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1458 憎悪の果て
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連双斬、ボーセル家に受け継がれてきた秘技である。
二刀の短剣を使うこの技は、初撃で傷を付ける事から始まる。どんなに硬い物質であろうとも、初撃で僅かでも傷を付ける事ができれば、二撃目は初撃の傷をなぞり完全に断ち切る事ができる。
ヒビが入っていたとはいえ、アルバレスの鋼鉄の体を真っ二つにした事から、連双斬がどれほどの切れ味かは想像に難くないだろう。
だが、いかに連双斬といえども、空気に傷をつける事はできない。したがってどれだけ硬い金属を斬る事ができる連双斬でも、瘴気を斬る事はできない。いや正確には、瘴気に対して連双斬を使う事はできないと言うべきだろう。
しかしそれは、あくまでビンセント自身の能力だけでの話しである。
ボーセル家にはカエストゥス国の血が流れている。
200年前にロンズデール国へ逃れたリンダは、カエストゥス国で生まれ育った。
つまりリンダの子にも、そのまた子供達にも、カエストゥスの血が流れているのだ。
風と生きるカエストゥス国の血が。
「て、てめぇ・・・そ、その風は、まさか・・・」
左脇腹から流れ出る血を押さえながら、アルバレスは目の前の金髪の男を見た。
自分よりも二十センチは背の低いこの男は、両手に短剣を持ち、鋭い視線を向けて来る。
そしてその体を包むように、足元から緑色の風が吹いているのだ。
アルバレスの闇は、一度は確かに剣を止めた。
しかしこの男の体から緑色の風が吹いた次の瞬間、短剣は闇ごとアルバレスを斬ったのだ。
信じられなかった。この闇が斬られるなど、まったく思いもしなかった。
しかしそれ以上に驚かされたのは、この男が纏う緑色の風だった。
「まさか・・・てめぇ、それは・・・・・」
聞いた事がある・・・かつての戦争の歴史、帝国対カエストゥスの戦いで、緑色の風を纏い戦った者がいると・・・・・
当然見た事はない。だが俺には分かる・・・俺の体に流れるアルバレスの血が、この風を知っていると叫んでいる。
これは・・・この緑色の風は・・・かつて帝国に敗れ滅びたあの魔法大国・・・カエストゥスの風だ・・・・・・
「カエストゥスの・・・・・風なのか?」
「これから死ぬ貴様が、知る必要はない」
驚愕するアルバレスを冷たく見据え、ビンセントは地面を蹴った。
「チィッ!なめるなぁぁぁぁぁーーーーーーーーッツ!」
くそが!その風がカエストゥスの風だからなんだ!?
所詮は負けた国だろうが!一度闇を斬ったくらいで調子に乗るなよ!
緑色の風を纏い向かってくるビンセントに、アルバレスは瘴気の右腕を振るった!
それはまるで鞭のようにしなり、唸りを上げてビンセントの顔面を打ち付ける!
「ぬッ!?」
「フンッ!」
あまいな!この風がその程度の一撃を防げないと思ったか!?
アルバレスの瘴気の腕は、ビンセントの顔面を打ったかのように見えた。
しかしビンセントの顔の前に渦巻く緑色の風が、瘴気の腕を受け止め防いでいた。
「なんだと・・・!?」
アルバレスに一瞬の動揺が走る。そしてその隙をビンセントが逃すはずもなかった。
「もらった!」
左の刃が走った直後、右の刃が寸分違わぬ軌道を走る。
連双斬!
アルバレスに残った生身の左腕が空中に飛ばされた。
「ッツ!?ガ、ガァァァァァァーーーーーーーーッツ!」
アルバレスは絶叫した。
左腕が肩の先、上腕から真っ二つに斬り飛ばされたのだ。
真っ赤な血が噴き出し、激しく強い痛みが脳に刺さる。
「・・・咄嗟に首は庇ったか、さすが師団長まで上り詰めた男だ。だがこれで分かったな?俺の風は貴様の闇を斬る事ができる。この風はカエストゥスの風だ。俺は風の精霊の加護を受けている」
両手に握る短剣の刃は緑色の輝きを放っていた。カエストゥスの風である。
刃に重ねるようにして風を纏わせ、刃と風の鋭さを相乗して切れ味を上げている。そして風の精霊は闇にも対抗できる力を持っている。
風の精霊の加護を受けたビンセントの刃は、闇を斬る事ができる。
背中にぶつけられた冷たい声に、アルバレスはギリッと歯を喰いしばって振り返った。
「・・・てめぇ・・・・・・」
黒く染まった目には強い憎悪が満ちていた。
全身から発する闇の瘴気はより黒く、重く、そして禍々しさを増していった。
「アルバレス・・・次で貴様の首を刎ねる。それで決着だ」
ビンセントは右の短剣をアルバレスに突きつけた。
風の精霊の力は闇をも切り裂く。今、ビンセントは勝利を掴みかけていた。
しかし・・・・・
「フッ・・・クックック・・・・・ハハハハハハハハ!」
アルバレスは嗤った。
「・・・なにがおかしい?」
「クックック・・・確かにてめぇの剣は俺を斬れる。てめぇなら俺を殺せるかもしれねぇなぁ?」
切断された左腕の血はいつの間にか止まっていた。
そして右腕同様に、闇の瘴気が左腕を形作っていた。その顔を見るに痛みももう感じていないようだ。
黒く染まった目には怒りと憎しみだけを宿し、ビンセントを見据えていた。
敗北を受け入れたかのような言葉には少しだけ違和感を感じた。だがビンセントは深くは考えなかった。
もうアルバレスの動きは見切った。ここから自分が逆転を許す事などありはしない。そう確信してたからだ。
闇の瘴気は腹の底に響くような重く苦しい圧力をぶつけてくるが、緑色の風を纏っている今のビンセントは、それさえも受け流す。
「貴様と話す事はもう無い。死ね」
左半身を前に構え、右足を後ろに引いて地面を踏みしめる。
狙いはアルバレスの首。これが最後だ!
