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理太郎

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1459 ビンセント 対 アルバレス

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アルバレスの口から吐き出された瘴気は、足元から辺り一帯へ広がっていった。

「こ、これは・・・ッ!?」

「フハハハハハハ!殺してやる!殺してやるぞぉぉぉぉぉーーーーーーーーーッツ!」

ビンセントは緑色の風を体に纏っていた。風はこれまでアルバレスの闇の瘴気を防いでいた。
しかし今、闇の瘴気は緑色の風を浸食し始めていた。瘴気が触れると風が黒く染まり、そして枯れたように霧散していく。


「風が、まさか!?」

さっきまでとは桁違いだ!アルバレス、貴様!身も心も闇と化した事で、ここまで力を引き出したのか!?
ま、まずい!このままでは、風が・・・ッ!

「どうだ!これが本当の闇だ!てめぇのチンケな風で闇に勝てると本気で思ったか!?このまま闇に食われて死ね!」

「くっ、アルバレスーーーーーーーーーーッツ!」

長くはもたない!


意を決したビンセントは地面を蹴った。今はまだ緑の風が闇の浸食を防いでいる。しかし全ての風が食われるのは時間の問題だ。
ならばとるべき手段は一つ!風が食われる前にアルバレスを斬る!


「フハハハハハハ!馬鹿め!闇をあまくみたな!」

そうだ!そのままじゃあ食われるだけだよな?てめぇは俺に向かってくるしかねぇ!
だがな、それが最も愚かな選択なんだよ!
てめぇは俺を斬るために近づくしかない。だが闇に近づけば近づくほど、闇の力は強まっていく!
てめぇの風なんざあっという間に消えて無くなるんだよ!てめぇは死ぬために俺に向かってきてるんだ!


黒い空洞のような目が細められ、真っ黒に染まった口の端がニヤリと持ち上がった。
闇と化した右腕を前に向け、瘴気の波動を撃ち放つ!


「ッ!」

波動か!防ぐ?いやでかすぎる、今の蝕まれた風では防ぎきれない!躱すしかない!
上に?右、左?

ビンセントは左へ地面を蹴った!


「馬鹿が!そうするだろうと思ってたぜ!」

その弱った風じゃ闇の波動は防げねぇよな!?だったら躱すしかねぇが、上に飛べば逃げ場はねぇ。
右に逃げても、俺の左の波動が待っている。だったら左へ跳ぶしかねぇよな?だがそんな事はお見通しだ!


ビンセントが左へ跳ぶと同時に、アルバレスも追いかけるように右腕を振った!ビンセントの動きを確実に読んでおり、闇の波動がビンセントの足元に差し迫る!


「なめるなよ、アルバレス。読まれている事は分かっていた!」

最初からその道を決めていたように、ビンセントは迷いなく左足で地面を踏みしめると、強く蹴って飛んだ!そう、ビンセントが選んだ道は空中だ!


「上だと!?馬鹿め!逃げ場の無い空中を選んだか!望み通り殺してやる!」

アルバレスの頭上高く飛び上がったビンセントに左手を向けると、全身から溢れ出るドス黒い瘴気を撃ち放った!

「フッ、逃げ場がないだと?」

アルバレス、馬鹿は貴様だ。空中で逃げ場がないだと?俺にそれが当てはまると思うか?
今貴様が目にしているものはなんだ?
俺の体を纏っている緑色の風、カエストゥスの風だぞ!

「とうぜん空を動けるに決まっているだろう!」


ビンセントは身に纏う緑の風を操り、身をひるがえす!そして地上から襲い来る闇の波動を躱すと、二刀の短剣を握りしめて、一直線に闇の化身アルバレスへと迫る!


くっ、凄まじい闇だ!だが、ギリギリ間に合う!アルバレス、ここで貴様の首を飛ばして終わりだ!


ビンセントの纏う緑の風は闇に蝕まれ、もはや消えかかっていた。しかしあと一撃、闇を斬り裂く必殺の連双斬を繰り出す事はできる!


だが・・・


「やはりそうきたか?だから馬鹿だと言ったんだ。俺がそんな事も分からねぇと思ったか?浅はかなんだよォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」


アルバレスはここまで読んでいた。風を使うのだから、空を飛べても不思議ではない。いや、黒魔法使いは風魔法で飛ぶのだから、むしろ飛んで当たり前なのだ。
ビンセントが跳躍する事があれば、それは空で動く事ができると言う事だと考えていた。
挑発の言葉は、アルバレスがそこまで考えが及んでいないと見せるためである。

そして自分の頭をめがけて繰り出されたビンセントの左の短剣!
しかし刃が届くよりも早く、アルバレスの全身から闇の波動が放出される!

「なッ!?」

「死ねぇぇぇぇぇーーーーーーーーッツ!」


この距離では躱す事など到底できない。闇の波動がビンセントの飲み込んだ!






「ビ、ビンセントさんッ!」

アルバレスとビンセント、二人の戦いを見ていたアドニスは、闇の波動の直撃を受けたビンセントを見て声を上げた。
そして一歩前に足を踏み出したが、後ろからガラハドに肩を掴まれた。

「待てアドニス!無理だ!あの瘴気に触れたら無事ではすまんぞ!」

そう、アルバレスが闇の瘴気を周囲に吐き出した時、ガラハドは一早くその危険性に気付き、全員に下がるように指示を出したのだ。
そしてその判断は正しかった。ビンセントの緑の風を浸食した事からも分かるように、生身で闇の瘴気に触れてはただではすまないだろう。

「で、でも、ビンセントさんが!本当は俺と二人で戦うはずだったのに・・・俺が、役に立たないから・・・・・」

当初の作戦では、ビンセントとアドニスが二人でアルバレスを倒すはずだった。
アドニスが魔法で援護して、ビンセントがアルバレスを斬るという作戦だったが、その作戦は実行する事さえできなかった。
この場にたどり着く前に、ビンセントが負傷してしまった事や、アドニスが単独でアルバレスに挑み敗れた事が要因ではあるが、それは今更掘り返してもしかたのない事である。
だがアドニスは責任を感じていた。だからこそ、じっとしてなどいられなかった。


「アドニス、気持ちは俺達全員が一緒だ。ビンセント一人に全てを負わせるつもりはないし、見殺しになんてしねぇ。だがな、むやみに突っ込んでもビンセントは助けられねぇ。分かるな?」

ガラハドはアドニスの目を見て、ゆっくりと諭した。アドニスは唇を噛み締める。ガラハドの言っている事はよく分かる。だが感情の整理ができないのだ。

「でも、俺は・・・」


「アドニス、俺に作戦がある・・・みんなも聞いてくれ」


アドニスの肩から手を放すと、ガラハドは周りに立つ仲間達にも顔を向けて話し始めた。
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