異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1384 祖先への敬意

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「シャノン様、軍への補給物資の発送は滞りなく完了しました」

アラルコン商会の一室では、シャノン・アラルコンが部下の女性からの報告を受けていた。
幅の広い机の上には積み重ねられた書類が置かれ、シャノンは目の前に立つ部下には目を向けずに、読み進めながら言葉をかけた。

「そう、了解したわ。クインズベリーから要請を受けた食料も問題なし?」

「はい、あそこは土の精霊の加護を受けているとはいえ雪国ですから。戦争も始まりさすがに食料が不足しているようですので、日持ちのする物を中心に十分な量を手配しました。しかしシャノン様・・・私が口を挟む事ではありませんが、クインズベリーにあれだけの予算をつぎ込んでよろしいのですか?」

その問いかけに、シャノンは書類をめくる手を止めて顔を上げた。

「・・・そうだね、普通他国にそこまでする必要はないと思うよね。でもさ、これはアラルコン商会にとっての使命なんだ」

「使命、ですか?」

シャノンは机の引き出しを開けると、数冊の古びたノートを取り出した。
かなりの年代物なのだろう、紙は変色して表紙は破れ、ところどころに補修した形跡が見られる。
それと同時に、それだけ古いノートをそこまでして残しているのだ、よほど大事な物だという事も察せられた。

「・・・シャノン様、それは?」

「・・・これはね、ご先祖様の残した日記帳。レオネラ・アラルコン・・・200年前に貿易をカエストゥスにまで広げて、今のアラルコン商会を礎を築いた大商人」

シャノンは引き出しから白い手袋を取り出してはめると、慎重な手つきでノートをめくった。
その様子を黙って見つめる女性の部下に、シャノンはノートに目を落としたまま静かに言葉をかける。

「・・・ふふ、保存魔法のセーブはかけてあるんだけど、このノートだけはいつも慎重になっちゃうんだ。レオネラは本当にすごい人だよ・・・」

「レオネラ・アラルコン様のお話しは、私も聞き及んでおります。終戦の後、カエストゥスから避難された人々を積極的の受け入れ、私財を投げうってその生活を支えられたと。本当に素晴らしいお方だと存じております」

「うん、そうなんだよね。ここまでするのはなかなか考えられないよ。最終的にレオネラは、私財のほとんどを使い果たした。けれど彼女は破産しなかった。どうしてか分かる?レオネラに助けれらた人達は、生活が落ち着いてくると恩返しをしたんだ。新しい商売をした人からは、驚くような利益の高い取り引きを持ちかけられたり、自然災害でアラルコン商会の建物が崩れた時は、大勢の人が集まって助けてくれたそうだよ。これまでレオネラに助けられた人達が、今度はレオネラを助けたんだ。そうしてアラルコン商会は持ち直していったんだ」

そう話すシャノンの口ぶりは、己の祖先に対する敬意、そして自分がその血筋を次いでいる事に対する、誇りが感じられた。

レオネラ・アラルコンは帝国とカエストゥスの戦争が始まった時、ロンズデールへ帰り戦争に巻き込まれる事はなかった。しかしカエストゥスでできた、かけがえのない友人達と過ごした日々は、一日たりとも忘れた事はなかった。

そして自分だけが、安息の日を生きている事への罪悪感を感じていた。


「罪滅ぼし・・・みたいな気持ちだったんだと思う。せめてカエストゥスの人達を一人でも助けたいって。この日記には、レオネラの苦しい気持ちが沢山書いてあったよ。そして晩年の日記には、自分の大切な人が困っていたら、悔いの無い行動をとってほしいって・・・私達子孫へのそんなレオネラの願いが書いてあった」

「・・・シャノン様」

レオネラはあの日、自分もカエストゥスに残るべきだったのではないか?戦う力は無くても、商会の力があれば何かしらの手助けはできたはず。その思いを生涯忘れる事なく胸に抱えていた。
だから自分の子孫達には同じ思いをしてほしくない。その想いを日記に書き残したのだ。

