異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1263 防衛線

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クインズベリーの拠点へと戻ったアゲハとレイマートの元に、レイジェスのメンバーや騎士団団員達が駆け寄った。

ぞれぞれが無事に帰って来た事を喜ぶ言葉をかけ、アゲハもレイマートもそれに答えていたが、少し離れた場所で二人を、いやレイマートを厳しい目で見る男に気が付き、レイマートは表情を引き締めた。

「・・・悪いな、ちょっと行ってくる」

レイマートに鋭い眼光をぶつけていたのは、クインズベリー軍副団長のカルロス・フォスターだった。
カルロスの顔を見て、レイマートも用件を察すると集まった騎士団員や兵達にことわりを入れて、カルロスの元へと歩いて行った。


「まぁ、感情で突っ走ったんだから、注意を受けるのはしかたないだろうね」

レイマートの後ろ姿を見送りながら、アゲハが呟いた。
隊を預かる立場でありながら、怒りにまかせて単独行動を起こした事は、お咎め無しというわけにはいかない。レイマートを連れ戻したアゲハも、こればかりは庇うつもりはなかった。

「そうだな、むしろこれでカルロスが何もしないようだったら、その方が問題だ」

レイチェルが同意すると、青いローブを纏った、薄緑色の長い髪の女性が遠慮がちに声を出した。

「あの、レイジェスの皆さんにはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。レイマート様を助けてくださった事にも感謝してます。でも、レイマート様にとってアルベルト様は、自分をゴールド騎士に引き上げてくれた恩人なんです。どうか、悪く思わないでください」

シルバー騎士序列九位のエミリー・マーシルが頭を下げると、アゲハが弁明するように答えた。

「あ、違う違う、私ら別に怒ってるわけじゃないから、頭下げないでよ。レイマートの気持ちは分かるけど、あいつの立場を考えればって話しだから」

「そうだぞエミリー、ここでお前が頭を下げると、レイジェスが困るからやめろよ。やらかしたのに何のお咎めも無しって、逆にキツかったりするんだぜ?」

アゲハに続いてシルバー騎士序列二位のフィル・マティアスが、エミリーを説得するように言葉を重ねる。少しキツい印象の碧い瞳に力が入り、よけいに目つきが悪くなる。

「あ、う、うん、分かったよ!分かったから、フィル!近いよ!」

ぐいっと顔を近づけるフィルに、エミリーが両手を顔の前に出して距離を取る。


「おいおい、ジャレてんじゃねぇぞ?今戦闘が中断してるからって、ここが戦場だって事を忘れんなよ」

シルバー騎士序列三位のエクトール・エドワーズが、フィルとエミリーにジロリと目を向ける。

「おいおい、そう睨むなってエクトール、分かった分かった」

「あ、うん、ごめんねエクトール」

「レイマート様の無事も確認できたし、もういいだろ?怪我人はまだいるんだし、これからの方針も話し合わなきゃならないからな。ほら、お前達も持ち場に戻れ!」

エクトールは話しをまとめると、集まった騎士団団員達に手早く指示を出した。
レイマートが戻って来た事で浮ついた雰囲気になりかけていたが、エクトールの言う通りここは戦場なのだ。エクトールの一喝で場が引き締まり、それぞれが自分の仕事に戻って行った。

そして騎士団団員達が離れると、エクトールがレイジェスのメンバー達に向き直った。

「レイジェスのみんな、うちの団員が騒がしくて悪いな。俺達は仕事に戻るよ」

「いや、こっちは別に大丈夫。それより騎士団は大丈夫か?レイマートが戻って来ても、アルベルトが・・・」

レイチェルが代表するエクトールと話した。
そして最後はエクトールの心中を察して言葉を濁したが、言わんとする事は伝わったようだ。

 「・・・アルベルトさんの生死は不明だが、現実問題として今はいない。そうなるとレイマート様が騎士団のトップになる。俺がアルベルト様の代わりを努めるとは言えないが、できる限りの事はするつもりだ」

