【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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またしても、俺の知らない設定が出てきたんだが?

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 振り向いた先には端正なお顔が、サルファー先輩が俺に微笑みかけてくれていた。爽やか過ぎる笑顔に俺の心拍数が、またしても一気にはね上がる。

 朝から先輩の笑顔を拝めるなんて……今日はついてるな! あー……やっぱり顔が良い。眼福だ。ありがとうございます。

「お、おはようございます先輩……昨日はありがとうございました。おかげさまで元気です」

「そうか、それを聞いて安心したよ。ところで隣の彼は……」

 緩く後ろに撫でつけた髪と同じ、黄色の瞳がゆるりと細められる。柔らかいその眼差しが俺から、隣のダンへと向けられる。

「あ、彼は幼なじみの」
「俺はダン。相棒……シュンの、一番の、親友です」

 俺の言葉を遮ってダンが自己紹介する。素早く右腕を掴まれたかと思えば引き寄せられ、気がつけば太く筋肉質な腕に後ろからぎゅっと抱きしめられていた。

 俺の肩口に顎を乗せ、まるで威嚇するかのように先輩を睨み付けている。

 ……あれ? ダンって先輩のこと、こんなに苦手だったっけ? そんな設定……ゲームには無かったはずだけどな。

「……ダンか……俺はサルファーだ、よろしく。シュンとは昨日いろいろあってな……とても、仲良くさせてもらってるよ」

 いまだに俺を腕の中に閉じ込めたまま、犬のように唸っているダンに向かって、何やら含みのある言い方をしながら微笑む先輩。

 何だろう……凄く綺麗に微笑んでいるのに、目が……全然笑っていない気がする。何故か空気がピリピリしてるし……何だか寒気もしてきたな。

「えっと……良かったら、先輩も一緒に行きませんか?」

 不穏な空気を何とか変えるべく、先輩に話しかけてみる。

「いいのかい? じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 さっきまでの冷たい微笑が嘘みたいだ。ぱっと瞳を輝かせ、声を明るく弾ませ、ふわりと微笑んだ。良かった……いつもの先輩だ。

 何やらダンの方から恨めしげな視線を感じる気もするが、見なかったことにしよう。そうしよう。
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