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幼なじみの雄っぱいに頬ずりしてしまったんだが?
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ぼんやりとした意識の遠くの方から、聞き慣れた電子音がする。
いつもの様に手探りで音源を探そうとすると、何か柔らかい物に手が触れた。クッションだろうか? 確かめるように両手で触ってみると、ほどよい弾力があって気持ちがいい。
目の前にある心地の良い感触に、俺は思わず顔を埋めた。温かい……なんか、スゴくいい匂いがするな……このクッション。
ついつい抱き締め、頬をぐいぐい寄せて堪能していると、いつの間にか電子音が止んでいた。代わりに聞き覚えのある声が頭上から降ってくる。
「なぁ、相棒、気持ちよく寝てるところで悪いが……そろそろ起きないと、遅刻するぞ?」
擽ったそうな優しい声……聞いてるだけでウトウトしてしまう。それにしても最近のクッションは高性能だな。丁寧に起こしてくれるなんてさ。
「んぅ……まだ、一緒に寝たい……」
「っ……くっそ……可愛いな…………俺だって、シュンとこのまま一日中……じゃなくてっ! ほら、起きろ!! いい加減マズいんだよ!!」
「……うぅ……はい……」
キャンキャン吠えるクッションに促され、まだ重たい目を無理矢理開く。渋々顔を離して見上げた先には、耳まで顔を真っ赤にしたダンが眉をしかめていた。頭が一気にクリアを通り越して真っ白になる。
「……お、おはようございます」
「……おう、おはよう、相棒」
しまったクッションじゃ無かった! 寝惚けていたとはいえ、何やってんの俺ぇ! めっちゃ頬ずりしちゃってたんだけどっ!!
つい敬語になってしまっていた俺の頭を、ダンがわしゃわしゃかき混ぜてくる。怒っては……いない、のかな?
されるがままになっていると、少し尖らせていた唇をもごもごと開いた。
「あー……朝ごはん、パンとご飯、どっちがいいんだ?」
「……パンがいいです」
「分かった。んじゃあ、パンと目玉焼きでも作るか」
ニカッと白い歯を見せてくれた彼にホッとしたのもつかの間、鋭い瞳がきょとんと丸くなった。
「ところで……その首どうしたんだ? 赤くなってんぞ」
首……首? ああ、と頭の中でピタリとピースがハマる。そういえば、噛みつかれたんだっけ、ダンに。
「あー……やっぱり寝惚けてたんだな」
俺がそう納得しても、ダンは首を傾げるだけだ。どうやら全く覚えていないらしい。まぁ、そうだよな。でないとダンが、俺にいきなり噛みついたりなんかしないよな。
「……寝惚けて? どういことだ?」
「これ、ダンが噛みついたんだよ。確かその時……ハンバーグが何とか言ってたな」
首を指差しながらダンの疑問に答える。思い出したら何だか可笑しくなってきたな。
笑いそうになるのを堪えながらダンを見ると突然ボッと顔が赤くなったかと思いきや、みるみる内に真っ青になっていく。
「ダン? どうし」
「すまねぇシュン!!」
言葉を遮った勢いのまま、ダンが床にめり込みそうなくらい頭を下げた。
「え、ちょ、そんな謝るなよ。寝惚けてたんだから仕方がないだろ? 俺だってさっきやらかしたんだし……俺の方こそごめんな」
雄っぱいに顔を埋めてしまうどころか勝手に揉んで、頬擦りまでして。本当にすみませんでした。
「それこそいいんだよ、別に…………役得、だったしよ……問題なのはこっちの方だ。ほら、跡が残ってんだろ?」
ダンから手渡された小さな鏡で確認する。俺の首、鎖骨のラインの先辺りに、歯形の様な赤い跡がくっきりついていた。
「でも、全然痛くないし……襟でほとんど隠れるから大丈夫だよ」
よっぽど気にしているらしい。精一杯微笑みかけてみても、沈痛な表情を浮かべるばかりだ。どうしよう。
「あ! それよりお腹すいたや。目玉焼き、作ってくれるんだろ? 早く食べたいな。ダンの料理、美味しいからさ」
俺のお願いに弾かれたようにダンが顔を上げる。その表情に先程までの陰りはもうない。
「おう! 任せとけ! 焼き加減はどうする?」
