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魔獣ってのは動物のことだったらしい
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「いってらっしゃい、気を付けてね」
出発地点で待機していた先生に見送られ、俺達は山道を歩きだす。足を運ぶ度に、俺の腰に着いている鈴がチリンチリンと音を立てた。
「そういえば先輩、魔獣って具体的にはどんなのが出るんですか?」
「そうだな……これ位の山ならせいぜい猪とかウサギじゃないか?」
え、猪とウサギって魔獣なの? もっとRPGに出てくるようなモンスターっぽいのかと思ってたわ。
「熊、とかは?」
「たまに出ることもあるが、基本的に魔獣が人を襲うことは滅多にないからな。繁殖期だったり彼等のテリトリーに入った場合は話は別だが」
なんだ、名称が違うってだけで動物と変わらないんだな。俺が胸を撫で下ろしていると、眉間にシワを刻んだ先輩が少し声のトーンを落とし、だが……と続けた。
「突然変異で生まれるキメラは、他の魔獣と生態が異なる場合が有るから注意する必要があるな」
「キメラ……ですか?」
「二種類の魔獣が合わさった獣のことだ。二匹の特徴を併せ持っているから対処が難しいんだ。本来生息するはずのない所にいたりな」
二匹の、特徴? 俺が首を傾げながら考えていると先輩が柔らかい声で、説明してくれた
「例えば、ウサギとイルカのキメラがいたとするだろ。ウサギは本来なら海では生きていけないし、逆にイルカは陸では生きていけないよな? しかし、キメラの場合、二匹の特性を併せ持っているお陰で海でも陸でも生きていける、という訳だ」
成程、分かりやすい。というか、可愛いな。ウサギとイルカのキメラって。
俺はウサギにイルカの尻尾が生えた姿を想像して思わずほっこりした。
「とはいえ魔獣は臆病な生き物だ。人との無駄な争いを避けようとする傾向がある。この鈴を着けるのはその為だな」
魔除けの鈴というか熊避けの鈴だったんだなこれ。役割的な意味では。
「俺達の存在を魔獣に知らせてるんですね」
「そうだ。まぁ、万が一襲われたとしても俺がコイツで君を守るから心配するな」
先輩は腰に携えた剣を軽く叩く。
「ありがとうございます。頼りにしてますね」
ああ、任せてくれ、と俺の頭を撫でながら微笑んだ。
俺達が歩みを進めると少し開けた場所に出た。
どうやらそこが中間地点だったらしく、グレイ先生ともう一人、焦げ茶色の髪を束ねた妙齢の女性が俺達を出迎える。
「やぁ早かったね。二人とも体調は大丈夫かな? 山頂まではまだあるから、気を付けていくんだよ」
「グレイ先生達はどうするんですか?」
「別ルートの最終組がまだみたいなんだ。彼等が無事通過したら、他の先生と合流して私達も山頂へ向かうよ」
グレイ先生達に見送られながら俺達は山頂を目指して再び歩き始めた。緩やかな傾斜を登り、深い茂みを横目に見ながらどんどん先へと進む。
中間地点を過ぎて小一時間位経つから……山頂まであと半分位だろうか。
「少し舗装されているとはいえ道がデコボコしてるからな、足元には気を付けて進もう」
「はい、せんぱ……うわっ!」
出発地点で待機していた先生に見送られ、俺達は山道を歩きだす。足を運ぶ度に、俺の腰に着いている鈴がチリンチリンと音を立てた。
「そういえば先輩、魔獣って具体的にはどんなのが出るんですか?」
「そうだな……これ位の山ならせいぜい猪とかウサギじゃないか?」
え、猪とウサギって魔獣なの? もっとRPGに出てくるようなモンスターっぽいのかと思ってたわ。
「熊、とかは?」
「たまに出ることもあるが、基本的に魔獣が人を襲うことは滅多にないからな。繁殖期だったり彼等のテリトリーに入った場合は話は別だが」
なんだ、名称が違うってだけで動物と変わらないんだな。俺が胸を撫で下ろしていると、眉間にシワを刻んだ先輩が少し声のトーンを落とし、だが……と続けた。
「突然変異で生まれるキメラは、他の魔獣と生態が異なる場合が有るから注意する必要があるな」
「キメラ……ですか?」
「二種類の魔獣が合わさった獣のことだ。二匹の特徴を併せ持っているから対処が難しいんだ。本来生息するはずのない所にいたりな」
二匹の、特徴? 俺が首を傾げながら考えていると先輩が柔らかい声で、説明してくれた
「例えば、ウサギとイルカのキメラがいたとするだろ。ウサギは本来なら海では生きていけないし、逆にイルカは陸では生きていけないよな? しかし、キメラの場合、二匹の特性を併せ持っているお陰で海でも陸でも生きていける、という訳だ」
成程、分かりやすい。というか、可愛いな。ウサギとイルカのキメラって。
俺はウサギにイルカの尻尾が生えた姿を想像して思わずほっこりした。
「とはいえ魔獣は臆病な生き物だ。人との無駄な争いを避けようとする傾向がある。この鈴を着けるのはその為だな」
魔除けの鈴というか熊避けの鈴だったんだなこれ。役割的な意味では。
「俺達の存在を魔獣に知らせてるんですね」
「そうだ。まぁ、万が一襲われたとしても俺がコイツで君を守るから心配するな」
先輩は腰に携えた剣を軽く叩く。
「ありがとうございます。頼りにしてますね」
ああ、任せてくれ、と俺の頭を撫でながら微笑んだ。
俺達が歩みを進めると少し開けた場所に出た。
どうやらそこが中間地点だったらしく、グレイ先生ともう一人、焦げ茶色の髪を束ねた妙齢の女性が俺達を出迎える。
「やぁ早かったね。二人とも体調は大丈夫かな? 山頂まではまだあるから、気を付けていくんだよ」
「グレイ先生達はどうするんですか?」
「別ルートの最終組がまだみたいなんだ。彼等が無事通過したら、他の先生と合流して私達も山頂へ向かうよ」
グレイ先生達に見送られながら俺達は山頂を目指して再び歩き始めた。緩やかな傾斜を登り、深い茂みを横目に見ながらどんどん先へと進む。
中間地点を過ぎて小一時間位経つから……山頂まであと半分位だろうか。
「少し舗装されているとはいえ道がデコボコしてるからな、足元には気を付けて進もう」
「はい、せんぱ……うわっ!」
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