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全ての引継ぎをすませて、レイジェスのメンバー達が店の外に出ると、すでに店舗前には数台の馬車が止まっていた。
それはこれから向かう、クインズベリー城から手配された馬車である。
あまり豪華すぎると人目を引くので、装飾はほとんどあしらわれていないが、それでも元々の素材の良さは伝わって来る。
長旅になるため荷物は最低限の着替えなど、できる限り少なくはしたが、それでも各自が大きめのバックを2~3個にはなってしまった。
そのため一台の馬車を荷物用として、残りの馬車にそれぞれが分かれて乗る事になった。
「・・・ユーリお姉ちゃん・・・・・」
先に乗ったリカルドに続いて乗ろうとすると、後ろから袖を引かれてユーリが振り返る。
するとエルが心配そうな眼差しを向けていた。
柔らかそうな金色の髪をポニーテールに結び、ユーリとお揃いのラベンダー色のパーカーを着ている。
エルはユーリを慕いレイジェスに入った。
一人っ子のエルにとって、ユーリは姉のような存在であり、いつも一緒にいたのだ。
そのユーリが戦争に行く・・・・・
子供であってもエルは町の様子や大人達の会話から、戦争がどういうものかを理解しているのだ。
だからこそ大好きなユーリに、危ない場所へは行ってほしくない・・・そう願い袖を掴んだ。
「・・・エル、行ってくるよ」
腰を曲げて、エルと目の高さを合わせると、ユーリはエルをぎゅっと抱きしめた。
エルの気持はユーリにも十分に伝わっていた。だからこそ抱きしめた。
本当は自分も残って一緒に仕事をしていたい。誰だって戦いたいわけではないのだ。
けれど行かなければならない・・・・・
大切な人を護るためには、戦わなければならないのだ。
「ユーリ、お姉ちゃん・・・うぅ・・・ぐす・・・・・」
「エル・・・大丈夫。アタシは絶対に帰って来る」
こらえきれずに涙を流すエルの頭をなでた。
ユーリにとってもエルは妹のような存在であり、大切にしているのだ。
「・・・ぐすっ・・・ユーリ、お姉ちゃん、私、お仕事頑張るから、お掃除も毎日する。お店綺麗にして待ってる。だから・・・絶対帰ってきてね」
「ん、約束」
絶対に帰って来る。そうユーリが真っすぐに言葉を伝えると、エルも涙を拭って精一杯の笑顔を見せた。
そして二人は小指と小指を絡ませた。
「おーい!待ってくれー!」
アラタ達が馬車に乗り込み、いざ出発しようとした時だった。街道から誰かが声を上げて走って来るのが見えた。聞き覚えのあるその声に、アラタは馬車の窓を開けて顔を出した。
「あ!ジェロム!」
「はぁっ!はぁっ!・・・ふぅ~・・・間に合った~」
それはパスタ屋のジェロムだった。
よほど急いで来たのか、茶色の長い前髪は汗で額に貼り付いていて、肩で息を吐いている。
白いシャツの上にコートだけを羽織り、腰から下には黒いエプロンを付けていた。
まるで仕事中に飛び出して来たような服装だ。
「・・・ジェロム、お前どうしたんだよ?そんなに焦って、しかもその恰好?」
アラタが馬車を降りると、ジェロムは手に持っていた紙袋を前に出した。
「いやよ、保存食作ってみたんだよ。それで昨日遅くなって、いつの間にか厨房で寝ちまってな・・・遠征中はあんまり美味いの食えないだろ?味にはこだわったから自信あるぜ」
「え?ジェロム、俺達のために・・・ありがとな。お!すごいな、こんなにいっぱいいいのか?」
紙袋の中を見ると、干し肉や乾パン、ドライフルーツなどがギッシリと入っていた。
料理人のジェロムが味にこだわったと言うだけあって、美味しそうな匂いもただよって来る。
そしてなにより、自分達のために徹夜で用意してくれたという気持ちが嬉しかった。
「・・・悪いな、お前達ばかり戦わせて・・・帰って来たら、うちで美味いの腹いっぱい食わせてやるからな」
「何言ってんだよ、気にするなって。お前だって店があるし、ミレーユさんを護ってあげないと」
「・・・アラタ、絶対に帰って来いよ」
「もちろんだ、帰ったら一番に顔出しに行くよ」
別れではなく再会の約束を・・・・・
硬い握手を交わし、アラタは馬車へと戻った。
「・・・ずっと手を振ってたな」
馬車が出てしばらく進むと、アラタの前の椅子に座るジャレットが声をかけて来た。
その言葉が誰を差しているのかは、確認するまでもない。
自分達の馬車が見えなくなるまで、ジェロムはずっと手を振っていてくれたのだ。
「はい・・・あいつ、自分は戦いに行けないからって、こんなに沢山作ってくれたんです」
紙袋をジャレットに手渡すと、中を見たジャレットもその量に驚いたようだ。
「・・・すげぇな、いやでっけぇ袋だなって思ったけど、これ何人分あんだ?・・・良いヤツだよな。みんな事情があんだから、気にしなくていいのに・・・これ、大事に食おうぜ」
ジャレットは隣に座るシルヴィアにも、見てみろよ、と声をかけて紙袋の中身を見せながら、旨そうだ、良い匂いだ、と話している。
「アラタ君、またジェロムさんのパスタ屋さんに行かなきゃだね?」
アラタの隣に座るカチュアが、アラタの手にそっと自分の手を重ねた。
ニコリと笑顔を見せる妻に、アラタも笑って答えた。
「うん、約束したし、帰って来たらみんなで行こう。ジェロムのパスタ、また食べたくなったよ」
これで帰る理由がまた一つ増えた。
「絶対にみんなで行こう」
心に誓うように、もう一度言葉に出した。
