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1341 命の炎
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ラクエルとシャンテル・ガードナー、両者の間にはおよそ十数メートル程の距離の開きがあった。
本気を出したラクエルがその距離を詰めるためにかかる時間は、瞬き程の一瞬である。
コンマ一秒の刹那の時、目にも映らない速さとはそれほど速い。
魔法使いのシャンテルには、ラクエルの攻撃を見る事も躱す事も、反応する事さえできない。
首を刎ね飛ばされれば、痛みを感じる間もなく命を取られる事だろう。
両者には、そうなって当然と言える力量の開きがある。
しかしシャンテルの能力は、敵意を持った者がシャンテルの魔力に触れる事で発動する。
それはつまり、シャンテル自身が、敵の姿を認識せずともよいのだ。
ラクエルの姿が視界から消えた時、シャンテル・ガードナーは何もしなかった。
何もできなかったと言い換えてもいいが、シャンテルにとって、敵の姿が見えようが見えまいが関係ない。
戦場に立った時から魔力は常に放出している。
敵意を持って自分に近づいて来るならば、勝手に自滅するだけだ。したがって正面から向かって来ようが、後ろからだろうが、シャンテルにとっては何も変わらないのである。
自分の動きを追って来れるはずがない。そう確信していたラクエルは正面から突撃をかけた。
しかしラクエルのナイフがシャンテルの喉元に突き刺さろうとしたその瞬間、ラクエルの全身に強烈な悪寒が走った。
コンマ一秒以下の薄く細い時の中で、ラクエルの脳裏に浮かんだ言葉、それは・・・・・死!
もう一歩、あともう一歩分深く踏み込めば、シャンテル・ガードナーの首にナイフを突き立てる事ができる。
だが寸でのところで、まるで心臓をワシ掴みにでもされたかのように胸が急激に苦しくなり、呼吸が出来なくなった。さらに全身を襲う異様な寒気に、指が震えてナイフを握る手がおぼつかなくなる。
体中の力が一気に抜け落ちて、そのまま地面に倒れ込みそうになった。
「・・・アァァァーーーーーッ!」
もう一歩深く踏み込みかけたその時、ラクエルは右足で地面を強く叩き、無理やり後方に飛び退いた。
「づぅッ!ハァッ!ゼェッ!ハァッ!ハァッ!ぐ、うぐぅ・・・」
「あら・・・突然消えて、突然また現れて、忙しい方ですね。その様子だと、あと一歩足りなかったというところでしょうか?ギリギリで死を回避したみたいですね?」
砂の上に片膝を着き、大きく肩を上下させながら息を吐く姿は、ほんの一瞬前に帝国兵十数人を斬り捨てた勇ましさとは程遠かった。
シャンテル・ガードナーは一歩も動いていない。今ここで起きた事も言葉の通り、一度消えたラクエルが再び現れた。ただそれだけである。
しかし疲弊したラクエル見れば、何があったのかは手に取るように分かる。
自分の攻撃をしかけようとしたが、魔力に触れる寸前でその危うさに気が付き回避したのだ。
だが、目にも映らないスピードでの突撃を仕掛け、攻撃を繰り出そうとした直前で、無理やり勢いを止めて後ろに飛んだのだ。
無事で済むはずが無い。
「うっ、ぐ・・・ハァッ!ゼェッ!痛ッ、くそっ・・・」
唇と強く噛み締めるラクエルは、ビリビリと痺れる右足にそっと手をあてた。
折れてはいないようだ。だが痛みは強く、指先を動かす事も難しかった。靴を脱いで見ないと確認はできないが、爪が剥がれたのか、皮膚が裂けたのか、ぬるりとした感触に血が流れている事は分かった。
・・・あ、危なかった。あのまま突っ込んでいたら、多分死んでた。
あれか・・・あれでみんなやられたんだ。あのヤバイの、あれは多分魔道具じゃない。
あれは多分・・・魔力だ。
「すごい反射神経ですね。私にはまったく見えませんでしたが、死の寸前で後ろへ飛び退いたみたいですね。ですが、無理な動きをして足を痛めた。その足でこれだけの兵に囲まれて、さっきのように戦えますか?」
シャンテル・ガードナーは表情を変える事もなく、淡々とした様子でラクエルの足に視線を向けた。
「はぁ、はぁ・・・あんた、なにその魔力?アラタもジャレットも、みんなソレでやったってわけ?」
「はい、その通りです。この三人は私の魔力に触れた事で倒れました。洞察力もすごいですね?完全に触れたわけではないのに、よく私の能力を見抜きました」
「心臓が握り潰されそうだったよ、本当に死ぬかと思った。それで・・・みんなを殺したの?」
ラクエルはシャンテルの足元で倒れている三人、アラタとジャレットとフェリックスに目を向けた。
フェリックスはラクエルがこの場に来た時から倒れたままだったが、アラタとジャレットはついさっきまで呻き声を上げていた。苦しんではいたが、生きてはいたのだ。
だが今はその呻き声も聞こえないし、ピクリとも動いていないように見える。
「・・・まだ、死んではいません。数えきれない命を奪った事で、私もこの能力を少しは扱えるようになりました。お見せしましょう、これが三人の命です」
「なッ!?」
シャンテル・ガードナーは真紅のローブから両手を出すと、手の平を上に向けた。
すると青く揺らめく炎が三つ浮かび出した。
「彼ら三人の肉体は活動を停止しました。その意味では肉体は死んだと言っていいでしょう。ですがここに彼らから抜き取った魂があります。この炎を戻せば、彼らの肉体はまた動きます」
「なに、それ?・・・命をそんなふうに・・・あんた、何者?」
「今更ですか?ご存じですよね?私はシャンテル・ガードナー、帝国で最も多くの人を殺した女です」
本気を出したラクエルがその距離を詰めるためにかかる時間は、瞬き程の一瞬である。
コンマ一秒の刹那の時、目にも映らない速さとはそれほど速い。
魔法使いのシャンテルには、ラクエルの攻撃を見る事も躱す事も、反応する事さえできない。
首を刎ね飛ばされれば、痛みを感じる間もなく命を取られる事だろう。
両者には、そうなって当然と言える力量の開きがある。
しかしシャンテルの能力は、敵意を持った者がシャンテルの魔力に触れる事で発動する。
それはつまり、シャンテル自身が、敵の姿を認識せずともよいのだ。
ラクエルの姿が視界から消えた時、シャンテル・ガードナーは何もしなかった。
何もできなかったと言い換えてもいいが、シャンテルにとって、敵の姿が見えようが見えまいが関係ない。
戦場に立った時から魔力は常に放出している。
敵意を持って自分に近づいて来るならば、勝手に自滅するだけだ。したがって正面から向かって来ようが、後ろからだろうが、シャンテルにとっては何も変わらないのである。
自分の動きを追って来れるはずがない。そう確信していたラクエルは正面から突撃をかけた。
しかしラクエルのナイフがシャンテルの喉元に突き刺さろうとしたその瞬間、ラクエルの全身に強烈な悪寒が走った。
コンマ一秒以下の薄く細い時の中で、ラクエルの脳裏に浮かんだ言葉、それは・・・・・死!
