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1249 反転攻勢と帝国士気
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「リカルド、前線はどうなっている?」
軍の最後尾で待機しているレイジェスのメンバー達。
額に手を当て遠くに目を向けているリカルドに、レイチェルは訊ねた。
「あ~・・・けっこういい感じだぜ。こっちが押してるわ。勢いが違うね。帝国は下がりながら反撃してっけど、全然駄目だな。へっぴり腰。このまま押し切れんじゃね?」
幼少の頃からハンターとして、狩りを生業にしてきたリカルドは目が良い。
レイチェルや他のメンバーの視力が悪いわけではないが、他の人間ではぼんやりしか見えないところでも、ハッキリと見えるだけの目を持っているのだ。
リカルドの口から戦況を聞くと、レイチェルは顔を上げて太陽の位置を確認した。
「そうか・・・まだ陽は高いが、この季節なら戦闘可能時間はあと4時間、長くて4時間半というところだろう。こちらが押しているのなら、できるだけ戦力を削っておきたいところだな」
夜になれば闇の主トバリが現れる。トバリから身を護るためには、何かに隠れて姿を隠すしかない。したがって陽が落ちれば、必然的に休戦するしかないのだ。
「どんなに勝っていても、夜になったら一時休戦するしかない。そして朝になったら仕切り直しだからね。帝国にしたら何とか被害を最小限に抑えて、夜を迎えたいところだろうね。今はクインズベリーの士気の高さに圧されて、面くらったところはあると思う。でも一晩経てば立て直してくる。今日勝てても明日は五分かもしれない」
薙刀を肩にかけながら、アゲハも冷静に戦況を分析する。
そう、帝国は最初姿を消したまま上から爆裂魔法を乱射して、クインズベリーにダメージを与える算段だった。
だが想定より早く仕掛けに気付かれた上、単身で乗り込んで来たゴールド騎士に圧倒され、後手に回されてしまったのだ。
さらに副団長のバージルが敗走した事で全体の士気も下がってしまい、今はクインズベリー軍の猛攻に、防戦一方に追い込まれているのだ。
「んだよそれ?だりぃな。せっかく勝ってんだからよ、一発ドカーン!ってやっちまえばいいんじゃねぇの?ミゼルよぉ、光源爆裂弾撃って決めちまえよ」
眉間にシワを寄せて、面倒くさそうにミゼルに話しを向けるリカルド。
だがミゼルは呆れたように溜息をつき、首を横に振った。
「はぁ~・・・おいおいリカルド、なに言ってんだよ?あれだけ敵味方が入り混じってんだぞ?撃てるわけないだろ?それにこんな山の中で上級魔法なんて、山を破壊しかねない。雪崩や土砂崩れがおきたら、帝国だけじゃなくて、こっちだって大ダメージだぞ?だから初級魔法か、中級なら氷魔法とかで戦うしかねぇんだよ」
ミゼルがなぜ上級魔法が使えないかを淡々と説明すると、リカルドは眉一つ動かさずに、ミゼルの肩にポンと手を乗せ、諭すように言葉をかけた。
「よく分かってんじゃねぇか。分かってんなら気をつけろよ?間違っても光源爆裂弾なんか撃つんじゃねぇぞ?」
「・・・は?、いやいや、何言ってんだよ?俺が教えてやったのに、まるで俺が知らなかったみたいに言うなよ?」
「んだよ、言いがかりか?俺はお前を試しただけだって。うっかり光源爆裂弾撃ちそうな顔してっからよ。俺が忠告しなきゃ、今頃光源爆裂弾撃ってたんじゃね?とにかく上級魔法使わなきゃいいんだって。分かった?」
「てめぇ!リカルド!このやっ・・・!」
呆れたように目を向けるリカルドに、ミゼルが詰め寄ろうとすると、アゲハが間に入って二人に制止をかけた。
「はいはい、そこまでそこまで。はぁ~、なんで私が仲裁しなきゃなんないのか。まずリカルド、あんたあっちに行ってな。ミゼルもいちいち挑発に乗らないで。戦争中だよ?前線でみんな戦ってるって忘れないで」
注意を受けた事が不満だったのか、リカルドはふくれっ面をするが、それ以上何か言うでもなく大人しく距離を取った。
ミゼルも納得はできていないようだが、リカルドも黙って離れたので、分かった、とだけ答えて顔を前に向けた。
「アゲハ、良い仲裁だった。お腹を殴らずに黙らせるとは只者じゃない」
普段は問答無用で殴って黙らせるユーリは、アゲハが言葉だけでスムーズに解決した事に、感心してやまなかった。
「いやいや、お腹殴って黙らせる程の事じゃないでしょ?」
「そう?殴った方が早いと思うけど」
「・・・あんたもたいがい物騒な頭だね」
アゲハが呆れたように頬を引きつらせたその時、前線が大きくざわめき出した。
「・・・脆い」
軽く撫でただけで、屈強な兵士達の体が紙屑のように引き裂かれていく。
「な、なんだこいつ!?」
「ひ、左だ!左腕に気を付けろ!」
「うわぁぁぁぁーーーーーーッツ!」
戦況はクインズベリーが優勢に進めていた。
だが突如現れた異形の腕を持つ男によって、クインズベリーの前線が崩れ出した。
「一振りでこれか・・・加減が難しいな・・・」
左腕は肩口から斬り落とされていた。
本来ならば肩から先は欠損しているはずである。だが今その失われたはずの箇所には、赤黒い剥き出しの筋繊維が、人の腕の形を作り成していた。
戦線に復帰した第二師団副団長バージル・ビジェラは、己の新たな左腕の異常な強さに、最初は感覚がついていかなかった。
「くっ!接近戦は危険だ!黒魔法使い、氷で動きを止めろ!」
剣で斬りかかっても、その異形な左腕で受け止められてしまう。
振るわれた左腕を防ごうとしても、鉄の鎧ごと引き裂かれてしまう。
数十人の兵達を瞬く間に失った事で、接近戦は到底不可能と判断したクインズベリー軍の部隊長は、魔法による攻撃を指示した。
前に出ていた体力型の兵士達が下がると、魔力を溜めていた黒魔法使い達が、一斉に氷の魔力を撃ち放つ!
