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1340 ラクエルの考察と決断
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「ウソ、なにあの女?・・・ヤバクない?」
ラクエル・エンリケスは、目の前で突然倒れたジャレットを見て、眉根を寄せて驚きの言葉をもらした。
オーラの剣を振り上げて斬りかかったジャレットが、その剣で敵の頭を叩き斬る寸でのところで倒れたのだ。
何が起きたのか分からなかった。見たままを言えば、ジャレットが急に倒れたとしか言いようがない。
真紅のローブを纏った敵の女は、抵抗も反撃もした様子が無かったからだ。
しかし砂の上に倒れ込んだジャレットは、胸を押さえて苦しみもがいている。
ジャレットが何をされたのか分からないが、何かをされたとしか考えられなかった。
ラクエルとジャレットは、それぞれが敵の幹部、ヴァネッサとガルバンを倒した後、アラタの後を追って走った。
帝国の黒魔法使い達の中に、一人で飛び込んで行ったアラタに加勢するためだった。
だがその黒魔法使い達の、ユナニマス大川に向けて撃っていた攻撃魔法が止んだ事から、アラタが目的を果たした事は察する事ができた。
であるならば、後は一人敵地のど真ん中で戦っているアラタを救出し、この戦場から離脱する事を考えればいい。そう考えて駆けつけた二人だったが、そこで目にしたものは予想外の光景だった。
生きているのか死んでいるのか・・・黄金の鎧を纏った騎士、フェリックス・ダラキアンが砂の上に倒れ伏し、そしてアラタも深紅のローブを纏った長い金色の髪の女の足元に倒れ、苦しそうに呻き声を上げているのだ。
何が起きているのか分からなかった。だが仲間の二人が危機的状況にある事だけは分かる。
足を止めて状況を見極めようとするラクエルに対し、アラタとの付き合いが長く、後輩として可愛がっていたジャレットは、考えるより先に行動に出ていた。
しかしそのジャレットまでもが、何をされたか分からないまま砂の上に倒れたのだ。
状況から考えて、おそらくゴールド騎士のフェリックスもこの女に倒されたのだ。
フェリックス、アラタ、ジャレット、これで三人もの男がたった一人の女に倒された事になる。
しかもこの三人はクインズベリー国の主力の三人なのだ。
助けに入らなくてはならない。だがこれを見せられては、とても足を前に出す事はできない。何の策もなく突っ込んでは、自分も砂の上に倒される事は目に見えているからだ。
「・・・マジで、何なのアレ?」
砂の上に立ちながら、ラクエルは深紅のローブの女が何をしたのか、様々な可能性を考察した。
まずこの女が、第六師団長シャンテル・ガードナーだという事は、見当がついた。
第六師団を相手にしている事と、深紅のローブを纏った女だという事を考えれば、当然と言える事ではある。
事前情報で、シャンテル・ガードナーが白魔法使いだという事も知っていた。
であるならば、攻撃性のある魔法を使う事はできない。ではどうやって三人を倒したのか?
必然的に考えは魔道具に行きつく事になる。
・・・・・この女、どんな魔道具を使ったわけ?魔導剣士のアタシでも、動きもせずに人を倒す魔道具なんて見た事も聞いた事もない。そうすると、この女が自分で開発した魔道具って事?
だとしたら攻撃方法、防御方法を特定する事は難しい。戦いの中で探るしかない。
無理のない話しだが、最初からラクエルは考える方向を誤っていた。
問題の答えはシャンテル・ガードナーの魔力である。自分に敵意のあるものが、シャンテルの魔力に触れる事でその命を失う事になるのだが、これは誰も想像できない事であり、ラクエルがそこにたどり着けるはずのない事だった。
ここに到着してから、ラクエルが自分の行動を決めきれないで、立ち尽くしていた時間はせいぜい十数秒である。
しかし敵地のど真ん中に飛び込み、足を止めているのだから、ここまで周囲でシャンテルの戦いを静観していた兵士達が、いつまでも動かないはずもなかった。
「ッ!」
ふいに背後から向けられた殺意にラクエルは体を丸めて前方に跳んだ。それとほぼ同時に、ラクエルの後ろ髪が僅かに切られて風に舞った。
体を縦に回転させ、両足で砂の上に着地して顔を向けると、一瞬前まで自分の立っていた場所に剣を突き刺した帝国兵が、ラクエルに指を向けて叫んだ。
「チィッ!外した!おい、お前らやっちまえ!」
上官らしい男の合図で、それまで周囲で待機していた兵士達が一斉に武器を取り、ラクエルに襲い掛かった!