「そうか・・・私達で力になれる事があったら言ってくれ」

じゃあそろそろ仕事に戻るよ、そう答えてレイチェル達もその場を離れた。



そして陽が高くなってきた頃、やっと負傷兵の治療も一段落がついた。
レイチェル達も一息をついて体を休めていると、そのタイミングで、クインズベリー軍副団長カルロス・フォスターから作戦会議の招集があった。


拠点の一角に張った数十人が入れる大きさのテントの中には、カルロス・フォスターを中心とした軍の幹部達、騎士団からはゴールド騎士のレイマートと、エクトールを始めとするシルバー騎士の上位三人。そしてレイジェスからはレイチェルとアゲハとミゼルの三人が出席した。

全員が集まったところで、カルロスが口火を切った。

「みんな、ご苦労だった。昨日のあの爆発から一日で負傷兵の手当も終わり、軍もある程度立て直す事ができた。しかし被害が大きかった事も事実だ。正確な数はまだ出せていないが、昨日の交戦でこちらの死者は二千人以上、治療を終えた負傷者も、重傷者はすぐには戦線の復帰できない。その数も千人規模になる。パウンド・フォーには五万の軍勢で入ったが、すでにこれだけの兵を失った事になる」

重い口ぶりだった。たった一日でこれだけの犠牲者を出したのだ、軍を預かる身としてカルロスも苦しいのだ。しかし現在の戦力も戦況も、全員がきちんと把握しておかなければならない。
カルロスは話しを続けた。

「あの爆発で帝国も被害は受けている。だからこそヤツらも一時退いたようだが、すぐに進軍を開始したようだ。今朝方(けさがた)帝国が進軍を始めた気配を、レイマートが察知している」

カルロスが話しているのは、今朝、アゲハとレイマートが出発した時感じた、空気の揺れや大地の振動の事だった。
あの時点ではまだそれなりの距離があった。大所帯のためか、進行速度もゆっくりではあったが、サーチを使っているらしく、確実にクインズベリーの拠点に向かって来ている事は確かだった。

「俺とアゲハが帝国の移動を察知したのは午前七時頃だ。今は11時を回っている。ヤツらは大人数だったし移動速度も遅かった。ここまで十キロ以上離れてもいたが、それでももう追いついていい頃だ」

いつ戦闘になってもおかしくない。そう告げるレイマートに、アゲハも同意して頷いた。

「私も同じ見解だ。ここに戻ってきてからずっと風の動きを読んでいるが、風がどんどん張り詰めてくる。ヤツらはもうここを見つけていると思った方がいい。攻撃をしかけてこないのは、クインズベリー軍が敷いた防衛線を警戒しているからだろう」

拠点を中心として、クインズベリーの精鋭達が円状に広がって警戒にあたっている。
どこか一か所でも襲撃されれば、全面戦争が再開する事になるだろう。
今はまだ帝国も様子をうかがっている。

だが、いつまでも睨みあっているだけのはずがない・・・・・・・



レイジェスが今後の作戦会議をしているその時、アゲハの予想通り、帝国軍はクインズベリーの防衛線を睨んでいた。


「ジャロン団長、クインズベリーも立て直しが早いですね。けっこう壁が厚そうですよ?」

クインズベリー軍は、体力型と魔法使いを惜しみなく出して、拠点の中心には犬の一匹も入り込めないような、厚い防衛線を敷いていた。

山中の一段高い場所からソレを見下ろすトリッシュは、隣に立つ第二師団長のジャロン・リピネッツに顔を向けた。

「どうします?やります?」

「隙のない防御陣形だな。このまま見ていても穴が空きそうにない。いいだろう、全軍突撃だ。日が暮れるまでに決着をつける」


ジャロンのガラス玉のような空虚な青い目は、変わらず何も映していなかった。
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