異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1385 その瞬間

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一蹴りで地上十数メートルを飛び上がり、体力型の目でも追う事が困難な素早い動きは、視界から消えたかと思う程のものである。それがジェリメール・カシレロの魔道具、遊永の靴。

アブエル・マレスもその素早さを完全に捉える事はできなかった。
しかしカシレロがその手に握るナイフだけはくらわないように、意識をナイフにのみ集中させて、かろうじて致命傷は躱していた。
しかしナイフに集中するあまり、鉄板で補強された蹴りはまともにもらってしまい、全身をあざだらけにされていた。

魔法使いの蹴りとはいえ、鈍器で殴られているようなものである。
顔に出さずとも、ダメージは確実に蓄積されていた。


そして今カシレロは、トドメに入ろうとしていた。




クソ野郎が!あれだけ蹴ってダメージがねぇわけねぇんだ!
てめぇは俺のナイフだけは気を付けているようだが、そのせいで蹴りは無防備にくらいまくってやがる。
だったら腹だの背中だの、チンタラやらねぇで次の一発で終わらせてやるよ。
その頭を勝ち割ってやんぜ!


遊永の靴でマレスの視界から消えたカシレロは、そのままマレスを中心に円状に走り続けた。
目にも止まらぬ速さで走り回るカシレロを追う事は不可能である。マレスにできる反撃は、カシレロが仕掛けて来る時を狙うしかない。

無論カシレロもそれは承知している。
だからこそ、一撃を与えたら即座に離れる。これを延々と繰り返し、絶対に捕まらないように徹底していたのだ。ナイフで刺せないのならば蹴り殺せばいい。時間さえかければ、いずれはカシレロが勝つ戦いなのだ。無理をする必要はない。さっきまでのカシレロはそう決めていた。

しかしマレスの挑発が、カシレロに火を付けた。

もうお前の速さには慣れた。このセリフは、一族に代々伝わる魔道具への挑戦である。


どうだ!?てめぇは俺が地面を蹴る足音、風の流れ、かすかな気配を頼りに俺の動きを追ってるようだが、これだけ回られても追い切れるか?てめぇが首を振った時には、俺はもうそこにはいねぇ。
超高速の円の動きで、てめぇから方向感覚を奪う!
そしててめぇが俺を完全に見失った時がてめぇの最後だ!

怒りもあったが、この時点でカシレロは自分がマレスよりも上だと確信に近いものを持っていた。
そのためマレスを見るその目には、殺意と同時に嘲りの色も浮かんで見えた。



・・・・・右、左、今はまだ感覚で追う事ができる。

アブエル・マレスは視覚ではほとんど捉えられないカシレロの高速移動を、他に持ち得る感覚でかろうじて掴んでいた。
しかし全神経を集中させて探っているだけに、精神の消耗は大きい。

おそらくカシレロには、体力の消耗はほとんどないのだろう。
あの魔道具がどういう構造になっているかは分からないが、一度地面を蹴るだけであれだけの距離を稼ぐ事ができるんだ。
己の体力などほとんど使う必要がない。持久戦はカシレロが望むところのはずだ。

長引けば長引く程、こっちが不利だ・・・・・


ここまでの攻防で、カシレロの高速移動をどう攻略するかを考えぬいた結果、マレスは煉極刃を中段に構えたまま目を閉じた。

ジェリメール・カシレロのスピードは、肉眼では追い切れない。
ならば半端に視覚に頼るのではなく、視覚以外の感覚に神経を集中させた方がいいだろう。

聴覚でかすかな音を捉え、空気の動きを肌で感じる。

今はこうして距離をとって撹乱かくらんしているが、ヤツは俺に攻撃をしかける瞬間だけは、必ず接近しなければならない。狙いはそこだ、俺はその一瞬でヤツを掴んでみせる。

さぁかかってきやがれ!そのニヤけたツラをぶった切ってやるぜ!


背水で挑む覚悟が力となり、マレスの体が発する圧が強まった。
それに呼応するように煉極刃が赤々と強く熱を発し、それは周囲の雪さえも溶かし始めた。




・・・こいつ、急に雰囲気が変わったな。なにかする気か?
ここまでやって分かったが、こいつは典型的な体力型だ。攻撃手段はあの剣を振るうか、打撃のどっちかしかねぇ。そして致命傷を負いかねない俺のナイフを警戒するあまり、蹴りにはまるで対応できてねぇ。
だったら俺のやる事は変わらねぇ、ナイフを囮にこいつの頭を蹴り砕く!


突如マレスの体から発せられる圧が強まった事に、カシレロは一瞬警戒を強めた。
だが自分が優位に立っている現実と、マレスがここまで防戦一方で何も対応できていない事から、カシレロは決めていた通りの攻撃を実行に移した。



カシレロの、円状に動きまわりマレスを撹乱する作戦は、確かに効果を上げていた。
視覚を閉じて聴覚と肌感覚、そして足元から伝わる振動にまで神経を集中させていたマレスだが、どんどん加速していくカシレロが今どこにいるのか、掴みきれなくなっていた。

それでもカシレロが攻撃に入る一瞬は見逃さないよう、空気の動きにだけは最大限意識を張っていた。


どこから来る?上か?後ろか?それとも正面か?
マレスは思考と感覚を極限まで高めた。


くくくくく!どうだ!?これがカシレロ一族の遊永の靴だ!てめぇ如きに見えるもんじゃねぇんだよ!
極限まで加速し必殺の一撃を狙うカシレロ。


そして張りつめた空気が臨界点を突破し、その瞬間が訪れた。

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