「ふぅ・・・あっぶなぁ、油断した。あっちにばっか気をとられると死ぬか」
ラクエルは腰に巻いた革のベルトから、白い刃のナイフを抜き取り構えると、武器を構えて自分に向かってくる帝国兵達を冷静に見つめた。
5・・・10・・・15・・・雑魚がぞろぞろと、しかも全員体力型じゃん?
敵がアタシ一人だからって、力押しでやっちまおうって考え?だったら頭悪すぎでしょ?
「なめてんじゃないよ」
地面を掴むように指先に力を入れて蹴った次の瞬間、ラクエルの姿が消えた。
「ッ!?」
剣を掲げて襲い掛かって来た数十人の兵士達は、一瞬にして標的の女を見失った事で足を止めざるを得なかった。
「なッ!?ど、どこだ!?どこに行ッ・・・!?」
その男は最後まで言葉を繋ぐ事ができなかった。なぜならその前に、首が胴体を離れて飛んでいたからだ。
そして空中で回転する頭部が落ちてくるまでのほんの僅かな時間で、ラクエルに向かって来た十数人の兵士達は、全員が白い刃によって首を刎ね飛ばされていた。
「ふん、こんなヤツらでアタシを止められるって思った?」
バタバタと崩れ落ちる首の無い帝国兵達。ほんの一瞬で屈強な帝国兵達を斬って捨てたラクエルの圧倒的強さを目の当たりにし、血気づいた帝国兵達も、踏み出した足を止めざるを得なかった。無暗に突っ込めば次は自分の首が飛ぶのだから。
兵士達の一瞬の躊躇いを見たラクエルは、シャンテル・ガードナーに向き直ると再び地面を蹴った。
自ら決断しての行動ではないが、こうなってしまった以上はやるしかない。
今ラクエルが兵士達の首を刎ね飛ばして力を見せつけたのは、この一瞬が欲しかったからである。
個人としての力量で上回っていても、敵は数万人いるのだ。このまま全員を相手にして勝てると言う程うぬぼれてはいない。
ここでシャンテル・ガードナーを倒して終わらせる。
仲間達は倒れている。
そして以前として囲まれている状況に変わりはないが、まずは大将首を取る。
その後の事はそれから考えればいい。
やってやるよ!
あんたが何をしてんのか分からないけどさ、その目に映らない速さで来られても同じ事ができる?
ラクエルの姿がシャンテルの視界から消えた。
ラクエル・エンリケスは、目の前で突然倒れたジャレットを見て、眉根を寄せて驚きの言葉をもらした。
オーラの剣を振り上げて斬りかかったジャレットが、その剣で敵の頭を叩き斬る寸でのところで倒れたのだ。
何が起きたのか分からなかった。見たままを言えば、ジャレットが急に倒れたとしか言いようがない。
真紅のローブを纏った敵の女は、抵抗も反撃もした様子が無かったからだ。
しかし砂の上に倒れ込んだジャレットは、胸を押さえて苦しみもがいている。
ジャレットが何をされたのか分からないが、何かをされたとしか考えられなかった。
ラクエルとジャレットは、それぞれが敵の幹部、ヴァネッサとガルバンを倒した後、アラタの後を追って走った。
帝国の黒魔法使い達の中に、一人で飛び込んで行ったアラタに加勢するためだった。
だがその黒魔法使い達の、ユナニマス大川に向けて撃っていた攻撃魔法が止んだ事から、アラタが目的を果たした事は察する事ができた。
であるならば、後は一人敵地のど真ん中で戦っているアラタを救出し、この戦場から離脱する事を考えればいい。そう考えて駆けつけた二人だったが、そこで目にしたものは予想外の光景だった。
生きているのか死んでいるのか・・・黄金の鎧を纏った騎士、フェリックス・ダラキアンが砂の上に倒れ伏し、そしてアラタも深紅のローブを纏った長い金色の髪の女の足元に倒れ、苦しそうに呻き声を上げているのだ。
何が起きているのか分からなかった。だが仲間の二人が危機的状況にある事だけは分かる。
足を止めて状況を見極めようとするラクエルに対し、アラタとの付き合いが長く、後輩として可愛がっていたジャレットは、考えるより先に行動に出ていた。
しかしそのジャレットまでもが、何をされたか分からないまま砂の上に倒れたのだ。
状況から考えて、おそらくゴールド騎士のフェリックスもこの女に倒されたのだ。
フェリックス、アラタ、ジャレット、これで三人もの男がたった一人の女に倒された事になる。
しかもこの三人はクインズベリー国の主力の三人なのだ。
助けに入らなくてはならない。だがこれを見せられては、とても足を前に出す事はできない。何の策もなく突っ込んでは、自分も砂の上に倒される事は目に見えているからだ。
「・・・マジで、何なのアレ?」
砂の上に立ちながら、ラクエルは深紅のローブの女が何をしたのか、様々な可能性を考察した。
まずこの女が、第六師団長シャンテル・ガードナーだという事は、見当がついた。
第六師団を相手にしている事と、深紅のローブを纏った女だという事を考えれば、当然と言える事ではある。
事前情報で、シャンテル・ガードナーが白魔法使いだという事も知っていた。
であるならば、攻撃性のある魔法を使う事はできない。ではどうやって三人を倒したのか?