「刺氷弾!」
「地氷走り!」
正面からは無数の氷の槍が迫り、足元からは鋭い氷の刃が突き上げてくる!
「ぬおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーッツ!」
バージルは腰を落とすと、左腕に渾身の力を溜めて右脇の下に抱え込んだ。
そして腰を右に捻ると、自身に向かってくる刺氷弾と地氷走りに対し、正面から左腕を振り払い叩きつけた!
「なにィーーーーッツ!?」
たった一振りで全ての氷が粉砕され、部隊長も黒魔法使い達も誰もが驚愕した。
反対に帝国軍は士気が高まった。
素手で魔法を粉砕するなど、そう簡単にできる事ではない。それも数百を数える刺氷弾に、足元を埋め尽くす地氷走りである。
先頭に立って戦う姿勢を見せたバージルに、帝国兵達の歓声が上がった。
「オォォォォォォォーーーーーーッツ!バージル様!」
「すげぇ!いける!これならいけるぞ!」
「クインズベリーをぶっ殺せぇぇぇーーーーーーッツ!」
反転攻勢をかけ始めた帝国兵達。その様子を一段高い場所から見下ろし笑うのは、栗色の髪を三つ編みにした魔法使いの女、トリッシュ・ルパージュだった。
「ふふふふふ・・・バージル副団長、良い感じですね。そのまま最後まで持つといいですね?せめて憎いゴールド騎士をぶっ殺すまでは」
軍の最後尾で待機しているレイジェスのメンバー達。
額に手を当て遠くに目を向けているリカルドに、レイチェルは訊ねた。
「あ~・・・けっこういい感じだぜ。こっちが押してるわ。勢いが違うね。帝国は下がりながら反撃してっけど、全然駄目だな。へっぴり腰。このまま押し切れんじゃね?」
幼少の頃からハンターとして、狩りを生業にしてきたリカルドは目が良い。
レイチェルや他のメンバーの視力が悪いわけではないが、他の人間ではぼんやりしか見えないところでも、ハッキリと見えるだけの目を持っているのだ。
リカルドの口から戦況を聞くと、レイチェルは顔を上げて太陽の位置を確認した。
「そうか・・・まだ陽は高いが、この季節なら戦闘可能時間はあと4時間、長くて4時間半というところだろう。こちらが押しているのなら、できるだけ戦力を削っておきたいところだな」
夜になれば闇の主トバリが現れる。トバリから身を護るためには、何かに隠れて姿を隠すしかない。したがって陽が落ちれば、必然的に休戦するしかないのだ。
「どんなに勝っていても、夜になったら一時休戦するしかない。そして朝になったら仕切り直しだからね。帝国にしたら何とか被害を最小限に抑えて、夜を迎えたいところだろうね。今はクインズベリーの士気の高さに圧されて、面くらったところはあると思う。でも一晩経てば立て直してくる。今日勝てても明日は五分かもしれない」
薙刀を肩にかけながら、アゲハも冷静に戦況を分析する。
そう、帝国は最初姿を消したまま上から爆裂魔法を乱射して、クインズベリーにダメージを与える算段だった。
だが想定より早く仕掛けに気付かれた上、単身で乗り込んで来たゴールド騎士に圧倒され、後手に回されてしまったのだ。
さらに副団長のバージルが敗走した事で全体の士気も下がってしまい、今はクインズベリー軍の猛攻に、防戦一方に追い込まれているのだ。
「んだよそれ?だりぃな。せっかく勝ってんだからよ、一発ドカーン!ってやっちまえばいいんじゃねぇの?ミゼルよぉ、光源爆裂弾撃って決めちまえよ」
眉間にシワを寄せて、面倒くさそうにミゼルに話しを向けるリカルド。
だがミゼルは呆れたように溜息をつき、首を横に振った。
「はぁ~・・・おいおいリカルド、なに言ってんだよ?あれだけ敵味方が入り混じってんだぞ?撃てるわけないだろ?それにこんな山の中で上級魔法なんて、山を破壊しかねない。雪崩や土砂崩れがおきたら、帝国だけじゃなくて、こっちだって大ダメージだぞ?だから初級魔法か、中級なら氷魔法とかで戦うしかねぇんだよ」
ミゼルがなぜ上級魔法が使えないかを淡々と説明すると、リカルドは眉一つ動かさずに、ミゼルの肩にポンと手を乗せ、諭すように言葉をかけた。
