1,379 / 1,560
1378 不気味なナイフ
しおりを挟む
百や二百どころではない。ソフィア・ラルチネーゼの蹴りは一呼吸さえ置く暇もなく、絶えずフリオサザール・カラコスの結界を蹴り続けた。
魔法であっても打撃でもあっても、結界の耐久度を超える事ができるのならば、結界は破壊する事ができる。ソフィアは最初の一蹴りで、カラコスの結界を破壊する事ができると確信した。
そして自分ならば、相手が誰であっても根負けする事はない。その確たる自信がこの勝負に挑ませていた。
ここまで蹴られれば、カラコスにも分かっていた。
目の前の薄桃色の髪の女は、本気で自分の結界を蹴り破るつもりなのだと。
魔力を放出し続けなければこの結界は維持できない。しかし結界に魔力を注いでいる間は、闇の力を使う事はできない。
否が応でもソフィアの仕掛けた、この根比べに付き合うしかないのだ。
カラコスはジェリメール・カシレロと、師団長の座を争った男である。
魔力量は並みの魔法使いとは比べられないくらいに多い。このまま我慢比べに挑んでも勝機はある。
しかし同じ帝国の仲間であるカシレロやシーサケットが話していたように、カラコスは常に自分本位であり、目的のためならば仲間をも犠牲にする男である。
そんな男がこのまま大人しく、いつまでも蹴り続けられるなど我慢できるはずがなかった。
「あぁぁーーーッ!くっそしつけぇなぁッ!もういい!いつまでも付き合ってられっかよぉッ!」
カラコスは怒声を上げると、右手は前に出して魔力を放出したまま、ローブの内側に左手を入れて一本のナイフを取り出した。
それは白くゴツゴツとした、一見すると石灰石のような柄に、赤黒い刃という不気味なナイフだった。
カラコスが取り出したナイフを見ると、ソフィア・ラルチネーゼの背筋に怖気が走った。
なんだ?・・・なんだ、あのナイフは?
気持ち悪い・・・見た目じゃなく異様な怖さを感じる。あのナイフ、普通のナイフじゃないぞ。
さっき見た闇の瘴気とはまた違う種類の、得体の知れないおぞましさを感じる。
あれはヤバイな、さっさと決めないと!
「見せてやるぜ!俺の屍のナイフをよぉぉぉぉぉーーーーーーッツ!」
カラコスは赤黒い刃のナイフを逆手に持つと、雄たけびを上げて頭上に振り上げた。
「させるかぁぁぁーーーーーーーーーッツ!」
ソフィアは右足で地面を蹴って跳び上がった。そして両手を胸の前で握り合わせ、体を高速で回転させた。一回転、二回転、三回転・・・跳びながら体を高速回転させ、そして十分な回転数と力を蓄えると、渾身の左回し蹴りを繰り出した!
「ッ!なにいィィィーーーーーッ!?」
ガラス板が割れるような音を鳴り響かせ、カラコスの結界は蹴り砕かれた。
「五回転回し蹴りだ。さすがにこれだけの力を乗せたら、あんたの結界でも耐えられなかったようだね。さぁ、お終いだよ!」
着地と同時に間髪入れずに地面を蹴り、ソフィアはカラコスに迫った!
一蹴りでいい、ソフィアの蹴りならば一蹴りで決着がつく。派手な技も必要ない。ただ一発蹴りつければそれで終わるのだ。もはや観念したのか、地面に手を着いて項垂れるカラコスの頭を目掛けて、ソフィアは左足を振り抜いた!
しかし・・・・・
「・・・な、に?」
己の足が蹴り抜いたモノを見て、ソフィアは驚愕した。
「ククク・・・すげぇ攻めだったぜ、本当に驚いたよ。けど、一歩遅かったなぁぁぁーーーッ!」
フリオサザール・カラコスは笑った。高らかに笑った。
本当に間一髪だったが間に合った。あそこで、結界が破壊された時に少しでももたついていたら、今頃頭を割られて死んでいただろう。
驚きかされたが、それでも身を護るよりも、ソレにナイフを突き刺す事を選択した結果、かろうじて間に合ったのだ。
「お、お前・・・これは・・・」
カラコスの狂ったように甲高い笑い声を聞いても、ソフィアは己の左足が蹴り抜いたソレから、目が離せなかった。
左足にベッタリと付着した赤黒い血、それはたった今ソフィアの蹴りで、顎を砕かれた兵士の死体から飛び散ったものだった。
さっきの爆発が原因なのだろう、全身のいたるところが焼けこげ、肉は抉れて血が流れ落ち、首はへし折れてあらぬ方向に曲がっている。確認するまでもなく死んでいる。
問題はその死んでいるはずの兵士が、飛び起きてソフィアの蹴りから、カラコスをかばったという事だ。
「ククククク、びびったか?ナイフで切りつけた死体を自由に動かせる、これが俺の魔道具、屍のナイフだ」
邪悪な笑みを浮かべるカラコスの目は、漆黒の闇のように真っ黒に染まっていた。
魔法であっても打撃でもあっても、結界の耐久度を超える事ができるのならば、結界は破壊する事ができる。ソフィアは最初の一蹴りで、カラコスの結界を破壊する事ができると確信した。
そして自分ならば、相手が誰であっても根負けする事はない。その確たる自信がこの勝負に挑ませていた。
ここまで蹴られれば、カラコスにも分かっていた。
目の前の薄桃色の髪の女は、本気で自分の結界を蹴り破るつもりなのだと。