「半熟でお願いします!」
意気揚々と台所に向かうダンの大きな背中を見送ってから、俺は顔を洗いに洗面所に向かった。
いつもの様に手探りで音源を探そうとすると、何か柔らかい物に手が触れた。クッションだろうか? 確かめるように両手で触ってみると、ほどよい弾力があって気持ちがいい。
目の前にある心地の良い感触に、俺は思わず顔を埋めた。温かい……なんか、スゴくいい匂いがするな……このクッション。
ついつい抱き締め、頬をぐいぐい寄せて堪能していると、いつの間にか電子音が止んでいた。代わりに聞き覚えのある声が頭上から降ってくる。
「なぁ、相棒、気持ちよく寝てるところで悪いが……そろそろ起きないと、遅刻するぞ?」
擽ったそうな優しい声……聞いてるだけでウトウトしてしまう。それにしても最近のクッションは高性能だな。丁寧に起こしてくれるなんてさ。
「んぅ……まだ、一緒に寝たい……」
「っ……くっそ……可愛いな…………俺だって、シュンとこのまま一日中……じゃなくてっ! ほら、起きろ!! いい加減マズいんだよ!!」
「……うぅ……はい……」
キャンキャン吠えるクッションに促され、まだ重たい目を無理矢理開く。渋々顔を離して見上げた先には、耳まで顔を真っ赤にしたダンが眉をしかめていた。頭が一気にクリアを通り越して真っ白になる。
「……お、おはようございます」
「……おう、おはよう、相棒」
しまったクッションじゃ無かった! 寝惚けていたとはいえ、何やってんの俺ぇ! めっちゃ頬ずりしちゃってたんだけどっ!!
つい敬語になってしまっていた俺の頭を、ダンがわしゃわしゃかき混ぜてくる。怒っては……いない、のかな?
されるがままになっていると、少し尖らせていた唇をもごもごと開いた。
「あー……朝ごはん、パンとご飯、どっちがいいんだ?」
「……パンがいいです」
「分かった。んじゃあ、パンと目玉焼きでも作るか」
ニカッと白い歯を見せてくれた彼にホッとしたのもつかの間、鋭い瞳がきょとんと丸くなった。
「ところで……その首どうしたんだ? 赤くなってんぞ」
首……首? ああ、と頭の中でピタリとピースがハマる。そういえば、噛みつかれたんだっけ、ダンに。
「あー……やっぱり寝惚けてたんだな」
俺がそう納得しても、ダンは首を傾げるだけだ。どうやら全く覚えていないらしい。まぁ、そうだよな。でないとダンが、俺にいきなり噛みついたりなんかしないよな。
「……寝惚けて? どういことだ?」
「これ、ダンが噛みついたんだよ。確かその時……ハンバーグが何とか言ってたな」
首を指差しながらダンの疑問に答える。思い出したら何だか可笑しくなってきたな。
笑いそうになるのを堪えながらダンを見ると突然ボッと顔が赤くなったかと思いきや、みるみる内に真っ青になっていく。
「ダン? どうし」
「すまねぇシュン!!」
言葉を遮った勢いのまま、ダンが床にめり込みそうなくらい頭を下げた。
「え、ちょ、そんな謝るなよ。寝惚けてたんだから仕方がないだろ? 俺だってさっきやらかしたんだし……俺の方こそごめんな」
雄っぱいに顔を埋めてしまうどころか勝手に揉んで、頬擦りまでして。本当にすみませんでした。
「それこそいいんだよ、別に…………役得、だったしよ……問題なのはこっちの方だ。ほら、跡が残ってんだろ?」
ダンから手渡された小さな鏡で確認する。俺の首、鎖骨のラインの先辺りに、歯形の様な赤い跡がくっきりついていた。
「でも、全然痛くないし……襟でほとんど隠れるから大丈夫だよ」
よっぽど気にしているらしい。精一杯微笑みかけてみても、沈痛な表情を浮かべるばかりだ。どうしよう。
「あ! それよりお腹すいたや。目玉焼き、作ってくれるんだろ? 早く食べたいな。ダンの料理、美味しいからさ」
俺のお願いに弾かれたようにダンが顔を上げる。その表情に先程までの陰りはもうない。
「おう! 任せとけ! 焼き加減はどうする?」
「半熟でお願いします!」
意気揚々と台所に向かうダンの大きな背中を見送ってから、俺は顔を洗いに洗面所に向かった。
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