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「しかしカシレロ様、いくら死体を自在に動かせると言っても、一体一体切りつけて回るのでは、大した数を動かす事はできないのではないでしょうか?それが戦闘中ともなれば、そんな暇はないのでは?」
シーサケットは率直な疑問を投げかけた。
理論上ではカラコスの屍のナイフで、死者の軍団を作る事は可能である。
しかしシーサケットの指摘の通り、いちいち切りつけていては時間がかかり過ぎる。よほどの実力差があればまだしも、戦いの最中そんな事をしていては、敵に隙を見せるだけだろう。
「そうだな、お前の言う事はもっともだ。実際俺もそう思う、死者の軍団を作る事ができれば、そりゃ勝つ事は難しいだろう。だがそこまでいけるかって言うと、実際は無理だろうな。一人で大勢を相手にしてりゃあ、五体、十体が関の山だろう。カラコスの結界を破壊できる程の手練れが相手なら、屍のナイフも容易く攻略すると思うぜ」
シーサケットが指摘する屍のナイフの弱点を、カシレロはすんなりと認めた。
「使い方次第なんだけどな、カラコスが後ろでせっせこ死体処理だけをやってりゃ、いくらでも死者の軍団を作れるよな?けど実際には、いくら味方を攻撃しないと言っても、死体と並んで戦うのは拒否感もすげぇと思うんだ。味方が受け入れねぇよ。だから屍のナイフを使うんなら、カラコスは一人で戦うしかねぇんだ」
「そこまで分かってらっしゃるのなら、なぜカラコスを一人にしておくのですか?屍のナイフが通用しないのなら、今からでも援軍を送った方がいいのでは?」
「まぁ待て、まだ話しは終わってねぇ。屍のナイフも今のままじゃ大して期待はできねぇだろうな。作り手のカラコスもそれは十分に分かってるはずだ。だがカラコスの本領発揮はここからだ。お前もさっき言ってただろ?カラコスは闇の力を宿しているって。その闇の力、闇の瘴気だな、それを屍のナイフを通して放出するんだ。屍のナイフを通した闇の瘴気を死体に当てる、するとどうなると思う?」
ニヤリと口角を上げて、自分に目を向けるカシレロ。その表情を見て、シーサケットはカシレロの言わんとする事が分かった。
「・・・まさか!?」
「ふははははは、そのまさかだ。屍のナイフを通して発した闇の瘴気は、死体を動かす力がある」
一定の距離を取って対峙するロンズデール軍と、死体となった帝国軍。
ロンズデール軍の先頭にたった副司令官ニール・グラテロールは、自分と睨み合うカラコスに指先を突き付けて叫んだ。
「怯む事はない!俺達なら勝てる!総攻撃だ!」
号令と同時にまずは体力型の兵士が駆けだした。
それを見て帝国のカラコスも屍のナイフを振るい、死体となった兵士達を突撃させる。
そのほとんどが素手であり、動き方は統率が取れていない。ただ真っすぐ向かい、掴みかかろうと腕を伸ばすだけである。
死者の軍団と言えばそれなりに聞こえるかもしれない。しかし言ってしまえば物言わぬ死体である。
カラコスも一度に大勢に細かい指示を出せるはずもない。全体攻撃では、真っ直ぐ向かわせて正面の敵を襲えという、簡単なものがせいぜいだった。
そんな戦い方で、連携のとれたロンズデール兵に勝てるはずはなかった。
一体、また一体、首を刎ね、火魔法で焼き、氷魔法で固める。
考える事のできない死体は、ロンズデール軍の敵ではなかった。最初こそ死者を相手にする事に、少なからず戸惑いや恐れを感じていたロンズデール兵だが、自分達の攻撃がおもしろいくらい簡単に入り、実にあっさりと倒せる事を感じ取ると、そこからは一気に攻勢へと移った。
「よし!いけるぞ!」
「こいつらはただ真っ直ぐ向かって来るだけだ、落ち着いて叩けばいい!」
ロンズデール兵達は勢いづいた言葉を発する。副司令官のニールも同様の印象だった。
死体が向かって来るという光景に圧倒されそうになったが、落ちついて戦ってみれば、生きている兵士の足元にも及ばないではないか。
