異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1239 北へ向かう者達

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「ヴァン、総司令官はロブギンス軍団長だけど、その下で部隊を指揮するのはキミが中心になってやってくれよ」

ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアンは、役割を譲ると言うようにヴァンに右手を差し向けた。

北のユナニマス大川を攻略する兵達は、すでに列を成して待機しており、後はロブギンスの号令を待つだけだった。
現在ロブギンスは、西に行くカルロスと最後の打ち合わせのため席を外しているが、戻り次第の出立になるだろう。
その最後の待ち時間に、フェリックスからの突然の申し出だった。

 「なっ!?お前・・・はぁ~、まったく・・・どうにも大人しいとは思ってたけどよ、そんな事考えてたのかよ?まぁ、お前に仕切りが向いてるとは思わねぇよ。お前は一人で動いてる方が合ってるだろうしな。けどよ、騎士団の第三部隊だけはお前が指示しろ。他は俺とかフェンテスで回すが、あいつらだけはお前でないと駄目だ。分かるよな?」

ヴァンは面倒そうにボウズ頭をガシガシと掻き、フェリックスにジロリと目を向ける。
だが大きく動揺する事はなかった。なぜなら元々ヴァンは、フェリックスを面倒な男と見ていたからだ。

同じゴールド騎士でも、生真面目なアルベルトとは反対に、フェリックスは楽をしようと考えるところがある。戦いでも敵を侮るふしがあり、ムラっ気が多いのだ。
そういう性格だと知っているからこそ、突拍子も無い事を言ってくる可能性は十分にあった。

「まぁ、それはそうだよね。第三騎士団は僕が躾(しつけ)たから、僕でないと言う事聞かないかもしれないよね。分かった、第三騎士団だけは僕が指示を出すよ。だから他は全部頼むね」

ヴァンから指摘されるまでもなく、フェリックスも第三騎士団は自分の役目だと理解していた。第三騎士団の構成は主に貴族の次男三男である。そして家督を継げない者達の中でも、更に素行の悪い者ばかりが集まってできた集団である。
そしてそれを力でねじ伏せて、支配したのがフェリックスだ。

「・・・チッ、フェリックス、お前最初から・・・・・いや、いい。お前は第三騎士団だけ見てろ」

フェリックスの反応でヴァンは理解した。

フェリックスは最初から第三騎士団だけを見るつもりだったのだ。
本来は他の部隊にも指示を出し、全体を見なければならない立場だが、フェリックスは第三騎士団だけに集中したいらしい。

なぜか?

「悪いね、ヴァン。一応ね、第三騎士団は屈服させて、今は僕に忠実になってるんだけどさ・・・ちょっと甘い顔を見せるとつけ上がるかもしれないだろ?やっぱり躾けってのは継続が大事だと思うんだよね」

自分の考えがヴァンに悟られたと感じたフェリックスは、建前を止めて本心を口にした。そしてそれを語るフェリックスの顔には、面倒と口にしながらも、どこか楽しそうな歪んだ笑みが浮かんでいた。

「・・・本当、お前って嫌な性格してるぜ」

どうやら第三騎士団は、フェリックスに相当厳しい目で見られているようだ。
頬を引きつらせながら、ヴァンは心の中で第三騎士団を哀れんだ。


しかしフェリックスの思惑通りにはいかなかった。
第三騎士団をより厳しく躾けようとしたフェリックスだったが、クインズベリーを出立する前に、仲良くしてください、と釘を刺していた闇の巫女ルナがいたからだ。
第三騎士団の前には常にルナがいて、フェリックスと第三騎士団の仲を取り持とうとするため、フェリックスも強い行動に出る事ができなかったのだ。
その結果円満とは言わないが、ほどほどの関係性は築けるようになったのだった。




「ニーディアさん、よろしくお願いします」

隊列を作り、出立の号令を待つカチュアは、隣に立つ長い茶髪の女性と挨拶を交わしていた。
その女性とは、先日セドコン村で共闘した青魔法使い、ニーディア・エスパーザである。

