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1313 冷笑
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途切れそうになった意識を気力で繋ぎ止め、ヴァンは自分の腹に膝をめり込ませる大男の胸を両手で押し飛ばした。
「おっ?」
転ぶほどではなかったがガルバンは体勢を崩され、振り下ろした左拳はヴァンの頭から外れて空を切った。
ヴァンはガルバンの胸を押した反動で、背中から地面に落ちそうになったが、後ろ足で踏ん張るとそのまま地面を強く蹴って、ガルバンから大きく距離を取った。
「グッ、ゲホッ!ゴホッ!」
ガルバンの膝で圧迫されていた胃が解放されると、大きく咳き込んだ。
かろうじて意識は保てた。しかしとてつもなく重い一撃だった。
両足で立てているがギリギリだった。たった一蹴りでここまでダメージを受けるとは思わなかった。
しかもこの男にとって今の蹴りは、渾身の一蹴りでもなんでもなく、ただの一蹴りでしかないのだ。
治安部隊のボディアーマーは、運動性を考えて腹部に鉄は使用していない。
だがアーマーの中に着ている黒いシャツは、特殊な繊維を使用しており多少の衝撃は吸収する効果がある。気休め程度かもしれないが、それが無ければ今の膝蹴りで終わっていた可能性がある。
「ほぅ、まだ戦意はあるのか。だがもう足に来ているのではないか?すぐに終わらせてやろう」
強烈な膝蹴りを受けたが、ヴァンは右手に握るナイフを落としはしなかった。
順手でしっかりと握り締めると、歯を喰いしばりガルバンを睨みつける。
それを冷めた目で受け止めたガルバンは、やや前傾になって腰を落とし、右足に力を込めて再び突進する構えを取った。
「くっ!」
腹部へのダメージで足が震えるが、ヴァンは右腕を前にナイフを構え迎撃の体勢をとった。
本来これだけの体格差があれば、正面からやり合う事は得策ではない。
スピードでかき回し、距離をとって戦う事が賢くもあり、正攻法だろう。
だがこのダメージではそれを実行する事はできない。
そしてガルバンには恐るべき突進力があった。たった今見せつけられたあのスピードに、この足で対応できるだろうか?
逃げ回っても回復するまでにおそらく捕まるだろう。
ならば今ここでできる最善の一手は、迎え撃つ事だ。
迷いの消えたヴァンの目が、ガルバンを鋭く見据える。
「・・・ほう、覚悟を決めたか。敵ながらいい目だ。だが気持ちでどうにかできるほど、俺はあまくはないぞ!」
右手に握る戦斧を肩に担ぎあげると、ガルバンは右足に力を集中させて地面を蹴った。その圧倒的パワーに蹴り抜かれた地面は砕け、押し出されたニメートルの巨体は、土と砂の爆風を背に突進した。
その時!
「ッ!」
視界の端に捉えたソレに、ガルバンは深く頭を下げた。一瞬の後に左から右へと風切り音が頭の上を通過する。
ガルバンが視界の端に捉えた物、それは鈍い光を放つ鋭利なナイフだった。
そしてガルバンが頭を上げた時、ナイフを投げたその男モルグ・フェンテスは、地面を蹴って飛び上がり、右足を腹に引き付けて渾身の蹴りを繰り出した!
「ハァッ!」
もらった!飛び出した直後、ナイフを投げて体勢は崩した。俺の狙いははなからこれだ!
すましたテメェのツラを蹴り抜いてやるぜ!
フェンテスはガルバンの戦闘力が、自分達を上回っている事を一目で見抜いた。
正面から戦っても勝ち目は無い。ならばどうするか?勝てる戦い方をするだけだ。
都合の良い事に、この男はヴァンに狙いをつけると、自分の事など歯牙にもかけずヴァンだけを狙い始めた。
自分など放っておいても問題ない。つまり完全に舐められている。軽く見られた事への苛立ちが無いと言えばウソになる。だが優先すべきは任務達成であり、勝利のためなら自分個人の感情などどうでもいい。
勝つためにどうすればいいか?舐められているのならば、舐められている事を逆手にとればいい。
「なッ!?」
隙をついたフェンテスの蹴りは、並の相手であれば顔面を蹴り抜き、首の骨をへし折っていただろう。
だが相手は第六師団最強の一角と呼ばれているルーベン・ガルバン。
この程度の奇襲で殺れる程、あまい相手ではない。
「悪くはない。だが俺に当てるには足りないな」
ガルバンは左手一本でフェンテルの蹴りを受け止めていた。
眉一つ動かす事もなく、平然とフェンテスの足を掴み、まるで部下へ稽古つけるかのように、淡々と言葉をかける。
「くっ!ウォォォォォッ!」
敵の方がはるかに筋力がある事は、この体格差を見れば考えるまでもなく分かる事だ。
だがまさか、全力で放った蹴りを片手で止められるとは思いもしなかった。
少なからず動揺させられ、思わず息を飲んだが、ここで攻撃の手をゆるめるわけにはいかない。
フェンテスは残った左足で地面を蹴って飛び上がると、そのままガルバンの顔面目掛けて左足を繰り出した!