それはこれから向かう、クインズベリー城から手配された馬車である。
あまり豪華すぎると人目を引くので、装飾はほとんどあしらわれていないが、それでも元々の素材の良さは伝わって来る。
長旅になるため荷物は最低限の着替えなど、できる限り少なくはしたが、それでも各自が大きめのバックを2~3個にはなってしまった。
そのため一台の馬車を荷物用として、残りの馬車にそれぞれが分かれて乗る事になった。
「・・・ユーリお姉ちゃん・・・・・」
先に乗ったリカルドに続いて乗ろうとすると、後ろから袖を引かれてユーリが振り返る。
するとエルが心配そうな眼差しを向けていた。
柔らかそうな金色の髪をポニーテールに結び、ユーリとお揃いのラベンダー色のパーカーを着ている。
エルはユーリを慕いレイジェスに入った。
一人っ子のエルにとって、ユーリは姉のような存在であり、いつも一緒にいたのだ。
そのユーリが戦争に行く・・・・・
子供であってもエルは町の様子や大人達の会話から、戦争がどういうものかを理解しているのだ。
だからこそ大好きなユーリに、危ない場所へは行ってほしくない・・・そう願い袖を掴んだ。
「・・・エル、行ってくるよ」
腰を曲げて、エルと目の高さを合わせると、ユーリはエルをぎゅっと抱きしめた。
エルの気持はユーリにも十分に伝わっていた。だからこそ抱きしめた。
本当は自分も残って一緒に仕事をしていたい。誰だって戦いたいわけではないのだ。
けれど行かなければならない・・・・・
大切な人を護るためには、戦わなければならないのだ。
「ユーリ、お姉ちゃん・・・うぅ・・・ぐす・・・・・」
「エル・・・大丈夫。アタシは絶対に帰って来る」
こらえきれずに涙を流すエルの頭をなでた。
ユーリにとってもエルは妹のような存在であり、大切にしているのだ。
「・・・ぐすっ・・・ユーリ、お姉ちゃん、私、お仕事頑張るから、お掃除も毎日する。お店綺麗にして待ってる。だから・・・絶対帰ってきてね」
「ん、約束」
絶対に帰って来る。そうユーリが真っすぐに言葉を伝えると、エルも涙を拭って精一杯の笑顔を見せた。
そして二人は小指と小指を絡ませた。
「おーい!待ってくれー!」
アラタ達が馬車に乗り込み、いざ出発しようとした時だった。街道から誰かが声を上げて走って来るのが見えた。聞き覚えのあるその声に、アラタは馬車の窓を開けて顔を出した。
「あ!ジェロム!」
「はぁっ!はぁっ!・・・ふぅ~・・・間に合った~」
それはパスタ屋のジェロムだった。
よほど急いで来たのか、茶色の長い前髪は汗で額に貼り付いていて、肩で息を吐いている。
白いシャツの上にコートだけを羽織り、腰から下には黒いエプロンを付けていた。
まるで仕事中に飛び出して来たような服装だ。
「・・・ジェロム、お前どうしたんだよ?そんなに焦って、しかもその恰好?」
アラタが馬車を降りると、ジェロムは手に持っていた紙袋を前に出した。
「いやよ、保存食作ってみたんだよ。それで昨日遅くなって、いつの間にか厨房で寝ちまってな・・・遠征中はあんまり美味いの食えないだろ?味にはこだわったから自信あるぜ」
「え?ジェロム、俺達のために・・・ありがとな。お!すごいな、こんなにいっぱいいいのか?」
紙袋の中を見ると、干し肉や乾パン、ドライフルーツなどがギッシリと入っていた。
料理人のジェロムが味にこだわったと言うだけあって、美味しそうな匂いもただよって来る。
そしてなにより、自分達のために徹夜で用意してくれたという気持ちが嬉しかった。
「・・・悪いな、お前達ばかり戦わせて・・・帰って来たら、うちで美味いの腹いっぱい食わせてやるからな」
「何言ってんだよ、気にするなって。お前だって店があるし、ミレーユさんを護ってあげないと」
「・・・アラタ、絶対に帰って来いよ」
「もちろんだ、帰ったら一番に顔出しに行くよ」
別れではなく再会の約束を・・・・・
硬い握手を交わし、アラタは馬車へと戻った。
「・・・ずっと手を振ってたな」
馬車が出てしばらく進むと、アラタの前の椅子に座るジャレットが声をかけて来た。
その言葉が誰を差しているのかは、確認するまでもない。
自分達の馬車が見えなくなるまで、ジェロムはずっと手を振っていてくれたのだ。
「はい・・・あいつ、自分は戦いに行けないからって、こんなに沢山作ってくれたんです」
紙袋をジャレットに手渡すと、中を見たジャレットもその量に驚いたようだ。
「・・・すげぇな、いやでっけぇ袋だなって思ったけど、これ何人分あんだ?・・・良いヤツだよな。みんな事情があんだから、気にしなくていいのに・・・これ、大事に食おうぜ」
ジャレットは隣に座るシルヴィアにも、見てみろよ、と声をかけて紙袋の中身を見せながら、旨そうだ、良い匂いだ、と話している。
「アラタ君、またジェロムさんのパスタ屋さんに行かなきゃだね?」
アラタの隣に座るカチュアが、アラタの手にそっと自分の手を重ねた。
ニコリと笑顔を見せる妻に、アラタも笑って答えた。
「うん、約束したし、帰って来たらみんなで行こう。ジェロムのパスタ、また食べたくなったよ」
これで帰る理由がまた一つ増えた。
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心に誓うように、もう一度言葉に出した。
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