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逞しい指が俺の目元をそっと撫でる。触れられた部分が何故かじわじわと熱を帯びてきてしまう。柔らかい眼差しで見つめられると何だかそわそわしてしまって……思わず背けた顔に大きな手が添えられた。
「俺から逃げないでくれ……シュン」
ズルいなぁ……そんな寂しそうな声で言われちゃったら、聞くしかないじゃないか。俺がおずおずと先輩に向き直ると満面の笑顔で俺を抱きすくめた。
「……山での続きをしてもいいか?」
先輩が俺の耳元で囁くように尋ねる。
「続きって……」
「君にキスしたい」
今度は、甘く焦がれるような声だった。
「ここで、ですか!?」
「ダメか?」
「だって誰かに見られたら……」
俺は慌てて周囲を見回す。行事で部活が休みのせいもあってか俺達以外に人影は見当たらなかった。
「誰もいないみたいだな?」
先輩が悪戯っぽく口の端を上げて微笑む。
「そう、ですね……」
「いいか?」
俺は返事の代わりにそっと目を閉じた。クスリと笑う気配がしてから、柔らかいものが唇にそっと押し付けられる。
先輩と、キス……したんだ。伝わってくる体温と一緒にじんわりとした実感に心が満たされていく。軽いリップ音がしてゆっくり離れていってしまった。
そろそろと目を開けると鼻と鼻が触れ合う距離に柔らかい笑顔がある。笑みを深めた唇が再び俺の口を塞いだ。
「ふぁ……ん、ふっ」
さっきみたいにただ触れるだけのとは違う……角度を変えながら何度も優しく口付けられて、背中から知らない感覚がぞわぞわと這い上がってくる。
全身が燃えるように熱くなって心臓の音がうるさい。これ以上は……おかしくなっちゃいそうだ……
堪えきれなくて分厚い胸元を弱々しく叩くと解放してくれた。
「……すまない、つい夢中になってしまった」
「っぷぁ……す、少しは……手加減して、ください」
息も絶え絶えに講義した俺を労るように大きな手がゆったり背中を撫でてくれる。
「そもそも、何で一回じゃなかったんですか?」
「君の目を見ながらしたかった」
「だから待ってたんですか?」
笑って肯定するその口元はやっぱり悪戯っぽく見えた。
「そういえば、俺に渡したいものってなんだったんですか?」
黄色の瞳がぱちくり瞬く。もしかして。
「……忘れてたんですか?」
「いや、そんなことは」
今度は忙しなく泳ぎだす。全然合わせちゃくれない。
「忘れてたんですね……」
「すまない……照れてる君があまりにも愛らしくて衝動を抑えられなかった」
「そーゆー恥ずかしいことを真顔で言わないでください……」
何で歯が浮くような台詞を言ってくれる時だけは、真っ直ぐに見つめてくるんだよ。
「事実だから仕方が」
「あー分かりました! 分かりましたから、本題に戻りましょう!」
ただでさえキスでドキドキしてんのに、これ以上はマズい。必死に、ね? と訴えれば、それもそうだな、と懐から小さな黄色い巾着袋を取り出した。
「これは、お守り……ですか?」
「ああ、中に魔除けの護符が入っているんだ。これを持っていると試合で怪我をしても不思議と大事にいたらなくてな。気休めかもしれないが受け取ってくれるか?」
「大事な物じゃないですか! 俺が貰っちゃ不味いですよ! 俺、先輩に何かあったら……」
「ありがとう……でも大丈夫だ。部屋に予備があるからな。だから、こっちは君が持っていてほしい」
それじゃあ、と黄色い袋を受け取ると満足そうに顔を綻ばせて俺の頭を撫でてくれた。
「俺から逃げないでくれ……シュン」
ズルいなぁ……そんな寂しそうな声で言われちゃったら、聞くしかないじゃないか。俺がおずおずと先輩に向き直ると満面の笑顔で俺を抱きすくめた。
「……山での続きをしてもいいか?」
先輩が俺の耳元で囁くように尋ねる。
「続きって……」
「君にキスしたい」
今度は、甘く焦がれるような声だった。
「ここで、ですか!?」
「ダメか?」
「だって誰かに見られたら……」
俺は慌てて周囲を見回す。行事で部活が休みのせいもあってか俺達以外に人影は見当たらなかった。
「誰もいないみたいだな?」
先輩が悪戯っぽく口の端を上げて微笑む。
「そう、ですね……」
「いいか?」
俺は返事の代わりにそっと目を閉じた。クスリと笑う気配がしてから、柔らかいものが唇にそっと押し付けられる。
先輩と、キス……したんだ。伝わってくる体温と一緒にじんわりとした実感に心が満たされていく。軽いリップ音がしてゆっくり離れていってしまった。
そろそろと目を開けると鼻と鼻が触れ合う距離に柔らかい笑顔がある。笑みを深めた唇が再び俺の口を塞いだ。
「ふぁ……ん、ふっ」
さっきみたいにただ触れるだけのとは違う……角度を変えながら何度も優しく口付けられて、背中から知らない感覚がぞわぞわと這い上がってくる。
全身が燃えるように熱くなって心臓の音がうるさい。これ以上は……おかしくなっちゃいそうだ……
堪えきれなくて分厚い胸元を弱々しく叩くと解放してくれた。
「……すまない、つい夢中になってしまった」
「っぷぁ……す、少しは……手加減して、ください」
息も絶え絶えに講義した俺を労るように大きな手がゆったり背中を撫でてくれる。
「そもそも、何で一回じゃなかったんですか?」
「君の目を見ながらしたかった」
「だから待ってたんですか?」
笑って肯定するその口元はやっぱり悪戯っぽく見えた。
「そういえば、俺に渡したいものってなんだったんですか?」
黄色の瞳がぱちくり瞬く。もしかして。
「……忘れてたんですか?」
「いや、そんなことは」
今度は忙しなく泳ぎだす。全然合わせちゃくれない。
「忘れてたんですね……」
「すまない……照れてる君があまりにも愛らしくて衝動を抑えられなかった」
「そーゆー恥ずかしいことを真顔で言わないでください……」
何で歯が浮くような台詞を言ってくれる時だけは、真っ直ぐに見つめてくるんだよ。
「事実だから仕方が」
「あー分かりました! 分かりましたから、本題に戻りましょう!」
ただでさえキスでドキドキしてんのに、これ以上はマズい。必死に、ね? と訴えれば、それもそうだな、と懐から小さな黄色い巾着袋を取り出した。
「これは、お守り……ですか?」
「ああ、中に魔除けの護符が入っているんだ。これを持っていると試合で怪我をしても不思議と大事にいたらなくてな。気休めかもしれないが受け取ってくれるか?」
「大事な物じゃないですか! 俺が貰っちゃ不味いですよ! 俺、先輩に何かあったら……」
「ありがとう……でも大丈夫だ。部屋に予備があるからな。だから、こっちは君が持っていてほしい」
それじゃあ、と黄色い袋を受け取ると満足そうに顔を綻ばせて俺の頭を撫でてくれた。
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