【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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運がいいことに、サルファー先輩とペアを組めたんだが?

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 黒地に緑のラインが入った軍服を着た、オレンジの髪の青年が口笛を吹きながら俺達に近づいてくる。

「おはようございます。ソレイユ先輩」

「おはようシュンちゃん。キミ意外とスルースキル高いね。それとも、普段からそんな感じだからもう慣れてるとか?」

 スルー? 慣れてる? 何のことだろう? さっきまで、ダンと今日のお弁当の中身について話してただけだよな?

 言われている意味が分からずに俺が首を傾げていると、耳元でダンが溜め息を吐くのが聞こえた。発端であるソレイユ先輩も軽く息を吐きながら、片手で目元を覆うように押さえている。

「あちゃー……こりゃサルフが苦労するわけだ。幼なじみくんも大変だね、御愁傷様」

 先輩に肩を叩かれながら、ダンです……と告げるその表情には何だか哀愁が漂っていた。

「ところでシュンちゃんは何番だった? オレ17番なんだけど」

「げっ! マジか……」

 ダンのペアはソレイユ先輩か。にしても、サルファー先輩に引き続き、ソレイユ先輩のことも苦手なんだろうか。隠しもせずに嫌そうに男らしい眉をしかめている。

 苦々しい顔で、自分の番号とソレイユ先輩とを見比べていたダン。後ろから俺に抱きついていた彼を、突如先輩が押し退け俺の肩口に顔を埋めてくる。

「ダンくんひどーい。シュンちゃん、慰めて?」

「えっと……よしよし俺はソレイユ先輩のこと好きですよ? ダン、先輩に対して失礼だぞ」

 いくら苦手でも多少はオブラートに包むべきだろう。ウェーブのかかった頭を撫でながら、極力優しい声で諭すように言ったんだが……やっぱりしょんぼりと大きな肩を落としてしまっていた。

「悪かったよ……すみませんでした、先輩」

「いーよいーよ、分かってくれたんなら」

 先輩はニカッと笑ってダンの手を取ると耳元で何やら囁いた。

「……シュンちゃんのこと泣かしたらオレ、キミのこと許さないから」

 ダンが、ぎょっとした顔で先輩を見つめている。一体何を言われたんだろうか? 先輩、人の心を読むのが得意だからなぁ……俺の時みたく何かを言い当てられたんだろう。多分。

「まぁ、そーゆーわけで……同じ番号同士仲良くしよーね? ダンくん」

 にこにこ笑いながら握手を交わす先輩に対して、ダンの表情はどこか固い。

 よっぽどびっくりしたのかな? 俺が考えを巡らせていると大きな手に肩を叩かれた。反射的に振り向くと、黄色い髪の軍服姿の青年が、サルファー先輩が爽やかな笑みを浮かべている。

「サルファー先輩! おはようございます」

「おはよう、シュン。その……君の番号を、聞いてもいいだろうか? ちなみに俺は30番なんだが……」

「一緒です! 今日はお願いしますね、先輩」

 ラッキー! 先輩とペアなんて、ついてるなぁ。いっぱいお話出来るといいな。

「あぁ! 俺の方こそよろしく頼む」

 こぼれるような笑顔が眩しい。流石のイケメンスマイルだ。手を握られただけなのにドキドキしてしまう。

「サルファー先輩ずりぃ……俺もシュンと一緒が良かった」

「サルフ、ちゃんと山頂までエスコートしてあげてよね! シュンちゃんにかすり傷一つでも付けたらぶっ飛ばすから」

「心配するなソル、シュンは必ず俺が守る」

 サルファー先輩は俺の肩を抱き寄せ、真剣な面持ちで応えた。

 ただの登山なのに、ちょっと大げさじゃないか? いや嬉しいけど。

 俺達はダンとソレイユ先輩と別れてCルートの出発地点に向かう。ギリギリまでダンがごねていたが、ソレイユ先輩に首根っこを掴まれそのまま引き摺られていった。
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