・・・しかしビンセントは地面を蹴ろうとして、その足を止めた。
「っ!?」
ソレはあまりにも異様だった。
「な、なんだ・・・?」
ビンセントは自分が今、目にしているものが何なのか?まったく理解できなかった。
いや、それがアルバレスだという事は分かっている。しかし、これを何と表現すればいいのだろうか?
「クックック・・・確かにテメェは俺を斬れる。俺を殺す事もできたかもしれねぇ・・・だがな、最後に勝つのは俺だ」
アルバレスは嗤っていた。
アルバレスの目も口も闇に染まっているが、闇の浸食はそこまでだった。
しかし今、アルバレスの体中の皮膚が、ボロボロと剥がれ落ちているのだ。
肩、胸、腹、全身の皮が剥がれ落ちて、その下にあったのは人の肉では無く、モゾモゾと蠢くドス黒い闇だった。
しかし顔だけは残った。
首から下は人の形だけを型どった闇だが、顔だけはアルバレスの肉だった。異形としか言いようがない。
「ア、アルバレス・・・き、貴様、いったい・・・」
なんだ、これは?こいつ、これはもう・・・人間ではない!闇・・・闇の化身だ!
「殺してやる・・・殺してやるぞ!俺は負けない!俺が最強なんだァァァーーーーーーーーッツ!」
アルバレスだった者、闇の化身が真っ黒な口を開けて瘴気を吐き出した!
二刀の短剣を使うこの技は、初撃で傷を付ける事から始まる。どんなに硬い物質であろうとも、初撃で僅かでも傷を付ける事ができれば、二撃目は初撃の傷をなぞり完全に断ち切る事ができる。
ヒビが入っていたとはいえ、アルバレスの鋼鉄の体を真っ二つにした事から、連双斬がどれほどの切れ味かは想像に難くないだろう。
だが、いかに連双斬といえども、空気に傷をつける事はできない。したがってどれだけ硬い金属を斬る事ができる連双斬でも、瘴気を斬る事はできない。いや正確には、瘴気に対して連双斬を使う事はできないと言うべきだろう。
しかしそれは、あくまでビンセント自身の能力だけでの話しである。
ボーセル家にはカエストゥス国の血が流れている。
200年前にロンズデール国へ逃れたリンダは、カエストゥス国で生まれ育った。
つまりリンダの子にも、そのまた子供達にも、カエストゥスの血が流れているのだ。
風と生きるカエストゥス国の血が。
「て、てめぇ・・・そ、その風は、まさか・・・」
左脇腹から流れ出る血を押さえながら、アルバレスは目の前の金髪の男を見た。
自分よりも二十センチは背の低いこの男は、両手に短剣を持ち、鋭い視線を向けて来る。
そしてその体を包むように、足元から緑色の風が吹いているのだ。
アルバレスの闇は、一度は確かに剣を止めた。
しかしこの男の体から緑色の風が吹いた次の瞬間、短剣は闇ごとアルバレスを斬ったのだ。
信じられなかった。この闇が斬られるなど、まったく思いもしなかった。
しかしそれ以上に驚かされたのは、この男が纏う緑色の風だった。
「まさか・・・てめぇ、それは・・・・・」
聞いた事がある・・・かつての戦争の歴史、帝国対カエストゥスの戦いで、緑色の風を纏い戦った者がいると・・・・・
当然見た事はない。だが俺には分かる・・・俺の体に流れるアルバレスの血が、この風を知っていると叫んでいる。
これは・・・この緑色の風は・・・かつて帝国に敗れ滅びたあの魔法大国・・・カエストゥスの風だ・・・・・・
「カエストゥスの・・・・・風なのか?」
「これから死ぬ貴様が、知る必要はない」
驚愕するアルバレスを冷たく見据え、ビンセントは地面を蹴った。
「チィッ!なめるなぁぁぁぁぁーーーーーーーーッツ!」
くそが!その風がカエストゥスの風だからなんだ!?
