異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,131 / 1,560

1130 クインズベリー国民の見送り

しおりを挟む
バーナード・ロブギンスを先頭にした行進は、町中から大歓声の元に迎えられた。

すでに首都から逃げ出している人も多いが、国を捨てる事ができずに残っている人達も大勢いる。
そんな彼らにとって、軍の大将と二人の王子が戦場に向かう姿を見せる事は、大きな力となった。

「なぁなぁ兄ちゃんよぉ!超うっせぇんだけど!?なんとかなんねぇのかよ!?帝国と戦う前に俺の鼓膜がピンチなんだけど!」

町の外へと続く中央通りを、軍隊の最後尾に付いて歩き進んでいると、両手で耳を押さえながらリカルドがアラタに苦情を言ってきた。
普通の声量で話しても周囲の歓声にかき消されるため、ほぼ怒鳴り声に近い。

「もう少しで外だから、それまで我慢しろよ!て言うかお前、両手で耳塞ぐなんて失礼だぞ!みんな応援してくれてんだから笑顔で手を振れよ!」

アラタも負けじと大きな声で返すが、リカルドは噛みつくようにもっと大きな声をぶつけて来る。

「んなの知らねぇよ!どうせこいつらみんな王子しか見てねぇじゃん!キャーキャー言いやがってよぉ!浮かれてんじゃねぇよ!俺らしばらく保存食しか食えねぇんだぞ!兄ちゃんはそれでいいのかよ!」

「王子様なんだから人気あって当然だろ!食事はみんな同じもん食うんだから我慢しろよ!て言うか、お前はいったい何に怒ってんだよ!?」

周囲の大歓声に文句を言っていたはずが、王子への声援の嫉妬に変わり、最後には食事への不満になった。
アラタが眉間にシワを寄せて怒鳴ると、顔が近かったのか耳を押さえていてもリカルドの鼓膜を強く刺激したようで、リカルドは思い切り顔をしかめた。

「うっせぇぇぇぇぇんだよ!近所迷惑だろ!夜勤の人はまだ寝てんだぞ!黙って歩けよ!」

「お、おまっ!この!お前が言い出したんだろ!」

「二人ともうるさい」

アラタとリカルドの前を歩いていたユーリが、くるりと振り返って、二人の脛を爪先で刺すように蹴りつけた。

「痛ッ!」

「ぐあッ!」

骨に響く痛みに二人が脛を押さえてうずくまると、ユーリは冷たい眼差しで二人を見下ろしながら警告を発した。

「次後ろで騒いだら抉るから。分かった?」

「は、はい」

「お、おう」


顔を青くして返事をするアラタ達をじっと睨みつけると、ユーリは黙って背中を向けて歩いて行った。

アラタとリカルドは、お前のせいで怒られたんだぞ!お互いにそう抗議する目で睨み合い、まだ痛む足を引きずるようにして歩き出した。





「アラタくーん!カチュアちゃーん!シルヴィアさーん!みんな絶対に帰って来てねー!」

大歓声の中を歩き続け、聞き覚えのある声に顔を向けると、そこにいたのは金色の髪をポニーテールにした花屋のパメラだった。人だかりの中、両手を振って精一杯の声を出している。

「あ、アラタ君!パメラさんだ!見送りに来てくれたんだよ!」

「うん、最近忙しくてあんまり花屋さんに行けてなかったのに・・・嬉しいな」

パメラはアラタが結婚の許可をもらいに、カチュアの実家に行く途中に寄った花屋の店員である。

パメラもレイジェスにはたまに来ていたようで、二人がレイジェスの店員だと分かると意気投合したのである。いつもシルヴィアにレジ打ちをしてもらっており、シルヴィアとは特に仲が良い。

「ふふ、本当に嬉しいわよね。すごく元気をもらったわ。帰って来たらパメラさんも誘ってみんなで食事に行きましょう」

アラタとカチュアが、ぜひ行きましょう、と答えると、シルヴィアも笑顔でパメラに手を振り返した。




「ユーリお姉ちゃーん!みんなー!」

もうすぐ町の出口というところで、一生懸命に手を振っている少女の姿が見えた。
エル・ラムナリンとその両親である。

「エル!・・・ここまで来たんだ」

朝、店の前で別れはすませたはずだ。けれどエルはお店でじっとしている事ができず、最後にもう一度会いに来たのだ。

驚くユーリに、となりを歩くケイトが声をかけた。

「ユーリ、ぼーっとしてないで、手を振ってあげなよ。エルちゃんあんたに会いたくて、ここで待ってたんだよ?」

「あ・・・うん」

ユーリは歩調を緩めると、人だかりの中、エルの目をまっすぐに見つめて手を振った。

「ユーリお姉ちゃん!絶対だよ!絶対帰って来てね!約束だよ!」

大好きなお姉ちゃんとまた一緒に仕事がしたい。
少女の願いはそれだけである。

「・・・うん!約束!エル、待ってて!」

ユーリも大好きな妹に誓った。自分は絶対に帰って来ると。



「・・・エルちゃんはユーリが本当に大好きなんだね」

やがてエルの前を通り過ぎて、その姿が小さくなり見えなくなると、ケイトはユーリにハンカチを渡して優しく声をかけた。

「ずず・・・ん、ありがと」

ケイトからハンカチを借りると、ユーリは鼻をすすって、目元から零れそうな涙を拭った。

「ユーリ、絶対に負けられないね」

「ん、帝国はアタシがぶっ飛ばす。皇帝の奥歯引っこ抜いて、脳天勝ち割ってやる」


「・・・ん?うん?な、なんて?」


慰めたら妙に具体的で怖い言葉が返ってきたので、ケイト目をパチパチさせて聞き返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...