もう一歩、あともう一歩分深く踏み込めば、シャンテル・ガードナーの首にナイフを突き立てる事ができる。
だが寸でのところで、まるで心臓をワシ掴みにでもされたかのように胸が急激に苦しくなり、呼吸が出来なくなった。さらに全身を襲う異様な寒気に、指が震えてナイフを握る手がおぼつかなくなる。
体中の力が一気に抜け落ちて、そのまま地面に倒れ込みそうになった。
「・・・アァァァーーーーーッ!」
もう一歩深く踏み込みかけたその時、ラクエルは右足で地面を強く叩き、無理やり後方に飛び退いた。
「づぅッ!ハァッ!ゼェッ!ハァッ!ハァッ!ぐ、うぐぅ・・・」
「あら・・・突然消えて、突然また現れて、忙しい方ですね。その様子だと、あと一歩足りなかったというところでしょうか?ギリギリで死を回避したみたいですね?」
砂の上に片膝を着き、大きく肩を上下させながら息を吐く姿は、ほんの一瞬前に帝国兵十数人を斬り捨てた勇ましさとは程遠かった。
シャンテル・ガードナーは一歩も動いていない。今ここで起きた事も言葉の通り、一度消えたラクエルが再び現れた。ただそれだけである。
しかし疲弊したラクエル見れば、何があったのかは手に取るように分かる。
自分の攻撃をしかけようとしたが、魔力に触れる寸前でその危うさに気が付き回避したのだ。
だが、目にも映らないスピードでの突撃を仕掛け、攻撃を繰り出そうとした直前で、無理やり勢いを止めて後ろに飛んだのだ。
無事で済むはずが無い。
「うっ、ぐ・・・ハァッ!ゼェッ!痛ッ、くそっ・・・」
唇と強く噛み締めるラクエルは、ビリビリと痺れる右足にそっと手をあてた。
折れてはいないようだ。だが痛みは強く、指先を動かす事も難しかった。靴を脱いで見ないと確認はできないが、爪が剥がれたのか、皮膚が裂けたのか、ぬるりとした感触に血が流れている事は分かった。
・・・あ、危なかった。あのまま突っ込んでいたら、多分死んでた。
あれか・・・あれでみんなやられたんだ。あのヤバイの、あれは多分魔道具じゃない。
あれは多分・・・魔力だ。
「すごい反射神経ですね。私にはまったく見えませんでしたが、死の寸前で後ろへ飛び退いたみたいですね。ですが、無理な動きをして足を痛めた。その足でこれだけの兵に囲まれて、さっきのように戦えますか?」
シャンテル・ガードナーは表情を変える事もなく、淡々とした様子でラクエルの足に視線を向けた。
「はぁ、はぁ・・・あんた、なにその魔力?アラタもジャレットも、みんなソレでやったってわけ?」
「はい、その通りです。この三人は私の魔力に触れた事で倒れました。洞察力もすごいですね?完全に触れたわけではないのに、よく私の能力を見抜きました」
「心臓が握り潰されそうだったよ、本当に死ぬかと思った。それで・・・みんなを殺したの?」
ラクエルはシャンテルの足元で倒れている三人、アラタとジャレットとフェリックスに目を向けた。
フェリックスはラクエルがこの場に来た時から倒れたままだったが、アラタとジャレットはついさっきまで呻き声を上げていた。苦しんではいたが、生きてはいたのだ。
だが今はその呻き声も聞こえないし、ピクリとも動いていないように見える。
「・・・まだ、死んではいません。数えきれない命を奪った事で、私もこの能力を少しは扱えるようになりました。お見せしましょう、これが三人の命です」
「なッ!?」
シャンテル・ガードナーは真紅のローブから両手を出すと、手の平を上に向けた。
すると青く揺らめく炎が三つ浮かび出した。
「彼ら三人の肉体は活動を停止しました。その意味では肉体は死んだと言っていいでしょう。ですがここに彼らから抜き取った魂があります。この炎を戻せば、彼らの肉体はまた動きます」
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