所詮は負けた国だろうが!一度闇を斬ったくらいで調子に乗るなよ!
緑色の風を纏い向かってくるビンセントに、アルバレスは瘴気の右腕を振るった!
それはまるで鞭のようにしなり、唸りを上げてビンセントの顔面を打ち付ける!
「ぬッ!?」
「フンッ!」
あまいな!この風がその程度の一撃を防げないと思ったか!?
アルバレスの瘴気の腕は、ビンセントの顔面を打ったかのように見えた。
しかしビンセントの顔の前に渦巻く緑色の風が、瘴気の腕を受け止め防いでいた。
「なんだと・・・!?」
アルバレスに一瞬の動揺が走る。そしてその隙をビンセントが逃すはずもなかった。
「もらった!」
左の刃が走った直後、右の刃が寸分違わぬ軌道を走る。
連双斬!
アルバレスに残った生身の左腕が空中に飛ばされた。
「ッツ!?ガ、ガァァァァァァーーーーーーーーッツ!」
アルバレスは絶叫した。
左腕が肩の先、上腕から真っ二つに斬り飛ばされたのだ。
真っ赤な血が噴き出し、激しく強い痛みが脳に刺さる。
「・・・咄嗟に首は庇ったか、さすが師団長まで上り詰めた男だ。だがこれで分かったな?俺の風は貴様の闇を斬る事ができる。この風はカエストゥスの風だ。俺は風の精霊の加護を受けている」
両手に握る短剣の刃は緑色の輝きを放っていた。カエストゥスの風である。
刃に重ねるようにして風を纏わせ、刃と風の鋭さを相乗して切れ味を上げている。そして風の精霊は闇にも対抗できる力を持っている。
風の精霊の加護を受けたビンセントの刃は、闇を斬る事ができる。
背中にぶつけられた冷たい声に、アルバレスはギリッと歯を喰いしばって振り返った。
「・・・てめぇ・・・・・・」
黒く染まった目には強い憎悪が満ちていた。
全身から発する闇の瘴気はより黒く、重く、そして禍々しさを増していった。
「アルバレス・・・次で貴様の首を刎ねる。それで決着だ」
ビンセントは右の短剣をアルバレスに突きつけた。
風の精霊の力は闇をも切り裂く。今、ビンセントは勝利を掴みかけていた。
しかし・・・・・
「フッ・・・クックック・・・・・ハハハハハハハハ!」
アルバレスは嗤った。
「・・・なにがおかしい?」
「クックック・・・確かにてめぇの剣は俺を斬れる。てめぇなら俺を殺せるかもしれねぇなぁ?」
切断された左腕の血はいつの間にか止まっていた。
そして右腕同様に、闇の瘴気が左腕を形作っていた。その顔を見るに痛みももう感じていないようだ。
黒く染まった目には怒りと憎しみだけを宿し、ビンセントを見据えていた。
敗北を受け入れたかのような言葉には少しだけ違和感を感じた。だがビンセントは深くは考えなかった。
もうアルバレスの動きは見切った。ここから自分が逆転を許す事などありはしない。そう確信してたからだ。
闇の瘴気は腹の底に響くような重く苦しい圧力をぶつけてくるが、緑色の風を纏っている今のビンセントは、それさえも受け流す。
「貴様と話す事はもう無い。死ね」
左半身を前に構え、右足を後ろに引いて地面を踏みしめる。
狙いはアルバレスの首。これが最後だ!
・・・しかしビンセントは地面を蹴ろうとして、その足を止めた。
「っ!?」
ソレはあまりにも異様だった。
「な、なんだ・・・?」
ビンセントは自分が今、目にしているものが何なのか?まったく理解できなかった。
いや、それがアルバレスだという事は分かっている。しかし、これを何と表現すればいいのだろうか?
「クックック・・・確かにテメェは俺を斬れる。俺を殺す事もできたかもしれねぇ・・・だがな、最後に勝つのは俺だ」
アルバレスは嗤っていた。
アルバレスの目も口も闇に染まっているが、闇の浸食はそこまでだった。
しかし今、アルバレスの体中の皮膚が、ボロボロと剥がれ落ちているのだ。
肩、胸、腹、全身の皮が剥がれ落ちて、その下にあったのは人の肉では無く、モゾモゾと蠢くドス黒い闇だった。
しかし顔だけは残った。
首から下は人の形だけを型どった闇だが、顔だけはアルバレスの肉だった。異形としか言いようがない。
「ア、アルバレス・・・き、貴様、いったい・・・」
なんだ、これは?こいつ、これはもう・・・人間ではない!闇・・・闇の化身だ!
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