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1119 引継ぎ
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12月15日、その日は朝から透き通るような青空が広がっていた。
前日も天気が良く、豪雪地帯のクインズベリーだが、この二日でずいぶん道の雪が溶けて片づけられていた。
「この天気なら、予定通り行けそうだな・・・」
パーマがかった長い金髪を掻き上げ、ジャレットは眩しそうに空を見上げて独り言ちた。
口から吐き出される息は白いが、太陽に照らされた空気は少しだけ暖かく感じられた。
「あ、ジャレット、そろそろ引継ぎ終わるわよ」
外で一人たたずんでいると、従業員用のドアが開いて、シルヴィアが顔をのぞかせた。
静かにドアを閉めて外に出ると、ジャレットの隣に立つ。
「ああ、了解。外回りも大丈夫だった。雪もけっこう溶けてるし、これならスムーズに行けると思う。それにしても・・・俺らいなくなったら店どうするかって思ったけど、エっちゃん一家が留守を守ってくれるって言うから助かったよな」
帝国との決戦に挑むため、ジャレット達レイジェスのメンバーは全員が店を出る事になる。
当然その間は営業ができなくなるため、店を閉めるしかないという話しになっていたのだが、エルとその母親が、自分達にまかせてもらえないかと手を挙げたのだ。
「エルちゃんのお父さんのお勤めしていたお店、経営者の方が戦争を危惧して閉めちゃったのよね。それでうちで働いてくれる事になったのは、助かったと言えば助かったけど・・・正直複雑よね」
声を落とし眉を下げるシルヴィア。自分達の留守を任せられるのは喜ばしい事だが、エルの父親は慣れた仕事を辞める事になった。父親の心境を考えると、素直に喜べないところがある。
「まぁ確かにそうだけど、こればっかりはその経営者を責められねぇよ。少しでも遠くに逃げたいって気持ちは理解できるしよ。まぁ、その辺りは割り切るしかねぇと思うぞ。エルちゃんの親父さん、接客経験者だからレジも慣れたもんだったし、即戦力じゃん?ご両親が一緒ならエっちゃんも嬉しいだろうしさ、良いところを見ようぜ」
「・・・そうね、うん・・・ジャレットの言う通りね」
シルヴィアは自分を納得させるようにうなずくと、ジャレットと一緒に事務所へ戻って行った。
「説明は以上です。私達が留守の間、大変だと思いますがレイジェスはお任せいたします。買い取りは分かる物だけで大丈夫ですし、各部門のコーナーも閉めいきますので、メインレジだけの対応で大丈夫です」
ジャレットとシルヴィアが事務所に戻ると、レイチェルがエルとその両親に、留守の間の説明を終えたところだった。
エルの家族に留守を任せると言っても、普段7~8人で回している店を、たった三人でカバーできるはずがない。そのため三人でできる範囲にまで、営業規模を縮小する事にしたのだ。
武器、防具、各魔法コーナーを閉め、メインレジだけで会計を行うようにする。
買い取りも専門的な知識のいらない、日用品にだけ限定する。
閉店時間も早める事にした。12月は通常16時の閉店だが、15時30分にしたのだ。
定休日も週に二日設ける事にしたので、週に五日、三人全員が出勤でも無理なく体を休める事ができる。
「あの、レイチェルさん、皆さん、私まで雇っていただいて本当にありがとうございます。妻と娘と力を合わせてお店を護っていきますので、よろしくお願い致します」
一通りの説明が終わると、エルの父親が事務所にいる全員に深々と頭を下げた。
「ああ、そんなかしこまらないでください。助かったのはうちの方なんです。本当は帰ってくるまで店を閉めるしかないって結論だったんです。でも、まだこの町に残っている人の事を考えたら、それは本意じゃなくて、できれば営業は続けたかったんです。だからエルちゃんのお父さんがお力を貸してくださるのは、私達にとって本当にありがたい事なんです。こちらこそ、よろしくお願い致します」
レイチェルがニコリと微笑んで頭を下げると、エルの父親はもう一度頭を下げて、頑張ります、と答えた。
「それと、治安部隊がこの店の警備に着きます。脅かすわけではありませんが、もしもの時は店を捨てて逃げてください。治安部隊には、皆さんの安全を最優先するように話してありますから、脱出の手助けをしてくれます」
エルの家族がレイジェスの留守を預かると決まった時、レイチェルは治安部隊に話しを通していたのだ。
今回はこちらから帝国に攻め込むわけだが、帝国が黙って攻め込まれるのを待つだけとは限らない。
もし帝国の別動隊が攻めて来た場合も想定し、備えておく事は当然であった。
「脱出、ですか・・・・・国を捨てたくはないのですが、その時は覚悟を決めなければならないのでしょうね・・・」
エルの父親は悲し気に顔を伏せた。今日この日まで町に残っていた人達は、それだけ国を想う気持ちが大きいのだ。捨てる事なんて考えたくもないだろう。
レイチェルはエルの父親の言葉を聞き、その想いをくみ取るようにしばし目を伏せた。
そしてゆっくりと目を開けると、静かだが力強い言葉で答えた。
「大丈夫です。あくまでもしもの時の話しですから・・・この国に住む全ての人が、ずっとこの国にいられる。そのために私達がこの戦争を終わらせます。だから、信じて待っていてください」
