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初日から、先生(2人目の攻略対象)が俺の名前を認識してくれているんだが?
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「あー……ダン」
「ちょっと良いかな?」
嬉しい誘いだが、一身上の都合(心臓がもちそうにもないので)で泣く泣く断ろうと口を開いて、遮られた。不意に話しかけてきた、穏やかなハスキーボイスによって。
思わず顔を上げると、海のように深い青の瞳とかち合う。
「えーと黒髪の君……シュン君だったかな? 少し君に頼みたい事が有るんだが……お願い、出来るだろうか?」
お、推しが俺の名前を! 俺を認識してくれているだと?!
というか、もう生徒の名前と顔が一致してるとか先生の鏡か?
え、頼み事? 何でもききますけど? 申し訳なさそうな顔も格好いいですね!
「やっぱり、いきなりだと都合が悪かったかな? ごめ……」
「全っ然大丈夫です! むしろやりたいです! やらせて下さい!」
勢いよく席から立ち上がり、食いぎみに捲し立てる。
先生は一瞬目を丸くしたが……俺が了承したことを知るとぱっと表情が綻んだ。柔らかく微笑む先生の周りに花が舞って見えたのは、幻覚じゃないはずだ。うん。
「ありがとう、助かるよ。じゃあ、早速付いてきて欲しいんだが……大丈夫かな?」
言葉を濁す先生の目線を辿る。その先には、ガッシリとした肩をしょんぼりと落としているダンの姿があった。
いや、忘れてた訳じゃないんだ! ハスキーボイスに釣られて一瞬頭から抜けただけで……いや、本当にごめんなさい。
「ダン、ごめん! 埋め合わせは必ずするから!」
俺が出来ることなら何でもするから許して欲しい。泣きそうな顔も格好いいけど……やっぱり推しには笑っていて欲しいもんな。
「まぁ、先生の手伝いじゃ仕方ないよな……じゃあ今度でいいから、部屋に遊びに行かせてくれよ?」
必死に拝み倒すとダンにいつもの笑顔が戻る。太陽よりも眩しいその表情に一安心したものの、お家デートが確定してしまった。
……なんか積極的過ぎない? それともそんなに寮に興味津々なの?
まあ、そういうことにしておこう。自意識過剰になるのは良くないからな。
◇
ダンと別れた俺は先生の後を付いて教室を出た。
廊下で行き交う皆さん方は、やはり髪も瞳もカラフルだ。そんでもって、男女共に体格がいい。筋肉が正義な世界観だから、当然といえば当然だけどな。
そんな中でもやっぱり流石は攻略対象。比べ物にならない筋肉量だ。ダンも大柄だけど……背中、広いな……先生。大人の男って感じだ。スーツの下からでも逞しい背筋が隠しきれてないんだが。
というか、本当に広すぎないか? なんか眼前一杯に広がって……
「おっと……いきなり止まってしまってごめんね。大丈夫かい?」
どうやら俺は、先生の背中にぶつかってしまったらしい。どうりで素敵なムチムチした触感と、いい匂いに包まれたわけだ。ありがとうございます。
振り返り、両手で俺の頬を包むと心配そうに顔を覗きこんできた。
手が! 先生のゴツゴツした男らしい手が、俺の顔に!!
止めて下さい。あー……そんなに優しく触れないで下さい!
「ちょっと鼻が赤くなっちゃってるね……痛かったよね? 本当にごめん」
「だ、大丈夫です! 俺こそぶつかってしまってすみません!」
だから、その指で鼻をなでなでするのを止めて下さい。ホントもたないんで。
「そうかい? なら良いけど……」
「ところで、俺に頼みたい事って何ですか?」
まだ心配そうに俺を眺める先生の気をそらすため、俺は先生に問いかける。
「あぁ、これを美術準備室に運ぶのを手伝って欲しいんだ」
そう言って、太い腕を広げた先生の示す先には、大きめの段ボール箱が三つ程積まれていた。
「重いから、気をつけてね」
先生はその内の一つを抱えると俺の前に差し出した。……確かに重い。さすがの先生でも一人で全部運ぶのは大変そうだ。
しかし、何で俺なんだ? 俺も鍛えてる方だが……この世界じゃ平均的だし、他に適任がいくらでもいそうだが。いや、頼られるのは嬉しいけども。
俺が一人でうんうん唸っていると、先生は残りの二つの段ボール箱を軽々と抱えて歩き出す。俺も慌てて先生の後を追った。
俺に合わせてくれているのか、ゆったりとした足取りで歩を進めている。
あれだけ軽々と荷物を抱えたんだから、もっと速く歩けそうだよな。優しいな、好き。
「はい、着いたよ。お疲れ様」
「ちょっと良いかな?」
嬉しい誘いだが、一身上の都合(心臓がもちそうにもないので)で泣く泣く断ろうと口を開いて、遮られた。不意に話しかけてきた、穏やかなハスキーボイスによって。
思わず顔を上げると、海のように深い青の瞳とかち合う。
「えーと黒髪の君……シュン君だったかな? 少し君に頼みたい事が有るんだが……お願い、出来るだろうか?」
お、推しが俺の名前を! 俺を認識してくれているだと?!