「こちらこそよろしくね。部隊は違うけど、お互い助け合っていきましょう」

軍の所属であるニーディアは、配置された部隊で動く事になる。独立部隊のレイジェスとは根本的に動きが違うのだ。けれどニーディアは手を差しだし、カチュアもその手を笑顔で握った。

「はい、お互い助け合いましょう」

当初、軍の副団長カルロス・フォスターの影響で、レイジェスは歓迎されていたとは言えない環境だった。だがここに着くまでの間、レイジェスが中心となって敵の襲撃を退けた事、そしてセドコン村での活躍も大きく、今では信頼関係を築けていたのだ。
特にニーディアは仲間の仇を討てた事もあり、感謝の念は一段強かった。


「それにしても、私はてっきりレイジェスは全員揃って動くと思ったんだけど、北と西で半々に別れたのね?」

人数を数えるように、ニーディアがカチュアの周りに視線を向ける。ニーディアの指摘通り、レイジェスは北と西に半々で別れたため、この場には6人しかいない。

アラタ・サカキ。カチュア・サカキ。ジャレット・キャンベル。シルヴィア・メルウィー。ジーン・ハワード。そして先日レイジェスの所属として加入したばかりの、魔導剣士ラクエル・エンリケスだ。

「はい、アンリエール様が戦力を振り分けられたんです。私もレイジェスはレイジェスで行動するものだと思ってたんですが、私達のような身軽な独立部隊は、北と西の両方にいた方がいいのかもしれませんね。きっとアンリエール様はそうお考えになられたんだと思います」

「なるほどね、確かに私達軍の所属はどうしても上の指示を待って行動する事が多いわ。レイジェス程の戦力で、自由に行動できる遊撃隊は貴重よね」

ニーディアは得心がいったように、ふむふむ、と頷きながら言葉を返す。

「あ、おいおい、ロブギンス団長が来たぜ。カッちゃんもディアリンもおしゃべりはそのくらいにしとけよ」

前方に軍団長のバーナード・ロブギンスが姿を見せたところで、ジャレットがカチュアとニーディアの会話に口を挟んだ。

それ自体は普通である。軍団長が現れ、これから出立に向けての演説をしようとしているのだから、会話を止めるのは当然の事である。

だが問題はジャレットの止め方、いや呼び方である。

「ちょっ、な、なに!?ディアリン?今ディアリンって言った!?それもしかして私の事!?いきなりなに!?」

ニーディア・エスパーザは、今まで一度も呼ばれた事もない、おかしな呼び方をされて驚き戸惑い抗議した。

「え?いや、ニーディアだからディアリンにしたんだけど・・・え?気に入らねぇの?」

「え?・・・私とあなたって、一昨日初めて挨拶したくらいだよね?それでなんでディアリンなんて呼ぶわけ?」

キョトンとするジャレットの顔が、ニーディアの困惑を苛立ちに変えた。
キツク眉根を寄せてジャレットに詰めよると、二人の間にスラリとした白い手が入る。

「あー、ダメダメ、ダメだよ無理無理。こいつね、会ったばかりのアタシにも同じ事したから。ラクエルだからラクッチだってさ。あんたもディアリンで納得しといた方がいいよ?もっとひどい第二、第三候補が出てくると困るから」

初対面であだ名を付けられたラクエルが、ニーディアの肩に手を乗せながら、あきらめ混じりに首を横に振る。

「え?そ、そうなの?・・・この人、あだ名に拘りでもあるの?」

「んじゃよぉ、ディアリンがダメなら、ニーチェン・・・あとは、デッキーとか?」

第二候補、第三候補を聞いて頬を引きつらせるニーディアは、結局あきらめてディアリンを受け入れた。

その後、騒いで出立の号令を遅らせた事を注意された事は、言うまでもない。
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