確かに不気味でおぞましさは感じる。見た目にのまれてしまえば、こちらがあっさりとやられてしまっていたかもしれない。つまりはそういう事なのだろう。この動く死体を見て、恐怖を感じるかどうかで勝敗は分かれるのだ。
最初にロンズデール兵が何人か、惨たらしく殺されでもしていたら、恐怖が伝染してパニックを起こしていたかもしれない。そうなっていれば、ロンズデールの敗色は濃かっただろう。
しかし先制攻撃を仕掛けたソフィアが死体を一体蹴り倒した事、ニールが結界で防いで見せた事、これにより兵士達が、少なからず死体への恐れに対して、心の準備をできた事は大きかった。
しかし、ソフィア・ラルチネーゼの表情は一向に険しかった。
「ニール、おかしくないか?いくらなんでも弱すぎる」
ニールの隣に立つと、ソフィアは率直に懸念を口にした。
「ん、ああ、言われてみればな。けど、死体なんてあんなもんなんじゃねぇのか?そもそも体が壊れてんだ、まともに動けるはずもないし、自分で考える事もできないだろ?こっちがびびらなきゃ、あんなもんだと思うぜ」
「それはそうだが、そんな事は敵も承知の上だろ?こうなった時の備えくらいあるんじゃないのか?」
ソフィアの指摘はもっともだった。
やや楽観的に考えていたニールだが、軍を率いる者として、そこを見過ごす程この戦いを軽くは見ていなかった。
「・・・確かに、それもそうか・・・ソフィア、ヤツは何を企てていると思う?」
「あいつの能力でまだ底が見えないのは一つだけだ、それは・・・・・」
結界は破った、動く死体も十分に対処できている。そうなるとカラコスが見せた能力で、残っているものは一つだけ。
「まさかここまでやるとはな・・・いいぜ、俺も本気でやってやる」
カラコスの全身から放出されていた漆黒の闇が、より強く大きく膨れ上がった。
それは晴れた空を暗闇で覆い隠し、一筋の日の光の侵入さえ許さなかった。
その身に闇を宿した男、フリオサザール・カラコスがその本性を発起した。
「てめぇらの死体も、この俺の手駒として使ってやるよ」
シーサケットは率直な疑問を投げかけた。
理論上ではカラコスの屍のナイフで、死者の軍団を作る事は可能である。
しかしシーサケットの指摘の通り、いちいち切りつけていては時間がかかり過ぎる。よほどの実力差があればまだしも、戦いの最中そんな事をしていては、敵に隙を見せるだけだろう。
「そうだな、お前の言う事はもっともだ。実際俺もそう思う、死者の軍団を作る事ができれば、そりゃ勝つ事は難しいだろう。だがそこまでいけるかって言うと、実際は無理だろうな。一人で大勢を相手にしてりゃあ、五体、十体が関の山だろう。カラコスの結界を破壊できる程の手練れが相手なら、屍のナイフも容易く攻略すると思うぜ」
シーサケットが指摘する屍のナイフの弱点を、カシレロはすんなりと認めた。
「使い方次第なんだけどな、カラコスが後ろでせっせこ死体処理だけをやってりゃ、いくらでも死者の軍団を作れるよな?けど実際には、いくら味方を攻撃しないと言っても、死体と並んで戦うのは拒否感もすげぇと思うんだ。味方が受け入れねぇよ。だから屍のナイフを使うんなら、カラコスは一人で戦うしかねぇんだ」
「そこまで分かってらっしゃるのなら、なぜカラコスを一人にしておくのですか?屍のナイフが通用しないのなら、今からでも援軍を送った方がいいのでは?」
「まぁ待て、まだ話しは終わってねぇ。屍のナイフも今のままじゃ大して期待はできねぇだろうな。作り手のカラコスもそれは十分に分かってるはずだ。だがカラコスの本領発揮はここからだ。お前もさっき言ってただろ?カラコスは闇の力を宿しているって。その闇の力、闇の瘴気だな、それを屍のナイフを通して放出するんだ。屍のナイフを通した闇の瘴気を死体に当てる、するとどうなると思う?」
ニヤリと口角を上げて、自分に目を向けるカシレロ。その表情を見て、シーサケットはカシレロの言わんとする事が分かった。
