異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1414 飢えた野獣

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「ハッ!セイッ!」

真っすぐに突き出した左手の平で顔面を打つ。この左は倒す事を目的とはしておらず、いわば牽制、距離を測り、相手の動きを止める事が狙いである。そして左腕を戻すと同時に、力を溜めた本命の右の掌底で相手の顎を打ち抜く!

それはボクシングの基本であり代名詞、左ジャブと右ストレートである。
リンジー・ルプレクトの左右の掌打が、帝国兵を打ち倒した。

「ッ・・・・・」

リンジーの拳は帝国兵の脳を揺さぶり、その意識を一瞬で断ち切った。糸の切れた操り人形のように、一瞬に崩れ落ちる帝国兵を見て、リンジーは自分の学んだ技術が、着実に身についている手応えを感じた。

「リンジー、そのボクシングっての、すっかりモノにしたんじゃないか?」

デヴィン・ガラハドが声をかけると、リンジーは自分の手を見つめながら小さく笑った。

「ふふふ、アラタ君のおかげよ。私にピッタリの戦い方だわ。本当は拳で打つんだけどね、掌打でも十分に応用が利くわ」

ロンズデールで共闘した時、一週間という短い期間ではあったが、アラタはリンジーにボクシングを教えていた。リンジーの戦い方は掌打と足を使ったものだったが、ボクシングに通じるものがあると感じ取ったアラタは、リンジーの更なる飛躍のために限られた時間の中で、伝えられるものは伝ていたのだ。

「・・・ここを突破すれば、帝国の首都ベアナクールだ。クインズベリーも首都を目指して戦っている。次に会った時、上達ぶりをみせてやれよ」

「そうね・・・上達を見てもらうためにも、この戦いを早く終わらせなきゃね。先に行って待っててあげましょう」

ニヤリと笑うガラハドに、リンジーも笑顔で言葉を返した。





「・・・なに?ロンズデールが押し返してきただと?」

リングマガ湿地帯の森林の入り口では、第三師団副団長アルヘニス・パロが、眉間にシワを寄せながら今しがた戦況を報告してきた部下に、受けた言葉をそのまま聞き返した。

「はい・・・一時は完全に帝国が戦場を支配していたのですが、こちらの主力が何人か倒された事で勢いづいたらしく・・・現在はほぼ拮抗した状態になっております」

つい先刻まで帝国が攻勢だっただけに、形勢が変わってきたという報告は口にし難い。パロへ報告している帝国兵も、目を伏せて歯切れが悪い。

「おいおい・・・たかだその程度でひっくり返されそうになっているのか?情けねぇ・・・おい、一度は勝ちを掴みかけて逆転なんて許さんぞ。お前もさっさと前線に戻って、ロンズデールをぶち殺してこい」

低い声でパロが睨みつけられると、部下の男は声を上ずらせながら、はい!と大きく返事をして踵(きびす)を返した。


「・・・ふん、やはりそう簡単には終わらねぇって事だな。しかし、こうも簡単に敵を勢いづかせるとは、うちの兵達が不甲斐ないんじゃねぇのか?」

後ろの樹に背中を預けて腕を組むと、パロは呆れたように息を吐いた。
するとパロの両隣に立つ二人の男が、一歩前に進み出ると、パロに向き直って口を開いた。

「パロ様、ご安心ください。我々がいる限り帝国が敗れるなどありえません」

自信に満ちた声でそう話すのは、黒いローブを纏う細身の若い男だった。
理知的な言葉使いとは裏腹に、長い白髪とギラギラした鋭い目は、何をしでかすか分からない狂気をはらんでいる。

「そうですよ。下級兵共には俺らが気合を入れてやりますぜ」

黒いローブの男とは対照的に、こちらは筋肉のかたまりのような大きな男だった。
肌は浅黒く、丸刈りで全身に多くの傷痕が見える。アルヘニス・パロより頭一つは背が高く、ニメートル近くはあるだろう。


「ジェイムス、ハンプトン・・・・・よし、いいだろう。ここはお前達に任せるとしよう。もう一度ロンズデールを押し返してこい。ただし、やり過ぎるなよ?」

アルヘニス・パロは、自分の直属で最も腕の立つ二人の顔を見ると、戦場を指差した。


「承知しております、お任せください」
「分かってますって・・・へっへっへ、久しぶりに大暴れできるぜ」


ジェイムスとハンプトン、飢えた野獣と言われる二人が解き放たれた。
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