【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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うっかり、幼なじみの手を握り締めてしまっていたんだが?

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 口を尖らせながら、ダンが伏し目がちに俺から視線を逸らす。さっきまで、ずっと赤い光を見ていたせいだろうな。ダンの頬もほんのり赤く見える気がする。

「ごめん……スゴく綺麗だったから、つい」

「くっそ……ほんと、そういうところなんだよな……シュンはよぉ……あーもう手本は終わりだ! 明日まで時間がないからよ、ガンガンやるぞ!」

 もごもごと小さく呟いていた彼の手が、少し強引に俺の右手を掴んで胸の前へと誘導する。

「おら、早く指立てろよ。俺は集中しやすいから目ぇつぶるけどよ、相棒がやりやすい方でいいぞ」

 文句を言われていたとしか分からなかったが……とにかく、今は集中しよう。

 促されるまま人差し指を立て、ダンに倣って目を閉じてみる。

「よし、まず腹筋に力を込めろ。そうすっと……何か熱いもんが腹に集まる感じがするはずだ」

 言われた通りにお腹に力を込める。すると、熱いものがほんのりと、俺の腹を中心に渦巻き始める感じがした。

「どうだ? 何か感じるか?」

「何か……熱いものが、お腹の中でぐるぐるしてる気がするな……」

「よし、いいぞ! その調子だ! じゃあ、次はそいつを指の先に集める様にイメージしてみろ」

 イメージ……念じろってことだろうか。頭の中で繰り返し念じてみる。自分の中のぐるぐるしたものが、腹から指の先へと移動するように。何度も、何度も……

「……よしよし、いいぞ。そのまま、今度はそいつに光れって念じてみろ」

 次第に温かくなってきた指先。それに向かって俺は、光れ、と心の中で呟いた。

「やったぞ相棒! 目ぇ開けてみろよ!」

 弾んだ声に従って、恐る恐る目を開ける。すると俺の指先に豆粒程の白い光が、ぽっと灯っていた。

「っダン!」

「シュン!」

 互いに顔を見合せ、ハイタッチする。込み上げる喜びと達成感に胸が高鳴って仕方がない。

「よくやったな相棒! これで明日のテストはバッチリだな!」

「ダンの教え方が上手かったからだよ! ありがとう! ダン!」

「へへっまーな! だから心配すんなっていっただろ?」

「本当に助かったよ。後はこの感覚を忘れない内に練習しないとな」

「あぁ……それはそうとよぉ……その、手が……」

 さっきまでの高揚が嘘のように、ダンが突然大人しくなった。赤みの差していた顔をますます真っ赤に染めて、居心地が悪そうに目を泳がせている。

 不思議に思い、自分の手へと視線を落とす。

「! あっごめん………その嬉しくてつい……」

 何やってんだ俺は! いくらテンション上がってたからとはいえ、何でそのまま推しの手握ってんだよ!

 しかも指まで絡めちゃって……こんなの、まるで恋人繋ぎじゃないか!

 嬉しくてつい……じゃねーよ! 推しの事困らせるなよ俺の馬鹿!

「い、嫌だったわけじゃねぇぞ! ただ恥いってか……色々抑えが効かなくなるってか……と、とにかく嫌じゃないからな!」

 こんな俺をフォローしてくれるなんて……推しは優しいな。神対応かな?

「えっと、ありがとな、ダン」

「おう、それよりさっさと練習すんぞ! 腹へってきたしな」

「そうだな。俺もダンの手料理楽しみだから、早く終われるように頑張るよ」

「おう! 期待してろよ! じゃあ、もう一回最初からやるぞ」

 一瞬、気まずい空気が流れたもののすぐ元の調子を取り戻したダンにホッとする。そして、俺はダンの指導のもと練習を再開した。
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