異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1362 託された想いを胸に

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「ロブギンス様、最後まで抵抗していた帝国兵が投降しました。この戦場はクインズベリーの勝利です」

最後方に立つバーナード・ロブギンズの元に、部隊長の一人が勝利の報告に訪れた。

「うむ・・・勝利は喜ばしいものだ。だが被害状況はどうなっている?」

「はい、総勢で五万の兵数でしたが、およそ三割程数を減らしました。治安部隊のヴァン・エストラーダとモルグ・フェンテスは重傷を負っていましたが、ヒールで回復し数日休めば前線に復帰できそうです。レイジェス側には大きな被害は無かったとの事でした。あとは・・・」

ロブギンズは顎の下に生えている白い髭を撫でながら、一連の報告を黙って聞いていた。
そして全ての報告を聞き終え状況を整理すると、重い口を開いた。

「ふぅむ・・・赤い女か・・・」

血狂刃の力を解放したラザレナの凄まじいプレッシャーは、軍の最後尾にまでその圧をぶつけていた。
それは総大将のロブギンスでさえも、目を見張らされる程のものだった。

あそこまで強烈なプレッシャーは、百戦錬磨のロブギンスとて、そうそう見たものではなかった。
あのまま赤い女、ラザレナ・シールズが残っていたら、クインズベリーの被害はこんなものではすまなかっただろう。


「私からは以上です。赤い女と交戦した四勇士のルーシー・アフマダリエフや、ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアンが戻りましたら、詳しくは彼らから直接報告するよう伝えておきます」

報告を終えた部隊長に了承の旨を伝えると、ロブギンスはあらためて戦場を見回した。

残存する兵の数がおよそ七割。この数字だけを見れば、ここユナニマス大川の戦いは圧勝と言っていいだろう。
しかし結果よりも、実際の戦闘はかなり際どいものだった。

まず大川を渡るために、四勇士のシャクール・バルデスが単身で空の戦いを制した事が大きかった。

シャクールと互角の戦いを繰り広げた、帝国の黒魔法使いロバート・フラナガン。
もしシャクールがいなかったら、大川を渡るために多大な犠牲を払った事だろう。

そして大川を渡るために少数精鋭で敵地に乗り込んで行った、レイジェスと治安部隊の働きがあった。
敵の黒魔法使い達を叩き、そのまま幹部達をも倒した事が、勝敗を分けたと言っても過言ではない。


「若者が育ってきたな・・・」

後方で指揮を執っていたが、この戦いで自分が前に出る事はなかった。
有望な若手が台頭している事は喜ばしい事だ。彼らがこれからのクインズベリーを担っていくのだ。

できれば一人でも多くを国に帰してやりたい。

ロブギンスは強くそう想った。


ここを越えればいよいよ帝国首都に入る。
ここを去ったという赤い女を始め、首都には主力中の主力を置いているだろう。
戦いは今以上に激化していく。果たしてどれだけ生きて帰れるだろうか・・・・・

「いかんな・・・歳を取ると、感傷的になっちまう」

ロブギンスは顎を撫でて小さく独り言ちると、もう一度正面に目を向けた。


まぁ、ワシの最後の仕事だ。
この命に代えても帝国を倒し、お前らを国に帰してやる。





そしてユナニマス大川の戦いに決着がついた頃、砂漠の大川に陽が落ちた。


「カチュア・・・あの師団長の女の人と、なにかあった?」


そう言ってアラタは、折りたたまれた布を目の前に放り投げた。
黒い布は空中で一人でに広がっていき、あっという間に三角形のテントが出来上がった。

大きさとしては、奥行きは大人一人が丁度寝そべられるくらいあり、高さも幅も1メートルも無い。
完全に寝るためだけの物であり、テントと言っても寝袋と大差ない物だった。

これはこの戦いにおいて、夜をやり過ごすために一人一人に支給された、個人用の簡易テントである。


「シャンテルさんの事だよね?・・・うん、あのね、言葉で伝えるのは難しいんだけど・・・あの人、本当は悪い人じゃなかった。戦争だって望んでなかったし・・・それに、多分帝国が負けるように指示を出していたと思う」

「え?」

カチュアもアラタのすぐ隣に簡易テントを作ると、一呼吸を置いてゆっくりとアラタに向き直った。

「あのね・・・不思議だったの。私達は囲まれていたのに、どうして全員で一斉に攻撃をしかけて来ないんだろうって。アラタ君もそう思わなかった?」

「それは・・・言われてみれば確かに。俺はてっきりプライドやらで、余計な手出しはするなって、言い聞かせてたのかなってくらいにしか考えてなかった。でも確かにカチュアの言う通りだよな。戦争なんだから、勝つ事を最優先にするべきだと思う。特に帝国は仕掛けた側なんだから、なおさら勝利だけを見る事が普通な気がする」

アラタがカチュアの考えに頷くと、カチュアは言葉を続けた。


「うん、アラタ君・・・今私の中には、シャンテルさんの魔力が宿っているの。シャンテルさんは、あの赤い髪の人に斬られて亡くなる前に、私に魔力を送ってくれたの。そのおかげで私も助かったんだよ。そして最後に目があった時、シャンテルさん・・・私に託すって言ってた・・・魔力を通して伝わってきたの、シャンテルさんの気持ちが・・・・・アラタ君、シャンテルさんは勝つ気なんて無かったんだよ」

今にも泣き出しそうな表情で、言葉を詰まらせるカチュア。
シャンテル・ガードナーの行為は自国への裏切りであり、この戦場の兵士達、そして帝国で暮らす国民をも危険に晒すものだった。
帝国側の立場で見れば、到底許されるものではない。

しかしシャンテルは、このまま帝国が大陸に戦火を広げれば、罪の無い大勢の人達の命が奪われ、果ての無い悲しみだけしか残らないと考えた。

そして帝国と対等に戦えるクインズベリーならば、この戦争を終わらせ、争いの無い平和な世界を作れるかもしれないと思い、覚悟を決めたのだ。


シャンテルから送られた魔力を通して、シャンテルの真意を知ったカチュアの胸には、やりきれない想い、そしてどうしようもない切なさがあった。


「アラタ君・・・私ね、シャンテルさんと最後に分かり合えたんだよ。それなのに・・・こんなのって・・・・・」

両手を胸に当てて、うつむきながら肩を振るわせるカチュアを、アラタはそっと抱き寄せた。

「カチュア・・・きっと、あの人は最後にカチュアに想いを伝えられただけでも、救われたと思うよ。だから、俺達が平和な世界を作れるように頑張って行こう。それがシャンテルさんの気持ちに応える一番の方法だと思う」


最愛の夫の胸の温もりを感じながら、カチュアは小さく頷き、そして一筋の涙を零した。
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