悪徳領主の息子に転生しました

アルト

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3章

27話 vsグレイス 外野

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「は、ははははははッ!! 面白え事になってきたなこりゃ。グレイスのヤツも子供相手に余裕を無くしてやがる……くくっ、くはははははは!」


 静まり返る観客席。
 その中でただ一人、私兵長という肩書きを持った男——ボルグのみ、楽しそうに愉快そうに笑う。
 静寂に包まれた周囲に哄笑を轟かせる。


「しかし、子爵様も人がワリィ。坊がアレほど強えんなら教えてくれても良かったでしょうに」


 隣で観戦するアハトに声をやる。
 少しでも強さを教えてくれれば、グレイスもあんな醜態を晒す事は無かっただろうにと焦燥に駆られているであろう副私兵長を哀れむ。


「いや、私は一切しらんよ。唯一思い当たりがあるのが与えてやった双剣くらいだ。師事する者も。修練の時間も、全て私は認知しておらん」
「……じゃあ実力を一切知らないのにもかかわらず、子爵様は坊とグレイスと戦わせたと?」
「そうなる。だが、ナガレは半年前、あのレミューゼの天才と名高い方の倅に武を以って打ち負かすと豪語したのだ。これくらいはやってくれねば拍子抜けというもの」


 だが、と言葉は続き。
 これは良い拾い物をしたかもしれんとアハトは喜色に口角を歪めた。


「時にボルグ。お前から見てナガレはどう映る? レミューゼの倅めに勝てると思うか?」
「そうですねえ。レミューゼ伯爵の方は実際に目にした事がないんで断言は出来ませんが、まあ負ける事はないでしょうよ」
「そのわけは?」


 淡々と。冷静に餅は餅屋とばかりにボルグに意見を仰ぐ。
 そして一言。


「見切りと勘」


 鷹のような鋭い眼差しでナガレをボルグなりに考察した結果。
 双剣を扱う技術を差し置いても目を奪われたモノ。
 それが見切りのレベルと勘の鋭さだった。


「坊の見切りのレベルがハッキリ言って異常過ぎる。加えて勘が冴え渡ってやがる。グレイスが絶対に急所を狙えない事を逆手にとって目が追いつかない攻撃を勘で十全に防いでる。それが俺は何よりも脅威に映りましたねえ 」
「成る程な。負ける事はないと」


 ボルグの言葉を聞いた瞬間、アハトの中でナガレの計画した案は実行される事に決定した。
 可能性としてこの仕合で路線変更をする事も有り得た事を考えてもこの結果は僥倖という他ないだろう。


「急所がこないと分かっていても本能的に急所を守るためにソースを割くもんなんだが、強気というか何というか。どんな教えを受ければこう成長するのかは謎ですけども、本番に弱いなんて事はねえと思いますよ」


 ついでとばかりに考察を付け加える。
 たしかに、本番に弱い人間というものは存在するが、ボルグがあえて理由を言わなくともその可能性は既に隅に追いやっていた。
 

「にしても、そろそろ潮時ですかねえ」


 嘆息混じりに項垂れる。
 時間にしてたった数分だが、グレイスとナガレからしてみればたったではない。数分も、だ。
 現実に、二人とも熱が入り出している。
 これ以上は仕合の範疇ではなくなってしまうだろう。


「だろうな。ボルグ、後は任せた」


 アハトも貴族の端くれ。
 公務を放り出して観戦しているので、観戦する理由がなくなったとなれば体裁的に公務に戻った方が良い。



 というのは建前で。
 観客には行商も何人かいたはず。
 金の匂いに敏感な彼らが事情を確かめにアハトに殺到する事は予想できるので早めに退散させてもらおうというのが本音である。


「さぁて。私は公務に戻るとするかね」


 んー。と伸びしながら立ち上がり、その場を後にしようとするアハトを見てボルグが疑問符を浮かべた。


「子爵様は坊のところには行かないので?」


 至極当然の質問。
 労いの言葉一つくらいかけてやれば良いだろうにと疑問に思うのも束の間。


「……いや、なに。今日の夕餉はナガレの好きな物にしてやろうと思ってな。料理長へ早めに話をつけに行くだけだ。気にしなくとも良い」
「ああ、成る程! そりゃ、坊も喜びますぜえ」


 嘘はついていない。
 これから本当に料理長に話をつけ、食事中にでも今後の事を話そうと考えていたのだから。
 だが、本音は違う。


 ただただ、面倒事はお断りというだけなんだが、人知れず、ボルグのアハトへの好感度がグンと高まったのであった。




——————


火曜、水曜が俺にとって連休だからそこでガッツリ書くんだからね!(ツンデレ口調)
今週忙しくて更新頻度うんこです(;`ω´)ゴクリ
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