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1282 薄氷
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「ハァッ!・・・ハァッ!・・・ぐっ・・・」
これは、ダメだな、折れている・・・
皮膚が裂け、血が滴り落ちる右手を見つめる。軽く拳を握ろうとするだけで強い痛みが走る。
無理もない。あれだけのスピードで、一切の躊躇いも加減もなく、相手の顔面を殴り飛ばしたんだ。
こっちの拳が砕けるのも当然だ・・・・・
拳の痛み、そしてこれだけの風を使った疲労から、私は膝を着いた。
呼吸は大きく乱れ、緊張の糸が切れたからか汗が一気に噴き出した。
「勝ったな、アゲハ・・・」
黒塗りの杖を突きながら、四勇士のライース・フィゲロアが近づいて来た。
「まさか本当に一人でこいつを倒すとはな・・・うわっ、こりゃひでぇな・・・」
フィゲロアは脇で倒れているジャロンに目を向けた。
鼻が潰れ、頬は陥没し、何本もの歯が折られ撒き散らされている。白く剥かれた両の目と耳からは赤い血が流れ、アゲハの一撃がどれほど重く凄まじいものだったかを物語っていた。
「まさか一発とはな・・・まぁ、あんなのをまともにくらえば当然か。んで、その手大丈夫か?」
ジャロンから視線を移すと、フィゲロアは杖の先でアゲハの右手を指した。
「ハァ・・・ハァ・・・大丈夫だと思うか?痛みがすごくて、指一本動かせない。ダメだね、折れてるよ」
「俺と一緒に四勇士のクアルトが来ている。診てもらえ、あいつのヒールならすぐに治してもらえるさ」
そしてフィゲロアは腰を少しかがめると、右手を差し向けた。
「結局お前一人を戦わせてしまったな、立てるか?」
「ふっ・・・私が下がっていろと言ったんだ。気にするな。それにあいつには思うところもあったしな、自分なりのけじめみたいなものだ」
アゲハは一度目を閉じると、小さく息を吐き出した。その表情には色濃い疲労が見えるが、心に一つの区切りを付けられた事で穏やかなものになっていた。
そして差し出されたフィゲロアの手に、自分の左手を重ねたその時、アゲハもフィゲロアも、距離を取って戦いを見ていたトリッシュも、誰もが予想しえなかった事が起きた。
重ねたその手をフィゲロアに引かれ腰を上げたアゲハだったが、突如フィゲロアの背後に立ったその男を目にして、あまりの衝撃に思考が停止し目を開いて固まった。
なぜ!?どうして!?死んでいなかったのか!?
様々な考えが一瞬で頭を駆け巡った。だが何よりも先にアゲハは叫んでいた。
「ッ!フィゲロアーーーーーーーーッツ!」
「なっ!?」
握ったフィゲロアの右手を、とにかく力任せに引っ張った。
いくら疲弊していようとも、体力型のアゲハは魔法使いのフィゲロアくらい片手で動かせる。
そのまま体を入れ替えるようにフィゲロアを後ろに投げ飛ばすと、アゲハは地面を蹴って正面に立つジャロン・リピネッツに飛び掛かった!
「ウォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッツ!」
あまかった!顔面を潰したくらいで勝ったと思い込んでしまった。さっさとトドメを刺しておくべきだった。生死の確認を怠った私のミスだ!
だがこいつの目にはまだ光は見えない。意識がハッキリしているわけじゃないんだ。
おそらく本能のようなもので起き上がったんだろう。
だったら今度こそ私が、ここで、この拳で確実に仕留めてみせる!
左の拳を固く握りしめ、アゲハはジャロン・リピネッツの顔面を目掛けて左拳を振り抜いた!