「・・・アタシはさ、レオネラを尊敬してる。だからその意志を継ぎたい。これはアラルコン商会の使命なんだ。クインズベリーには助けられた。友達もできたし、アタシはまたあいつらと笑って話したいんだ。だからいくらお金がかかっても、友達のいる国のためには出し惜しみしない。これが理由だけど、納得してくれたかな?」

自分の信じた道を歩く。シャノンの黒い瞳に迷いは無かった。部下の女性は目を伏せて頭を下げた。

「はい・・・失礼な事を申しました。シャノン様のお気持ち、ご立派でございます。私もそのお気持ちに添えるように行動致します」

「うん、ありがとう。よろしく頼むよ」


そっと日記帳を閉じると、シャノンは祖先への想いを乗せて小さく息をついた。
そしてクルリと椅子を回し、窓の外へ目を向ける。



・・・・・マレス、アタシはこの戦いに参戦できない。

戦争で不安定になっているロンズデール国内を安定させるには、アラルコン商会の力が必要だ。
さらにクインズベリーへの、支援物資の予算も捻出しなければならない。これらをできるのは、アラルコン商会の跡取りであるアタシしかいない。

だからマレス、あんたに託すよ。
あの日、アタシと出会ってから、あんたはずっとアラルコン商会のために尽くしてくれた。

マレスは高い能力を持っているから、アタシに付いて来なくても自分でなんとかできたと思う。
でもあんたは今日までずっとアタシを支えて来てくれた。

お嬢様、お嬢様って、口うるさいくらいだけど、いつもアタシのために、アラルコン商会のために、あんたはその力を発揮してくれた。

そんなあんたを、今じゃ誰よりも信頼している。

だからマレス・・・・・

「ロンズデールを頼んだよ」









「ぐぁッ!」

「ふはははははは!カスが!遅ぇんだよ!」

カシレロの蹴りがマレスの左頬を打ち抜いた!
魔法使いのものとは思えない重い蹴りに、マレスの首は大きく振られて倒れそうになった。膝に力を入れてふんばり足を残すが、口内が切れて吐き出された血が、雪の上に赤い染みを作った。

「どうだ?これで蹴られると効くだろ?」

カシレロは見せつけるように右足を前に出した。
空高く跳ぶ事ができ、目にも止まらぬスピードで移動できる魔道具、遊永の靴。
その軽快な能力とは反対に、底は厚く爪先は鉄板で補強までされている。いくら魔法使いの力が弱いとは言っても、これで蹴られれば無傷ではすまない。

そして一発蹴ったら安全な距離まで下がる。カシレロは最初からずっと徹底してこれだけをやっていた。
今もマレスから数メートルの距離を置いている。

致命傷になるナイフ攻撃だけはマレスも躱しているが、ナイフに意識を集中させるあまり、蹴りは防ぎ切れずにもらってしまう。その結果マレスの全身はあざだらけになっていた。

「ぺっ・・・ちょこまかとうっとおしい。お前ははえか?」

口の中に溜まった血を吐き捨てると、マレスは煉極刃を握り直し、中段に構えた。

「へっ、強がってんじゃねぇよ!てめぇに俺はつかまえられねぇ!蹴り殺してやるぜ!」

「来な。もうお前の速さは慣れたよ」

「・・・あ?」

表情を変えずに言い切るマレスに、カシレロの目元がピクリと反応した。

圧倒的に自分が押している。無傷のカシレロと、ボロボロのマレスを見比べれば、それは否定しようのない事だ。しかしどれだけ攻撃を重ねても、まるで表情を変えないマレスに、カシレロの苛立ちも募っていた。そこにこの言葉である。

カシレロの苛立ちを爆発させるには、十分過ぎる挑発だった。

「だったら捕まえてみやがれぇぇぇーーーーーッツ!」


怒声とともに再び地面を強く蹴ると、カシレロはマレスの視界から姿を消した。



カシレロ、確かにお前は俺より速い。
だがやっぱりお前は魔法使いだ、お前は分かってねぇんだよ、接近戦ってものをな。

見せてやるぜ!本物の体力型の戦い方を!
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