「よく分かってんじゃねぇか。分かってんなら気をつけろよ?間違っても光源爆裂弾なんか撃つんじゃねぇぞ?」
「・・・は?、いやいや、何言ってんだよ?俺が教えてやったのに、まるで俺が知らなかったみたいに言うなよ?」
「んだよ、言いがかりか?俺はお前を試しただけだって。うっかり光源爆裂弾撃ちそうな顔してっからよ。俺が忠告しなきゃ、今頃光源爆裂弾撃ってたんじゃね?とにかく上級魔法使わなきゃいいんだって。分かった?」
「てめぇ!リカルド!このやっ・・・!」
呆れたように目を向けるリカルドに、ミゼルが詰め寄ろうとすると、アゲハが間に入って二人に制止をかけた。
「はいはい、そこまでそこまで。はぁ~、なんで私が仲裁しなきゃなんないのか。まずリカルド、あんたあっちに行ってな。ミゼルもいちいち挑発に乗らないで。戦争中だよ?前線でみんな戦ってるって忘れないで」
注意を受けた事が不満だったのか、リカルドはふくれっ面をするが、それ以上何か言うでもなく大人しく距離を取った。
ミゼルも納得はできていないようだが、リカルドも黙って離れたので、分かった、とだけ答えて顔を前に向けた。
「アゲハ、良い仲裁だった。お腹を殴らずに黙らせるとは只者じゃない」
普段は問答無用で殴って黙らせるユーリは、アゲハが言葉だけでスムーズに解決した事に、感心してやまなかった。
「いやいや、お腹殴って黙らせる程の事じゃないでしょ?」
「そう?殴った方が早いと思うけど」
「・・・あんたもたいがい物騒な頭だね」
アゲハが呆れたように頬を引きつらせたその時、前線が大きくざわめき出した。
「・・・脆い」
軽く撫でただけで、屈強な兵士達の体が紙屑のように引き裂かれていく。
「な、なんだこいつ!?」
「ひ、左だ!左腕に気を付けろ!」
「うわぁぁぁぁーーーーーーッツ!」
戦況はクインズベリーが優勢に進めていた。
だが突如現れた異形の腕を持つ男によって、クインズベリーの前線が崩れ出した。
「一振りでこれか・・・加減が難しいな・・・」
左腕は肩口から斬り落とされていた。
本来ならば肩から先は欠損しているはずである。だが今その失われたはずの箇所には、赤黒い剥き出しの筋繊維が、人の腕の形を作り成していた。
戦線に復帰した第二師団副団長バージル・ビジェラは、己の新たな左腕の異常な強さに、最初は感覚がついていかなかった。
「くっ!接近戦は危険だ!黒魔法使い、氷で動きを止めろ!」
剣で斬りかかっても、その異形な左腕で受け止められてしまう。
振るわれた左腕を防ごうとしても、鉄の鎧ごと引き裂かれてしまう。
数十人の兵達を瞬く間に失った事で、接近戦は到底不可能と判断したクインズベリー軍の部隊長は、魔法による攻撃を指示した。
前に出ていた体力型の兵士達が下がると、魔力を溜めていた黒魔法使い達が、一斉に氷の魔力を撃ち放つ!
「刺氷弾!」
「地氷走り!」
正面からは無数の氷の槍が迫り、足元からは鋭い氷の刃が突き上げてくる!
「ぬおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーッツ!」
バージルは腰を落とすと、左腕に渾身の力を溜めて右脇の下に抱え込んだ。
そして腰を右に捻ると、自身に向かってくる刺氷弾と地氷走りに対し、正面から左腕を振り払い叩きつけた!
「なにィーーーーッツ!?」
たった一振りで全ての氷が粉砕され、部隊長も黒魔法使い達も誰もが驚愕した。
反対に帝国軍は士気が高まった。
素手で魔法を粉砕するなど、そう簡単にできる事ではない。それも数百を数える刺氷弾に、足元を埋め尽くす地氷走りである。
先頭に立って戦う姿勢を見せたバージルに、帝国兵達の歓声が上がった。
「オォォォォォォォーーーーーーッツ!バージル様!」
「すげぇ!いける!これならいけるぞ!」
「クインズベリーをぶっ殺せぇぇぇーーーーーーッツ!」
反転攻勢をかけ始めた帝国兵達。その様子を一段高い場所から見下ろし笑うのは、栗色の髪を三つ編みにした魔法使いの女、トリッシュ・ルパージュだった。
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