・・・何も見えん・・・俺は、何をされた?殴られた?あの瞬間、やはり・・・・・
アゲハ・・・この戦い、俺とあんたの戦いは、あんたの勝ちだろう・・・・・
だがな・・・・・
「一人では死なんぞ」
「なにっ!?」
アゲハは確かに聞いた。まるで呪詛のように低く冷たく響く、呪いの言葉を・・・・・
そしてアゲハの左拳は、ジャロンの右の頬を強烈に打ち付けた。もう風を使うだけの力は残っていなかった。
だが生身であっても全身全霊を込めて拳を叩きこんだ。
ジャロンの頬骨を砕く鈍い感触が、拳を通して伝わってくる。それと同時にアゲハ自身もまた、己の左拳が砕けた事を感じ取った。
「ぐっ!うぅ・・・・・ぐふッッ・・・!?」
アゲハがジャロンの顔面を再び殴り飛ばした、その次の瞬間だった。
アゲハの腹に、古びたナイフが刺さっていた。
そう、ジャロンの武器、触れたもの全てを腐らせる、呪いの刃である。
これは、ダメだな、折れている・・・
皮膚が裂け、血が滴り落ちる右手を見つめる。軽く拳を握ろうとするだけで強い痛みが走る。
無理もない。あれだけのスピードで、一切の躊躇いも加減もなく、相手の顔面を殴り飛ばしたんだ。
こっちの拳が砕けるのも当然だ・・・・・
拳の痛み、そしてこれだけの風を使った疲労から、私は膝を着いた。
呼吸は大きく乱れ、緊張の糸が切れたからか汗が一気に噴き出した。
「勝ったな、アゲハ・・・」
黒塗りの杖を突きながら、四勇士のライース・フィゲロアが近づいて来た。
「まさか本当に一人でこいつを倒すとはな・・・うわっ、こりゃひでぇな・・・」
フィゲロアは脇で倒れているジャロンに目を向けた。
鼻が潰れ、頬は陥没し、何本もの歯が折られ撒き散らされている。白く剥かれた両の目と耳からは赤い血が流れ、アゲハの一撃がどれほど重く凄まじいものだったかを物語っていた。
「まさか一発とはな・・・まぁ、あんなのをまともにくらえば当然か。んで、その手大丈夫か?」
ジャロンから視線を移すと、フィゲロアは杖の先でアゲハの右手を指した。
「ハァ・・・ハァ・・・大丈夫だと思うか?痛みがすごくて、指一本動かせない。ダメだね、折れてるよ」
「俺と一緒に四勇士のクアルトが来ている。診てもらえ、あいつのヒールならすぐに治してもらえるさ」
そしてフィゲロアは腰を少しかがめると、右手を差し向けた。
「結局お前一人を戦わせてしまったな、立てるか?」
「ふっ・・・私が下がっていろと言ったんだ。気にするな。それにあいつには思うところもあったしな、自分なりのけじめみたいなものだ」
アゲハは一度目を閉じると、小さく息を吐き出した。その表情には色濃い疲労が見えるが、心に一つの区切りを付けられた事で穏やかなものになっていた。
そして差し出されたフィゲロアの手に、自分の左手を重ねたその時、アゲハもフィゲロアも、距離を取って戦いを見ていたトリッシュも、誰もが予想しえなかった事が起きた。
重ねたその手をフィゲロアに引かれ腰を上げたアゲハだったが、突如フィゲロアの背後に立ったその男を目にして、あまりの衝撃に思考が停止し目を開いて固まった。
なぜ!?どうして!?死んでいなかったのか!?
様々な考えが一瞬で頭を駆け巡った。だが何よりも先にアゲハは叫んでいた。
「ッ!フィゲロアーーーーーーーーッツ!」
「なっ!?」
握ったフィゲロアの右手を、とにかく力任せに引っ張った。
いくら疲弊していようとも、体力型のアゲハは魔法使いのフィゲロアくらい片手で動かせる。
そのまま体を入れ替えるようにフィゲロアを後ろに投げ飛ばすと、アゲハは地面を蹴って正面に立つジャロン・リピネッツに飛び掛かった!
「ウォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッツ!」
あまかった!顔面を潰したくらいで勝ったと思い込んでしまった。さっさとトドメを刺しておくべきだった。生死の確認を怠った私のミスだ!
だがこいつの目にはまだ光は見えない。意識がハッキリしているわけじゃないんだ。
おそらく本能のようなもので起き上がったんだろう。
だったら今度こそ私が、ここで、この拳で確実に仕留めてみせる!
左の拳を固く握りしめ、アゲハはジャロン・リピネッツの顔面を目掛けて左拳を振り抜いた!
・・・何も見えん・・・俺は、何をされた?殴られた?あの瞬間、やはり・・・・・
アゲハ・・・この戦い、俺とあんたの戦いは、あんたの勝ちだろう・・・・・
だがな・・・・・
「一人では死なんぞ」
「なにっ!?」
アゲハは確かに聞いた。まるで呪詛のように低く冷たく響く、呪いの言葉を・・・・・
そしてアゲハの左拳は、ジャロンの右の頬を強烈に打ち付けた。もう風を使うだけの力は残っていなかった。
だが生身であっても全身全霊を込めて拳を叩きこんだ。
ジャロンの頬骨を砕く鈍い感触が、拳を通して伝わってくる。それと同時にアゲハ自身もまた、己の左拳が砕けた事を感じ取った。
「ぐっ!うぅ・・・・・ぐふッッ・・・!?」
アゲハがジャロンの顔面を再び殴り飛ばした、その次の瞬間だった。
アゲハの腹に、古びたナイフが刺さっていた。
そう、ジャロンの武器、触れたもの全てを腐らせる、呪いの刃である。
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