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1177 雨降りの朝
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クインズベリーを出立して五日目の朝。
この日は曇り空が太陽を隠し、ポツポツと小雨の降る肌寒い日だった。
「はい、アラタ君。スープだよ」
「ありがとう、カチュア」
朝食の温かいスープを受け取ると、器を通して手の平に伝わって来る熱が、かじかんだ手を温めてくれる。携帯食のスープは粉末にお湯をかけて溶かすだけのものだが、それでも冷えた体には、この上ないほど美味しく感じられた。
一口含んで喉に流し込み、ほっと息をつくと、アラタは顔を上げて、自分達を覆う青く輝く魔力の膜を見つめた。
「・・・それにしても、結界って便利だな」
空からは冷たい雨が降っている。だがアラタ達を囲う結界が雨を弾くため、髪の毛一本さえ濡れる事はなかった。
「ははは、魔力を使うから普通はこういう使い方はあまりしないんだけどね。でも朝食くらい落ち着いて食べたいでしょ?」
アラタの呟きに、隣のジーンが笑って答えた。
倒れている樹を椅子代わりにして腰を掛け、左足の腿に肘を乗せながら、指先を空に向けて魔力を送っている。必然的に左手は使えなくなるが、朝食はパンとスープなので、右手一本が自由に使えれば不自由な事はなかった。
「ふふふ、ジーンありがとうね。結界って本当に便利だって私も思うよ。空気は温められないけど風は防げるから、寒さもだいぶ違うよね」
アラタを挟んで右隣に座るカチュアが、顔を覗かせて笑って声をかけた。
「そんなに強い雨じゃないけど、冬の冷たい雨に打たれて風邪なんてひいてられないからね。ほら、周りのみんなも結界を使ってるよ」
そう言ってジーンが辺り見回すと、アラタとカチュアも釣られるように周囲に目を向けた。
数メートル間隔で5~6人くらいのまとまりができており、その大半が結界を張って雨風をしのいでいるのだ。
「ハハハ、考える事はみんな同じって事だな」
アラタが笑って話すと、カチュアもうんうんと頷いた。
「だって寒いもんね。まだクインズベリーの領内だから、雪も積もってるし・・・帝国にはあとどのくらいなのかな?」
ちぎったパンをスープに付けて口に入れると、カチュアは独り言のように空を見上げて呟いた。
「このペースなら明日には中間地点には着くわよ」
背中から声をかけられて振り返ると、湯気の立つスープの器を持ったシルヴィアが立っていた。
「あ、シルヴィアさん」
「う~ん、やっぱり結界の中は違うわね。風がないだけでもすごく暖かく感じるわ。あ、となり座らせてね」
シルヴィアはカチュアの隣に腰を下ろすと、暖かいスープを一口飲んで、やっと一息ついたように表情を緩めた。、
「シルヴィア、ロブギンス団長のところに行ってたんでしょ?」
ジーンが話しを向けると、シルヴィアが顔を向けて答えた。
「ええ、だいたいの話しはできたから、私だけ先に戻ったのよ。あとはレイチェルとジャレットが細かい話しを詰めてるわ。それでね、二度の襲撃を受けたし、昨夜から軍や騎士団の夜の対策が始まったでしょ?だから進行ペースは予定より遅れているの。本当なら今日あたりに着いてるはずなんだけど、このペースだと明日の昼頃になる見込みね」
「そっか、このまま何事もなく行ければいいんだけどね」
「シルヴィアさん、中間地点まで行ったら、軍は二つに分かれるんですよね?」
カチュアの問いかけに、シルヴィアは口に運んだスープを下げた。
「・・・ええ、そうよ。マルス殿下とオスカー殿下とはそこまで。そして軍も私達レイジェスも二手に分かれる事になるわ」
シルヴィアは一度カチュアに視線を送った後、意を決したように前を向いて言葉を発した。
それは仲間達と分かれて戦う事、決戦を意識してのものだった。
クインズベリー国が攻略すべき場所は二つ。
西の山脈パウンド・フォー。そして北の砂漠に流れるユナニマス大川。
国を出立する前に決めた通り、中間地点で軍を二つに分けて挑む事になる。
「あ、ちょうどここにいる四人は、北のユナニマス大川ですね」
「あら、そう言えばそうね・・・ジャレットがいないけど、アラタ君の言う通りだわ。もちろん何万人って軍人も一緒だけど、レイジェスはこのメンバーで協力して北を攻略しなければならないわ・・・」
シルヴィアはそこで言葉を切ると、アラタ、カチュア、ジーンの顔をそれぞれ見つめて言葉を紡いだ。
「・・・みんな、命は大切にしてね。誰一人欠ける事無く帰って、また一緒に働きましょう」
そしてニコリと微笑むと、冷めないうちに食べましょう、と言葉を続けてシルヴィアはスープを口にした。
アラタ達も、はい、と短く返事をすると、それ以上は話しをせずに朝食すませた。
