、戦闘には加われない事となった。
もしシャノンが捉えられるなど、その身になにかあれば、両国の支援に甚大な影響を及ぼすかもしれないからだ。
ごめんね、と言ってすまなそうに眉を下げるシャノンに、レイチェルは首を横に振って言葉を返した。
「シャノン、何を謝る事がある?アラルコン商会が後方支援を引き受けてくれるのなら、こんなに心強い事はないぞ。頼りにしてるからな」
レイチェルが笑顔を向けると、リンジー達もそれに続いて笑いかけた。
「そうよ、物資が無かったら何もできないんだからね。アラルコン商会が味方で本当に良かったと思ってるわよ」
「その通りだ。シャノン、お前さんはお前さんの役目を全うしてくれりゃいい」
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