というか、もう生徒の名前と顔が一致してるとか先生の鏡か?
え、頼み事? 何でもききますけど? 申し訳なさそうな顔も格好いいですね!
「やっぱり、いきなりだと都合が悪かったかな? ごめ……」
「全っ然大丈夫です! むしろやりたいです! やらせて下さい!」
勢いよく席から立ち上がり、食いぎみに捲し立てる。
先生は一瞬目を丸くしたが……俺が了承したことを知るとぱっと表情が綻んだ。柔らかく微笑む先生の周りに花が舞って見えたのは、幻覚じゃないはずだ。うん。
「ありがとう、助かるよ。じゃあ、早速付いてきて欲しいんだが……大丈夫かな?」
言葉を濁す先生の目線を辿る。その先には、ガッシリとした肩をしょんぼりと落としているダンの姿があった。
いや、忘れてた訳じゃないんだ! ハスキーボイスに釣られて一瞬頭から抜けただけで……いや、本当にごめんなさい。
「ダン、ごめん! 埋め合わせは必ずするから!」
俺が出来ることなら何でもするから許して欲しい。泣きそうな顔も格好いいけど……やっぱり推しには笑っていて欲しいもんな。
「まぁ、先生の手伝いじゃ仕方ないよな……じゃあ今度でいいから、部屋に遊びに行かせてくれよ?」
必死に拝み倒すとダンにいつもの笑顔が戻る。太陽よりも眩しいその表情に一安心したものの、お家デートが確定してしまった。
……なんか積極的過ぎない? それともそんなに寮に興味津々なの?
まあ、そういうことにしておこう。自意識過剰になるのは良くないからな。
◇
ダンと別れた俺は先生の後を付いて教室を出た。
廊下で行き交う皆さん方は、やはり髪も瞳もカラフルだ。そんでもって、男女共に体格がいい。筋肉が正義な世界観だから、当然といえば当然だけどな。
そんな中でもやっぱり流石は攻略対象。比べ物にならない筋肉量だ。ダンも大柄だけど……背中、広いな……先生。大人の男って感じだ。スーツの下からでも逞しい背筋が隠しきれてないんだが。
というか、本当に広すぎないか? なんか眼前一杯に広がって……
「おっと……いきなり止まってしまってごめんね。大丈夫かい?」
どうやら俺は、先生の背中にぶつかってしまったらしい。どうりで素敵なムチムチした触感と、いい匂いに包まれたわけだ。ありがとうございます。
振り返り、両手で俺の頬を包むと心配そうに顔を覗きこんできた。
手が! 先生のゴツゴツした男らしい手が、俺の顔に!!
止めて下さい。あー……そんなに優しく触れないで下さい!
「ちょっと鼻が赤くなっちゃってるね……痛かったよね? 本当にごめん」
「だ、大丈夫です! 俺こそぶつかってしまってすみません!」
だから、その指で鼻をなでなでするのを止めて下さい。ホントもたないんで。
「そうかい? なら良いけど……」
「ところで、俺に頼みたい事って何ですか?」
まだ心配そうに俺を眺める先生の気をそらすため、俺は先生に問いかける。
「あぁ、これを美術準備室に運ぶのを手伝って欲しいんだ」
そう言って、太い腕を広げた先生の示す先には、大きめの段ボール箱が三つ程積まれていた。
「重いから、気をつけてね」
先生はその内の一つを抱えると俺の前に差し出した。……確かに重い。さすがの先生でも一人で全部運ぶのは大変そうだ。
しかし、何で俺なんだ? 俺も鍛えてる方だが……この世界じゃ平均的だし、他に適任がいくらでもいそうだが。いや、頼られるのは嬉しいけども。
俺が一人でうんうん唸っていると、先生は残りの二つの段ボール箱を軽々と抱えて歩き出す。俺も慌てて先生の後を追った。
俺に合わせてくれているのか、ゆったりとした足取りで歩を進めている。
あれだけ軽々と荷物を抱えたんだから、もっと速く歩けそうだよな。優しいな、好き。
「はい、着いたよ。お疲れ様」
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