そして午前9時、夜の番をしていた兵達が起きて食事や着替えを終えると、10時前にクインズベリー軍は目的地に向かって出発した。
この日は曇り空が太陽を隠し、ポツポツと小雨の降る肌寒い日だった。
「はい、アラタ君。スープだよ」
「ありがとう、カチュア」
朝食の温かいスープを受け取ると、器を通して手の平に伝わって来る熱が、かじかんだ手を温めてくれる。携帯食のスープは粉末にお湯をかけて溶かすだけのものだが、それでも冷えた体には、この上ないほど美味しく感じられた。
一口含んで喉に流し込み、ほっと息をつくと、アラタは顔を上げて、自分達を覆う青く輝く魔力の膜を見つめた。
「・・・それにしても、結界って便利だな」
空からは冷たい雨が降っている。だがアラタ達を囲う結界が雨を弾くため、髪の毛一本さえ濡れる事はなかった。
「ははは、魔力を使うから普通はこういう使い方はあまりしないんだけどね。でも朝食くらい落ち着いて食べたいでしょ?」
アラタの呟きに、隣のジーンが笑って答えた。
倒れている樹を椅子代わりにして腰を掛け、左足の腿に肘を乗せながら、指先を空に向けて魔力を送っている。必然的に左手は使えなくなるが、朝食はパンとスープなので、右手一本が自由に使えれば不自由な事はなかった。
「ふふふ、ジーンありがとうね。結界って本当に便利だって私も思うよ。空気は温められないけど風は防げるから、寒さもだいぶ違うよね」
アラタを挟んで右隣に座るカチュアが、顔を覗かせて笑って声をかけた。
「そんなに強い雨じゃないけど、冬の冷たい雨に打たれて風邪なんてひいてられないからね。ほら、周りのみんなも結界を使ってるよ」
そう言ってジーンが辺り見回すと、アラタとカチュアも釣られるように周囲に目を向けた。
数メートル間隔で5~6人くらいのまとまりができており、その大半が結界を張って雨風をしのいでいるのだ。
「ハハハ、考える事はみんな同じって事だな」
アラタが笑って話すと、カチュアもうんうんと頷いた。
「だって寒いもんね。まだクインズベリーの領内だから、雪も積もってるし・・・帝国にはあとどのくらいなのかな?」
ちぎったパンをスープに付けて口に入れると、カチュアは独り言のように空を見上げて呟いた。
「このペースなら明日には中間地点には着くわよ」
背中から声をかけられて振り返ると、湯気の立つスープの器を持ったシルヴィアが立っていた。
「あ、シルヴィアさん」
「う~ん、やっぱり結界の中は違うわね。風がないだけでもすごく暖かく感じるわ。あ、となり座らせてね」
シルヴィアはカチュアの隣に腰を下ろすと、暖かいスープを一口飲んで、やっと一息ついたように表情を緩めた。、
「シルヴィア、ロブギンス団長のところに行ってたんでしょ?」
ジーンが話しを向けると、シルヴィアが顔を向けて答えた。
「ええ、だいたいの話しはできたから、私だけ先に戻ったのよ。あとはレイチェルとジャレットが細かい話しを詰めてるわ。それでね、二度の襲撃を受けたし、昨夜から軍や騎士団の夜の対策が始まったでしょ?だから進行ペースは予定より遅れているの。本当なら今日あたりに着いてるはずなんだけど、このペースだと明日の昼頃になる見込みね」
「そっか、このまま何事もなく行ければいいんだけどね」
「シルヴィアさん、中間地点まで行ったら、軍は二つに分かれるんですよね?」
カチュアの問いかけに、シルヴィアは口に運んだスープを下げた。
「・・・ええ、そうよ。マルス殿下とオスカー殿下とはそこまで。そして軍も私達レイジェスも二手に分かれる事になるわ」
シルヴィアは一度カチュアに視線を送った後、意を決したように前を向いて言葉を発した。
それは仲間達と分かれて戦う事、決戦を意識してのものだった。
クインズベリー国が攻略すべき場所は二つ。
西の山脈パウンド・フォー。そして北の砂漠に流れるユナニマス大川。
国を出立する前に決めた通り、中間地点で軍を二つに分けて挑む事になる。
「あ、ちょうどここにいる四人は、北のユナニマス大川ですね」
「あら、そう言えばそうね・・・ジャレットがいないけど、アラタ君の言う通りだわ。もちろん何万人って軍人も一緒だけど、レイジェスはこのメンバーで協力して北を攻略しなければならないわ・・・」
シルヴィアはそこで言葉を切ると、アラタ、カチュア、ジーンの顔をそれぞれ見つめて言葉を紡いだ。
「・・・みんな、命は大切にしてね。誰一人欠ける事無く帰って、また一緒に働きましょう」
そしてニコリと微笑むと、冷めないうちに食べましょう、と言葉を続けてシルヴィアはスープを口にした。
アラタ達も、はい、と短く返事をすると、それ以上は話しをせずに朝食すませた。
そして午前9時、夜の番をしていた兵達が起きて食事や着替えを終えると、10時前にクインズベリー軍は目的地に向かって出発した。
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