私もこの国が好きだから・・・最後にそう一言口にして、レイチェルは言葉を締めた。
前日も天気が良く、豪雪地帯のクインズベリーだが、この二日でずいぶん道の雪が溶けて片づけられていた。
「この天気なら、予定通り行けそうだな・・・」
パーマがかった長い金髪を掻き上げ、ジャレットは眩しそうに空を見上げて独り言ちた。
口から吐き出される息は白いが、太陽に照らされた空気は少しだけ暖かく感じられた。
「あ、ジャレット、そろそろ引継ぎ終わるわよ」
外で一人たたずんでいると、従業員用のドアが開いて、シルヴィアが顔をのぞかせた。
静かにドアを閉めて外に出ると、ジャレットの隣に立つ。
「ああ、了解。外回りも大丈夫だった。雪もけっこう溶けてるし、これならスムーズに行けると思う。それにしても・・・俺らいなくなったら店どうするかって思ったけど、エっちゃん一家が留守を守ってくれるって言うから助かったよな」
帝国との決戦に挑むため、ジャレット達レイジェスのメンバーは全員が店を出る事になる。
当然その間は営業ができなくなるため、店を閉めるしかないという話しになっていたのだが、エルとその母親が、自分達にまかせてもらえないかと手を挙げたのだ。
「エルちゃんのお父さんのお勤めしていたお店、経営者の方が戦争を危惧して閉めちゃったのよね。それでうちで働いてくれる事になったのは、助かったと言えば助かったけど・・・正直複雑よね」
声を落とし眉を下げるシルヴィア。自分達の留守を任せられるのは喜ばしい事だが、エルの父親は慣れた仕事を辞める事になった。父親の心境を考えると、素直に喜べないところがある。
「まぁ確かにそうだけど、こればっかりはその経営者を責められねぇよ。少しでも遠くに逃げたいって気持ちは理解できるしよ。まぁ、その辺りは割り切るしかねぇと思うぞ。エルちゃんの親父さん、接客経験者だからレジも慣れたもんだったし、即戦力じゃん?ご両親が一緒ならエっちゃんも嬉しいだろうしさ、良いところを見ようぜ」
「・・・そうね、うん・・・ジャレットの言う通りね」
シルヴィアは自分を納得させるようにうなずくと、ジャレットと一緒に事務所へ戻って行った。
「説明は以上です。私達が留守の間、大変だと思いますがレイジェスはお任せいたします。買い取りは分かる物だけで大丈夫ですし、各部門のコーナーも閉めいきますので、メインレジだけの対応で大丈夫です」
ジャレットとシルヴィアが事務所に戻ると、レイチェルがエルとその両親に、留守の間の説明を終えたところだった。
エルの家族に留守を任せると言っても、普段7~8人で回している店を、たった三人でカバーできるはずがない。そのため三人でできる範囲にまで、営業規模を縮小する事にしたのだ。
武器、防具、各魔法コーナーを閉め、メインレジだけで会計を行うようにする。
買い取りも専門的な知識のいらない、日用品にだけ限定する。
閉店時間も早める事にした。12月は通常16時の閉店だが、15時30分にしたのだ。
定休日も週に二日設ける事にしたので、週に五日、三人全員が出勤でも無理なく体を休める事ができる。
「あの、レイチェルさん、皆さん、私まで雇っていただいて本当にありがとうございます。妻と娘と力を合わせてお店を護っていきますので、よろしくお願い致します」
一通りの説明が終わると、エルの父親が事務所にいる全員に深々と頭を下げた。
「ああ、そんなかしこまらないでください。助かったのはうちの方なんです。本当は帰ってくるまで店を閉めるしかないって結論だったんです。でも、まだこの町に残っている人の事を考えたら、それは本意じゃなくて、できれば営業は続けたかったんです。だからエルちゃんのお父さんがお力を貸してくださるのは、私達にとって本当にありがたい事なんです。こちらこそ、よろしくお願い致します」
レイチェルがニコリと微笑んで頭を下げると、エルの父親はもう一度頭を下げて、頑張ります、と答えた。
「それと、治安部隊がこの店の警備に着きます。脅かすわけではありませんが、もしもの時は店を捨てて逃げてください。治安部隊には、皆さんの安全を最優先するように話してありますから、脱出の手助けをしてくれます」
エルの家族がレイジェスの留守を預かると決まった時、レイチェルは治安部隊に話しを通していたのだ。
今回はこちらから帝国に攻め込むわけだが、帝国が黙って攻め込まれるのを待つだけとは限らない。
もし帝国の別動隊が攻めて来た場合も想定し、備えておく事は当然であった。
「脱出、ですか・・・・・国を捨てたくはないのですが、その時は覚悟を決めなければならないのでしょうね・・・」
エルの父親は悲し気に顔を伏せた。今日この日まで町に残っていた人達は、それだけ国を想う気持ちが大きいのだ。捨てる事なんて考えたくもないだろう。
レイチェルはエルの父親の言葉を聞き、その想いをくみ取るようにしばし目を伏せた。
そしてゆっくりと目を開けると、静かだが力強い言葉で答えた。
「大丈夫です。あくまでもしもの時の話しですから・・・この国に住む全ての人が、ずっとこの国にいられる。そのために私達がこの戦争を終わらせます。だから、信じて待っていてください」
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