「足りんと言っている」
「なッ!?」
フェンテスの左足がガルバンの顔面を蹴り抜こうとしたその時、ガルバンは掴んでいたフェンテスの右足を力任せに持ち上げた。
飛び上がった瞬間だったため頭が地面に向き、逆さ吊りの状態になる。
「思い切りの良さは褒めてやろう、貴様、体力型にとってもっとも必要なものはなんだと思う?」
「ぐっ!な、なにをっ!?」
「それはパワーだ。圧倒的パワーの前には何を以てしても通用などしない。貴様がいくら小細工を弄(ろう)しようが、スピードでかく乱しようが無駄なことだ。それを今その体に教えてやろう」
フェンテスの足を左腕一本で掴んだまま高々と掲げると、ガルバンは右足を軸に大きく腰を捻り、ニメートルの巨体を独楽(こま)のように回転させ始めた。
「なッ!?や、野郎まさかッ!」
ガルバンが何をするのか?その狙いに気づいたヴァンが声を上げた。
まさか、そんな事ができるのか!?しかも片手で軽々と!
人間を振り回す。
一回転、二回転、三回転、回るたびに加速し勢いが増していく!
180センチの成人男性一人を片手で持ち回り、ガルバンは驚愕するヴァンに向かってフェンテスを投げ飛ばした!
「オォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」
雄叫びを上げるガルバン!ニメートルの巨体だからこそ可能な荒業である。
「ぐッツ!」
ヴァンは目を見開いた。
共に治安部隊で苦楽を共にしてきた部下が、まるで球のように扱われ投げ飛ばされたのだ。
そしてガルバンの剛腕に投げられたフェンテスは、まるで巨大な壁でもぶつけられるかのような、強烈な圧を持って迫りくる!
「さて、どうする?」
避けるか?それが一番賢いだろう。俺が全力で投げた人間弾は、貴様程度が受け止めれば骨の二、三本は軽く折れるだろう。
避ければ貴様は助かる。だが貴様が避ければお仲間はどうなるだろうな?
頭からでも、背中からでも、この勢いで地面に打ち付けられれば戦闘不能だろう。
フッ、俺はどちらでもいいんだぞ?部下のクッションになって貴様が倒れるか?
部下を見捨てて自分だけ助かるか?
さぁ、選べ。
ガルバンは普段は帝国では珍しいくらい生真面目な男だ。
部下想いで優しい男だと評判も上々である。
だが一度戦闘が始まれば敵には一切の容赦をせず、そして勝つためにはえげつない戦い方もためらわない冷酷さを持っていた。
冷たく笑うガルバンの目には、真面目で優しい表の顔に隠された、冷酷な本性が見えた。
「おっ?」
転ぶほどではなかったがガルバンは体勢を崩され、振り下ろした左拳はヴァンの頭から外れて空を切った。
ヴァンはガルバンの胸を押した反動で、背中から地面に落ちそうになったが、後ろ足で踏ん張るとそのまま地面を強く蹴って、ガルバンから大きく距離を取った。
「グッ、ゲホッ!ゴホッ!」
ガルバンの膝で圧迫されていた胃が解放されると、大きく咳き込んだ。
かろうじて意識は保てた。しかしとてつもなく重い一撃だった。
両足で立てているがギリギリだった。たった一蹴りでここまでダメージを受けるとは思わなかった。
しかもこの男にとって今の蹴りは、渾身の一蹴りでもなんでもなく、ただの一蹴りでしかないのだ。
治安部隊のボディアーマーは、運動性を考えて腹部に鉄は使用していない。
だがアーマーの中に着ている黒いシャツは、特殊な繊維を使用しており多少の衝撃は吸収する効果がある。気休め程度かもしれないが、それが無ければ今の膝蹴りで終わっていた可能性がある。
「ほぅ、まだ戦意はあるのか。だがもう足に来ているのではないか?すぐに終わらせてやろう」
強烈な膝蹴りを受けたが、ヴァンは右手に握るナイフを落としはしなかった。
順手でしっかりと握り締めると、歯を喰いしばりガルバンを睨みつける。
それを冷めた目で受け止めたガルバンは、やや前傾になって腰を落とし、右足に力を込めて再び突進する構えを取った。
「くっ!」
腹部へのダメージで足が震えるが、ヴァンは右腕を前にナイフを構え迎撃の体勢をとった。
本来これだけの体格差があれば、正面からやり合う事は得策ではない。
スピードでかき回し、距離をとって戦う事が賢くもあり、正攻法だろう。
だがこのダメージではそれを実行する事はできない。
そしてガルバンには恐るべき突進力があった。たった今見せつけられたあのスピードに、この足で対応できるだろうか?
逃げ回っても回復するまでにおそらく捕まるだろう。
ならば今ここでできる最善の一手は、迎え撃つ事だ。
迷いの消えたヴァンの目が、ガルバンを鋭く見据える。
「・・・ほう、覚悟を決めたか。敵ながらいい目だ。だが気持ちでどうにかできるほど、俺はあまくはないぞ!」
右手に握る戦斧を肩に担ぎあげると、ガルバンは右足に力を集中させて地面を蹴った。その圧倒的パワーに蹴り抜かれた地面は砕け、押し出されたニメートルの巨体は、土と砂の爆風を背に突進した。
その時!
「ッ!」
視界の端に捉えたソレに、ガルバンは深く頭を下げた。一瞬の後に左から右へと風切り音が頭の上を通過する。
ガルバンが視界の端に捉えた物、それは鈍い光を放つ鋭利なナイフだった。
そしてガルバンが頭を上げた時、ナイフを投げたその男モルグ・フェンテスは、地面を蹴って飛び上がり、右足を腹に引き付けて渾身の蹴りを繰り出した!
「ハァッ!」
もらった!飛び出した直後、ナイフを投げて体勢は崩した。俺の狙いははなからこれだ!
すましたテメェのツラを蹴り抜いてやるぜ!
フェンテスはガルバンの戦闘力が、自分達を上回っている事を一目で見抜いた。
正面から戦っても勝ち目は無い。ならばどうするか?勝てる戦い方をするだけだ。
都合の良い事に、この男はヴァンに狙いをつけると、自分の事など歯牙にもかけずヴァンだけを狙い始めた。
自分など放っておいても問題ない。つまり完全に舐められている。軽く見られた事への苛立ちが無いと言えばウソになる。だが優先すべきは任務達成であり、勝利のためなら自分個人の感情などどうでもいい。
勝つためにどうすればいいか?舐められているのならば、舐められている事を逆手にとればいい。
「なッ!?」
隙をついたフェンテスの蹴りは、並の相手であれば顔面を蹴り抜き、首の骨をへし折っていただろう。
だが相手は第六師団最強の一角と呼ばれているルーベン・ガルバン。
この程度の奇襲で殺れる程、あまい相手ではない。
「悪くはない。だが俺に当てるには足りないな」
ガルバンは左手一本でフェンテルの蹴りを受け止めていた。
眉一つ動かす事もなく、平然とフェンテスの足を掴み、まるで部下へ稽古つけるかのように、淡々と言葉をかける。
「くっ!ウォォォォォッ!」
敵の方がはるかに筋力がある事は、この体格差を見れば考えるまでもなく分かる事だ。
だがまさか、全力で放った蹴りを片手で止められるとは思いもしなかった。
少なからず動揺させられ、思わず息を飲んだが、ここで攻撃の手をゆるめるわけにはいかない。
フェンテスは残った左足で地面を蹴って飛び上がると、そのままガルバンの顔面目掛けて左足を繰り出した!
「足りんと言っている」
「なッ!?」
フェンテスの左足がガルバンの顔面を蹴り抜こうとしたその時、ガルバンは掴んでいたフェンテスの右足を力任せに持ち上げた。
飛び上がった瞬間だったため頭が地面に向き、逆さ吊りの状態になる。
「思い切りの良さは褒めてやろう、貴様、体力型にとってもっとも必要なものはなんだと思う?」
「ぐっ!な、なにをっ!?」
「それはパワーだ。圧倒的パワーの前には何を以てしても通用などしない。貴様がいくら小細工を弄(ろう)しようが、スピードでかく乱しようが無駄なことだ。それを今その体に教えてやろう」
フェンテスの足を左腕一本で掴んだまま高々と掲げると、ガルバンは右足を軸に大きく腰を捻り、ニメートルの巨体を独楽(こま)のように回転させ始めた。
「なッ!?や、野郎まさかッ!」
ガルバンが何をするのか?その狙いに気づいたヴァンが声を上げた。
まさか、そんな事ができるのか!?しかも片手で軽々と!
人間を振り回す。
一回転、二回転、三回転、回るたびに加速し勢いが増していく!
180センチの成人男性一人を片手で持ち回り、ガルバンは驚愕するヴァンに向かってフェンテスを投げ飛ばした!
「オォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」
雄叫びを上げるガルバン!ニメートルの巨体だからこそ可能な荒業である。
「ぐッツ!」
ヴァンは目を見開いた。
共に治安部隊で苦楽を共にしてきた部下が、まるで球のように扱われ投げ飛ばされたのだ。
そしてガルバンの剛腕に投げられたフェンテスは、まるで巨大な壁でもぶつけられるかのような、強烈な圧を持って迫りくる!
「さて、どうする?」
避けるか?それが一番賢いだろう。俺が全力で投げた人間弾は、貴様程度が受け止めれば骨の二、三本は軽く折れるだろう。
避ければ貴様は助かる。だが貴様が避ければお仲間はどうなるだろうな?
頭からでも、背中からでも、この勢いで地面に打ち付けられれば戦闘不能だろう。
フッ、俺はどちらでもいいんだぞ?部下のクッションになって貴様が倒れるか?
部下を見捨てて自分だけ助かるか?
さぁ、選べ。
ガルバンは普段は帝国では珍しいくらい生真面目な男だ。
部下想いで優しい男だと評判も上々である。
だが一度戦闘が始まれば敵には一切の容赦をせず、そして勝つためにはえげつない戦い方もためらわない冷酷さを持っていた。
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