「・・・まさか!?」
「ふははははは、そのまさかだ。屍のナイフを通して発した闇の瘴気は、死体を動かす力がある」
一定の距離を取って対峙するロンズデール軍と、死体となった帝国軍。
ロンズデール軍の先頭にたった副司令官ニール・グラテロールは、自分と睨み合うカラコスに指先を突き付けて叫んだ。
「怯む事はない!俺達なら勝てる!総攻撃だ!」
号令と同時にまずは体力型の兵士が駆けだした。
それを見て帝国のカラコスも屍のナイフを振るい、死体となった兵士達を突撃させる。
そのほとんどが素手であり、動き方は統率が取れていない。ただ真っすぐ向かい、掴みかかろうと腕を伸ばすだけである。
死者の軍団と言えばそれなりに聞こえるかもしれない。しかし言ってしまえば物言わぬ死体である。
カラコスも一度に大勢に細かい指示を出せるはずもない。全体攻撃では、真っ直ぐ向かわせて正面の敵を襲えという、簡単なものがせいぜいだった。
そんな戦い方で、連携のとれたロンズデール兵に勝てるはずはなかった。
一体、また一体、首を刎ね、火魔法で焼き、氷魔法で固める。
考える事のできない死体は、ロンズデール軍の敵ではなかった。最初こそ死者を相手にする事に、少なからず戸惑いや恐れを感じていたロンズデール兵だが、自分達の攻撃がおもしろいくらい簡単に入り、実にあっさりと倒せる事を感じ取ると、そこからは一気に攻勢へと移った。
「よし!いけるぞ!」
「こいつらはただ真っ直ぐ向かって来るだけだ、落ち着いて叩けばいい!」
ロンズデール兵達は勢いづいた言葉を発する。副司令官のニールも同様の印象だった。
死体が向かって来るという光景に圧倒されそうになったが、落ちついて戦ってみれば、生きている兵士の足元にも及ばないではないか。
確かに不気味でおぞましさは感じる。見た目にのまれてしまえば、こちらがあっさりとやられてしまっていたかもしれない。つまりはそういう事なのだろう。この動く死体を見て、恐怖を感じるかどうかで勝敗は分かれるのだ。
最初にロンズデール兵が何人か、惨たらしく殺されでもしていたら、恐怖が伝染してパニックを起こしていたかもしれない。そうなっていれば、ロンズデールの敗色は濃かっただろう。
しかし先制攻撃を仕掛けたソフィアが死体を一体蹴り倒した事、ニールが結界で防いで見せた事、これにより兵士達が、少なからず死体への恐れに対して、心の準備をできた事は大きかった。
しかし、ソフィア・ラルチネーゼの表情は一向に険しかった。
「ニール、おかしくないか?いくらなんでも弱すぎる」
ニールの隣に立つと、ソフィアは率直に懸念を口にした。
「ん、ああ、言われてみればな。けど、死体なんてあんなもんなんじゃねぇのか?そもそも体が壊れてんだ、まともに動けるはずもないし、自分で考える事もできないだろ?こっちがびびらなきゃ、あんなもんだと思うぜ」
「それはそうだが、そんな事は敵も承知の上だろ?こうなった時の備えくらいあるんじゃないのか?」
ソフィアの指摘はもっともだった。
やや楽観的に考えていたニールだが、軍を率いる者として、そこを見過ごす程この戦いを軽くは見ていなかった。
「・・・確かに、それもそうか・・・ソフィア、ヤツは何を企てていると思う?」
「あいつの能力でまだ底が見えないのは一つだけだ、それは・・・・・」
結界は破った、動く死体も十分に対処できている。そうなるとカラコスが見せた能力で、残っているものは一つだけ。
「まさかここまでやるとはな・・・いいぜ、俺も本気でやってやる」
カラコスの全身から放出されていた漆黒の闇が、より強く大きく膨れ上がった。
それは晴れた空を暗闇で覆い隠し、一筋の日の光の侵入さえ許さなかった。
その身に闇を宿した男、フリオサザール・カラコスがその本性を発起した。
「てめぇらの死体も、この俺の手駒として使ってやるよ」
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