必然的に考えは魔道具に行きつく事になる。
・・・・・この女、どんな魔道具を使ったわけ?魔導剣士のアタシでも、動きもせずに人を倒す魔道具なんて見た事も聞いた事もない。そうすると、この女が自分で開発した魔道具って事?
だとしたら攻撃方法、防御方法を特定する事は難しい。戦いの中で探るしかない。
無理のない話しだが、最初からラクエルは考える方向を誤っていた。
問題の答えはシャンテル・ガードナーの魔力である。自分に敵意のあるものが、シャンテルの魔力に触れる事でその命を失う事になるのだが、これは誰も想像できない事であり、ラクエルがそこにたどり着けるはずのない事だった。
ここに到着してから、ラクエルが自分の行動を決めきれないで、立ち尽くしていた時間はせいぜい十数秒である。
しかし敵地のど真ん中に飛び込み、足を止めているのだから、ここまで周囲でシャンテルの戦いを静観していた兵士達が、いつまでも動かないはずもなかった。
「ッ!」
ふいに背後から向けられた殺意にラクエルは体を丸めて前方に跳んだ。それとほぼ同時に、ラクエルの後ろ髪が僅かに切られて風に舞った。
体を縦に回転させ、両足で砂の上に着地して顔を向けると、一瞬前まで自分の立っていた場所に剣を突き刺した帝国兵が、ラクエルに指を向けて叫んだ。
「チィッ!外した!おい、お前らやっちまえ!」
上官らしい男の合図で、それまで周囲で待機していた兵士達が一斉に武器を取り、ラクエルに襲い掛かった!
「ふぅ・・・あっぶなぁ、油断した。あっちにばっか気をとられると死ぬか」
ラクエルは腰に巻いた革のベルトから、白い刃のナイフを抜き取り構えると、武器を構えて自分に向かってくる帝国兵達を冷静に見つめた。
5・・・10・・・15・・・雑魚がぞろぞろと、しかも全員体力型じゃん?
敵がアタシ一人だからって、力押しでやっちまおうって考え?だったら頭悪すぎでしょ?
「なめてんじゃないよ」
地面を掴むように指先に力を入れて蹴った次の瞬間、ラクエルの姿が消えた。
「ッ!?」
剣を掲げて襲い掛かって来た数十人の兵士達は、一瞬にして標的の女を見失った事で足を止めざるを得なかった。
「なッ!?ど、どこだ!?どこに行ッ・・・!?」
その男は最後まで言葉を繋ぐ事ができなかった。なぜならその前に、首が胴体を離れて飛んでいたからだ。
そして空中で回転する頭部が落ちてくるまでのほんの僅かな時間で、ラクエルに向かって来た十数人の兵士達は、全員が白い刃によって首を刎ね飛ばされていた。
「ふん、こんなヤツらでアタシを止められるって思った?」
バタバタと崩れ落ちる首の無い帝国兵達。ほんの一瞬で屈強な帝国兵達を斬って捨てたラクエルの圧倒的強さを目の当たりにし、血気づいた帝国兵達も、踏み出した足を止めざるを得なかった。無暗に突っ込めば次は自分の首が飛ぶのだから。
兵士達の一瞬の躊躇いを見たラクエルは、シャンテル・ガードナーに向き直ると再び地面を蹴った。
自ら決断しての行動ではないが、こうなってしまった以上はやるしかない。
今ラクエルが兵士達の首を刎ね飛ばして力を見せつけたのは、この一瞬が欲しかったからである。
個人としての力量で上回っていても、敵は数万人いるのだ。このまま全員を相手にして勝てると言う程うぬぼれてはいない。
ここでシャンテル・ガードナーを倒して終わらせる。
仲間達は倒れている。
そして以前として囲まれている状況に変わりはないが、まずは大将首を取る。
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