魔力を放出し続けなければこの結界は維持できない。しかし結界に魔力を注いでいる間は、闇の力を使う事はできない。
否が応でもソフィアの仕掛けた、この根比べに付き合うしかないのだ。
カラコスはジェリメール・カシレロと、師団長の座を争った男である。
魔力量は並みの魔法使いとは比べられないくらいに多い。このまま我慢比べに挑んでも勝機はある。
しかし同じ帝国の仲間であるカシレロやシーサケットが話していたように、カラコスは常に自分本位であり、目的のためならば仲間をも犠牲にする男である。
そんな男がこのまま大人しく、いつまでも蹴り続けられるなど我慢できるはずがなかった。
「あぁぁーーーッ!くっそしつけぇなぁッ!もういい!いつまでも付き合ってられっかよぉッ!」
カラコスは怒声を上げると、右手は前に出して魔力を放出したまま、ローブの内側に左手を入れて一本のナイフを取り出した。
それは白くゴツゴツとした、一見すると石灰石のような柄に、赤黒い刃という不気味なナイフだった。
カラコスが取り出したナイフを見ると、ソフィア・ラルチネーゼの背筋に怖気が走った。
なんだ?・・・なんだ、あのナイフは?
気持ち悪い・・・見た目じゃなく異様な怖さを感じる。あのナイフ、普通のナイフじゃないぞ。
さっき見た闇の瘴気とはまた違う種類の、得体の知れないおぞましさを感じる。
あれはヤバイな、さっさと決めないと!
「見せてやるぜ!俺の屍のナイフをよぉぉぉぉぉーーーーーーッツ!」
カラコスは赤黒い刃のナイフを逆手に持つと、雄たけびを上げて頭上に振り上げた。
「させるかぁぁぁーーーーーーーーーッツ!」
ソフィアは右足で地面を蹴って跳び上がった。そして両手を胸の前で握り合わせ、体を高速で回転させた。一回転、二回転、三回転・・・跳びながら体を高速回転させ、そして十分な回転数と力を蓄えると、渾身の左回し蹴りを繰り出した!
「ッ!なにいィィィーーーーーッ!?」
ガラス板が割れるような音を鳴り響かせ、カラコスの結界は蹴り砕かれた。
「五回転回し蹴りだ。さすがにこれだけの力を乗せたら、あんたの結界でも耐えられなかったようだね。さぁ、お終いだよ!」
着地と同時に間髪入れずに地面を蹴り、ソフィアはカラコスに迫った!
一蹴りでいい、ソフィアの蹴りならば一蹴りで決着がつく。派手な技も必要ない。ただ一発蹴りつければそれで終わるのだ。もはや観念したのか、地面に手を着いて項垂れるカラコスの頭を目掛けて、ソフィアは左足を振り抜いた!
しかし・・・・・
「・・・な、に?」
己の足が蹴り抜いたモノを見て、ソフィアは驚愕した。
「ククク・・・すげぇ攻めだったぜ、本当に驚いたよ。けど、一歩遅かったなぁぁぁーーーッ!」
フリオサザール・カラコスは笑った。高らかに笑った。
本当に間一髪だったが間に合った。あそこで、結界が破壊された時に少しでももたついていたら、今頃頭を割られて死んでいただろう。
驚きかされたが、それでも身を護るよりも、ソレにナイフを突き刺す事を選択した結果、かろうじて間に合ったのだ。
「お、お前・・・これは・・・」
カラコスの狂ったように甲高い笑い声を聞いても、ソフィアは己の左足が蹴り抜いたソレから、目が離せなかった。
左足にベッタリと付着した赤黒い血、それはたった今ソフィアの蹴りで、顎を砕かれた兵士の死体から飛び散ったものだった。
さっきの爆発が原因なのだろう、全身のいたるところが焼けこげ、肉は抉れて血が流れ落ち、首はへし折れてあらぬ方向に曲がっている。確認するまでもなく死んでいる。
問題はその死んでいるはずの兵士が、飛び起きてソフィアの蹴りから、カラコスをかばったという事だ。
「ククククク、びびったか?ナイフで切りつけた死体を自由に動かせる、これが俺の魔道具、屍のナイフだ」
邪悪な笑みを浮かべるカラコスの目は、漆黒の闇のように真っ黒に染まっていた。
0
あなたにおすすめの小説
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界でカイゼン
soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)
この物語は、よくある「異世界転生」ものです。
ただ
・転生時にチート能力はもらえません
・魔物退治用アイテムももらえません
・そもそも魔物退治はしません
・農業もしません
・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます
そこで主人公はなにをするのか。
改善手法を使った問題解決です。
主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。
そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。
「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」
ということになります。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる